火事があった建物の解体費用の相場は、30坪なら約60万~180万円、50坪は約150万~300万円、100坪なら約300万~600万円です。ただし、実際は建物構造などによって異なり、火災による損傷が激しいほど高くなります。内訳は基本解体費用、人件費、廃棄物の処理費用となっており、見積もりから正確な金額を把握できます。
本記事では火事があった建物の解体費用の相場と、費用の内訳、解体費用を安くする方法について解説しています。
▼家の解体費用の基礎知識はこちらの記事でも解説しています
火事で燃えた建物の解体費用の相場
火事にあった際の解体費用の相場は坪単価2万円〜6.5万円ですが、構造によって異なります。
構造別の解体費用の坪単価や、坪数別の相場は以下のとおりです。
▼火事のあった建物の解体費用の相場
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 約2万~4.5万円 |
鉄骨造 | 約4万~5.5万円 |
鉄筋コンクリート造(RC) | 約4.5万~6.5万円 |
坪数 | 相場 |
---|---|
30坪 | 約60万~180万円 |
50坪 | 約150万~300万円 |
100坪 | 約300万~600万円 |
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火事の被災者への補助金や減免制度
家が火事にあった被災者は、自治体によっては補助金や減免制度を利用できます。災害見舞金(生活再生支援金)や一般廃棄物処理費用減免制度によって、支援金を建物の解体費用に充てることができたり、解体した建物の処分費用の一部を補うことができます。
制度名 | 内容 | 支給額 |
---|---|---|
災害見舞金(生活再生支援金) | 火災によって建物が全焼または半焼した場合に支給 | 2万円~10万円 |
一般廃棄物処理費用減免制度 | 火災によって全焼または半焼した建物を解体する場合に支給 | 自治体窓口に相談 |
以降で制度の概要を解説しています。
炎害見舞金制度(生活再生支援金)
炎害見舞金制度(生活再生支援金)とは、火災や水害などにより、生活の拠点となる住家が半壊以上の被害を受けた方に見舞金の支給等を行う制度です。制度の内容は自治体によって異なりますが、支給額の相場は2万円~10万円です。「全焼の場合」と「半焼の場合」で金額が異なるので注意しましょう。
▼災害見舞金制度の支給額の相場(自治体別)
自治体名 | 全焼の場合 | 半焼の場合 | ||
---|---|---|---|---|
単身世帯 | 2人以上世帯 | 単身世帯 | 2人以上世帯 | |
東京都世田谷区 | 40,000 | 60,000 | 30,000 | 40,000 |
東京都港区 | 50,000 | 70,000 | 40,000 | 50,000 |
静岡県静岡市 | 100,000 | 100,000 | 50,000 | 50,000 |
愛知県名古屋市 | 70,000 | 90,000 | 50,000 | 70,000 |
大阪府大阪市 | 40,000 | 40,000 | 20,000 | 20,000 |
兵庫県神戸市 | 30,000 | 50,000 | 20,000 | 30,000 |
広島県広島市 | 30,000 | 45,000 | 20,000 | 30,000 |
福岡県福岡市 | 50,000 | 100,000 | 50,000 | 25,000 |
▼参考▼
- 東京都世田谷区公式サイト_災害見舞金・見舞品
- 東京都港区公式サイト_港区災害見舞金
- 静岡県静岡市公式サイト_被災届出証明書
- 愛知県名古屋市公式サイト_災害見舞金・弔慰金
- 兵庫県神戸市公式サイト_災害見舞金・弔慰金
- 大阪府大阪市公式_災害見舞金
- 広島県広島市公式_災害見舞金
- 福岡県福岡市公式_災害見舞金
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一般廃棄物処理費用減免制度
一般廃棄物処理費用減免制度とは、火災や自然災害の被害を受けた方を対象に、建物を解体後に発生する廃棄物の処理費用を一部または全額免除するという制度です。
自治体によっては全額免除となるケース(神奈川県横浜市のケース)もあります。しかし、自治体の窓口で相談して知ることが一般的です。
▼一般廃棄物処理費用減免制度がある自治体
自治体 | 減免割合 |
---|---|
神奈川県横浜市 | 全額 |
神奈川県平塚市 | 自治体の窓口に相談 |
茨城県小美玉市 | 自治体の窓口に相談 |
千葉県習志野市 | 自治体の窓口に相談 |
京都府京都市 | 自治体の窓口に相談 |
▼参考▼
罹災証明書(りさいしょうめいしょ)の取得が必須
火災をうけた際に「炎害見舞金制度」や「一般廃棄物処理費用減免制度」を利用したい場合は、罹災証明書(りさいしょうめいしょ)の発行が必須です。
罹災証明書とは、火災があった事実を証明するための書類で、各種被災者支援策の適用の判断材料として幅広く活用されています。
