借地権の登記をするメリットは?かかる費用と必要書類

借地権の登記をするメリットは?かかる費用と必要書類

所有権については登記することを知っている方でも、借地権の登記について知っている方はそう多くないのではないでしょうか。

実は、借地権の中でも賃借権については登記がされないことが一般的で、その代わりに建物が登記されていれば第三者に賃借権を対抗できるなどの救済策があります。

今回は、こうした借地権に関する知識や、借地権の登記のメリット、登記にかかる費用や必要書類についてお伝えします。

先読み!この記事の結論
  • 借地権とは住宅を立てるためなどにに他人名義の土地を借りる権利のこと
  • のちのち土地の所有権を巡ってトラブルを起こさないためにも借地権の登記をしておこう

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借地権は建物を建てるために他人の土地を借りる権利のこと


借地権とは、建物の所有を目的として、土地を借りるための権利です。
一戸建て住宅で、土地と建物の所有者が異なる時は、土地に対して借地権が設定されていることが分かります(ただし、借地権でなくとも、土地が夫で建物が妻というような設定のされ方をされていることはあります)。

ちなみに、借地権が設定されている時の土地を底地と呼びます。
借地権には、大きく、地上権賃借権の2つがあります。

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地上権とは

地上権は建物や工作物を所有するために他人の土地を使用する権利のことで、以下の3つの特徴があります。
  1. 地主に登記義務があること
  2. 地上権の譲渡に地主の承諾は必要ないこと
  3. 抵当権が設定できること

地上権は地主に登記義務があるため、登記簿謄本を取得することで、地上権についての記載を確認できます。
なお、地上権は地下鉄などの地下部分や高速道路などの空中部分などもあります。

例えば、家の地下にトンネルが通っているような場合には鉄道事業者により地上権が設定されており、鉄道事業者は土地の所有者の承諾なくトンネルの補修ができますし、土地の所有者の承諾なく譲渡することもできます。
また、建物の上を電線が通っているような場合には電力会社による地上権が設定されます。これも、トンネルの例と同じく土地の所有者の承諾なく補修や譲渡が可能です。

土地賃借権

借地権には地上権のほか、土地賃借権がありますが、一般的に借地権と言えば土地賃借権のことを指します。

地上権に対して、土地賃借権には以下の3つの特徴があります。

  1. 通常、登記されない
  2. 譲渡時に地主の承諾が必要
  3. 抵当権は設定できない

地上権と比べると土地賃借権は賃貸人の承諾を得て土地を間接的に支配する権利で、弱い権利です。

地上権賃借権
登記義務ありなし
譲渡地主の承諾不要地主の承諾要
抵当権設定できる設定できない

5つの借地権

地上権と土地賃借権の分け方以外に、借地権には5つの種類が存在します。
  1. 普通借地権
  2. 定期借地権
  3. 事業用定期借地権
  4. 建物譲渡特約付借地権
  5. 一時使用目的の借地権

それぞれ、契約期間や更新後の存続期間に違いがあり、表にすると以下のとおりです。

借地権の種類期間の定め契約期間更新1回目2回目以降
旧法堅固建物あり30年以上30年以上
なし60年30年
非堅固建物あり20年以上20年以上
なし30年20年
新法普通借地権あり30年以上20年以上10年以上
なし30年20年10年
一般定期借地権50年以上
建物譲渡特約付借地権30年以上
事業用借地権10年以上50年未満

①普通借地権

普通借地権は更新の可能な借地権であり、当初30年、1回目の更新時に20年、以降10年を上限として更新可能です。
なお、平成4年8月1日に借地借家法が施行された以降に契約された借地権は新法に基づく借地権、以前に施行された借地権のことは旧法に基づく借地権としてその内容が異なります。

