マンションを選ぶときはさまざまなポイントをチェックして購入の判断をしますが、その指標のひとつとして「資産価値の高さ」を重視する人は少なくありません。物件の資産価値の高さを数値で表したものを「リセールバリュー」といい、その数値はさまざまな要素によって決定されます。
この記事では、マンションを選ぶときに知っておきたいリセールバリューについて解説します。将来マンションの売却を視野に入れている場合は、リセールバリューを決定する要素や確かめ方、人気のエリアを押さえて物件選びをしていきましょう。
不動産・マンションのリセールバリューとは?
不動産に詳しい人でないと、リセールバリューという単語を聞くことはなかなかないかもしれません。リセールバリューは、不動産情報サービスを提供する株式会社東京カンテイが独自に定めた指標で、マンションの資産価値を表す数値です。まずは、マンションを購入するなら押さえておきたいリセールバリューについて詳しく解説します。
リセールバリューは物件を売却するときの価値
リセールバリューとは、築10年前後のマンションの中古流通価格を新築分譲時の価格で割った数値です。購入額を基準の100として、パーセンテージで表します。数値が大きいほど中古流通価格が高いことになるので、新築時の価格を維持し続けられているということになります。マンションは不動産であるため、価値がゼロになることは考えにくいです。しかし、築年数が長くなってニーズが低下してしまうと、リセールバリューが下がってしまうため注意が必要です。リセールバリューが低い物件は売却するときに価格がつかないうえに、流通性も悪いとされています。
反対に、リセールバリューが高い物件は売却時に買い主が早く見つかり、購入時よりも高い価格か同等の価格で売却できるというメリットがあります。
ご自身の住居用に購入するマンションであれば、正直そこまで気にする必要はありません。しかし、将来売却を検討しているマンションの場合は、リセールバリューが高い物件を選ぶことが肝心です。
値段が高くてもリセールバリューが高い物件を選ぶべき?
マンションの購入時はリセールバリューの高さがひとつの判断基準になりますが、リセールバリューが高い物件は価格も高い傾向にあるため注意が必要です。リセールバリューが高いマンションの条件は後述しますが、アクセスや周辺環境がいい物件が多いです。そのため、ご自身が購入するときの価格も水準より高く設定されていて購入を迷ってしまうこともあるでしょう。
それでは、値段が高くてもリセールバリューが高い物件を購入すべきなのでしょうか。
大前提として、マンションは無理のない金額の物件選びと住心地が最優先です。リセールバリューの高さを優先してしまい、「ローンの支払いが高すぎて生活が苦しい」「自然が多くてのんびり子育てできる街を希望していたのに、駅前の繁華街に住宅を買ってしまった」ということになってしまえば、思い描いている暮らしは実現できないでしょう。
将来の売却を見据えてマンションを購入することは重要ですが、何よりも優先すべきなのは「家族と快適に暮らすこと」です。リセールバリューが高い物件であっても、価格が高くて購入が厳しい場合や希望の条件に合わない場合は、ほかの選択をすることもひとつの手です。
リセールバリューを最重要視するのではなく、「同じような条件の物件があるときはリセールバリューの高さを判断材料のひとつにする」程度の認識で構いません。まずは、家族の希望や暮らしやすさを第一にマンションを選んでいきましょう。
リセールバリューの高い不動産・マンションを確かめる方法
購入を希望するマンションに資産価値があるかどうかについては、誰もが気になることでしょう。マンションのリセールバリューは、3つの方法で確かめることが可能です。ここからは、リセールバリューの確かめ方を紹介します。
近い条件の物件の過去取引額と比較する
まずは検討している物件と同じエリアで似た条件の物件を探し、過去の取引額を調べてみましょう。同じような物件の価格推移と比較することで、検討中の物件のおおよその取引額を予測できます。
同じ不動産会社のリセールバリューを調べる
同じ不動産会社の物件のリセール価格を調べることでもおおよその取引額を割り出せます。また、ネット上に出ていない情報を知りたい場合は、不動産会社に直接問い合わせてみるのも一つです。リセールバリューを計算する
