土地を所有していると毎年かかる固定資産税について、「自分が所有している農地に固定資産税はいくらかかるのか」「かからない条件はあるのか」といった疑問を抱えている人もいるでしょう。
地目が田や畑の土地は農地にあたり、地目が農地以外の土地でも現在農地として使用していると認められる土地は、農地として扱われることが法律で決められています。
本記事では、「農地の固定資産税の求め方」「免除となる条件はあるのか」などについて解説しています。また、農地の固定資産税についてシミュレーションもしているため、ぜひ参考にしてください。
農地(田・畑)には種類がある
農地の固定資産税を算出するためには、所有する土地がどの農地区分に当てはまるのかを確認する必要があります。農地区分は、一般農地・一般市街化区域農地・特定市街化区域農地・生産緑地の4種類があります。
また、固定資産税はその土地の固定資産税評価額をもとに計算され、その固定資産税評価額は固定資産税評価基準額によって決められます。
農地の場合、その農地が今後も農地として使用される前提の農地評価と、宅地として使用される可能性がある宅地並評価の2種類があります。
一般農地
一般農地とは、都市計画区域外にある農地、都市計画区域内の調整区域内にある農地、そして生産緑地に指定された農地のことを指します。基本的に一般農地では、長期的に農地が利用されることが前提であるため、売買価格の決定の際には農地の収益性を考慮して調整されます。
一般農地について、農地の売買実例価格を基に評価され、課税に関しては一般農地の負担調整措置が講じられます。
一般市街化区域農地
一般市街化区域農地とは、特定市街化区域農地に含まれない市街化区域の農地のことを言います。
市街化区域とは、すでに市街地が作られている土地や、およそ10年以内に市街化を進めて行く地域です。そのため、一般市街化区域農地は今は農地でも今後宅地に変わる可能性が高いため、宅地に近い評価額になります。
ただし、一般市街化区域農地は一般農地の負担調整措置が適用されるため、評価額は高くなっても実質の課税は農地に準じた課税となります。
特定市街化区域農地
特定市街化区域農地は、首都圏・近畿圏・中部圏の3大都市圏内の特定の市の市街化区域内にある農地です。
この農地は、一般市街化区域農地と比べてもより宅地へ転用される可能性が高いため、同じく宅地に近い評価額になります。そして、特定市街化区域農地は宅地の負担調整措置が適用されます。
生産緑地
生産緑地とは、市街化区域内の農地のうち都市計画法によって指定された農地のことです。生産緑地として指定されるための要件として、生産緑地法第3条に以下三つがあります。
- 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
- 五百平方メートル以上の規模の区域であること。
- 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
生産緑地地区の農地は生産緑地法により転用規制されているため、評価・課税は一般農地と同様の取り扱いとされます。
農地評価
農地評価は、その農地で作物をどれくらい収穫できるか、それに伴いどれだけ儲けられるかをもとに評価されるものです。農地評価では農地の収益性の低さから負担の調整なども行なわれます。
一般農地と生産緑地地区の指定を受けた農地がこの農地評価にあてはまります。
宅地並評価
宅地並評価は一般市街化区域農地と特定市街化区域農地に適用されますが、その中でも違いがあります。
一般市街化区域農地では、現状農業をしている場合は農地評価と同じく負担の調整が行われる一方、特定市街化区域農地では負担の調整措置は行われません。その代わりに指定から4年間は軽減率が適用されます。
農地(田・畑)の固定資産税の算出方法
固定資産税の算出方法は、農地評価と宅地並評価で異なり、宅地並評価の中でも一般市街化区域農地と特定市街化区域農地で異なります。
下の画像は農地区分ごとの固定資産税の算出方法を説明したものです。
通常、本則税額と調整是額のうち額が低いほうが課税されます。調整税額の算出には負担水準や負担調整率を出す必要があります。
本章では上記画像についての詳しい解説と、それぞれの農地区分においての固定資産税のシミュレーションを行ないます。
農地の固定資産税の特例
一般農地は負担水準の区分に応じて税負担の調整措置が取られます。特定市以外の市街化区域については、評価の方法は違えど課税に関しては一般農地と同じ負担調整措置が講じられます。
特定市において生産緑地でない農地は宅地と同様に扱われ、宅地と同様に課税標準を3分の1とする特例措置が適用されます。
負担水準とは
負担水準とは、土地の固定資産税課税標準額を決定する際に用いられる数値のことを言います。農地に係る、前年度課税標準額を当該年度の評価額で割って求めることができ、今年度に対して前年度の標準額がどの程度の水準であるかの指標になります。
負担水準は一般農地・市街化区域でそれぞれ以下の計算式で求めます。
- 負担水準(一般農地)=前年度の課税標準額÷当該年度の評価額
- 負担水準(市街化区域)=前年度の課税標準額÷(当該年度の評価額×3分の1)
負担調整率とは
負担調整率とは、地方自治体や税務当局が土地の市況や用途に基づいて定めるもので、特定の地域や用途における課税の公平性を確保するためのものです。
負担調整率は、前述した計算方法で求めた負担水準の区分に応じて求められます。それは以下の通りです。
負担水準 | 負担調整率 |
---|---|
0.9以上のもの | 1.025 |
0.8以上0.9未満のもの | 1.05 |
0.7以上0.8未満のもの | 1.075 |
0.7未満のもの | 1.1 |
一般農地・生産緑地のシミュレーション
一般農地・生産緑地の場合は以下のように税額を求めることができます。
(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率 ×税率(1.4%)
上記の計算式を基に、次のような農地の場合、固定資産税がいくらになるかのシミュレーションをしていきます。
- 農地区分:一般農地
- 固定資産税評価額:60万円
- 前年度の課税標準額:50万円
- 本則税額
- 調整税額
負担水準が0.83の場合、負担調整率は1.05
