実家の解体費用は相続人が支払います。
相続人とは(遺言がない場合)、配偶者・直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹と民法で定められています。よって、例えば相続前に相続人と同居していても、該当しない場合は解体費用を支払う必要はありません。
本記事では、兄弟間で実家を相続し解体する場合に押さえておくべきポイントについて、理由を添えてまとめています。
私の家の解体費用はいくら?
▼家の解体費用についての詳細はこちらの記事でも解説しています
実家の解体費用は兄弟のどちらが払う?
実家の解体費用は相続した人に支払い義務があり、兄弟で相続した場合は、所有権の割合で支払い負担額が決まります。
しかし、本来の相続人が相続を放棄するケースもあるでしょう。
その場合は、家庭裁判所によって選出される「相続財産管理人」が解体の義務を負います。万が一、相続人も相続財産管理人も不在の際は「現に占有している者」が支払うことになります。簡単に言うと、該当の物件に頻繁に出入りしていた人です。
相続放棄をしても、結局は解体費用を負担しなければならない可能性もあるので、気をつけましょう。
実家の解体費用の支払い義務について、詳しく解説します。
私の家の解体費用はいくら?
基本的に相続した側が支払う
基本的に解体費用は、相続した側が負担しなければなりません。
「相続した側」とは、実家の登記簿謄本に記載されている所有者の名義人を指します。
登記簿謄本には、土地や建物について大きさや所在地、所有者の名前などの情報が記載されています。親の資産を相続する際は、土地と建物の所有者を相続人の名義に変更する相続登記が必要です。
兄が相続した場合には兄の名前、弟の場合は弟の名前が登記簿謄本の所有権に関する事項に記載されます。解体する事になった場合は、当然ですが所有権を持つ人が費用を負担します。
親族だから一緒に負担すべきと思う方も多いと思いますが、相続を行い名義変更をした以上、解体に関する問題は所有者が処理すべき事項です。相続人は資産の活用方法について全ての権限を持ちますが、その反面空き家の場合は継続的な管理の権限が発生しますし、解体となれば費用の負担義務が発生します。
親族関係ではなく、所有者が誰かで費用負担の義務が変わることを覚えておきましょう。
▼実家の解体費用を相続人が支払うことについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
私の家の解体費用はいくら?
共有名義の場合は持ち分割合に応じて負担する
実家の家を兄弟で一緒に相続し、所有者が複数人いる場合は「持ち分」という所有権の割合を決めなければなりません。
前提として解体費用の支払い義務は名義人にあるため、兄弟名義にした場合には兄弟で負担する必要があり、負担金額は持ち分の割合で決まります。
例えば2人兄弟で50%ずつ所有している場合、解体費用が500万円かかったとすると、負担金額は兄と弟でそれぞれ250万円です。
なお、持ち分の割合を決める方法は複数あり、一般的なのは法定相続分により決定する方法です。法定相続分は相続割合が法律で定められており、割合は故人と相続人の関係によって変わります。
兄弟のみの場合の法定相続分は100%兄弟で相続できますので、兄弟の人数で等分するのが最適でしょう。遺産協議分割により法定相続分とは異なる割合で相続することになったとしても、相続人同士で納得ができていれば、必ずしも法定相続分に従う必要はありません。
また、遺言書がある場合には、基本的にその内容に沿った相続割合となります。しかし、遺言書に納得がいかない親族がいる場合には遺産協議分割も可能です。ただし、遺言書内で遺産協議分割が禁止されていないことが条件となるため、注意しましょう。
兄弟全員が相続放棄した場合は相続財産管理人が清算
もしも兄弟全員が相続を放棄した場合には、遺産を管理する人がいないため、新たに「相続財産管理人」の選任が必要になります。
相続財産管理人とは、相続すべき人が放棄した場合などで正式な相続人がいない時、遺産の管理を任される人です。
相続人がいない財産については、最終的には国に返還されます。
しかし、国に返還する際も誰かが手続きを行う必要があるため、相続財産管理人を選任して国に返還する仕事をさせるのです。相続財産管理人は、家庭裁判所の審判によって選任されます。弁護士や司法書士といった専門家が選ばれるのが一般的です。
