住宅を買う際には、水回りや外壁などの損傷が今後の暮らしやすさに影響してきます。適切な金額で住宅を購入するためにも、こうした経年劣化や設備不良の調査として、ホームインスペクション(住宅調査)を実施してみるとよいでしょう。
ここではこうしたホームインスペクションにかかる費用や、調査内容についてみていきます。
- 既存住宅の現況調査をホームインスペクション
- ホームインスペクションの費用は一般的に5~7万円ほど
ホームインスペクションとは
まずはホームインスペクションとは何かをご紹介していきます。ホームインスペクションとはその名の通り、住宅診断のことです。
大抵は既存住宅を購入する前に、その住宅に問題がないか、あるならどこにどのような問題があるのかを診断するために行います。購入しようとする既存住宅にどのような問題が潜んでいるのかは、一般人にはよくわかりません。
住宅を購入して住んでみてから問題が表面化することも多く、そうなると修繕に多額のお金がかかったり、住宅を購入したこと自体を後悔したりするような事態になりかねません。
しかし専門家に依頼してホームインスペクションをすることで、そういった事態に陥るのを防ぐことができます。
ホームインスペクションを行うと、住宅の劣化状態や品質の程度などが判明します。消費者はこの結果を受けて、その住宅を購入するかどうかを判断することが可能になります。
また、ホームインスペクションはリフォームの参考にする目的でも行われることがあります。ホームインスペクションを行うことで、どこにどのようなリフォームを行えば良いのかがわかるため、無駄なリフォームにお金をかけずに済みますし、適切なリフォームを行うことで住宅の寿命を延ばすことにも繋がります。
その他、「住宅の保証期間が切れそうだから」「建て替えるかリフォームするかの判断基準にしたい」「家を売る前に診断してもらいたい」などの目的でホームインスペクションが活用されることがあります。
なお、ホームインスペクションはしばしば耐震診断と混同されますが、この2つは全く違います。耐震診断はその建物の耐震性能を診断するものです。場合によっては地震に対する補強方法の助言もしてもらえます。
しかし耐震性能に特化した診断なので、住宅の設備や内装・外壁などの劣化など、耐震に関係のない部分は診断されません。
耐震診断のみを信じて住宅を購入すると、地震に対して強い家という保証はあるかもしれませんが、その他の部分に不具合がある可能性があります。その可能性を見つけるために行うのがホームインスペクションなのです。
ホームインスペクションの調査内容とその範囲
ホームインスペクションではどのような調査が行われるのでしょうか?また、どのくらいの範囲を調査してもらえるのでしょうか?
(1)調査範囲
ホームインスペクションの調査範囲は家屋の全体に及びます。室内はもちろん、屋根裏、外壁、屋根、そして基礎まで診断が行われます。
設備面も診断範囲です。水道や排水などの水回り、配管に水漏れがないか調べられます。電気の配線に関しても調査されますが、水道や電気が使えない状態だとできない調査もあります。ただしガスについては調査対象でないことが多いようです。
また、屋根に関しては通常、窓やベランダおよび屋外から目視できる範囲を調べるにとどまります。屋根に上がってまでの調査は行われないことが普通なので、その点は注意しておきましょう。
(2)調査内容
ホームインスペクションでは住宅のほとんどの箇所を入念に調べていきます。どのように調べていくのか、箇所別に見ていきましょう。
・基礎
目視したり手でなでたり、打診棒で叩いて音を聞いたりして基礎の状態を確認します。確認項目はヒビ割れ、欠け、仕上げの浮き、傾きなどから、コケやカビの様子など多岐にわたります。
・外壁
外壁も基礎と同様に、目視や触診、打診棒などを使ってヒビ割れ、欠け、傾きやコケやカビの様子を確認します。気になるヒビが見つかった場合は長さ・深さを測定します。塗装のハゲなどもよく調べられます。
・屋根
目視によって屋根の破損の有無、瓦の浮きやズレ、コケやシミの有無、雨樋の状態などを調べていきます。ベランダからの目視確認と、離れた場所から双眼鏡を通して見る確認の2パターンが行われます。
・室内
天井や床のシミ、ヒビ、カビ、傾き、破損などを目視または必要に応じて機材を使って確認します。床に関しては実際に歩行してみて、たわむ部分がないかも確認します。また、ドアや引き戸の開閉具合も確認します。建て付けが悪くなってドアや引き戸がうまく閉まらなくなっていることがあるからです。また、窓や雨戸などの開閉具合や破損状況も同時にチェックされます。
