倒壊の危険性が高い家屋を放置しておくと地域の景観や安全が損なわれるため、補助金によって建て替えを促しているのです。
ただし、すべての自治体で利用できるわけではありません。制度自体がない自治体もありますし、あっても条件を満たさなければ受給できません。
本記事では、建て替え目的に解体工事を検討している方に向けて、建て替え補助金が使える背景や制度の種類、よくある支給条件について解説しています。
- 建て替え補助金の種類について知りたい
- 建て替え補助金の支給条件や金額について知りたい
私の家の解体費用はいくら?
建て替えの解体で補助金が使える背景
冒頭でも触れましたが、建て替え補助金の背景には地域の景観と治安の向上があります。
建て替えの解体で使える補助金制度の対象は「老朽化した空き家」や「旧耐震基準の家屋」がほとんどです。
上記は放置されると、地域の景観を損ねたり、震災時に倒壊して地域被害が大きくなる原因となるため、補助金によて解体や建て替えが促されています。
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建て替えの解体費用に使える補助金の種類
建て替えの解体費用には、大きくわけて次の3つの補助金制度を利用できます。
▼建て替えの解体費用に使える補助金の種類
種類 | 対象 | 支給額の上限 |
---|---|---|
空き家解体費用補助金 | 空き家 | 100万円 |
木造住宅耐震関連の補助金 | 耐震基準を満たさない家屋 | 100万円 |
ブロック塀解体補助金 | 倒壊しそうなブロック塀 | 30万円 |
空き家解体費用補助金
空き家解体費用補助金は、空き家の解体費用を一部補助する制度です。
空き家が一定期間使用されておらず、経年劣化によって倒壊の危険性や近隣の景観を損ねると自治体が判断する場合に利用できます。支給額は解体費用の1/5~1/2かつ上限100万円です。
ただし、上限額は自治体によってバラつきがある点に注意しましょう。
例えば、群馬県藤岡市の「空き家解体補助金」では解体費用の1/3かつ上限20万円が支給額となっています。(参考|藤岡市公式)
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木造住宅耐震関連の補助金
木造住宅耐震関連の補助金は、耐震基準を満たさない家屋を基準を満たす建物へ建て替える場合に、費用を一部補助する制度です。
対象となるのは現行の耐震基準を満たしていない家屋(=耐震基準が更新された昭和56年5月31日以前の建築物)です。自治体による耐震診断によって可否が判断されます。
支給の上限は100万円が目安ですが、空き家解体補助金と同様に、自治体ごとでバラつきがあります。
例えば、神奈川県川崎市の「木造住宅耐震改修助成制度」では、一般世帯(非課税世帯以外の世帯)が建物全体の建て替えを行う場合、工事費用の4/5かつ上限85万円が支給されます。(参考|川崎市公式)
ブロック塀解体補助金
ブロック塀の解体費用補助金は、倒壊の危険性が高いブロック塀を撤去する場合に費用の一部を補填する制度です。
対象はコンクリートブロック、レンガ、石などで組んで造られた、一定の高さ(=1.0m以上)があるブロック塀です。その他、区内の道路に面しているブロック塀も対象になります。
上限の目安は30万円ですが、自治体に応じて異なります。例えば、新潟県新潟市の「ブロック塀の撤去補助金」では、撤去費用の1/2または17,400円×高さ(m)かつ上限50万円とされています。(参考|新潟市公式)
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建て替えの解体補助金によくある支給条件
補助金の支給条件は自治体ごとで異なりますが、制度の目的は「地域の景観と安全の向上」で共通しているため、自治体間でも『よくある支給条件』が存在します。
そこで本章では、建て替えの解体補助金で『よくある支給条件』を解説します。
▼建て替えの解体補助金によくある支給条件
- 個人所有の空き家
- 旧耐震建物であること
- 基準を超える老朽破損
- 税金の滞納がない
- 所得制限を満たしている
個人所有の空き家
空き家解体補助金でも触れましたが、よくある支給条件のひとつに「空き家であること」が挙げられます。
特に住むことが困難で周囲に悪影響を及ぼす危険性のある「特定空き家」に認定された場合は受給対象となる可能性が高いと言えます。
旧耐震建物であること
特に1981年より前に建築された、いわゆる旧耐震基準の建物は補助対象になりやすいです。
旧耐震基準建物は震度5までの地震に耐えるように設計されていますが、当時は竣工時に行政検査が行われていない建物も多く、地震による倒壊の危険性が高いとみなされています。
基準を超える老朽破損
建物の老朽破損状況が一定基準を超える場合は補助金の対象となります。
判定基準は各自治体が定める「住宅の不良度判定」によって決まり、国土交通省が公開するガイドラインに基づき各自治体が定めています。
税金の滞納がない
補助を受けようとする個人に税金支払いの滞納がある場合、原則として受給できません。
補助金は国民全体から徴収した税金や国の借金で賄われているためです。
所得制限を満たしている