50万円×1.05×1.4%=7,350円
本則税額が8,400円で調整税額が7,350円であるため、7,350円が固定資産税として課されることになります。
一般市街化区域農地のシミュレーション
一般市街化区域農地の場合は以下のように税額を求めることができます。
(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率 × 税率(1.4%)
上記の計算式を基に、次のような農地の状況の場合、固定資産税がいくらになるかのシミュレーションをしていきます。
- 固定資産税評価額:5,000万円
- 前年度の課税標準額:3,000万円
- 本則税額
- 調整税額
負担水準が1.8の場合、負担調整率は1.025
3,000万円×1.025×1.4%=43万500円
本則税額が23万円で調整税額が43万500円であるため、23万円が固定資産税として課されることになります。
特定市街化区域農地のシミュレーション
特定市街化区域農地の場合は以下のように税額を求めることができます。
(調整税額) : (前年度の課税標準額 + 当該年度の評価額 × 3分の1
×5% ) × 税率(1.4%)
※軽減率は、新たに特定市街化区域農地になった農地に適用(初年度;0.2~4年度目;0.8)
上記の計算式を基に、次のような農地の状況の場合、固定資産税がいくらになるかのシミュレーションをしていきます。
- 固定資産税評価額:5,000万円
- 前年度の課税標準額:3,000万円
- 本則税額
- 調整税額
本則税額が23万3,000円で調整税額が43万1,000円であるため、23万3,000円が固定資産税として課されることになります。
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農地(田・畑)の固定資産税はかからないケースもある
農地の固定資産税がかからないのは、その農地による儲けがほとんどない場合です。地域内の同一人物が所有する土地の課税標準額が30万円未満の場合は、固定資産税の支払いが免除されます。また、災害にあった場合や生活保護を受けている場合にも固定資産税はかかりません。
農地の固定資産税の納税義務の対象となるのは、毎年1月1日時点の固定資産課税台帳にその土地の所有者として登録されている人です。
災害や生活保護による免除
災害の被害にあった場合や生活保護を受けている場合には、固定資産税の減税・免税の対象となります。
減税・免税の対象や範囲に関しては、各地方自治体により異なるため、該当する土地が固定資産税の免税対象になるかどうかをあらかじめ確認しておく必要があります。
審査への見直し要求で減額
農地評価額や固定資産税額に不服がある場合、固定資産評価審査委員会に審査請求を行なうことができます。
審査への見直し要求の申し出は、税額の公示された日から納税通知書の交付後3ヶ月までの受付となっています。条件として、申し出を出来る人は納税義務者に限られていて、文書での申し出が必要です。
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農地(田・畑)の固定資産税の支払いについて
一般的に、固定資産税の額は宅地に比べて農地のほうが安いとされています。
しかし、固定資産税の評価は毎年1月1日を基準にして行なわれるため、宅地から農地に転用をした場合、タイミングによってその年の課税額が変わります。
転用のタイミングで課税額が異なる
前年に宅地から農地に転用をした場合、当年の課税標準額は転用後の農地として地目が反映されます。そのため、12月末などに農地に転用した場合は農地として課税されます。
また、当年に宅地から農地に転用をした場合、当年の1月1日時点では地目は宅地として課税評価されます。そのため、例えば1月末や2月初頭に農地へと転用した場合、固定資産税の評価上は地目が宅地なので、翌年から農地での課税評価となります。
支払い方法
農地の固定資産税の支払いは、その他の固定資産税の支払い方法と同様です。
支払い方法は銀行・郵便局の窓口のほかに、自治体にもよりますが様々な方法を選ぶことができます。例えば、コンビニでの納付やクレジットカード払い、口座振替などです。
また、支払い回数は、4月・7月・12月・2月の年4回の分納か、1年分の一括払いのどちらかが原則となります。納付のタイミングは自治体によって異なるため、分からなくなった場合は税務課に早めに相談しましょう。
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2022年問題の現状
1992年に生産緑地法が改正されたときに、生産緑地として指定された農地の固定資産税が安くなるという優遇措置が取られました。しかしそれには期限があり、30年後の2022年に終了することで、土地を売りたいと考える人が増えて一気に不動産市場に出回り、市場の混乱や都市環境の悪化などが起こることを危惧されたました。これが生産緑地の2022年問題です。
この2022年問題に関して、2017年に設けられた特定生産緑地制度により、生産緑地となっている土地は条件を満たして継続を希望した場合、生産緑地としての適用を10年間受けられるようになりました。そのため、ほとんどの生産緑地が引き続き特定生産緑地となり、市場に売り出されて混乱を招くようなことはなく、危惧されていた問題は防げたようです。
ただ、これは問題の先延ばしをしているだけということと、生産緑地の条件を満たさない場合は特定生産緑地制度を利用できないという課題があります。営農を継続する意思がない人や、営農義務は果たしていても特定生産緑地の指定を受けなかった人などは、2022年問題の影響を大きく受けると言えます。
農地(田・畑)の固定資産税は場合によってはかからない
農地の固定資産税は、課税標準額の土地の合計額が30万円に満たない場合はかかりません。そもそも固定資産税は、サービスによる利益を得ているという前提のもと、その利益に応じた負担として支払う税金であるため、儲けがない場合は免税の対象となります。
農地の固定資産税は基本的には宅地より安くなりますが、農地にも種類があるため気を付けましょう。固定資産税の算出方法は、種類によって評価や減税方法が違うことも覚えておきましょう。