中古住宅の取引では、売買契約の際に値引き交渉が入るのが通例です。
しかし、「どんな物件が値引きしやすい(しにくい)のか」「値引きを成功させるためのポイントやノウハウはあるのか?」、そこまでは知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、住宅購入時に値引き交渉が成功しやすい物件の特徴や、値引き交渉を成功させるためのポイントを解説していきます。
中古住宅は値引きできる?
中古住宅の値引きは一般的
冒頭でも触れたように、物件の売主と買主の間では「価格交渉」が行われるのが一般的。
不動産取引の場では、扱う品物が「高価かつ規模の大きいもの」である以上、数パーセントでも値引きすることができれば、買主側は数百万円単位のコスト削減が可能です。
売主側としても、値引き交渉に応じた場合値引き分(数百万円)の利益損失は発生するものの、売りたい物件がいつまでも売れない可能性を考えると、今ここで売ってしまったほうが良いのでは……という考えで値引きに至るのでしょう。
中古住宅の値引き相場は約10%
公益財団法人東日本不動産流通機構が2020年2月に発表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」によると、中古戸建て住宅の場合、築20年までの住宅であれば売出価格から15%ほど値引きされ、成約に至ることが多いようです。
参考:売出価格と成約価格の違い
価格種類 | 解説 |
売出価格 | 売主が買主に提示する「物件の希望販売価格」のこと。 |
成約価格 | 売主と買主の交渉により決定される「取引成立価格」のこと。 |
また、買主が値引き交渉をしてくることを見越して、高めの売出価格を設定している売主も多く存在しますが、全ての売主が値引きに応じてくれるわけではありません。
中古の家なんだから値引きは当然だよね、といった態度にならないように注意しましょう。
値引き交渉に適したタイミングは?
値引き交渉のタイミングは、住宅ローンの仮審査に通った後がおすすめです。
というのも、売主が値引きをするのは「今値引きに応じれば、この人は確実に物件を購入してくれる」と確信したタイミングのみ。
住宅ローンの審査中など「買主が物件購入をできるだけの資金を持っていないとき」には、いくら値引き交渉をしても、その本気度合いが売主に伝わることはありません。
値引きを希望する際には、住宅ローンの審査に通り十分な資金を用意できる見込みが立ってから交渉を始めるようにしましょう。
次章以降では「値引き交渉が成功しやすい中古住宅の特徴」や「値引き交渉に適したタイミング」「値引き交渉を成功させるためのポイント」について、解説していきます。
値引き交渉に成功しやすい中古住宅の特徴は?
築年数が古い
戸建てやマンションといった物件の種類にかかわらず、住宅の価値は築年数の経過に比例して減少していきます。
例:新築戸建て住宅(5,000万円)を購入した場合の売却価格の推移
築年数 | 売却価格 | 購入価格との比較 |
築5年経過時 | 3,889万円 | 77.78% |
築10年経過時 | 3,833万円 | 76.66% |
築15年経過時 | 3,638万円 | 72.76% |
築20年経過時 | 3,400万円 | 68.00% |
築25年経過時 | 2,789万円 | 55.78% |
築30年経過時 | 2,634万円 | 52.68% |
(参考: REINS TOPIC|東日本不動産流通機構)
そのため、情報収集の際には、築年数に対しその価格が妥当かどうかを確認しましょう。
築年数の長い物件に相場以上の価格が設定されている場合には、その点を値引き交渉のきっかけにすることが可能です。
長期間買主が見つかっていない
売り出しの際に強気な価格を設定する売主も、住宅が長期間売れ残れば、不動産会社から値引きでの再販を提案されます。
売り出しから長い期間が経過してなお売れていない物件に関しては、その点を値引き交渉のきっかけにしてみるのがおすすめです。
周辺相場から見て値段が高すぎる
エリアの住宅相場を確認した際に、相場とかけ離れた価格で住宅が売りに出ている場合には、類似した物件の相場を根拠にした交渉が有効です。
また、既に購入を検討している物件があり、その物件があるエリアの相場が知りたい場合には、国土交通省提供の「不動産取引価格情報検索」を通じて調査を進めることが可能です。
(引用: 不動産取引価格情報検索|国土交通省)
物件の引き渡し日がかなり先になってしまう
物件を購入してから実際に住居を買主に引き渡せる日までの期間がかなり長い(3ヵ月以上など)場合には、それを理由に値引き交渉を行うことが可能です。