罹災証明書は、被災者からの申請をうけた自治体が住家の被害家屋を調査し、その結果に応じて被害の程度を証明するものです。
罹災証明書に記された被害状況によって、補助金や減免制度の支給額が変わります。
なお、発行の手順は以下の通りです。
- 火事の消化を担当した消防署で発行申請をする
- 自治体の調査員が火災現場で被害状況を確認する
- 自治体が被害の事実を認定して罹災証明書が発行される
補助金以外で火事の建物解体費用を安くする方法
補助金以外にも、火事で燃えた建物の解体費用を安くする方法はいくつかあります。
本章では、補助金以外で火事にあった建物の解体費用を安くする方法を解説しています。
- 火災保険を活用する
- 事前にゴミを処分する
- 複数業者から相見積もりを取る
- 解体前に売却する
1つずつ確認していきましょう。
火災保険を活用する
火災保険を契約していれば、損害保険金を受け取れます。さらに残存物取片付け費用保険のオプションを契約していれば、損害保険金とは別に、がれき撤去にかかった費用の実費が支払われます。
残存物取片付け費用保険が適用される費用の例は、以下の通りです。
- 建物の取り壊し費用
- がれきの搬出費用
- 清掃費用
ただし、一般的に限度額が設定されています。契約商品や契約時期などによって限度額が異なるため、詳しくは保険会社に確認しましょう。
事前にゴミを処分する
できるだけ費用をおさえるためには、自分でできるゴミ処分を進めておきましょう。自分でゴミ処分をすれば一般廃棄物として廃棄できるからです。自治体の減免制度を使うと火災による経済的な負担を軽減するために一般廃棄物の処理にかかる費用を免除してもらえます。
一方、業者が火災現場のゴミを処理する場合、産業廃棄物扱いとなって自治体の減免制度の利用ができません。そのため、できるだけ燃えていないゴミや火災ゴミは作業が始まる前に自分で処理しておきましょう。
複数業者から相見積もりを取る
解体費用を抑えるには、複数業者から相見積もりを取りましょう。同じ作業内容でも、業者によって数十万〜数百万円も異なる場合があります。
たしかに、火事にあった直後は精神的にも時間的にも余裕のない時期です。そのため、1社目の業者にすぐ決めてしまうケースもあるでしょう。しかし、なかには廃材の処理が乱雑でトラブルを引き起こす業者も存在します。
あまりにも解体費用が安過ぎる業者も、あとから追加請求をされる可能性があります。目安として3社以上から相見積もりを取り、費用と作業内容を確認することをおすすめします。
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解体前に売却する
もし、火事後に引っ越すのであれば、解体工事をせずに売却すれば費用の負担軽減が可能です。火災保険をもらって売却してしまえば、解体や土地売却など面倒な作業を不動産会社にすべて頼めます。当然、解体工事費用は土地を買い取った不動産会社が負担します。
ただし、全焼して大規模工事が必要だったり火事によって亡くなった方がいたりすると、土地の価値が大幅に下がるかもしれません。経済的な負担と心理的な負担を天秤にかけて、どちらが最適な選択か検討しましょう。
火災にあったあとの対応の流れ
火災にあったあとの対応の流れは、以下の8つのステップに分けられます。
- 罹災証明書の取得
- 保険会社に連絡
- 焼け跡の確認・貴重品の回収
- ご近所へあいさつ
- 解体工事業者へ依頼
- 仮住まいの手配
- 電気・水道・通信などの契約解除
- 解体開始
手順を間違うと保険金を受け取れなかったり、スムーズに解体が進まなかったりするため、1つずつ確認していきましょう。
罹災証明書を取得する
火事で家が焼けたら、まず罹災証明書(りさいしょうめいしょ)を発行しましょう。罹災証明書とは、火災があった事実を証明するための書類です。
保険の手続きや補助金申請などで必要なため、最初に取得しましょう。
罹災証明書の発行の手順は以下の通りです。
- 火事の消化を担当した消防署で発行申請をする
- 自治体の調査員が火災現場で被害状況を確認する
- 自治体が被害の事実を認定して罹災証明書が発行される
罹災証明書に記された被害状況によって、保険金や補助金の金額が変わります。先に解体やゴミ処理を始めないよう注意しましょう。
保険会社に連絡
続いて保険会社へ連絡して保険金請求の手続きをしましょう。
保険会社が現地で被害状況を調査して保険金が計算されます。先に解体を始めてしまうと保険金の算出ができないため注意しましょう。
また、保険金の申請には以下の書類が必要です。
- 罹災証明書
- 修理・解体業者の見積もり
- 物件の被害状況がわかる写真
- 損害明細書
- 住民票
- 印鑑証明書
- 建物登記簿謄本
これらの書類を保険金請求書と一緒に提出します。保険会社から詳細に教えてもらえるため、安心してください。
焼け跡の確認・貴重品の回収
また出火するおそれがあるものはないかをチェックしたり、貴重品・金品を回収したりするために、焼け跡の確認をします。金品や利用できる家具・家電を狙った火事泥棒が来る可能性もあるため、はやめに確認しておくとよいでしょう。
