近年、次世代を担う子どもたちが必要とする資源やエネルギーを損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への関心が高ってきています。その取組の一環として、毎日生活するマイホームの選択肢として「エコ住宅」を視野に入れる人も多いのではないでしょうか。
エコ住宅を建てるときやリフォームで今の家をエコ住宅化するときは、お得な補助金制度を活用することができます。しかし、そもそもエコ住宅の条件がどういったものかイメージできない人も、なかにはいるでしょう。
そこで今回は、エコ住宅の基礎知識について解説します。これから住宅を購入する人、エコ住宅にリフォームしたい人はしっかりとチェックしておきましょう。
エコ住宅とは
近年はエコ住宅と言う言葉を耳にすることが増えてきましたが、そもそもエコ住宅がどのような住まいを指すのかについて知らない人も多いのではないでしょうか。一口にエコ住宅と言っても、実はその種類や認定基準は数多く存在しています。まずは、エコ住宅について基本的な知識を身につけていきましょう。
エコ住宅とは省エネルギーに配慮した家
一般的にエコ住宅(省エネ住宅)とは、家の断熱性や気密性を高めることで、冷暖房の使用エネルギーを抑えた住宅のことです。ただし、各省庁によってエコ住宅の定義や名称は異なります。断熱性や気密性のほかにも、「地域の気候風土や敷地の条件に応じて自然エネルギーを活かせる住宅」や「地域の材料を使って環境の負担を抑えた住宅」を指すこともあります。
具体的には、壁や屋根に断熱材を入れたり気密性の高い窓をつけたりすると、エコ住宅だと認定してもらうことが可能です。一定の基準を満たせば、100万円以上の補助金がもらえることもあります。
エコ住宅の種類
一口にエコ住宅と言っても、実は多くの種類が存在しています。ここでは、エコ住宅の種類を詳しく見ていきましょう。長期優良住宅
長く安全かつ快適に住み続けられる住宅のことを指します。一般的な住宅と比べ、耐震性が高かったり維持管理の手間がかからなかったりすること、省エネルギー性が高いことなどが認定基準となっています。認定低炭素住宅
二酸化炭素の排出量を抑えられる住宅のことです。必ず達成することが求められる「必須項目」と、決められた8つの項目のうち2つ以上クリアすることが求められる「評価項目」が存在しています。項目の内容としては、一次エネルギーの消費量を基準よりも10%削減すること、節水機器を設置することなどが挙げられます。性能向上計画認定住宅
エネルギー消費性能が基準を超え、かつ建築物のエネルギー消費性能の向上を一層促進するため、経済産業省令・国土交通省令が定めた基準に適合した住宅のことです。都道府県もしくは市区町村が認定します。耐久性やメンテナンス計画などの条件を満たせば、長期優良住宅としての認定が受けられます。ZEH(ゼッチ)住宅
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、断熱性を高めて省エネ設備を備え、かつ太陽光発電システムなどでエネルギーを創り出すことで、「消費エネルギー≦創り出すエネルギー」となる住宅のことを指します。断熱性や気密性を高めてエネルギーを抑制するだけではなく、一歩先のエネルギーを創り出すことが求められます。LCCM住宅
LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅とは、建築時点から廃棄までに二酸化炭素排出量を削減する住宅のことです。つまり、建物を解体したり回収したりするときも、二酸化炭素の排出量を抑えられる住宅ということです。エコ住宅にするメリット
エコ住宅は環境に優しいという大きなメリットを持つ住宅ですが、もっと身近に感じられるメリットも豊富に存在しています。ここでは、エコ住宅の4つのメリットを紹介します。ランニングコストを抑えられる
エコ住宅という名前がついているほどなので、電気やガスなどのエネルギー消費量が削減できる点がエコ住宅最大のメリットです。断熱性や気密性を高めれば、外気温の影響を受けにくくなりますし、冷暖房の効きもよくなります。結果的に光熱費が安くなるため、ランニングコストを抑えられるようになるでしょう。経済産業省によると、ZEH住宅と築15年の賃貸マンションを比べたとき、年間20万円の光熱費が削減されたというデータも出ています。[注1]太陽光発電システムなどを設置している場合は、売電収入を得ることも可能となります。
[注1]経済産業省|ZEHの普及に向けて①
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/2016shoueneseisaku/pdf/005.pdf