というのも、買主側からすれば「購入後すぐに入居できる」ことが中古住宅購入のメリットなので、購入したのにすぐに住むことができないという状況は十分な交渉材料になります。
この場合には、売主があらかじめ引き渡し日を考慮した売出価格を設定していることも想定されるため、値引き交渉の際には価格設定の根拠を質問してみましょう。
売主自身が「早く売りたい」と考えている
売主自身が「値引きをしてでもこの物件を早く売りたい」と考えているのであれば、値引き交渉も受け入れてもらえる可能性が高いです。
交渉時にはいきなり値引き交渉をするのではなく、売主がなぜその物件を売却するに至ったのかを聞いてみるのがよいでしょう。
- 新居を購入したため、二重ローンになるのを避けたい
- 転勤(転居)するため、それまでに家の売却を済ませたい
- 離婚するため、家の売却益を使って財産分与を済ませたい
特に3つ目の「パートナーとの離婚」に関しては、財産分与の観点から不動産の早急な売却を迫られるパターンが多いため、
もしも売主の口から離婚に関する話題が出た場合には、売主の気分を害さない範囲で値引きの相談をしてみるとよいかもしれません。
しかし、高いお金を支払っても購入したいと思える中古住宅を見つけることができれば、満足度も高いでしょう。以下の記事では、中古住宅の選び方について解説しているので参考にしてください。
値引き交渉が失敗しやすい中古住宅の特徴
築年数が浅い
前章「値引きしやすい中古住宅の特徴」で紹介したように、中古住宅の物件価値は築年数に比例して減少していきます。
そのため、建築から数年しか経っていない築浅の中古住宅に関しては、まだまだ物件価値が高く、値引き交渉が通りづらい傾向があります。
その家に長期間買い手がつかない場合には売出価格が下方修正される可能性もあるため、
築年数の浅い物件を安く購入したい場合には、売出期間に応じた値下がりを待つほうがよいかもしれません。
多くの買主が購入を希望している
多くの買主が購入を希望している人気物件に関しては、売主としてもどの売主と売買契約を結ぶかを選択することができるため、
値下げ交渉をしても交渉が通らず、定価でもその物件を購入したいと言っている買主に物件が流れてしまうことがあります。
多くの買主が購入したいと考えるような人気物件の購入を検討している場合には、値引き交渉をするのではなく、定価での購入を検討することをおすすめします。
売主が任意売却や住み替えを希望している
売主が任意売却を希望していると、住宅ローンの残債を一括返済するために、はじめから下限の金額で住宅が売り出される場合があります。
売主としてはそれ以下の金額で物件が売れてもローンが完済できないため、
値引き交渉に応じてもらえない(応じることができない)ことが多いです。
金銭的な事情を抱える売主に対し無理な値引き交渉を続けてしまうと、最悪の場合契約が破棄されてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
また、上記以外でも、企業が地方創生事業の一環で売り出しているリノベーション物件などは値引きが難しい傾向があります。
中古住宅の購入を考える際には自分が購入したい物件が値引きしやすい物件と値引きしにくい物件のどちらに属するかを考え、値引き交渉をするべきか検討するのが良いでしょう。
次項では「中古住宅の値引きを成功させるためのポイント」について解説していきます。
中古住宅の値引きを成功させるためのポイント
中古住宅の値引きを成功させるには、交渉前の入念な準備が必要です。
値引き交渉のゴールが住宅売買の成立であることを考えると、取引自体が破綻してしまうような無茶な交渉になるのは、買主としても売主としても避けたいところ。
値引きに繋がる交渉を行うために、その物件に関する多くの「データ」を集めましょう。
中古住宅の価格相場を調べておく
購入したい住宅のエリアや間取り、物件種別(マンション、戸建てなど)が決まったら、まずはそれに近い条件の物件がどの程度の値段で売り出されているのかを調査してみましょう。
希望に近い物件の販売価格(相場感)を掴んでおくと、検討中の物件が相場よりも高い価格で販売されているのか、相場よりも安い価格で販売されているのかを判断することができ、検討物件の価格が相場よりも高い場合にはそれを値引き交渉の材料にすることも可能です。
中古住宅の購入時にかかる費用を把握しておく
購入したい住宅が既に決まっている場合には、その物件を購入するにあたって、どの程度の費用がかかるのかを確認しておきましょう。
大体の費用とどこでお金がかかるのかを知ることができれば、それに応じた交渉の方法を考えることも可能です。