・水回り
キッチンやお風呂、トイレなどの水回りの点検も行われます。排水の状態や水漏れの有無や配管の状態、コケやカビの有無なども調査されます。必要に応じて配管の状態、カビやコケの状態も調べられます。
・床下
床下に進入する診断は追加料金が必要になることが多く、通常は床下が目視できる穴から覗き込んで見える範囲の確認に留められます。床下は、基礎や床組みの状態を確認します。床組みについてはシロアリの有無、カビやコケ、水漏れの有無から木材、金具類の腐食状況まで調査が及びます。水分計を使って床下の木材がどの程度水を含んでいるかを調べたり、水平器を使って傾きを調べたりすることもあります。
・天井裏
天井裏に入る診断についても追加料金が必要になるケースが大半であり、通常は天井裏に通じる穴から天井裏を覗いて目視するだけに留まります。
破損、コケやシミの有無などがチェックされます。
・バルコニーやベランダ
実際にバルコニーやベランダに出て、目視または触って確認します。確認項目はヒビやコケ、カビ等の確認や、木材および金属材の劣化状況の確認です。
・塀やフェンス、門など
通常のホームインスペクションでは調査に含まれないことが多いですが、調査を希望する場合は基礎や外壁などと同じような調査が行われます。塀やフェンスの倒壊で通行人が死傷する事故も発生しているので、多少費用がかかっても調査してもらうと安心できます。
ホームインスペクションの費用相場や内訳
実際にホームインスペクションをしてもらうときに気になるのは費用だと思います。ここからはホームインスペクションに関する費用について述べていきます。
当然ながら業者によって違いますし、地方差もありますので、本記事の内容は費用の相場あるいは目安として考えてください。
(1)ホームインスペクション費用相場
ホームインスペクションの費用相場は、ずばり5万円~7万円程度です。機材を多く用いた詳細診断の場合は10万以上かかることもありますし、床下に入り込んでもらうオプション診断を要求した場合は1万5,000円から3万5,000円程度費用がアップすることがあります。
天井裏に入り込んでもらう場合も同じくらいアップするので覚えておいてください。
(2)ホームインスペクション費用の内訳
ホームインスペクションにかかる費用の内訳は以下のようになります。・ホームインスペクター(住宅診断士や住宅検査員)の費用
実際にホームインスペクションをしてくれる住宅診断士や住宅検査員の人件費に相当します。・交通費
調査現場まで来てもらうための出張費です。現地の状況によっては駐車場代が別途発生することもあります。・調査機器の損料
調査機器は使うと寿命が縮まるので、それに対する費用です。オプションで高額な機器を使う調査を依頼すると追加発生します。目視による調査がメインの場合、ほぼ発生しないこともあります。
・報告書などの作成にかかる事務コスト
報告書の作成にもコストがかかります。紙代・インク代・郵送費といった原価のほか、ホームインスペクターが専門的所見から導き出す結論を書き記すための人件費などが内訳です。詳細な報告書を求めた場合は、別途5,000円から1万5,000円ほどの費用がかかることがあります。
・事務スタッフの事務コスト
事務スタッフがいる場合は、間接的に事務員も稼働しているので、そのコストも支払います。小さい事務所の場合はこの部分が安くなることがあります。・広告宣伝費など
業者が広告した費用やホームページの作成 ・運営費用はホームインスペクションの代金に上乗せされます。(3)比較対象は価格とホームインスペクターの能力
どのホームインスペクションの会社を選ぶか迷ったときに、多くの人はネットの口コミや価格を見て最終的な選択をするのではないでしょうか?ホームインスペクション業者を選ぶコツは、ずばり価格とホームインスペクターの能力です。まず価格ですが、格安の業者は不動産業者と提携していることが多く、そういった業者は既存住宅を売却するために業者寄りの診断結果を出す可能性があります。
このためあまり安い業者は利用するのに不安が残るのが実情です。
売却を話し合っている不動産業者から格安のホームインスペクション業者を紹介された場合は、少しだけ注意した方が良いかもしれません。
ホームインスペクションは第三者の客観的な視点が必要なので、相場からかけ離れた安い値段の業者よりは多少費用がかかっても中立公正な立場の業者を選ぶべきでしょう。