補助を受ける個人に所得制限を設けている自治体もあります。基準としては、前年の所得が1,000万円以下である場合としている自治体が多いです。
補助金は解体工事の費用負担が厳しい個人を支援する制度でもあるため、1,000万円を超える所得がある場合は、支給されない可能性があります。
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解体だけでなく新築の設備工事に使える補助金もある
解体だけでなく、新築の設備工事にも使える補助金があります。
▼解体だけでなく新築の設備工事に使える補助金もある
場合 | 種類 | 上限の目安 |
省エネ設備を導入する場合 | 家庭用燃料電池システムの導入補助金 | 5万円/台 |
雨水タンクの設置助成金 | 30万円/台 | |
合併浄化槽の設置助成金 | 20万円/台 | |
太陽光発電の助成金 | 10万円/台 | |
省エネ給湯器の導入助成金 | 30万円/台 | |
ZEH支援事業・システムの導入助成金 | 70万円/台 | |
生垣や外構を緑化する場合 | 壁面や屋上緑化の助成金 | 2万円/㎡ |
生け垣の設置補助金 | 1万円/m |
省エネ設備を導入する場合
新築に省エネ設備を導入する場合、自治体によっては補助金制度を使える可能性があります。
家庭用燃料電池システムの導入補助金
家庭用燃料電池システムの導入助成金は、エネファームなどの住宅用地地球温暖化対策設備を導入する個人に対して、自治体が経費の一部を補助するというものです。
支給額の相場は自治体によりますが、概ね3万円~5万円/台となっています。
例えば、愛知県名古屋市の「家庭用燃料電池システム(エネファーム)設置費補助」では1台あたり3万円の補助金が支給されます。
参考|名古屋市公式サイト 家庭用燃料電池システム(エネファーム)設置費補助
雨水タンクの設置助成金
雨水タンクの設置助成金とは、雨水タンクを設置する場合に工事費用の一部を補填するものです。
補助金は雨水タンク1台に対して支給されます。相場は自治体によりますが、概ね設備費用の1/2かつ上限30万円となっています。
例えば、東京都大田区の「雨水タンク設置助成制度」では設置費用の1/2かつ上限4万円が支給されます。
合併浄化槽の設置助成金
合併浄化槽の設置助成金とは、合併浄化槽を設置する場合の費用を一部補填するものです。
支給額は浄化槽の大きさ(5人槽・7人槽)によって異なり、相場は10万円~20万円となっています。
例えば、群馬県高崎市の「浄化槽設置事業補助金」では5人槽15万円、7人槽19万円が支給されます。
太陽光発電の助成金
太陽光発電の設置助成金とは、太陽光発電を設置する場合の費用を自治体が一部補填するものです。
支給費用の相場は自治体によりますが、3万円×最大出力値(kW)かつ上限12万円となっています。
例えば、東京都国分寺市の「太陽光発電システム設置費補助金」では3万円/kWかつ上限8万円が支給されます。
参考|国分寺市公式サイト 住宅用太陽光発電機器等設置助成制度
省エネ給湯器の導入助成金
省エネ給湯器の導入助成金とは、省エネ給湯器を設置する場合の費用を一部補填するものです。
費用相場は自治体によりますが、概ね設備費用の1/2かつ上限15万円となっています。
例えば、北海道登別市の「高効率給湯機器等への補助金」では設置費用の1/2かつ上限30万円が支給されます。
参考|登別市公式サイト 高効率給湯機器等更新工事への補助金交付
ZEH支援事業・システムの導入助成金
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)とは、高効率機器による省エネと太陽光発電による創エネの設備を導入した住宅のことです。
ZEH支援事業・システムの導入助成金は、環境保全を目的にZEHの増加を促す制度になります。補助金制度の有無は自治体によりますが、相場は70万円/戸となっています。
生垣や外構を緑化する場合
生垣や外構を緑化する場合も、自治体によっては補助金制度を使える可能性があります。
壁面や屋上緑化の助成金
壁面や屋上緑化の助成金とは、壁面やベランダの緑化を行う所有者または管理者の方にその費用を一部を補填するものです。
支給額の相場は概ね設備費用の1/2または2万円/㎡(いずれか低い額)となっています。
例えば、東京都文京区の「屋上緑化補助金の制度」では設置費用の1/2または2万円/㎡のいずれか低い額が支給されます。
生け垣の設置補助金
生け垣の設置補助金とは、生垣を設置する場合の費用を一部補填するものです。
例えば、東京都中野区の「生け垣等設置の助成制度」では1万円/mが支給されます。
建て替えで補助金制度を利用しよう
建て替え費用の相場は1,500万円~4,500万円、うち解体費用は100万円~150万円、新築費用は2,000万円~3,000万円です。ただし、補助金が利用できるかどうかは、自治体によって異なります。以下のツールでは、建物がある市区町村を選択することで、該当する自治体で補助金が利用できるかを踏まえたうえでの解体費用を自分でシミュレーションできます。
補助金を利用した解体工事を具体的にご検討中の方は、ぜひご活用ください。
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