中古住宅購入時にかかる主な費用
費用項目 | 概要 |
申込証拠金 | 住宅購入時にかかる費用の1つで、新築マンション棟の購入申込時に不動産会社に支払うお金。契約に至る場合は手付金の一部となり、金額は2~10万円が目安です。 |
手付金 | 住宅購入時にかかる費用の1つで、住宅の売主に支払うお金。物件金額の5%~10%が目安になりますが、基本的には売主と買主の合意によって決まることが多いです。 |
印紙税 | 売買契約書に貼る収入印紙の代金で、契約した物件の金額に応じて税額が変動するのが特徴です。住宅ローンを契約する際には「ローン印紙税」が発生します。 |
仲介手数料 | 動産の仲介業者を通して物件を購入するときに仲介業者へ支払うお金。国の宅建業法により、「物件価格の3%+6万円(税抜)」が上限とされています。 |
登記費用 | 不動産登記や抵当権設定登記を行う際の登録免許税や、司法書士に登記の手続きを依頼する場合に支払う報酬。費用を抑えたい場合には自身での登記がお勧めです。 |
ローン借入費用 | 住宅ローンを借り入れる際に必要となる費用で、事務手数料、生命保険特約料などの費用を指します。詳細な金額はローン商品によって異なるため、確認が必要です。 |
※具体的な費用の内容は、不動産取引の内容によって異なる可能性があります。詳細については、仲介業者となる不動産会社に確認しましょう。
検討している住宅の売り出し日を把握しておく
売り出しからどれくらいの期間が経っているかは、物件の人気を見極める指標になります。
例として、売り出しから時間が経ち、価格も下がっているのに売れていない……なんてことがあれば、それには何か理由があるのかもしれません。
インターネットや物件チラシからその理由が見えてこない場合には、物件を見に行ったり内覧会に参加してみるなど、売主側に気になる点を聞いてみるのがおすすめです。
早い段階で、明確に購入の意思を示しておく
不動産売買を行う売主は「買うかどうかわからない客」「真剣そうでない客」より「高い熱意をもってアプローチしてくれる、購入意欲の高い買主」を重要視します。
早い段階で売主に住宅購入の意思を示し、売主に「この人なら買ってくれそうだな」と思ってもらえるように行動しましょう。
逆に売主側から物件提供の意思が感じられず、成約が見込めないと感じた場合には、早い段階で交渉を切り上げ、別の物件を探したほうが効率的かもしれません。
また、購入したい住宅が決まった時に売主へ提出する買付証明書の取扱いには注意が必要です。
買付証明書には証明にかかわる当事者を拘束するための法的効力はないものの、あまり証明書破棄を繰り返すべきではありません。
いずれは売主側に「冷やかし目的の客」と認識されてしまうかもしれないため、物件の購入交渉に踏み切る際には、一つ一つの物件に対して真剣に向き合いましょう。
予め住宅ローン審査を進めておく
売主からすれば、自分の物件が早く売れる以上の喜びはないため、売主は購入費用の工面ができていない買主よりも、既に資金を持っている買主を歓迎します。
また、融資を既に受けているうえでの購入希望ともなれば、売主としても「この人は買う意欲が高い」と信頼できるため、そのような買主の値引き交渉は無下にしづらいものです。
融資の手続きには時間がかかるため、中古住宅の購入を考えている場合は、金融機関への融資相談や審査の手続きを先に始めておきましょう。
中古住宅購入の手続き開始後、融資が受けられなくなった時のために、住宅の購入とローン審査を並行して進める場合には「住宅ローン特約」の締結をおすすめします。
すぐに使える!中古住宅の値引きフレーズ3選。
中古住宅の値引きをする時には売主や不動産会社の担当者への交渉が避けられません。
ここでは実際の値引き交渉を行う際に効果的な「3つのフレーズ」を紹介していきます。
- この家の○○なところが気に入って……
- 他の物件も見ましたが、どうしても……
- ○○円までならお支払いすることが……
この家の○○なところが気に入って……
買主が購入したい物件も、売主にとっては「暮らしてきた思い出が残る貴重な財産」です。
売主としては「ただ値引きを迫るだけの客」より「その家に愛着を抱いてくれるひと」に物件を引き継いでほしいと思うもの。
値引き交渉を行う際には、その物件の売主に対して「具体的に」なぜその住宅を購入したいのかを伝えるようにしましょう。
他の物件も見ましたが、どうしてもこの家が……
値引き交渉をした際に「値引きはできません。どこか別の物件を探されたほうがいいんじゃないですか?」と言われたら、売買契約自体が打ち切りになってしまう可能性があります。
