国土交通省による「令和2年度 住宅市場動向調査」では、土地の取得費用と建築費用を合わせた「注文住宅」の購入価格は、三大都市圏の平均で5,359万円となっています。
分譲マンションの平均購入価格は4,639万円とされており、5,000万円の家を購入する方は決して珍しくありません。
しかし年収によっては、住宅ローンの申し込み時に融資が下りないケースもあります。本記事では、5,000万円の家を買える人の年収の目安や、住宅ローンを組む際の注意点、無理なく返済するコツを解説します。
5000万円の家を買える人の年収の目安
5,000万円の家を住宅ローンを組んで購入する場合、適正年収は833〜1,000万円です。
最低限では625万円の年収があれば、金融機関によっては住宅ローンを組むことが可能です。これらの年収の目安の算出方法について、以下で詳しく解説します。
年収の5倍〜6倍の物件価格が適正
住宅ローンを組む際には、ご自身の年収の5倍〜6倍の物件価格が適正とされます。この倍率を「年収倍率」と呼び、金融機関によっては年収の8倍までを上限に借入可能額が提示されることもあります。
そのため最低年収としては5,000万円を8で割った625万円、適正年収には5で割った1,000万円と6で割った833万円の間が望ましいでしょう。
最低ラインは年収625万円
前項の計算のように、年収625万円の方であれば、5,000万円の住宅ローンを組んで家を購入することは不可能ではありません。
しかし、仮に年収625万円の方が年収の8倍である5,000万円のローンを組んだ場合、月々の返済額が15.07万円に達する可能性があります(5,000万円の借り入れ、ボーナス払いなし、35年返済、固定金利1.4%の場合)。
税込年収625万円の場合、手取りの年収は約480万円ですから、手取りの月収は40万円となります。その4割近い15万円の返済額は、生活費を圧迫する可能性があります。
適正ラインは年収833〜1000万円
年収833万円〜1,000万円以上であれば、5,000万円の住宅ローンも無理なく返済できるでしょう。
ただし契約者の方1人の年収ではなく、夫婦の収入を合わせた「世帯年収」833万円〜1,000万円になる場合、将来のリスクにも配慮する必要があります。
可能な限り契約者1人の年収を目安に返済プランを組み、余裕資金は繰上げ返済やリフォーム費用、貯蓄などに回すほうが安全でしょう。
5000万円の家を住宅ローンで購入する際の注意点
5,000万円という高額な家を住宅ローンで購入する場合、事前に把握しておきたい注意点がいくつかあります。
- 返済負担率の計算
- 頭金の割合
- 金利の選び方
- 借り入れ期間の設定方法
ここでは、上記の4つのポイントについて解説します。
手取り年収で返済負担率を計算する
返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合です。たとえば年収1,000万円の方が毎年250万円のローンの返済を行う場合、返済負担率は25%となります。
ただし、目安としては「手取り年収」の20%〜25%程度が、無理のない返済をするための理想の負担率とされています。
住宅ローンの審査時には、税込年収で返済負担率が計算されますが、返済プランを立てる際には、手取りの年収で計算する方が良いでしょう。
そのため、先の例でも税込年収が1,000万円の場合では、手取りの年収は約800万円となるため、800万円の中から250万円のローンを支払うと、返済負担率は31.2%となってしまうので注意が必要です。
頭金は1〜2割用意しておく
住宅を購入する際には、物件価格の1割〜2割の頭金を用意することが一般的です。5,000万円の家を買う場合には、500〜1,000万円の頭金が目安となります。
頭金を支払う場合と、支払わない場合の毎月の返済額を比較すると、5,000万円を全額住宅ローンで借り入れる場合は月々15万円程度、頭金を1,000万円支払って4,000万円の住宅ローンを組む場合は月々12万円程度、1500万円の頭金を支払い3,500万円の住宅ローンを組む場合は月々10.5万円程度まで返済額が下がります。(ボーナス払いなし、35年返済、固定金利1.4%の場合)。
頭金には、借入金額を圧縮し、月々の返済や利息を抑えるメリットがあるため、無理のない範囲で用意しましょう。
変動金利では金利上昇リスクに注意
住宅ローンの金利は、「固定金利」「固定期間選択金利」「変動金利」の3つのタイプがあります。
固定金利は借入時に定めた金利が完済まで続くタイプで、固定期間選択金利は一定の期間を固定金利で返済したのち、残りの期間を変動金利か固定金利か選択ができるタイプです。
そして変動金利は、金利相場に応じて金利が変動するタイプで、2022年4月時点では史上最低水準の低金利となっています。
たとえば三菱UFJ銀行では、変動金利が0.475%、固定期間選択金利は0.54%〜1.25%、そして35年の固定金利が1.20%と設定されています(2022年4月現在、ネットで行う「スマート手続」を利用する場合)。
この低金利水準が続くと仮定すれば、最も返済負担が少ないのは変動金利です。一方、金利相場が変動した際に大きな影響を受けるのも変動金利であることに注意しましょう。
完済時年齢で借入期間を決める
住宅ローンを組む際には、完済時の年齢を考慮して借入期間を決定すると良いでしょう。
たとえば5,000万円の家を30歳で購入し、35年ローンを組んだ場合、65歳で完済となります。購入が35歳の時であれば、35年ローンの完済は70歳時点となります。
定年退職後の住宅ローンの支払いを避ける工夫としては、完済が定年までとなるよう調節したり、退職金が出る場合には繰上げ返済に当てたりすると良いでしょう。
5000万円の家で住宅ローンを組む場合の返済シミュレーション
5,000万円の家を購入した場合の住宅ローンの返済額は、頭金・借入金額・借入期間・金利によって変動します。