リセールバリューは計算式で算出することも可能です。リセールバリュー(%)=中古販売時の価格÷新築販売時の価格✕100
つまり中古販売時の価格が3,000万円、新築分譲時の価格が4,000万円の場合、「3,000万円÷4,000万円✕100=75%」だということになるのです。
現在購入を検討している物件が中古マンションであった場合、購入時点の販売価格と新築分譲時の価格を比較することでリセールバリューを確認できます。新築分譲時の価格は、不動産会社に相談すれば調べてくれるでしょう。
新築物件を購入するときは、物件周辺にある似たタイプのマンションのリセールバリューを算出してみると、購入希望物件の今後の資産価値がある程度予測できます。
【首都圏】リセールバリューが高い人気の駅・エリア20選
最後に、リセールバリューが高い人気のエリアについて地域別にランキング形式で掲載します。物件を選ぶときは、ぜひ参考にしてみてください。紹介するランキングは2021年5月に株式会社東京カンテイがリリースした「中古マンションのリセールバリュー 2020」を参考にしています。[注2]
◎首都圏リセールバリューランキング
順位 | 駅名 | リセールバリュー |
---|---|---|
1位 | 代官山 | 134.3% |
2位 | 溜池山王 | 145.8% |
3位 | 桜木町 | 141.2% |
4位 | 高輪台 | 140.8% |
5位 | 水道橋 | 140.7% |
◎近畿圏リセールバリューランキング
順位 | 駅名 | リセールバリュー |
---|---|---|
1位 | 烏丸 | 184.1% |
2位 | 天王寺 | 160.9% |
3位 | 京都河原町 | 145.2% |
4位 | 梅田 | 144.8% |
5位 | 烏丸御池 | 142.1% |
◎中部圏リセールバリューランキング
順位 | 駅名 | リセールバリュー |
---|---|---|
1位 | 名古屋 | 123.0% |
2位 | 太田川 | 114.6% |
3位 | 八田 | 112.4% |
4位 | 丸の内 | 111.9% |
5位 | 東山公園 | 110.1% |
◎福岡県リセールバリューランキング
順位 | 駅名 | リセールバリュー |
---|---|---|
1位 | 九大学研都市 | 153.6% |
2位 | 唐人町 | 131.6% |
3位 | 桜坂 | 118.0% |
4位 | 六本松 | 117.7% |
5位 | 千早 | 113.9% |
なお、上記のリセールバリューは過去の実績をもとに算出された数値なので、今後ほかの地域が伸びる可能性もあります。これまでは割安だった地域でも利便性が再評価されてリセールバリューが高まる可能性は非常に高いため、ランキング外の地域だからといって資産価値が低いというわけではありません。
思わぬエリアが伸びる可能性も大いにあり得るので、将来性も含めて検討していくことをおすすめします。
リセールバリューが高くなる条件
ここからは、リセールバリューを決定する要素について見ていきます。リセールバリューが高い物件の特徴を掴み、マンション選びの参考にしてみてください。最寄り駅からの距離
リセールバリューを大きく左右すると言われているのが、駅からの距離です。駅から徒歩10分以内のマンションはリセールバリューが高いと言われており、中古市場の価格も高めです。つまり、駅から近くて便利なマンションは、年数が経っても価格が下がりにくいのです。駅から近ければ近いほど購入希望者は多くなるため、リセールバリューが高くなりやすい傾向にあります。
交通の便
交通の便も、リセールバリューを考えるうえでは外せない要素です。駅までのアクセスがいいだけではなく、最寄り駅に乗り入れる電車の本数やバス停の有無などがリセールバリューに影響を与えます。ターミナル駅の近くや乗り換えなしで都心部に出られる立地のマンションは、利便性が高いためリセールバリューも高くなります。
生活環境
リセールバリューが高いと言われている地域でも、マンション周辺の生活環境によって数値は若干異なります。2015年に長谷工アーベストが行なった「マンション購入時に重視するポイント」では、どの年代も46~58%の人が周辺環境を重視すると回答していました。[注1]このように、生活環境が整っていると中古マンションであっても需要が高くなるため、リセールバリューが上がるのです。