また、この時点で回収できそうな処理物を一般廃棄物として処分しておくと解体費用を抑えられます。解体工事業者に依頼する前に対応しましょう。
▼廃材処理の方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ご参照ください。
ご近所へあいさつ
火事が故意でなかったとしても、ご近所へお詫びしましょう。周辺の建物に火が移ってしまって実害が出た場合でも、故意または重大な過失でない限り賠償責任はありません。
しかし、近隣住民への実害がなかったとしても、騒音や悪臭などで精神的な被害を与えていると予測できます。実害があってもなくても、誠心誠意、お詫びの気持ちを示す必要があります。
火災保険の類焼損害補償があるなら、近隣の建物が燃えた場合にその損害を補償できます。積極的に利用しましょう。
解体工事業者へ依頼
保険会社の調査が終わったら、解体工事業者へ依頼しましょう。解体工事業者を選ぶポイントは、以下の通りです。
- 建設業・解体工事業の許認可を受けている
- 火事現場の解体が得意
- 火災消臭技術を持っている
- 見積書・契約書を提示してくれる
- マニフェスト(産業廃棄物の管理伝票)を発行している
3社程度を目安に相見積もりを取ると、信頼できる業者を見極められます。
▼解体業者の選び方についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。ご参照ください。
仮住まいの手配
一時避難でホテルや知人の家で過ごしているかもしれませんが、ずっとそのまま過ごすわけにはいきません。焼けた家を解体し、建て直すには数ヶ月間かかります。
今までと変わらない日常生活を送るためには、なるべく元の家の近くで家を探しましょう。職場の近くで、子どもがいれば通学範囲内で探す必要があります。地域の不動産屋に相談したり、不動産ポータルサイトで検索したりして仮住まいを見つけましょう。
仮住まいや生活建て直しのために臨時費用の保険金が火災保険から出る場合もあります。
電気・通信・ガスなどの契約解除
ライフラインに関する契約を解約しましょう。解約しないと費用がかかり続けてしまううえに、漏電の恐れがあります。一般的に消防署から供給停止の連絡が入りますが、念のため自分でも解約の手続きをしましょう。
具体的には、以下の契約を解除します。
- 電気
- ガス
- インターネット回線
- 電話回線
解体に水が必要な場合があります。解体業者に水道の解約をして問題ないか確認しておくと安心です。
解体工事開始
ここまでできたら、ようやく解体工事の作業を開始できます。解体中は真っ黒な煤(すす)が舞い上がるため、洗濯物や家屋を汚す可能性があります。
そのため、開始前には改めて近隣へご挨拶に回りましょう。解体工事で再びご迷惑をおかけするかもしれない旨と、細かな工程を伝えておく必要があります。
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火事後の解体工事を行う場合の注意点
火事後の解体工事を行う場合、以下の2つの注意点に気をつけなければなりません。
- 火災保険が適用される範囲を確認する
- 火災現場の解体経験が豊富な業者に依頼する
注意を怠ると、予想以上に解体費用がかかってしまう可能性が出てきます。解体工事後に後悔しないよう、1つずつ詳しく確認しましょう。
火災保険が適用される範囲を確認する
解体業者に依頼する前に、火災保険の適用範囲を確認しましょう。同じ火災保険に入っていても被害の大きさによって受け取れる金額は大きく変わります。まずは保険会社に現場に入って調査をしてもらい、いくらの保険金がおりるか保険金額を算出してもらいましょう。
もし、確認前に解体を始めてしまうと火災被害の大きさや程度がわからず、保険金が降りない可能性があるため注意してください。
火災現場の解体経験が豊富な業者に依頼する
ただの解体業者でなく、火災現場の解体に慣れている業者に依頼をしましょう。たしかに解体方法や工程、必要な作業内容は一般的な建物の解体工事と大きく変わりません。しかし、廃材処理や消臭処理は特殊な作業です。
特に費用の割合を占める廃材処理は、適切な廃材処理のできる業者のほうが安く済みます。ホームページや口コミを確認して、火災現場の解体を得意としている業者を手配しましょう。
私の家の解体費用はいくら?
火事にあった建物の解体工事費用は高くなりやすい
火事にあった建物の解体工事費用の相場は、30坪の木造住宅で250万円〜250万円程度、45坪の木造住宅で250〜300万円程度、90坪の鉄筋コンクリート造住宅で1,000万円前後です。もちろん、住宅の大きさや建物の材料、廃材の量によって費用は変動します。
できるだけ解体工事費用を抑えたいのであれば、以下の方法を実践しましょう。
- 火災保険を活用する
- 事前にゴミを処分する
- 自治体の減免制度や補助金・助成金制度を活用する
- 複数業者から相見積もりを取る
- 解体前に売却する
火事で大変な状況ですが、はやく日常を取り戻せるように後処理を進めていきましょう。
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