戸建てとマンションのどちらを購入するか迷っているときに一つの参考数値となるのが、それぞれの物件にかかる維持費でしょう。
戸建てとマンションでかかる費用が何となく異なることはわかっていても、生涯コストとしてどれだけ異なるかについて計算したことがないという人も少なくないと思います。
そこでこの記事では、戸建てかマンションかを決めるためにそれぞれにかかる維持費の生涯コスト、内訳を比較していきます。今後家を購入しようと考えている人はぜひ参考にしてみてください。
マンションか戸建てか迷っている方はまずはこちらの記事もご覧ください。
マンションと戸建ての特徴を比較!メリット・デメリットまで解説
戸建てよりもマンションの維持費が高い
まず最初に戸建てとマンションの30年間の維持費ではどちらが多いのかについて紹介していきます。
戸建て | マンション | |
---|---|---|
固定資産税・都市計画税 | 300万円 | 360万円 |
保険料 | 26万4000円 | 13万170円 |
修繕費用 | 300万円 | 847万8360円 |
駐車場代 | — | (360万円) |
合計費用 | 626万4000円 | 1220万8530円(1580万8530円) |
一年間あたりの費用 | 20万8800円 | 40万6951円(52万6951円) |
※管理費・修繕積立金は東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度) 」の数値を適用。また、マンションの駐車場代は月1万円として試算。
戸建てとマンションの維持費を比較した結果、戸建ての維持費は626万4000円、マンションの維持費は1220万8530円かかることがわかりました。物件によって費用は異なりますが、やはり毎月の管理費と修繕積立金を支払う必要があるマンションの方が年間約20万円ほど維持費が高いのです。
それぞれの維持費の特徴としては、戸建てが数年に一度の修繕のタイミングで一気に費用がかさむ一方で、マンションは毎月修繕費用や管理費を積み立てる必要があるためじわじわと費用がかさんでくることがわかります。また、マンションの場合は住民全員で修繕計画や費用を決定しますが、戸建ての場合は自分の家の判断次第で修繕のタイミングや内容を決めることができます。
したがって、ライフプランに合わせて修繕のタイミングや費用を変えることができる戸建ての方が費用面での融通は効くということが出来そうです。
戸建てとマンションに共通する維持費とは?
まずは、戸建てとマンションに共通する維持費について見ていきます。このランニングコストは、区域によってはかからない場合もありますが、基本的には必要となりますので確認しておきましょう。
それでは、一つずつ解説していきます。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日の時点で建物や土地など固定資産を所有している人が支払う税金です。毎年1回、もしくは4回に分けて支払います。
固定資産税の税額は「固定資産税評価額×1.4%」で算出することが可能です。固定資産税評価額とは、不動産鑑定士が三年に一度見直し、固定資産税を決めるために基準となる評価額のことです。
また、建物に関しては鉄筋コンクリートで造られたマンションの耐用年数が47年であることに対し、木造戸建ては耐用年数が22年となるので、マンションの方が固定資産税評価額が高くなる可能性があります。
戸建てとマンションの固定資産税について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
都市計画税
都市計画税は、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てることを目的にした税金です。固定資産税と同じく、毎年1回、もしくは4回に分けて支払います。こちらは、都市計画法による市街化区域内に所有する建物と土地が課税対象となります。
市街化区域とは都市計画法が指定する「都市計画区域」の1つです。すでに市街地である区域、または10年以内で優先的に市街化を計画している区域のことです。
都市計画税の税額は「固定資産税評価額×上限税率0.3%」で算出することが可能です。
しかし、前述で述べた市街化区域に建物と土地を所有している人が対象になりますので、該当しないエリアであれば都市計画税はかかりません。維持費検討の際には、希望のエリアが課税されるのか確認しておくと良いでしょう。確認方法は、自治体の窓口や不動産会社などに訊くのが良いです。