なお、相続財産管理人は申立があって初めて選任されます。
申立を行う人は、主に被相続人(故人)の債権者や特定遺贈を受けた者、特別縁故者が該当する場合が多いです。被相続人と利害関係にあり、相続財産管理人がいないと債権の回収ができない場合や、遺産の分与を受けられない場合に申立をするケースがほとんどです。
選任申立には収入印紙代、予納郵便切手、官報公告費用等がかかりますので、事前に確認しておきましょう。また、相続財産管理人への報酬として「予納金」が必要になる場合もあります。
遺産が少なかった際など、相続財産管理人へ十分な報酬が支払えない時は予納金から支払われる仕組みです。安ければ20万円程度、高くなると100万円近くになることもあるため、予納金は高額になる可能性もあると理解しておきましょう。
相続財産管理人には建物の解体時の費用負担の義務が発生しますが、費用は土地を売る等で捻出が可能です。
相続財産管理人が決まらない場合は現に占有している者が支払う
相続財産管理人の選任中に、自治体から「行政代執行」をされる場合があります。
行政代執行は、建物の管理不足により、倒壊の危険や衛生環境を悪化させていると判断された際、行政が所有者に代わり解体や清掃を行い、その費用を所有者に請求するものです。
行政代執行が行われる条件としては主に、以下が挙げられます。
【行政代執行が行われる条件】
- 建物の破損等により倒壊の危険性がある状態
- 汚物の異臭やゴミの放置により衛生上有害である状態
- 建物の管理不足により著しく景観を損なう状態
近隣住民の生活を脅かすものであると判断された場合に、執行されることがほとんどです。
しかし、相続財産管理人の選定中となると、登記簿謄本上の所有者は被相続人(故人)となるため、所有者は不在の状態です。このような場合は、「現に占有している者」に支払い義務があります。
現に占有している者とは現在の所有者ではなく、事実上管理をしている人が該当します。
例えば、被相続人が亡くなるまで該当の物件に一緒に住んでいた場合は、遺産を現に所有しているとみなされ、相続放棄後であっても管理義務が発生します。
私の家の解体費用はいくら?
実家の解体費用はいくら?捻出するには
実家の解体費用の相場や、費用を捻出する方法をご紹介します。
実家の解体費用の相場
解体費用は、建物の構造と坪単価によって変動します。
解体しやすい木造の場合は坪単価が低く、解体に時間がかかる鉄筋コンクリートは坪単価が高い傾向にあります。
建物構造別のおおまかな坪単価は下記のとおりです。
- 木造:3~4万円
- 鉄骨造:4~6万円
- 鉄筋コンクリート造:6~8万円
各構造の費用相場を比較すると、下記の金額となります。
木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 | |
20坪 | 60~80万円 | 80~120万円 | 120~160万円 |
30坪 | 90~120万円 | 120~180万円 | 180~240万円 |
40坪 | 120~160万円 | 160~240万円 | 240~320万円 |
50坪 | 150~200万円 | 200~300万円 | 300~400万円 |
60坪 | 180~240万円 | 240~360万円 | 360~480万円 |
ただし、上記はあくまで目安で、実際の解体費用は立地や建物の状況によって変動します。
例えば、狭い住宅街では重機が使えないケースも多く、その場合は手作業で解体する工程が増えるため費用も増える場合があります。
さらに、地下室がある場合も作業工程の関係から費用は上がり、万が一アスベストが使用されている場合は処理費用も加算されます。
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実家の解体費用を捻出する方法
実家の解体費用は比較的高額なため、事前に費用を捻出する方法を考えておくことも大切です。
今回は次の2つの捻出方法に絞って解説をします。
▼実家の解体費用を捻出する方法
- 相続した物件を売却する
- 解体費用を借り入れる
方法①相続した物件を売却する
解体費用を捻出できない場合、物件をそのまま売却してしまうのも一つの方法です。
