事業用の不動産や不動産を売却する段階において、以下のような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか
・「相続登記にかかった費用は、不動産所得の経費にできるの?」
・「相続登記にかかった費用は、譲渡所得の経費にできる?」
そこで本記事では、以下のようなテーマについて詳しく解説しています。
- 相続登記の費用は経費にできるのか
- 相続関連の費用で経費にできないもの
- 相続した不動産所得の経費に算入する場合
- 相続登記にかかる費用の勘定科目は? etc…
また、不動産所得や譲渡所得において相続登記以外で経費となるものについても解説しています。
受け継いだ不動産の事業や売却について、スムーズな経費計上を行う際の一助となれば幸いです。
不動産の相続について基礎的な知識を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
相続登記の費用は経費にできるのか
本書では、相続登記の費用が経費になるか否かをご紹介します。
相続登記費用は経費にできる!
相続登記にかかる費用は、不動産所得や譲渡所得を計算するときの必要経費に算入することができます。
例えば、登録免許税や書類の取得費用などが経費になります。
確定申告や譲渡所得を計算する際は、これらの費用を忘れずに計上しましょう。
経費にできる費用
相続登記にかかる費用のなかで、必要経費となるものは以下の3つです。
- 登録免許税
- 書類の取得費用
- 司法書士費用
登録免許税や司法書士費用は、それぞれ10万円以上する場合もあります。そのため、確実に経費計上をすることで所得税を大きく節税することができるでしょう。
相続登記にかかる費用が経費として認められるのは、不動産の取得やその利益に直接関係するためです。
相続に関係する全ての費用を経費にすることはできないので注意してください。
相続関連の費用で経費にできないもの
相続に関係する以下の費用は、経費計上できないので注意してください。
- 葬儀費用や係争費用
- 代償分割の費用
それぞれの費用について詳しく解説します。
葬儀費用や係争費用
葬儀費用や弁護士費用などの係争にかかった費用は、不動産所得や譲渡所得の経費にできません。
これらの費用は、不動産の取得や売却とは直接関係がないため家事費として扱われることになります。経費として計上できるのは、あくまでも不動産の取得に対して関係のある費用のみです。
葬儀費用や係争費用は相続財産から負担することができるので、必要に応じて検討すると良いでしょう。
ただし、相続財産から費用を負担する場合は「誰が支払うか」で揉める可能性がある点に注意が必要です。
不動産相続の流れについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
代償分割の費用
不動産を代償分割で相続した場合、代償金を他の相続人に支払う必要があります。
この代償金は、不動産の取得費に含めることができません。
つまり、代償金を経費にすることはできないということです。代償金を支払うために借り入れた利子についても同様になります。
所得税基本通達38-7では、代償金と取得費の関係を以下のように明記しています。
代償金は数千万円になるケースも多いため節税効果が高いと思われますが、以上の理由から経費としては認められません。
相続した不動産所得の経費に算入する場合
相続した不動産がアパートなどの収益物件であり、その経営を続けていくというケースがあるかと思います。
相続した不動産で事業継承をする場合、相続登記費用は不動産所得を計算する際の経費として算入することが可能です。
不動産所得は以下の計算式で求めることができます。
- 不動産所得=総収入-経費
たとえば、アパート経営を相続した年の確定申告では、その年の家賃収入から登記費用や固定資産税、修繕費などを引いたものを不動産所得として申告します。
また、相続した不動産事業を法人化する場合、法人登記費用も経費とすることができます。
不動産所得の経費になるもの
相続した不動産がアパート経営などの場合、登記費用も含めてなるべく多くの経費を計上したいところです。
そこで、本章では登記費用以外で不動産所得の経費となる費用やならない費用について詳しくご紹介します。
経費になる費用
不動産所得の経費となる費用は、下記の通りです。
- 相続登記費用
- 固定資産税・都市計画税
- 不動産の維持管理費
- ローンの利息
- 保険料
- 共用設備にかかる費用
- 接待交通費
- 専門家への報酬など
これらの費用は、確定申告の際に経費として計上することができます。
固定資産税や維持管理費にはまとまった費用がかかりますので、金額を忘れずに記録し確実に経費計上するようにしましょう。
