40代になって金銭面や仕事面で余裕が出てくることをきっかけに、老後の生活のために住まいやお金について見直す人は多いものです。その際に選択肢として挙がってくるのが、「賃貸に住み続けるのか」「住宅を購入したほうがいいのか」という問題なのではないでしょうか。賃貸と購入にはそれぞれメリットとデメリットがあり、居住費も異なります。
この記事では、40代には物件の賃貸と購入のどちらが向いているのかについて解説します。定年や老後に備えられる選択をして、住まいに関する不安を解消しましょう。
40代で賃貸か購入か決めるときのポイント
40代が賃貸か購入かを決めるときは、4つのポイントを踏まえて考えることが大切です。- 住宅ローン
- 老後の暮らし
- 定年後の支払い計画
- 資産性の高さ
まずは、賃貸と購入のどちらが向いているのかを判断するために押さえておきたいポイントについて、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
40代は長期の住宅ローンを組める最後のチャンス
40代で住宅購入を検討するときに問題となるのが、住宅ローンを組めるかどうかという問題です。一般的に住宅ローンは、75~80歳までに完済することが融資実行の条件として定められています。この年齢から逆算すると、35年ローンを組むときは遅くとも45歳までに契約を済ませておかなければいけません。つまり、40代は長期ローンを組む最後のチャンスというわけなのです。
なお、住宅ローンの借り入れ上限年齢は65~70歳までであるため、50代や60代に入ってから住宅ローンを組むことも可能です。しかし、借り入れ期間が短くなって融資額が減ってしまいますし、審査も厳しくなってしまいます。そのため、少しでも購入を検討しているのであれば、40代がラストチャンスだと考えて後悔のない選択をすることが大切です。
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老後の暮らし
賃貸か購入かを判断するときは、老後の暮らしを踏まえて選択することも大切です。賃貸物件は、子供の独立などにともなってコンパクトな住居に住み替えができるというメリットがありますが、その反面、年齢を重ねるごとに物件を借りにくくなるというデメリットもあります。高齢者は賃貸入居の審査に通りくくなりやすいですし、孤独死などのリスクを嫌って高齢者への貸し出しを行わない家主もいるためです。
一方、購入の場合は住宅ローンさえ返済し続けていれば老後も安心して暮らせます。団体信用生命保険(団信)に加入していれば、万が一大きな病気や怪我をした場合に残債の支払いが免除されるため、住居に困ることはありません。老後の安心感を求めるのであれば、購入の方が向いていると言えるでしょう。
定年後の支払い計画
定年後の支払い計画も、賃貸か購入かを検討するときに重要視したいポイントです。総務省統計局によれば、高齢者の勤労者世帯の可処分所得は35万6,805円で、無職世帯が17万5,509円だということがわかっています。[注1]それに対して1か月あたりの平均支出は勤労者世帯が30万7,487万円で、無職世帯が25万7,230円だということが判明しました。
勤労者世帯は4万9,318円の黒字であるのに対し、無職者世帯は8万1,721円も赤字になっていることがわかり、足りないぶんの支出は貯蓄などで賄っていることが予想されています。
なお、この支出には約1万9,000円の住居費が含まれています。しかし、ここには住宅ローンの返済が終わった人も含まれているため、賃貸物件に住み続けている人はさらに多くの住居費を支払っているでしょう。定年退職後の無職世帯はただでさえ赤字であるため、毎月数万円の家賃を支払いつづける負担は大きいものです。
他方で住宅を購入した場合は、住宅ローンの返済が終わってしまえば毎月固定で支払う住居費はなくなります。トータルの居住費については後述しますが、毎月の支払い計画は購入のほうが抑えられるケースが多い傾向にあるのです。
ただし、マンションの場合は管理費や修繕積立金、戸建ての場合は10~20年ごとのメンテナンス費がかかる点に注意が必要です。毎月数万円の家賃を支払うよりは出費を抑えられますが、支払いがゼロになるわけではない点に注意しましょう。
資産性の高さ
賃貸と購入の最大の違いは、資産性があるかどうかというポイントでしょう。よく言われる言葉ですが、賃貸物件はいくら賃料を払っても自分の資産にはなりません。一方で購入の場合は、家賃のように毎月住宅ローンを返済し続ければ、土地や建物を自分の資産にすることができます。
不動産を保有していれば、将来自宅を担保にして生活資金を借り入れる「リバースモーゲージ」を利用することが可能です。さらに、物件売却や賃貸による資金調達ができますすし、子供に資産を残すこともできます。
