残された建物が未登記だった場合、そのまま解体しても大丈夫か心配になってしまいますよね。
未登記の建物を解体する場合、「他に登記している人が本当にいないか」必ず確認しましょう。建物の解体には登記簿上の名義人(すなわち、建物の所有者)の許可が必要となるためです。許可なく解体した場合、犯罪行為とみなされ5年以下の懲役に科せられるリスクがあります。
本記事では、未登記の建物の解体を検討している方に向けて、以下のポイントをわかりやすく解説しています。
▼本記事でわかること▼
- 未登記の建物を解体する際の注意点
- 未登記の建物はそのままだとどうなるか
- 建物が未登記か確認する方法
私の家の解体費用はいくら?
▼解体費用の基礎知識はこちらの記事でも詳しく解説しています。
未登記の建物とは
未登記の建物とは、不動産登記がされていない建物のことです。
不動産登記がされていない建物とは、登記簿(表題部と権利部)に必要な情報が記載されていない状態の建物をさします。不動産登記とは、土地や建物の現況や権利といった『不動産の戸籍』のことで、登記簿への記載によって完了されます。
登記簿の記載欄には「表題部」と「権利部」があり、前者は不動産の状態(所在地や構造・種類・床面積)、後者は権利関係(所有者や相続人、抵当権)が記載されています。
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未登記の建物を解体する際の注意点
未登記の建物を解体することはできますが、登記済みと同じように解体すると、思わぬトラブルにつながるリスクがあります。
そこで、以下の注意点は必ずおさえておきましょう。
▼未登記の建物を解体する際の注意点
- 他の人が登記していないか確認
- 他の人が相続や贈与を約束されていないか確認
- 相続せずに解体する場合は相続人全員の合意を得る
- 解体後は家屋滅失届を提出
他の人が登記していないか確認
未登記の建物を解体する前に、「他人が登記していないか」は必ず確認しましょう。
建物の解体は所有者の承諾を得なければ実施できないためです。もしも登記している人が別で存在した場合、登記簿上の名義人(つまり、土地の所有者)の許可なく無断で解体したとみなされてしまいます。所有者の許可なく解体すると、建造物損壊罪という犯罪に問われ、5年以下の懲役が科せられる恐れがあります。その他、民事上の責任も問われ、多額の損害賠償を請求されるケースも…。建物が未登記であるかをどうかを調べる方法は、本記事の末尾で解説していますので、ご参照ください。
他の人に相続や贈与を約束されていないか確認
他の人に相続や贈与を約束されていないかも確認しましょう。口約束だとしても、解体後に「実は所有者です」と誰かが名乗り出た場合はトラブルの原因になります。
未登記の建物の場合、法的な所有者は存在しません。つまり、施主自身も法的な権限は持たないため、口約束でも所有者と名乗る人が現れた場合、権利を強く主張できない状況にあります。
よって、建物を頻繁に利用していたり、相続や贈与を約束されている人がいないかは、解体工事前にしっかり調べておきましょう。近隣住民や被相続人の親族、知人等ヒアリングすることで、建物の実質的な所有状況を明らかにできます。仮に該当する人がいた場合は、了承を得てから解体することで、解体後のトラブルを防ぐことができます。
相続せず解体する場合は相続人全員の合意を得る
相続せずに解体する場合、相続人全員の合意を得てから解体しましょう。
未登記の古い建物であっても、被相続人が使用していた物件であれば、相続財産とみなされるためです。相続財産は遺産分割をするまでは、相続人全員が共有している状態となります。
▼相続せずに解体する方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
解体後は家屋滅失届を提出
未登記の建物の場合、解体工事が終わったら家屋滅失届を役場の窓口へ提出しましょう。
家屋滅失届とは、家屋の全部または一部を取り壊した場合に提出する書類です。家屋が取り壊されたことを告知できるため、翌年から建物に対する固定資産税がかからなくなります。
未登記の建物でも固定資産税は課せられます。
未登記の建物の場合、固定資産税の納税者は「現にその家屋を所有している人」となり、建物を頻繁に使用していたり、相続や贈与が約束されている人が該当します。
建物滅失登記は不要
未登記の建物の場合、解体しても建物滅失登記は不要です。
建物滅失登記は、解体工事後にその建物がなくなったことを法務局で登記する手続きのことで、登記されている建物の場合に申請します。未登記の建物の場合は、そもそも登記自体が存在しないため、わざわざ登記しなおす必要はありません。
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未登記の建物はそのままだとどうなる?
未登記の建物はそのまま登記しないとどうなるのでしょうか。
本章では未登記の建物を扱うにあたって知っておきたいポイントを解説しています。
▼未登記の建物はそのままだとどうなる?