また、不動産会社との打ち合わせ他のため費用なども旅費交通費や接待交通費として経費にできます。かかった費用を都度記録することは大変ですが、レシートや領収書なども捨ててしまわないように管理することが大切です。
経費にならない費用
不動産に関係しているように見える費用でも、下記のように経費とならない項目があります。
- アパートローンの元本
- 所得税・法人税
相続した不動産について、アパートローンなどが残っているケースもあります。また、不動産事業を法人化させている場合もあるでしょう。
アパートローンの元本は、減価償却費として既に経費計上しています。そのため、改めて経費計上することはできません。
所得税や法人税などの税金は、原則経費として計上することができません。固定資産税など事業に直接的に関わるものについては、例外的に経費計上が認められるかたちになっています。
相続した不動産の売却益の経費に算入する場合
相続した不動産を売却するケースもあるかと思います。
不動産の売却益には譲渡所得がかかりますが、この譲渡所得を計算する際の相続登記費用は経費として算入することが可能です。
譲渡所得は、以下の計算式で求めることができます。
- 譲渡所得=売却益-(取得費+譲渡費用)
取得費とは、その不動産の購入価格や不動産取得税、登記費用を合わせたものです。ここでいう登記費用とは、相続で発生した登記費用も計算に入れることができます。
つまり、相続登記費用は譲渡所得の経費に算入することができるということです。
また、相続税を支払う必要がある場合で、一定の要件を満たすと相続税額の一部を取得費に加算することができます。
参考:[国税庁]:[No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例]
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相続した不動産の取得費と譲渡費になるもの
相続した不動産を売却する場合は、取得費と譲渡費用を計上することで譲渡所得を抑えることができます。
そこで、本章では取得費と譲渡費用に計上できるものについて詳しく解説します。
登記費用以外で不動産の取得費になるもの
不動産の取得費となる費用は、下記の通りです。
- 不動産の購入費
- 取得時の登記費用
- 不動産の調査費用
- 訴訟費用など
これらの費用は、相続登記費用と同じく不動産の取得費に含めることができます。
取得費については過去に遡って金額を確かめる必要があるため、手間がかかるケースが多い場面も多いでしょう。不足なく計上することで大きな節税効果を生み出すので、可能な限り取得当時の情報を確認してみることがおすすめです。
また、被相続人が不動産を購入したときに何らかのトラブルで訴訟費用がかかっているケースもありますが、この費用も取得費に含まれます。
譲渡費用となるもの
不動産の譲渡費用となる費用は、下記の通りです。
- 仲介手数料
- 土地調査費
- 分筆費用
- 買主の要望による修繕など
- 解体費用
相続した不動産を売却するときにかかる仲介手数料や土地調査費用などは、譲渡費用に含めることができます。
また、買主の要望によって金銭的な負担が発生した場合も譲渡費用になるので、漏れなく経費計上しましょう。
売主都合で発生した費用については譲渡費用にならないので注意してください。
相続登記にかかる費用の勘定科目は?
本章では、登録免許税と書類取得費用、司法書士費用がどの勘定科目になるのか詳しく解説します。
登録免許税と書類取得費用の勘定項目
相続登記にかかる費用のうち、登録免許税と書類の取得費用の勘定項目は「租税公課」になります。
書類の取得費用については、「支払い手数料」や「雑費」として処理することも可能です。
ただし、「支払い手数料」と「雑費」は消費税の課税対象であるため、税務上の観点から「租税公課」とすることをおすすめします。
税金である登録免許税は必ず「租税公課」として処理しましょう。
司法書士費用の勘定項目
相続登記にかかる費用のうち、司法書士費用の勘定項目は「支払い手数料」または「支払い報酬料」になります。
また、司法書士個人に相続登記を依頼する場合は源泉徴収が必要です。
源泉徴収額は、司法書士費用から1万円を引いた額に10.21%をかけた額となります。なお、源泉徴収の勘定項目は「預り金」となります。
個人ではなく法人の司法書士事務所に依頼した場合、源泉徴収を行う必要はありません。
相続登記の費用は経費にできる
不動産所得や譲渡所得を計算する際は、相続登記費用を経費として算入することができます。
相続登記費用には、10万円以上の費用がかかることも珍しくありません。そのため、不足なく経費計上をして確定申告をスムーズに行えるようにしましょう。