ただし、すべての物件が資産価値の高い物件であるとは限らないため注意しましょう。地方の物件や老朽化が進んだ物件などは、売却したくてもできない恐れがあります。資産性を重視するのであれば、将来性のあるエリアや利便性の高いアクセスに立地する物件など、資産価値が低下しにくい物件を選ぶことが大切です。
マンションと戸建てそれぞれの資産価値についてはこちらの記事もご覧ください。
マンションか戸建てかどっちか決められない!悩んだ時のポイントを解説
40代での賃貸と購入の住居費をシミュレーション
40代で賃貸と購入について検討するときは、トータルで見てどちらがお得になるかという点が気になる人は多いでしょう。人生100年時代とも言われる現代において、賃貸と購入ではどれほど居住費が違ってくるのでしょうか。この章では、実際に40代から90代まで50年間住むことを想定して居住費をシミュレーションしてみました。賃貸か購入かを検討する際は、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸物件に50年住む場合の居住費
まずは、賃貸マンションに50年間住む場合の居住費を見てみましょう。40代というと子育て世代が多いので、今回は両親2人と10歳の子供1人が暮らすことを想定します。50年間同じ物件に住むことはほとんどないため、子どもが独立する10年目のタイミングと、25年目のタイミングで高齢者相談可のコンパクトな物件に住み替えることを想定します。
【条件】
- 1~10年目:3LDK、家賃10万円
- 11~25年目:2LDK、家賃8万円
- 26~50年目:1LDK、家賃6万円
【初期費用】
1~10年目 | 11~25年目 | 26~50年目 | |
---|---|---|---|
敷金 (1か月分) | 10万円 | 8万円 | 6万円 |
礼金 (1か月分) | 10万円 | 8万円 | 6万円 |
仲介手数料 (1か月分 | 10万円 | 8万円 | 6万円 |
引っ越し代 | 20万円 | ||
合計 | 50万円 | 44万円 | 38万円 |
→合計:132万円
【維持費】
1~10年目 | 11~25年目 | 26~50年目 | |
---|---|---|---|
家賃 | 10万円×12か月×10年 =1,200万円 | 8万円×12か月×15年 =1,440万円 | 6万円×12か月×25年 =1,800万円 |
2年ごとの更新料 (1か月) | 10万円×5回 =50万円 | 8万円×7回 =56万円 | 6万円×12回 =72万円 |
管理・共益費 (10%) | 1万円×12か月×10年 =120万円 | 8,000円×12か月×15年 =144万円 | 6,000円×12か月×25年 =180万円 |
修繕積立金 | 1万2,268円×12か月×10年 =147万2,160円 | 1万2,268円×12か月×15年 =220万8,240円 | 1万2,268円×12か月×25年 =368万400円 |
合計 | 1,517万2,160円 | 1,820万8,240円 | 2,420万400円 |
→合計:5,758万800円
もちろん、居住する物件や引っ越しの回数、家族構成や収入によって金額は増減するため、あくまで目安となります。40代から50年間賃貸に住む場合は、6,000万円弱程度の居住費がかかることを想定しておきましょう。
物件を購入して50年住む場合の居住費
次に、物件を購入して50年住む場合の居住費を見てみましょう。住宅金融支援機構の「2020年度フラット35利用者調査」では、2019年における建売住宅の価格は3,494万円が平均であったことがわかりました。そのため、今回はこの価格をもとにシミュレーションしていきます。
【初期費用】
- 諸費用(物件価格の5%):175万円
- 頭金(物件価格の10%):349万円
→合計:524万円
【維持費】
- 住宅ローンの借入額:3,494万円-349万円=3,145万円
- 利息(固定金利1%の場合):584万円
- 10年ごとの外壁や屋根のメンテナンス費:80万円×5回=400万円
- 設備交換とリフォーム:100万円×3回=300万円
- 固定資産税と都市計画税:12万円×50年=600万円
→合計:5,029万円
総額:5,204万円今回のシミュレーションでは、購入のほうが554万円ほど居住費は安くなりました。ただし、選ぶ物件や年利、メンテナンスが必要になる頻度などによってトータルコストは変わってきます。そのため、すべてのケースで購入のほうがお得とは言い切れない点に注意しましょう。
ただし、購入の場合は住宅ローンの完済後に自己資産として建物や土地が残るため、そこは大きなメリットです。
住宅ローンや頭金について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
マンション購入時に頭金が必要な理由とは?頭金の目安についても解説
40代で賃貸を選ぶメリット・デメリットは?