- 建物の固定資産税は課税され続ける
- 土地の固定資産税の特例措置を受けられない
- 所有権を証明できない
- 建物の売却がしづらい
- リフォームや建て替え時に融資が受けられない
- 罰金の対象になる
建物の固定資産税は課税され続ける
前章で少し触れましたが、未登記の建物でも固定資産税は課税され続けます。
登記していなくても、自治体は課税対象となる建物の有無や状態を現地調査によって毎年把握しているためです。未登記の建物の場合は、自治体が「所有者と判断した人」に納税通知書が送付されます。具体的には、建物を頻繁に使用していたり、出入りしている人が対象になります。納税者には毎年6月に自治体から納税通知書が郵送されていますので、確認してみてください。
なお、相続していない人に納税通知書が送られている場合は、相続した人が「所有者変更届」を自治体に提出する必要があります。所有者変更届とは、売買や相続等によって建物の所有者が変わった際に必要な届け出です。提出することで、相続登記をしなくても自治体に自分が所有者であることを知らせることができ、納税者を明確にできます。
土地の固定資産税の特例措置を受けられない
未登記の建物の場合、特例措置を受けられないので、固定資産税の支払いが高くなります。
登記されている建物の場合、「住宅用地の特例」と呼ばれる特例制度が適用されており、土地の固定資産税率が通常の1/6~1/3までおさえられています。しかし、未登記の建物の場合、特例制度は適用されないため、登記されている建物と比べると3倍~6倍高い固定資産税を払い続けることになります。
住宅用地の特例を適用させたい場合は、建物を登記することおススメします。ただし、建物が住むことができないほど老朽化している場合や、建物を解体してしまう場合は、登記したとしても適用されませんので注意してください。
所有権を証明できない
未登記の建物はそのまま相続し、そのまま住むことはできます。
しかし、未登記のままにしておくと、「自分が所有者である」ことを法的に証明することはできません。そもそも登記は所有権を証明するための手続きだからです。
例えば、借地に建っている家を相続して立ち退きを要求された場合、未登記であれば自己負担で解体して退去することになります。一方で、登記済みであれば自分が所有者であることを証明できるため「建物買い取り請求権」を行使して地主に建物を買い取ってもらうことができます。
建物の売却がしづらい
未登記の建物の場合、売却するのが難しくなります。まず、未登記の建物は住宅ローンの利用が難しく、買い手は現金一括払いで購入する他なくなってしまうからです。また、建物の所有者を証明できないことや、過去の所有権の履歴や物件の状態を確認できないことで、物件自体の信頼性が疑われやすいためです。
どうしても売却したい場合は、売り手側で建物の表題登記・所有権保存登記を済ませてから売るか、建物を解体して土地のみで売ることを考えましょう。建物が未登記でも土地が登記されている場合、建物を壊してしまえば、買い手は住宅ローンを利用できるようになる他、多様な用途で活用できるようになるため、売れやすくなります。
リフォームや建て替え時に融資が受けられない
未登記の建物はリフォームや建て替え時に融資をうけられません。銀行などの金融機関は、登記されている不動産を担保に融資を行うためです。融資をうける必要がある場合は、少なくとも建物の表題登記および所有権保存登記だけは行う必要があります。
罰金の対象となる
未登記の建物の場合、50万円以下の過料の支払いを要求されるケースもあります。
建物を建てたときは「表題登記」といわれる登記を行うことが、法律(不動産登記法第164条)によって決められている義務です。よって、違反することになるので罰金の対象となります。建物の登記にかかる費用は10万円~40万円なので、登記よりも負担が大きい過料を支払うことになります。
私の家の解体費用はいくら?
建物が未登記かどうかを確認する方法
- 法務局で全部事項証明書が取得できない
- 固定資産税納税通知書の建物欄に「未登記」と記載されている
まずはお手持ちの建物が該当するかをチェックしてみてください。
法務局で全部事項証明書が取得できない
未登記の建物の場合、法務局で全部事項証明書の取得ができません。
「全部事項証明書」とは、不動産登記を証明する書類を総称した「登記事項証明書」のうち、もっとも不動産に関する情報が詳細に記載された証明書です。未登記の場合、そもそも登記簿に建物の現状や権利などが記載されていないため、申請しても取得はできないのです。
固定資産税納税通知書の建物欄に「未登記」と記載されている
固定資産税納税通知書の『建物欄』に「未登記」と記載されている場合、その建物は未登記であることを意味します。
納税通知書は毎年6月ごろに納税者のもとに送られてきます。書式は自治体ごとで異なりますが、記載内容は統一されています。建物内に保管されていないか確認してみましょう。
その他、『家屋番号の欄』が空欄の場合も未登記になります。
私の家の解体費用はいくら?
未登記の建物を解体したいならイエウール
本章では未登記の建物を解体するうえでの注意点について解説しました。土地を手放したい場合、未登記の建物を解体して土地のみで売り出せば、買い手がつきやすくなる可能性は高いです。
ただし、未登記だと思っていたら実は他の人が登記していたり、事実上の所有者がいるケースも珍しくありません。知らずに解体してしまった場合、「無断で解体した」とみなされて刑事訴訟や民事訴訟といったトラブルに発展する恐れもあります。近隣住民や親族に確認しながら、本当に解体してよいか合意を得てから工事は進めるようにしましょう。