旧法に基づく借地権では、建物の構造により2種類に分けられています。
その区分は堅固建物非堅固建物かの違いで、堅固建物は石や土、レンガ、コンクリートなどで建てられた建物、非堅固建物は木造等の建物を指し、それぞれで契約期間や更新後の存続期間に違いがあります。

具体的には、堅固建物では期間の定めがある場合で契約期間は30年以上、更新後の存続期間も30年以上となりますが、非堅固建物の場合、それぞれ20年以上となります。
一方、期間の定めのない場合には堅固建物で、契約期間が60年、更新後の存続期間が30年とされ、非堅固建物では契約期間が30年、更新後の存続期間が20年となります。

②一般定期借地

一般定期借地権は更新がなく、契約終了後に更新できない借地権で、契約期間を50年以上で設定できます。
また、契約終了後は更地にして賃貸人に返還する必要があります。

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③事業用定期借地権

店舗や商業施設の建設など、事業用に土地を借りるための借地権で、契約期間は10年以上50年未満で設定します。
こちらも、契約終了後は更地にして賃貸人に返還する必要があります。

④建物譲渡特約付借地権

契約期間終了後は、土地所有者が借地人から建物を相当の対価で買い取る必要があります。契約期間は30年以上で設定します。

⑤一時使用目的の借地権

一時使用目的の借地権は、工事の仮設事務所やプレハブ倉庫などで一時的に土地を借りるものです。

借地権を設定して土地を活用したい場合は、借地契約や登記など様々な手続きが必要です。これらの手続きを自分だけで行うことは難しいものですので、土地活用のプロに相談して依頼すると良いかもしれません。
契約するまでは無料で相談できますし、相談する企業によっては実地調査をした上で収益プランを試算し、さらに効率の良い活用方法を提案してくれます。まずが、複数の企業から資料を取り寄せてみることをおすすめします。

土地活用比較サイトの利用手順
土地活用比較サイトの利用手順

借地権を登記するメリット

借地権の内、賃借権は登記の義務はありません。
しかし、登記することもできます。その際には、賃貸人の承諾が必要となりますが、賃借権を登記するのにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

貸し手側(土地所有者)のメリット

貸し手側としては借地権の中でも特に定期借地権の際に登記のメリットが生じます。
定期借地権においては、最初に設定した契約期間が終了した後は、借り主は建物を解体して更地(原状)にして変換する必要がありますが、50年以上も居住していると、借り主が土地を返還しないケースも考えられます。

このような場合には、定期借地契約終了に基づいて明渡請求することになりますが、その際の証明として、書面が必要となります。
定期借地権の内、一般定期借地権は必ずしも公正証書による必要がなく、公正証書以外の書面で契約していた場合には、その書面を紛失すると契約関係を証明する手立てがなくなります。
そのようなことが起こらないよう、書面の保管を厳格にする必要があるのはもちろんですが、50年以上も経つと相続が発生している可能性も高く、書面の紛失についても想定しておくべきでしょう。

結論から言うと、書面を紛失していた場合、公正証書で契約を締結していれば、存続期間内であれば公証役場で取得することができますが、そうでない場合には紛失すると借地権を証明する手立てがなくなります。

しかし、定期借地権を登記しておけば書面を紛失していても、借地権の存在を証明することができます。

借り主側のメリット

借り主側のメリットとしては、まず借地権を第三者に主張することができます。第三者に対抗するとは、賃貸人と賃借人の二者関係以外に、第三者が登場した場合に、自分が本当の権利者であることを主張することができるという意味です。
具体的には、賃貸人が土地を売却して所有者が変わるような場合が挙げられるでしょう。

とはいえ、土地の賃借権は賃借権者がその土地の上に登記されている建物を所有している場合には、土地の賃借権の登記がなくとも第三者に対抗できます。また、建物の賃借権についても、その建物の引き渡しを受けることで賃借権の登記がなくとも、第三者に対抗できます。