立地条件が良い場合は買い手がすぐに付くため、不動産会社へ見積もりを依頼をしてみるのも良いでしょう。
売却ができてしまえば、解体業者に依頼をしたり、解体費用を負担したりする必要もなくなります。
注意点として、古家付き土地を売却する際に解体費用分の値引きを打診される場合があります。
費用相場を理解していないと、相場よりも高い金額で値引きしてしまうリスクもあるので、事前に大体の相場を把握しておきましょう。
方法②解体費用を借り入れる
ローンは通常、家を購入する時のみ利用できると思われがちですが、建物の解体費用でも利用可能です。
手元に資金がなく、更地にしないと売却しにくい立地条件である際は、ローンの借り入れも検討しましょう。
現在、日本国内では空き家問題が深刻化している背景から、空き家対策のために建物解体用のローン金利は比較的低い傾向にあります。
また各金融機関には「空き家解体ローン」という解体専用のローン商品があります。担保や保証人が不要で低金利のため、検討する際は候補に入れると良いでしょう。
自治体によっては解体に関する補助金が出るところもあるので、費用負担軽減のためにも必ず確認してください。
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実家の解体について兄弟で話し合っておくべき点
実家の解体前に、兄弟でどちらが費用を負担するかは必ず話し合っておきましょう。
▼実家の解体について兄弟で話し合っておくべき点
- 費用を誰が負担するか
- 解体または売却してよいか
- いつ解体するか
- 解体するまでは誰が手入れするか
費用を誰が負担するか
費用をどちらが負担するかは、遺産相続時の持分割合にも関わってきます。
兄か弟のどちらが負担するか、また共有予定の場合は何割程度なら負担できるかは、事前に話し合っておきましょう。費用負担の話がうまくまとまらないと、必ずと言っても過言ではないほど揉める原因になります。
一度揉めてしまうと話が平行線になりやすく、なかなかまとまりません。早い時期から話し合って決めておけば揉めずに済みますし、ある程度の費用相場が分かっていれば、解体費用の準備ができます。
あらかじめ決めておくことで得られるメリットは大きいので、費用負担については最重要項目として話し合っておきましょう。
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解体または売却してよいか
兄弟の共有名義にする場合、双方の意見が食い違う場合は売却も解体もできません。
どちらかの名義人の意思のみで勝手に売ったり解体工事を進められないため、解体してしまうのか古家付き土地として売るのかは事前に決めておきましょう。
なお、解体費用の捻出が難しい場合は、早急に売却する方向で意思を固めて不動産会社へ相談しておく等、早めの行動をおすすめします。同時に、物件の所在地での売買価格相場や、買主からの解体費用分の値下げ交渉にも備えて、解体費用の相場も把握しておきましょう。
いつ解体するか
解体時期も、事前に決めておくことは重要です。場合によっては、すぐに解体しないほうが良いケースもあります。
例えば、居住エリアによっては、更地にするよりも古家付き土地として売った方が売却しやすくなります。都内では更地のほうが売れやすい傾向にありますが、地方だと中古住宅をリフォームして住むために購入されるパターンが多いため、解体しない方が売れやすくなります。
また、税金面でも解体しないほうが良い場合があります。土地は、建物が立っている場合の方が固定資産税の税率が低く、更地にすると税率が上がってしまいます。駅に近い等の理由で土地の需要が高く、更地にしてすぐに売れる見込みがある場合は解体しても良いでしょう。
売れない期間が長引けば、その分税金の負担も増えます。ただでさえ高い税率で負担しなければならないため、長く待って売れたとしても、解体費用と税金の影響で、手元にお金が残らなくなることもあり得ます。
解体する際は需要をよく考え、焦って解体して損をしないよう、タイミングをしっかり見極めましょう。
解体するまでは誰が管理するか
管理者すら決まっていない場合は手入れがされないため、建物が劣化する速度も上がり、街の景観を損ねてしまう可能性もあります。
最悪の場合は、自治体による行政代執行の対象となってしまうリスクもありますので、注意しましょう。
私の家の解体費用はいくら?