健康維持につながる
エコ住宅は断熱性が高いため、外気温と室内の温度差が生じにくくなります。その結果、冬場に頭を悩ませる結露を防げるようになるでしょう。結露が生じると、窓周辺の掃除が面倒になるだけではなく、ダニやカビの繁殖によるアレルギー症状が出てしまう恐れがあります。そのためエコ住宅にして結露を防ぐことで、健康維持効果を得られるのです。
さらにエコ住宅であれば、命を落とす危険性がある「ヒートショック」を防ぐことができます。ヒートショックは、温度差が激しい場所に行ったときに血圧が急上昇する現象のことで、最悪の場合は心筋梗塞や脳卒中を引き起こす原因となります。外気温の影響を防いで室内の温度差が生じにくいエコ住宅であれば、ヒートショックの対策ができるのです。
過ごしやすい家になる
冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるようになることも、エコ住宅の魅力です。「暖房をつけていた部屋から出ると寒くて、トイレに行くのが辛い」「エアコンをつけていても窓際は暑い」などといった状態も、エコ住宅であれば防げます。一年中快適に過ごせる住宅になれば、おうち時間がより充実したものになるでしょう。
災害に備えられる
エコ住宅であれば、万が一災害が起きてしまったときでも安心して住み続けられます。先述したように、エコ住宅の中には耐震基準が高いものも多いです。さらに断熱性・気密性が高いため、万が一災害で電気やガスが止められたときも、ある程度は自宅で快適に過ごすことが可能なのです。太陽光発電システムや蓄電池などを備え付けていれば、電気の供給が止まってもエアコンなどを使用し続けられるでしょう。
このように、災害時の備えとしてもエコ住宅は役立ってくれます。避難所での生活は、想像以上に心身の負担が大きいものです。自宅避難しやすいエコ住宅は、とくに小さい子供やペットがいるご家庭に最適だと言えるでしょう。
エコ住宅の設備にはどんなものがある?
自宅をエコ住宅にしたいときは、どのような設備を搭載していけばいいのかご存知でしょうか。この章では、エコ住宅の設備について見ていきましょう。断熱設備
エコ住宅に欠かせない設備といえば、高断熱・高気密の設備です。代表的なものとしては「アルミ樹脂複合サッシ」という、断熱性・防露性に優れたアルミサッシが挙げられます。ほかにも、床や壁、外壁や屋根などに断熱材を入れることも、エコ住宅の条件を満たすための設備工事だと言えます。創エネ・省エネ設備
創エネ・省エネ設備もエコ住宅の設備として挙げられます。代表的なエコ住宅の創エネ・省エネ設備の一例は、以下のとおりです。【創エネ】
● 太陽光発電システム
● エネファーム など
【省エネ】
● エコジョーズ
● 統一省エネラベルの評価が高いエアコン
● 床暖房 など
省エネ住宅にするためには、エネルギー消費量を抑えるだけではなく、自然エネルギーを利用する設備を導入することが肝心となります。
節水設備
断熱性や省エネ性などにくわえて、節水設備を備えている場合は、より性能の高いエコ住宅だと認定されやすくなります。節水型のトイレなどを設置すると、省エネリフォームを実施したときに付与される「省エネ住宅ポイント」が加算されるため、非常にお得です。オール電化システム
オール電化システムも、エコ住宅だと認定される設備のひとつです。とくに、オール電化は太陽光発電と併用することで、より性能の高いエコ住宅に仕上がります。余った電気は売電できるため、光熱費を抑えるだけではなく収入を得ることも可能となります。エコ住宅にするときに使える補助金制度
エコ住宅の住宅を建築したり、今ある住宅をエコ住宅にリフォームしたりする際は、補助金制度を活用すればお得に工事ができます。ここでは、エコ住宅にするときに押さえておきたい補助金制度について説明します。エコ住宅に関する補助金制度
国はエコ住宅を推奨しているため、建築や改修に活用できる豊富な補助金制度を用意しています。エコ住宅にするときは、具体的に以下の3つのうちから、条件を満たす補助金制度が利用できます。金額 | 条件 | |
---|---|---|
長期優良住宅化リフォーム推進事業[注2] | 最大300万円 | 今ある住宅を改修し、安心して長く住めるようにする |
地域型住宅グリーン化事業[注3] | 最大140万円 | 省エネ性能や耐久性が高い住宅を新築、もしくは改修する |
ZEH住宅補助金[注4] | 最大115万円 | ZEHビルダーもしくはプランナーが関与し、ZEHの定義を満たしている |
このほか、自治体ごとに設けている補助金制度が利用できることもあります。あらかじめ各制度の条件をよく確認しておくことで、お得にエコ住宅の工事ができるようになるでしょう。