保険料
住宅購入とともに入る保険が自然災害や火災に備えて入ることが多い火災保険です。火災保険のほかにも、地震大国日本においては地震保険に入るという方も多く、不動産の維持費を考えるうえで忘れてはいけない費用です。
そして保険料に関しては戸建てとマンションの比較においては、戸建ての方が高くなりがちです。理由としては、上でも述べたようにマンションの方が法定耐用年数が高く、火災や自然災害による被害を受けにくいと判断されているため、火災・自然災害によるリスクが戸建てよりも低いからです。
仮に、東京都都内の築年数10年未満、専有面積100㎡のマンションに保険をかける場合、1年あたり3万5,000円~4万円程度が相場です。数年分を一気に納めると、割引が適用されるので、支払方法によっても保険料は変動します。対して同じ築年数、居住地域、専有面積の木造戸建てに保険をかけると、6万5,000円~7万5,000円の保険料がかかります。
戸建てだけにかかる維持費
戸建てにだけかかる維持費としては、外壁や屋根などの塗装・修繕費用やシロアリ対策も兼ねた床下修繕などが代表的な維持費として掛かります。
マンションの修繕は大規模修繕工事で一括で実施するため自分で施工業者を手配する必要がない代わりに、戸建ての場合はすべて自己責任で実施します。どんな建物でも経年劣化は必ず起こるので、これらの修繕費用は厳密には「修繕積立金」という形でマンションでもかかりますがタイミングや費用の内訳が異なることに注意しましょう。
それぞれの周期や値段は施工業者や地域によっても異なりますが、アットホームの「一戸建て修繕の実態」調査によると、35年間で修繕した箇所が最も多いのは1位の「外壁」で84.4%、2位は「給湯器」で83.2%(※)、3位は「トイレ・お風呂」で76.0%(※)となっています。また、それぞれの修繕箇所と一回目に修繕したときの平均の築年数、平均の費用は以下のようになります。
※「給湯器」「トイレ・お風呂」は専有部分となるため、マンションでも同様にかかる費用となります。
修繕箇所 | 一回目修繕時の築年数 | 費用平均 |
---|---|---|
外壁 | 20.1年 | 135万円 |
屋根 | 23.3年 | 137万円 |
シロアリ関連 | 18.3年 | 40万円 |
床下 | 23.8年 | 48万円 |
アットホーム株式会社実施「―新築一戸建て購入後 30 年以上住んでいる人に聞く「一戸建て修繕の実態」調査」
築年数にもよりますが上の調査によると、30年間で戸建てのみにかかる修繕費用は360万円となります。新築物件であれば、しばらくは修繕費用がかからないケースの方が高いですが、10年から15年後のためにも今から毎月、自分のペースで修繕費用を積み立てておきましょう。
マンションだけにかかる維持費
ここまで、戸建てとマンションに共通するランニングコストについてご説明しました。次に、前章でも少し触れたマンションの修繕費用の内容などを解説していきます。こちらは、毎月支払うマンションのみにかかるランニングコストなので、購入を検討する際には、判断材料の一つとして押さえておきましょう。
管理費
管理費とは、マンションの共用部分を毎日過ごす中で快適に維持していくための費用となります。管理費用に使われる内容は、主にごみ置き場や廊下などの清掃業務、自動ドアやエレベーターの電気代やメンテナンス、植物の手入れなどです。これらの設備の管理を管理会社が行うために管理費を毎月支払います。
東日本不動産流通機構によるとマンションの管理費の平均額は月12,480円となっています。また、豪華なマンションや充実した共有設備があればあるほど、管理費は高くなる傾向があります。
修繕積立金
修繕積立金とは、建物の老朽化を防ぎ、管理費と同様に快適に毎日過ごしていける環境を維持していくために大規模な修繕費として蓄えられる費用となります。修繕積立金に使われる内容は、主に外壁や屋上などの塗り替えや配管設備の管理、防災用設備の修繕などです。これらの修繕には、多額の費用がかかるため、管理組合に毎月支払い、積み立てていく必要があります。
東日本不動産流通機構によるとマンションの修繕積立金の平均額は月11,071円となっています。ここで注意しなければならないのは、修繕積立金は築年数とともに値上げされるケースがほとんどであるということです。