人気のエリアでも、周辺にスーパーやコンビニなどがなければリセールバリューは下がりますし、学校や幼稚園がないエリアは購入希望者が限られてしまいます。反対に郵便局や病院、大きな公園や金融機関など、生活をするうえで欠かせない施設がある場合は、便利なぶんリセールバリューが上がるでしょう。
戸数規模
戸数規模も、実はリセールバリューに影響を与えています。近年は規模が大きい物件の人気が高く、とくに200戸以上のマンションは分譲時よりも高い価格で売れるケースが多い傾向にあります。これは、大規模マンションの敷地内にはコンビニやスーパー、医療機関や託児所などが併設されていることが多いためです。さらに近年のマンションは地震などの災害対策も進んでおり、タワーマンションの上階層であっても、安全に避難できるように整備されてきました。利便性だけではなく安全性が高い大規模マンションは、今後も高いリセールバリューが維持されることが予想されます。
専有面積
専有面積もリセールバリューに影響するため、必ずチェックしておきましょう。面積は単に広さがあれば良いというわけではなく、ニーズのある面積となっているかどうかが重要です。
たとえば専有面積が70m² 程度の物件は国内に数が多いため、売却時の競争率が高く資産価値が低くなりやすいなど、需要と供給のバランスによっても左右されます。逆に100m² 以上の物件になると、数も少なく一定数の需要が見込まれるため、リセールバリューは高くなりやすい傾向にあります。
安全性
マンションが建っている地域や建物の安全性も、リセールバリューに大きな影響を与えます。前項で少し触れた建物の耐震性や浸水リスクなどの自然災害に関する安全性はもちろんのこと、犯罪発生率などの防犯性の高さも非常に重要なポイントになります。浸水リスクがあったり治安が悪かったりする場合は、どれほど駅からのアクセスが良くてもリセールバリューが低下してしまうため注意しましょう。資産価値が下がらない物件をお探しなのであれば、「安心して暮らせるのか」についてもしっかりと確認しておくことが重要です。
付加価値
付加価値とは、上記で紹介した以外にアピールできるその物件ならではのセールスポイントを指します。「スカイツリーが見える」「シアタールームがついている」など、物件によって持っている付加価値のことです。もちろん、単にスカイツリーが見えるだけではリセールバリューが高いとは言えません。リセールバリューを重視するのであれば、ここまで紹介した要素がバランスよくそろっている物件を選ぶことが非常に大切です。
リセールバリューの高い不動産購入のポイント
続いて、リセールバリューの高い不動産購入のポイントについて解説します。
- 収益力が高い駅の物件を購入する
- 駅徒歩3分以内の物件を購入する
- 売却タイミングを考えて物件購入する
それぞれについて、見ていきましょう。
収益力が高い駅の物件を購入する
1つ目のポイントは、収益力が高い駅の物件を購入することです。先に述べた通り、リセールバリューは複数の要因が絡み合って決定されますが、その中でも特に立地条件の影響が大きくなっています。
居住希望者が多く募りやすい、収益力が高い駅の物件を購入することで、リセールバリューが大きく下がるリスクを抑えられます。
駅徒歩3分以内の物件を購入する
2つ目のポイントは、駅徒歩3分以内の物件を購入することです。エリアを選ぶだけでなく、駅から物件までの距離も非常に重要です。
多少価格が高くても、アクセスの便が良ければ一定数の居住希望者が着くので、駅徒歩3分以内の駅チカ物件であれば、リセール時も困ることなく売却できるでしょう。
売却タイミングを考えて物件購入する
物件を購入する際は、リセールのタイミングも考えて購入することをおすすめします。例えば大規模マンションなら10年単位で大規模修繕が行われるので、その直後の状態が良いタイミングで売却すれば、購入希望者が集まりやすいといった特徴があります。
何年後に売却するかも含めて、購入時におおよその売却タイミングも予定を立てておきましょう。
インターネットや不動産会社で調べる