次にホームインスペクターの能力ですが、当然高い方が信頼のある診断を期待できます。
問題は能力をどう測るかですが、経験年数や資格などから判断するのが最も簡単な方法です。
ホームページにホームインスペクターのプロフィールを公開している業者もあるのでチェックしてください。
同じような能力であれば後は価格との相談です。
インスペクションの手続きの流れ
ホームインスペクションを頼みたい業者が決まったら、ホームインスペクションをしてもらうための手続きをする必要があります。ここからは手続きに必要な書類や手続きの流れを見ていきましょう。
(1)必要書類
住宅に関する資料が多ければ、それだけ詳しく正確な診断をしてもらえます。多少資料がなくてもホームインスペクションをしてもらえるので大丈夫です。用意することが理想的な書類をピックアップして以下にご紹介しますので、参考にしてください。
- 付近の地図(グーグルマップでも可のことが多いです)
- 建物配置図
- 各階平面図(耐力壁位置記載のもの)
- 立面図や断面図
- 建築確認申請書
- 矩計図(かなばかりず)
- 内外部仕上げ表
- 仕様書
- 壁量計算書
- 地盤調査書
- 地盤改良施工報告書(過去に実施された場合のみ)
(2)手続きの流れ
日本ホームインスペクターズ協会によると、ホームインスペクションは主に以下の流れで行われることが多いとされています。業者によって差異はあると思いますが、目安として参考にしてください。
問い合わせと見積もり
依頼したい業者に問い合わせます。このときに診断内容の確認や料金の見積もりを行います。
診断日時の決定と申し込み
ホームインスペクションを行ってもらう日取りを決めて、申し込みを行います。必要書類の送付
業者に指定された書類を事前に業者まで送ります。依頼者が書類の準備だけしておき、当日現地で書類を確認するタイプの業者もいます。
ホームインスペクションの実施
業者が住宅診断を行います。通常は依頼主も立ち会い、その場で診断結果を聞きます。
報告書の受け取り
調査当日か後日に調査報告書を受け取ります。疑問点がある場合は問い合わせが必要です。料金の支払い
料金を支払って、ホームインスペクションが終了します。実施にかかる期間
ホームインスペクションの費用がわかっても、実際にかかる時間がわからないと予定を立てづらい人もいるでしょう。ここからはホームインスペクションにかかる期間や時間をご紹介します。
(1)申請から実施までに1週間程度かかる
ホームインスペクションを申し込んだ翌日に業者が来てくれることはほとんどありません。ホームインスペクションの申し込み先にもよりますが、大抵は申し込んでから実際に診断に来てくれるまで1週間程度かかります。
申し込み時に「ご都合のよろしい日を教えてください」と言われることも多いですが、一応の目安として1週間程度を見込んでおきましょう。
(2)実施時間は大体2~3時間程度
実際に業者が現地に来て住宅を調べる時間は2~3時間程度です。もちろん住宅の規模や調査項目などによって変動しますが、大抵このくらいの時間が必要だと思っておいてください。オプションで天井裏や床下に入ってもらうと、さらに時間がかかります。
診断が終わると、その場で診断結果が伝えられます。診断書類をその場で作って渡してくれる業者もありますが、会社に持ち帰って診断書類を作成し、後日郵送してくれる業者も多いです。
後日郵送してくれる業者の場合は、現地での診断後に書類到着までのスケジュールを教えてくれることが多いので確認しておきましょう。
また、特別に詳細な診断書類を要求した場合は、通常より長い日数がかかることがあります。
まとめ
既存住宅のホームインスペクションは耐震診断と違って住宅の劣化や不具合の状況を調査するものです。費用の相場は概ね5~7万円で、調査にかかる時間は2~3時間です。申し込みから実際の調査までに1週間程度かかることが多いので、ホームインスペクションをしたい場合は早めに申し込むようにしてください。
また、中古住宅を購入する際は契約不適合責任など契約時に確認しなくてはならない事項が多くあるので、信頼できる不動産会社を探す必要があります。
不動産会社を選ぶ時は質問に対して真摯に対応できるかどうかだけではなく、これまでの仲介実績を比較して選ぶことが重要です。
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