40代で賃貸を選ぶメリットとデメリットは、以下のとおりです。賃貸のメリット | 賃貸のデメリット |
---|---|
・家族構成や収入に応じて住み替えられる ・修繕や改修の費用を負担しなくていい ・固定資産税などの維持費が不要 | ・老後は引っ越しにくくなる ・生涯家賃の支払いが続く ・リフォームや間取り変更ができない |
賃貸のメリットは、家族構成や収入の変化に合わせて住み替えが可能な点です。40代というとこれから結婚する人もいますし、子供の独立を控えている人もいるでしょう。なかには親の介護をするために実家に戻ることもあるかもしれません。賃貸であれば、こういった場合にすぐ住宅を手放して引っ越すことが可能です。
また、固定資産税などの維持費が一切不要なので、定年後収入が減ったときは家賃が安い物件に引っ越すことで大幅に出費を抑えられます。住宅設備が故障したときに大家負担で修繕や改修ができる点も、うれしいポイントです。
ただし、高齢者が引っ越すときは審査に通りにくくなる点に注意が必要です。生涯家賃の支払いが続いても自己資産が手に入らない点、内装を自由に変更できない点もデメリットとして挙げられます。
40代で購入を選ぶメリット・デメリットは?
40代で物件の購入を選ぶメリットとデメリットは、以下の通りです。購入のメリット | 購入のデメリット |
---|---|
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購入のメリットは、自己資産が持ててローンの返済後の経済的負担が軽減できる点です。完済後は賃貸に出したり売却したりして現金化することも可能であるため、子どもに相続する資産としてもおすすめです。
また、賃貸と比べて住宅や設備の品質が高くて選択肢も広いため、住みやすさも物件購入のほうが優れています。より住みやすくするためにリフォームや建て替えが可能な点も、購入のメリットでしょう。
ただし、物件を購入するときはまとまった初期費用がかかりますし、購入後はメンテナンス費や固定資産税などの維持費がかかるというデメリットもあります。簡単に住み替えもできないため、身軽さを求めるのであれば賃貸が向いているでしょう。
はじめてのマンション購入をを考えの方はまずはこちらの記事をご覧ください!
マンション購入の注意点を解説!物件選びから内覧・契約時に注意するべきことは?
40代で購入するならどんな家を選べばいい?
最後に、40代で物件を購入するときに押さえておきたい物件選びのポイントを紹介します。一生に一度のマイホーム選びを成功させるためにも、しっかりとチェックしておきましょう。老後も住みやすい物件を選ぶ
40代で購入する物件は、多くの場合で「終の棲家」になることでしょう。そのため、老後も住みやすい物件を選ぶことが大切です。老後の住みやすさは、以下の3つのポイントに大きく左右されます。
- バリアフリー性
- 駅へのアクセスや周辺環境の利便性
- 通院のしやすさ
段差や滑りやすい床材などは、高齢者にとって非常に危険です。永く快適に住む物件を得選ぶためにも、まずはバリアフリーに対応しているかどうかを確認しましょう。また、断熱性や気密性もバリアフリーに含まれるので、物件を選ぶときは重要視してみてください。老後も安心して過ごしたいのであれば、階段のない平屋や断熱性の高いマンションを選ぶことをおすすめします。
足腰が弱くなったときのために、駅へのアクセスや周辺環境の利便性が高い物件を選ぶことも大切です。加えて病院に通院しやすい立地であれば、病気で体力が落ちたときも安心でしょう。
余裕もった返済計画が叶う物件を選ぶ
40代で住宅を購入する場合は、余裕をもった返済計画が叶う物件を選ぶことも重要です。住宅ローンの返済中に定年を迎えるケースがほとんどであるため、収入が減っても返済を続けられる価格帯の物件に絞って検討することを意識してください。借入額を減らして月々の負担を減らすほか、借り入れ年数を短くして定年前に返済を終わらせることもおすすめです。自己資金を増やせば借入額を減らせますが、老後の生活資金がなくならないよう、計画的に金額を決めることが肝心です。
バリアフリー住宅について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
バリアフリー住宅とは?高齢者も安心して暮らせる家をつくろう!
賃貸か購入か迷って決められないときは?
本記事では賃貸と購入のどちらを選ぶべきか解説してきました。賃貸も購入それぞれメリットやデメリットがあり、自分がどこの優先順位を置くかによって住宅の選び方は変わってきます。
したがって、賃貸か購入かを考える時に最も意識しておきたいポイントとして、自分の年齢や年収、世帯人数や希望条件とマッチしている物件はどれかという視点を持つことです。
しかし、自分の目だけで自分にピッタリの物件を選ぶのはなかなか簡単ではありません。したがって、今後物件探しをするなら、自分の感覚で物件ポータルサイトを見るのではなく、プロからの提案をもらうことが重要です。
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