ここでは借入期間ごとに、毎月の返済額と、金利別の返済プランをシミュレーションします。
借入期間ごとの返済シミュレーション
住宅ローンの借入期間は、短く設定すると毎月の返済額は高くなりますが、その分、利息が減少するため返済総額を抑えられるメリットもあります。
次の条件で計算した場合、比較は以下の表のようになります。
- 借入金額:5,000万円
- 頭金:なし
- ボーナス払い:なし
- 金利:変動金利0.5%
- 返済方式:元利均等返済
借入期間 | 毎月の返済額 | 返済総額 |
35年 | 12.98万円 | 5,451万円(利息451万円) |
30年 | 14.96万円 | 5,385万円(利息385万円) |
25年 | 17.73万円 | 5,320万円(利息320万円) |
上の表をもとに、たとえば25年のローンを組む場合、返済負担率を手取りの月収の25%に抑えるよう逆算すると、「17.73万円 ÷ 25% = 70.92万円」が理想の手取りの月収となります。
税込月収に換算すると約90万円、税込年収は1,080万円が適正な収入となります。
金利別の返済シミュレーション
住宅ローンは、金利によっても返済額に大きな差が出ます。
ここでは例として、みずほ銀行の住宅ローンの、3つの金利タイプごとに毎月の返済額・返済総額をシミュレーションしてみましょう。
- 借入金額:5,000万円
- 頭金:なし
- ボーナス払い:なし
- 返済方式:元利均等返済
- 借入期間:35年
金利 | 毎月の返済額 | 返済総額 |
変動金利(0.375%) | 12.70万円 | 5,336万円(利息336万円) |
全期間固定金利(1.22%) | 14.63万円 | 6,146万円(利息1,146万円) |
固定金利選択(0.85%)※10年 | 13.77万円 | 5,782万円(利息782万円) |
参照:「みずほ住宅ローン金利一覧」(金利は2022年4月1日現在のもの)
前項の表と比較すると、借入期間の違いよりも、金利の違いの方が、返済総額に大きな影響を及ぼすことがわかります。この例で変動金利を選ぶと、固定金利よりも返済総額は800万円以上減少します。
金利が返済総額に与える影響は非常に大きいため、低金利の金融機関を選ぶことが重要です。
5000万円の家の住宅ローンを無理なく返済するためのコツ
最後に、5,000万円の家の住宅ローンを返済する場合の、無理のない返済プランを立てる3つのコツを紹介します。
- 税金・諸経費・生活費も考慮する
- 住宅ローン控除を活用する
- 収入合算・ペアローンを検討する
それぞれ解説します。
税金・諸経費・生活費も考慮する
5,000万円の家を購入した際に発生する費用は、住宅ローンの返済や頭金だけではありません。
物件購入時の「諸経費」や、毎年の支払いが必要な「固定資産税」「都市計画税」、入居後の生活費も考慮しなければなりません。
マイホーム購入に関わる諸経費には以下のような種類があり、物件価格の約1割がかかります。
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 融資事務手数料
- ローン保証料
- 仲介手数料
- 団体信用生命保険料
- 火災保険料・地震保険料
- 管理費・修繕積立金(マンション購入の場合)
特に「融資事務手数料」「ローン保証料」「仲介手数料」などは、物件価格の数%となっており、割合に応じた手数料となることが多いため、十分な現金を用意しましょう。
固定資産税・都市計画税は、土地や建物の評価額によって納税額が決まるため、物件価格が高いほど税額も上がる傾向にあります。
なお、「住宅用地の特例」によって土地の評価額が1/3に軽減されたり、新築住宅は固定資産税が1/2になったりする制度もあるため、各制度も活用しましょう。
住宅ローン控除を活用する
住宅ローン控除とは、年末時点のローン残高に対し、0.7%の金額が所得税から控除される仕組みです(2022年改正後)。
住宅ローン控除を利用すれば、たとえば年末時点での住宅ローンの残高が2500万円の場合、0.7%分の17.5万円が戻ってくる計算となります。
ただし、住宅ローン控除を受けられる借入限度額として、2022年4月の法改正により、一般の新築住宅は3000万円まで、認定住宅などでは5000万円までなどとなっていることに注意しましょう。
なお、限度額を超える分についての控除は受けられません。2022年は住宅ローンが大きく改正されたため、詳細についてはイエウールの下記の記事もご参照ください。
2022年最新版!住宅ローンが控除される条件をわかりやすく詳細解説
収入合算・ペアローンを検討する
契約者1人の年収では住宅ローンの適正年収に満たない場合、夫婦の収入を合算することで、借入額を増やす方法があります。
夫婦2人の収入で借入を行う方法と、夫婦がそれぞれの名義で住宅ローンを組むペアローンがあります。特にペアローンを組む場合は、2つの住宅ローンを組むことから、各自が住宅ローン控除を利用できるメリットがあります。
一方、片方が返済を肩代わりすることで贈与税が発生する可能性や、どちらかの収入が低下するリスクなどがあります。また、離婚した場合にも返済は残るため、慎重に判断しましょう。
5000万の家を買える人の年収は年収倍率・返済負担率をもとに計算
5,000万円の家を買える人の年収は、最低限で625万円、適正な額は833万円〜1,000万円となります。
また、頭金を支払ったり、手取り年収の20%〜25%に返済額が収まるようにすると、安全な返済プランとなるでしょう。
なお、5,000万円の予算でマイホーム購入を検討している方は、Housii(ハウシー)がおすすめです。
Housii(ハウシー)では、入力した希望条件に合わせて、複数の不動産会社からの提案を受けることが可能です。未公開物件含む、数多くの物件の中から理想の住まいを探せるので、是非使ってみてはいかがでしょうか?