ただ、定期借地権においては借地権の存続期間中に借地上の建物が滅失した場合、定期借地権の登記をしていないと第三者に対して借地権を対抗できなくなります。

この際には建物滅失後、再築するまでの間の2年間で借地上に立札等で掲示することで借地権の対抗が可能になります。

一方、定期借地権の登記を行っておけばこのような立札をせずとも第三者に対して対抗力を持つことができます。
また、借地権を登記することで、土地の上に損する建物を担保として抵当権を設定する以外に、借地権が地上権であれば登記することで抵当権を設定できるほか、賃借権であれば質権や仮登記担保権、譲渡担保権などの目的とすることができます。

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賃借権設定登記にかかる費用と手続き


借地権の内、賃借権の設定登記にかかる費用と手続きについて解説します。

登記に必要な書類

まず、賃貸借設定登記の手続きに必要な書類をお伝えします。
賃借権を登記するにあたって賃貸人が用意する書類は以下のとおりです。
  1. 賃貸借契約書
  2. 印鑑証明書
  3. 登記識別情報(権利証)
  4. 固定資産評価証明書
  5. 実印
  6. 本人確認書類

この内、賃貸借契約書は登記を依頼する司法書士が作成するため、②番以降を用意する必要があります。
固定資産評価証明書については、毎年固定資産税の納付書と一緒に同封されている書類で構いませんが、手元にない時は市役所の税務課で取得することもできます。

次に、賃借人が用意する書類は以下のとおりです。

  1. 認印
  2. 本人確認書類

賃借人の場合は、認印と本人確認書類だけなので、事前に役所などに行って書類を準備する必要はありません。

登記にかかる費用

賃借権設定登記にかかる費用は、登録免許税司法書士報酬に分けて考える必要があります。
まず、登録免許税ですが、登記するにあたり必要となる税金で、固定資産税評価額を元に算出することになっており、その計算式は以下のとおりです。
  • 賃借権設定登記の登録免許税=固定資産税評価額×1,000分の10

例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば必要となる登録免許税は100,000円です。なお、固定資産税評価額は、実勢価格の7割程度を目安に定められるもので、3年に1度評価替えが行われます。

つまり、売買すれば1,400万円程度で取引できる土地の固定資産税評価額が1,000万円程度を目安に設定されることになります。
なお、登録免許税はどこで登記しても同じ額がかかりますが、司法書士報酬は登記を依頼する司法書士事務所によって異なります。
賃借権設定登記の費用は30,000円程度が相場となっています。

つまり、固定資産税評価額1,000万円の土地に賃借権を設定する時は、登録免許税100,000円に司法書士報酬30,000円を加えて、130,000円程度の費用がかかることになります。

建物登記が土地賃借権設定登記の代わりになる

土地の賃借権については、登記する義務がないため、実際には登記されないことがほとんどです。
そこで、借地借家法には救済措置があります。それは、すでに少しお伝えしたように、土地に賃借権を設定せずとも、土地の上に登記されている建物を所有していれば、土地賃借権設定登記の代わりとすることができるということです。

所有権登記

建物の登記については所有権登記(権利登記)表示登記に2つに分けることができます。
表示登記にはその建物がどこに、どのような用途で所在されていて、面積はどのくらいかなど、不動産の物理的情報が記載されます。

一方、所有権登記ではその建物の所有者が誰か、抵当権などの設定はあるかということが記載されます。
表示登記は土地家屋調査士に依頼するもので、土地家屋調査士に支払う報酬は必要となるものの、所有権登記のように登録免許税がかかることはありません。

一方、所有権登記は司法書士に依頼するもので、登録免許税と司法書士報酬を支払う必要があります。

表示登記

実は、賃借権登記の代わりとなる登記は、表示登記だけでも構いません。
また、地上権についても建物登記で代用できるとされています。地上権は物件で、賃借権とは異なり地主に登記義務があります。