というのも、多くのマンションでは修繕費用の増加に備えて、修繕積立費用が数年ごとに増額する段階増額型という方式を取っています。考え方としては、「その時点での所有者が、大規模修繕費用を支払うべき」という考え方で、主に新築マンションの場合に初期費用を抑えたい販売会社が採用することが多い方式です。
また、それでも大規模修繕の際に管理組合に積み立ててきた修繕積立金が不足する場合には、一時金を負担しなければならないこともあります。したがって、将来的にマンションの修繕積立金は、ほとんどの場合で値上げとなるので、一時金の負担も含め、老後に支払うときに心配がある方は、事前に自分で積み立てておくことをおすすめします。
駐車場・駐輪場代
駐車場代は、マンションの駐車場を契約した場合にかかる費用となります。前述で解説した管理費、修繕積立金とは別にかかります。
平均相場としては、首都圏で毎月5,000~3万円程度と言われています。仮に30年間マンションに住むことを考えると、生涯コストは180万~1,080万円かかることとなります。相場が高い地域であれば、仮に老後に住宅ローンを払い終わったとしても管理費、修繕積立金に加えて駐車場費まで支払うこととなります。
また、自転車を所有している人は場合によっては駐輪場の使用量もかかる可能性があるため注意しましょう。
現在、車を所有している、もしくは将来的に車を購入しようと考えている人は、駐車場費も忘れずに維持費として考えておきましょう。
戸建てとマンションの維持費をシミュレーション
第5章では1章で紹介した試算に加えて、「将来の住み替えを予定している」という場合に合わせて20年間のシミュレーションを、そして「終の棲家として戸建てもしくはマンションに住もうと考えている」という場合に合わせて40年間のシミュレーションを実施しました。
20年間住む場合の維持費のシミュレーション
【設定条件-戸建ての場合】
- 毎年の固定資産税額:100,000円
- 10年間の火災保険費用:80,000円
- 屋根・外壁の修繕は実施せず15~20年後に売却する予定。他に修繕する予定はない。
【設定条件-マンションの場合】
- 毎月の管理費:12,480円※
- 毎月の修繕積立金:11,071円※
- 毎年の固定資産税額:120,000円
- 10年間の火災保険費用:40,000円
- 駐車場は契約しない
※管理費・修繕積立金は東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度) 」の数値を適用
今回はこちらの条件でシミュレーションを実施しました。それぞれ住み替えを前提としているので20年間住むという条件でシミュレーションした結果が以下の表です。
戸建て(20年分) | マンション(20年分) | |
---|---|---|
固定資産税 | 200万円 | 240万円 |
保険料 | 16万円 | 8万円 |
管理費 | — | 299万5200円 |
修繕費用(修繕積立金) | — | 265万7040円 |
合計費用 | 216万円 | 813万2240円 |
一年間当たりの費用 | 10万8000円 | 40万6612円 |
シミュレーションの結果、20年間住んだ場合は戸建ての維持費は216万円、マンションの維持費は813万円となりました。
やはり将来的に住み替えることを検討していて、修繕の予定がないという人は維持費の観点で言えば戸建ての方が圧倒的に得だということが出来そうです。
では、終の棲家とすることを考えている人はどちらが得と言えるでしょうか。
40年間住む場合の維持費のシミュレーション
【設定条件-戸建ての場合】
- 毎年の固定資産税額:100,000円
- 10年間の火災保険費用:80,000円
- 20年目に屋根・外壁の塗装に加えて、シロアリ対策から基本的な水回りのリフォームを600万円かけて実施した場合
【設定条件-マンションの場合】
- 毎月の管理費:12,480円※
- 毎月の修繕積立金:11,071円※
- 毎年の固定資産税額:120,000円
- 10年間の火災保険費用:40,000円
- 駐車場は契約しない
※管理費・修繕積立金は東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度) 」の数値を適用
今回はつの住処とすることを検討している場合のシミュレーションであるため、40年間住むことを前提に計算しました。
戸建て | マンション | |
---|---|---|
固定資産税 | 400万円 | 480万円 |