リセールバリューは自分で計算して算出することもできますが、インターネットや不動産会社で調べることも可能です。たとえば、以下のような方法でリセールバリューを調べられます。不動産会社に聞いてみる
「地域名+リセールバリュー」で検索する
リセールバリューが高い街を参考にする
SNSでリセールバリューについて調べる
大手不動産ポータルサイトでは「資産価値が下がらない街」としてリセールバリューが高い地域が紹介されているので、それを参考してもいいでしょう。不動産会社に聞けば、該当地域内の新築物件と中古物件の相場を教えてもらうことができるので、相談してみてもいいでしょう。
リセールバリューが高い物件の条件にあてはめて考える
参考になる情報の収集が困難な場合は、リセールバリューを決定する要素の見出しで紹介した項目に当てはめて物件の価値を確かめることをおすすめします。正確な数値として把握することはできませんが、「資産価値が高いか・低いか」についておおよそ推測することが可能です。たとえば、以下のような街はリセールバリューが高い傾向にあります。
教育施設が多い文教エリア
開発余地が少ない希少性の高いエリア
大型商業施設などランドマーク的なスポットがあるエリア
再開発で整備された利便性が高いエリア
名前がよく知られているブランドエリア
同じエリアでも、「より駅に近い」「より利便性が高い」というマンションのほうが資産価値は高いです。快適かどうかは人によって判断が異なるものですが、「一般的に見て快適な暮らしができる物件」であればリセールバリューが高いと推測されます。
マンションの購入時はリセールバリューをチェックしましょう
リセールバリューとは、築10年前後のマンションの資産価値を示すひとつの指標です。アクセスのよさや利便性の高さ、周辺環境など多くの要素が中古物件の需要に影響を与えており、リセールバリューを決定しています。もしも、将来住み替えやライフステージの変化に合わせてマンションの売却を予定している場合は、リセールバリューを意識した物件選びがおすすめです。ただし、何よりも大切なのは「家族の暮らしやすさ」です。リセールバリューについても考慮しつつ、長く快適に暮らしていけるマンション購入を心がけましょう。
[注1]長谷工の住まい|マンション購入時に何が気になる?みんなのマンションアンケート結果でご紹介!
https://www.haseko-sumai.com/kurashi/archive/detail_140.html
[注2]東京カンテイプレスリリース|中古マンションのリセールバリュー 2020
首都圏:https://www.kantei.ne.jp/report/107RV_shuto.pdf
近畿圏:https://www.kantei.ne.jp/report/107RV_kinki.pdf
中部圏:https://www.kantei.ne.jp/report/107RV_chubu.pdf
福岡県:https://www.kantei.ne.jp/report/107RV_fukuoka.pdf
リセールバリューに関するよくある質問
最後に、リセールバリューに関するよくある質問とその回答を紹介します。
- リセールとは?
- リセールバリューを高める方法はある?
- リセールバリューを確かめる方法はある?
それぞれについて、見ていきましょう。
リセールとは?
マンションのリセール(Resale)とは、一度購入した物件を中古物件として再販売することを指します。そして、該当物件の資産価値の高さのことをリセールバリューといいます。リセールバリューが高い物件を購入するほど、リセール時に収益が出る可能性が高まります。
リセールバリューを高める方法はある?
購入した物件をリセールバリューを高めたいとお考えの方もいるかもしれません。しかし、一般的には後からリセールバリューを変えることは困難です。
強いていえば、物件を綺麗な状態に保ち、需要の高いタイミングで売却することで収益を高められる可能性はあります。
リセールバリューを確かめる方法はある?
購入を検討している物件や、手持ちの物件の正確なリセールバリューを知りたい方は多いかもしれませんが、実際の取引額は売り出しを行うまではわかりません。
ただし、先述の通り、過去の取引の価格推移や類似物件と照らし合わせることである程度の予測を立てることは可能です。