[注2]国土交通省|国土交通省住宅局|令和2年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業に関する説明資料
https://r02.choki-reform.com/doc/summary_doc_all.pdf
[注3]国土交通省|令和2年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集を開始
https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000929.html
[注4]一般社団法人 環境共創イニシアチブ|2020年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
https://sii.or.jp/moe_zeh02/uploads/zeh02_pamphlet1.pdf
エコ住宅に関する減税制度
エコ住宅にしたときは補助金制度のほかにも、減税制度を利用することが可能です。金額 | 条件 | |
---|---|---|
低炭素住宅に対する所得税軽減[注5] | 最大控除額500万円 | 新築で認定炭素住宅を建て、一定の条件を満たすことで10年間所得税が控除される |
長期優良住宅の住宅ローン減税[注6] | 最大控除額500万円 | 長期優良住宅を新築で建てる |
新築の場合は住宅ローン減税も利用できますが、上記の条件を満たしていれば、控除額が大幅に増額されます。条件を満たす場合は、必ずエコ住宅向けの減税制度を活用しましょう。
[注5]国土交通省|認定低炭素住宅に対する税の特例
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001340142.pdf
[注6]国土交通省|長期優良住宅に対する税の特例
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001386944.pdf
エコ住宅にするときの注意点
最後に、自宅をエコ住宅にするときの注意点について説明します。エコ住宅化で後悔しないように、あらかじめ以下の2点を押さえておきましょう。建設費用が高い
エコ住宅は環境・人に優しく建築後のランニングコストも抑えられますが、建築時の費用が高くなる点に注意が必要です。断熱性能を高めるために品質のいい材料や断熱材を使えばそのぶん材料費はかさみますし、そもそも省エネ機器自体が非常に高額です。たとえ補助金が支給される場合でも、全額を負担してもらえるわけではありません。建築時にかかる初期費用と、建築したあとのランニングコストを比べて、ご自身に最適な判断をすることが大切です。
ただし、エコ住宅のメリットは決して費用面だけで測れるものではありません。環境への優しさや安全面、災害時の安心感などは、費用だけでは損得を判断できるものではないでしょう。費用はあくまでひとつの判断材料として、複合的に見てエコ住宅にすべきかどうかを考えることをおすすめします。
依頼できる業者が限られる
エコ住宅としての認定を受けて補助金などを受け取る際は、エコ住宅の施工や申請に対応した業者に工事を依頼する必要があります。決してすべての業者がエコ住宅の基準を満たす住宅が建てられる技術力を持ち合わせているわけではないので、ときには希望する業者がエコ住宅に対応していないケースもあるでしょう。低炭素住宅や性能向上計画認定住宅、LCCM住宅などは、基準を満たしているかどうか判断するときに複雑な計算が必要となります。そのため、申請に慣れている業者でないと、スムーズに申請できなかったり認定されなかったりする恐れがある点にも注意しましょう。こういった基準が厳しいエコ住宅を検討する場合は、建築・申請実績が豊富な業者に依頼できると安心です。
なかでもZEH住宅などの一部住宅は、認定を受けるために決められた業者に建築してもらう必要があります。エコ住宅をご検討の場合は、希望するエコ住宅の建築基準を満たせる技術力を保持した施工業者の選定が重要となります。
お得に過ごしやすい家を建てるならエコ住宅を検討しましょう
エコ住宅は、家の断熱性や気密性を高めることで冷暖房の使用エネルギーを抑えたり、エネルギーを創出したりする住宅のことを指します。一口にエコ住宅と言ってもさまざまな種類が存在しているため、まずは「どのような機能性を持たせた住宅にしたいのか」を考えることから始めていきましょう。エコ住宅は環境に優しいだけではなく、ランニングコストが抑制できたり健康維持につながったり災害の備えになったりと、人にとっても優しい住宅です。条件を満たせば補助金や税金の優遇制度が受けられるため、各制度の条件を押さえてお得にエコ住宅化していきましょう。