しかし、地上権の登記は賃借権と同様、建物の登記による代用が認められます。

借地権を相続登記するには

人が亡くなって相続が発生すると、土地の所有権などは相続人に移転登記する必要がありますが、借地権も相続登記が可能なのでしょうか。
結論から言うと、借地権も相続登記することが可能です。
被相続人(亡くなった方)が借地の上に建物を建てていたような場合に、借地上の建物と借地権を相続する時に地主の承諾は必要ありません。
事後、土地の賃借権を相続により取得したことを伝えればそれで足ります。

ただし、借地の上の建物はあくまでも被相続人(亡くなった方)の所有権なので、所有権移転の相続登記をする必要があります。
ちなみに、借地権の相続では、地主から賃貸借契約書の名義書換要求されることもありますが、借地人はこれに応じる義務はありません。
念のため、今後誰が借地人となって賃料を支払うのかを内容証明で通知すれば良いでしょう。

相続と遺贈では扱いが異なる

上述通り、借地権を相続によって引き継いだ場合には地主に許可を受ける必要はなく、事後の報告程度で構いません。

一方、遺贈によって借地権を譲り受ける場合には地主の承諾が必要です。
なお、遺贈とは、遺言によって財産を受け取ることです。
遺贈の場合には、遺言書によって財産を受け取ることになった人に対し、遺産の引き渡しなどを実行する人(遺贈義務者)が、借地権の遺贈について地主に通達し、地主がこれに対して承諾する必要があります。

地主がこれを承諾しない場合には、遺贈義務者は家庭裁判所に申立を行い、許可をもらうことができます。
地主の承諾が、裁判所による許可を得られたら、登記が可能となります。なお、裁判所に許可を求めても、却下された場合には遺贈ができません。

借地権の相続税評価額

借地権を相続する時には、その権利も所有権などと同じく、相続税の課税対象となります。
具体的には、相続税路線価などを用いて、所有権の場合の評価額を算出した後に、借地権割合を掛け合わせて算出する方法が取られます。

借地権割合は、相続税路線価の掲載された書面上で確認することができ、例えば「1,000C」などと掲載されていたら、借地権割合は70%となります(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。

なお、上記は普通借地権の相続税評価額の算出方法で、定期借地権の場合は定期借地権の設定期間などによって計算する、少しややこしいものになります。
詳しくは司法書士や税理士などに相談すると良いでしょう。

まとめ


借地権の登記についてお伝えしました。
借地権は、登記することもできますが、実際にはほとんどが登記されておらず、借地上に存在する建物の登記によって第三者に対抗する方法が取られています。
一度借地権が設定されると、契約期間は数十年に及ぶのが一般的で、貸主は地代を得ることができますが、底地(借地が設定された土地)としての売却はあまり一般的でなく、難航することが予想されます。

相続した土地にすでに借地権が設定されているようなケースではしょうがないですが、土地活用の一つの方法として借地の利用を検討しているような場合には慎重に話を進める必要があります。
底地の売却にせよ、土地活用の一つして借地にするか売却するか迷っているような場合でも一度、不動産会社の担当者からアドバイスをもらうと良いでしょう。

初心者でもわかる!
記事のおさらい
借地権とは?
土地を借りる権利のことで、地上権と賃貸件に分かれています。詳しくはこちらでご説明しています。
借地権は登記した方がいい?
登記しておくことで所有権を主張することが可能です。登記のメリットについてはこちらをご確認ください。
借地権の登記にかかる費用は?
借地権の登記には、登録免許税と司法書士報酬がかかります。詳しくはこちらでご説明しています。

底地の売却や借地権設定の検討など、広範な知識を要する取引に関しては、知識と経験を備えた担当者を見つけることが大切です。

すでに不動産会社に知り合いがいるのであれば別ですが、そうでない場合には、一括査定サイトを活用して、複数の不動産会社の担当者に現状を説明しながら、的確なアドバイスを受けられるパートナーを地道に探していくと良いでしょう。
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