保険料 | 32万円 | 16万円 |
管理費 | — | 599万400円 |
修繕費用 | 600万円 | 531万4080円 |
合計費用 | 1032万円 | 1770万4480円 |
一年間当たりの費用 | 25万8000円 | 44万2612円 |
シミュレーションの結果、40年間の戸建ての維持費は1032万円、マンションの維持費は1770万4480円となりました。
マンションは管理費・修繕積立金が毎月かかり続けるため、月日が経つごとに戸建てとの差額が開いていくことがわかります。
したがって、維持費という観点では終の棲家とする場合は戸建てを選んだ方が無難と言えるでしょう。
維持費の安い戸建て・マンションを選ぶ5つのポイント
維持費を抑えたいと思った場合、マンションと戸建てそれぞれで方法が異なります。第6章では、購入後に維持費がかかりづらい戸建て・マンションの特徴について解説していきます。
維持費の安い戸建ての特徴
自由度の高い戸建ては、修繕費が個人の裁量で決められるので、維持費の削減方法も増えます。
戸建ての維持費を節約するポイントは以下の5つです。
- 耐久性のある新築を購入する
- 新築で固定資産税を削減
- 定期的な点検と修繕を行う
- アフターフォローのある業者を選ぶ
- 簡単な修繕は自分で行う
家は建ててから10〜15年ほどで、修繕が必要になります。重要度としては水回りや電気系統、梁や柱、外壁、屋根など建物の骨組み部分が最も高く、逆に室内の壁の剥がれや傷など、見た目に関するものは重要度が低めになってきます。
維持費を節約するには、重要な部分は数年単位でメンテナンスし、それ以外の部分の簡単な傷は、自分で補修するのがおすすめです。
また業者によっては無料で点検サービスを行なっているところもあります。日々どれだけ大切にしているかで、その後の修繕費も大きく異なるのです。
戸建ての維持費は、建物の新しさ、耐久性によって異なります。最近では中古住宅のリノベーションが流行っていますが、最初は安く済んでも、後々にかかる修繕費が新築費用を上回るかもしれません。
固定資産税が軽減されるのも新築のみで、保険料も新築の方が安くなります。これから住宅の購入を考えている方は、長い目で維持費と一緒に費用を考えてみてください。
維持費の安いマンションの特徴
マンションの維持費削減は購入前に見極めるのがポイントです。戸数や設備、管理の方法か維持費を抑える要です。
マンション購入前に確認したい維持費のポイントは以下の5つです。
- 戸数が多いか
- 過剰な設備や装飾がないか
- 駐車場は必要最低限の設備に留められているか
- 管理にかかわる業者が働きすぎていないか
- 築年数が経っていないか
マンションの維持費は管理組合に裁量があるため、個人ではなかなか節約できません。そこで契約前に必要最低限な管理費、修繕費になっているかを検討する必要があります。
管理費は主にエントランスやエントランス外の敷地内、エレベーターの保持に使用されます。過剰な装飾や、明るすぎるエントランスは管理費がかさみます。
また庭木の維持にも管理費が使われるので、豪華すぎる庭木のあるマンションは避けるのが無難です。
さらに戸数や築年数も維持費に影響します。戸数は多いほど維持費が安くなり、築年数は浅いほうが修繕費、管理費共に削減できるでしょう。
戸建ての方が維持費は安く、メンテナンスも工夫次第で節約可能
戸建てのほうが、マンションに比べて400万円以上もランニングコストを抑えられるのがわかりました。
戸建ての管理は自己責任なので、修繕費がかさみそうですが、マンションはエレベーターや階段、駐車場など、一軒家にはない箇所のメンテナンスが必要な分、修繕積立金も高くなります。
しかしマンションは管理費があるため、放置したままでも綺麗で安全な状態を保てるメリットがあります。
人それぞれ感じるメリット・デメリットは異なると思うので、ぜひ自分のライフスタイルに合った方を選んでみてください。
また、住宅購入の際に考えるべき費用はランニングコストだけではありません。住宅購入のためには登記費用や司法書士費用、また手付金などの購入にかかる諸費用が別途現金でかかってくるほか、住宅ローン控除などの専門的な知識をベースに資金計画を立てないと損をする可能性があります。
そのため、住宅ローンを組む際は住宅購入のプロに相談しながら資金計画を立てることが必要不可欠です。
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