交渉を行う際には他の物件を見たうえでどうしてもその家を購入したいことを伝え、他の物件に比べて売主の物件の何が良いと思ったのかを、心を込めて伝えるようにしましょう。
○○円までならお支払いすることが可能なのですが……
一般的に売主は不動産会社に物件査定を依頼したうえで売出価格を決定しており、決定された売出価格は「売主がこの価格なら売れる」と思っている金額です。
それに対して「いくらまでなら値下げできますか?」という聞き方をしてしまうと、売主もその価格を提案した不動産会社も、足元を見られているようで、いい気持ちにはなりません。
自分の予算が売主が設定した売り出し価格に満たない場合には素直にその旨を伝え、売主に値引きの可否を判断してもらったほうがよいでしょう。
また、これらのフレーズは組み合わせて使っていくことで交渉の成功率を高めることができます。
この家のリビングが間取りも雰囲気も買いたかった家のイメージとぴったりで、この家に住めたらいいねって家族といつも話してるんです。
不動産会社さんには他の物件も見せていただいたのですが、この家以上に住みたいと思える家はどこを探してもありませんでした。
ぜひこの物件を、購入させていただきたいと思っております。
ただ現状、物件価格の2,000万円に対してどうしても予算が足りない状態で1,890万円までしかご用意することができず…、お値段を考慮していただくことは難しいでしょうか?
値引き交渉をする際には相手の売主が「多少値引きしてもこの人に物件を買ってもらえたら嬉しいな」と感じるように、この家を買いたいという気持ちをこめて交渉してみましょう。
中古住宅の値引きをする際の注意点
本筋から外れた値引き交渉はしない
中古住宅の売買においては「1円でも値引きしてもらうのが生きがい」という人もいますが、大切なのは互いに納得する価格に基づき、信頼関係ありきの契約を交わすことです。
安く買うことだけを目標に売主の物件の悪いところを探すような、本筋から外れた値引き交渉はしないように注意しましょう。
売主に「自分の都合」を押し付けすぎない
買主側にも予算的な成約がある以上、安い価格で住宅購入を進めたいと思うのは当然です。
しかし自分の「安く買いたい」という欲求だけを売主に押し付け、住宅取引を進めるうえでの信頼関係が壊れてしまっては元も子もありません。
売主から「この人に物件を売りたくない」と思われてしまえばその時点で交渉が破談になる可能性もあるため、売主側の事情にも配慮する姿勢が大切です。
売主の事情を把握するためのコツ
売主側の心境や住宅売却の狙い、買主側に求めていることを把握する際には、以下のポイントを質問していくことが有効な手段となります。
- なぜその物件を売りに出そうと考えたのか?
- なにを基準に価格設定を行ったのか?
- この物件はいつから売りに出しているのか?
- この物件はいつまでに売却したいのか?
積極的な質問は熱意のアピールにもなります。
より良い取引につなげるためにも、売主に対する質問は丁寧にしていきましょう。
場合によっては「住宅ローン控除」も利用する
住宅ローンを利用して住宅を購入した時に一定の条件を満たしていると、その物件は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用対象となり、
住宅ローン控除が適用された物件は住宅ローンの年末残高に応じた金額が所得税額等から差し引かれて還付されます。
住宅ローン控除にはいくつかの適用条件があり、それらすべての条件を満たすことで控除を受けることができるため、
一度自分の購入物件が住宅ローン控除の適用対象になるかを調べてみることをおすすめします。
住宅ローン控除適用条件の一例
- 住宅ローンの名義人がその住宅に居住していること
- 特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
- 住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上の部分が居住用であること
中古住宅の値引きには優秀な担当者が不可欠
不動産物件の売買価格は、個人の「売りたい・買いたい」だけでは成り立っていません。行きすぎた交渉をしないためには、その物件に対する「相場」を把握することが大切です。
また、中古住宅の値引きには優秀な営業担当者が必要不可欠です。不動産会社を選ぶ時はやみくもに気になる物件を扱っている不動産会社に連絡を取るのではなく、仲介実績や物件提案の質などが良いかどうかを確かめてから連絡を取ることが重要です。
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