不動産の相続放棄にはどんな手続きが必要?書類や費用なども紹介!

不動産の相続放棄にはどんな手続きが必要?書類や費用なども紹介!

相続放棄とは、法定相続人になった時にはじめから相続人ではなかったことにするものです。それにより、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け継ぐ権利を放棄することになり、相続放棄をした人の子孫に代襲相続が行われることはなく、残った相続人で遺産を分割することになります。

将来相続が発生したら相続放棄をする可能性があるが、どのような手続きがあるのかわからない、といった人がいるかと思います。

本記事では不動産の相続放棄の手続きの流れや、相続放棄をする際に必要な書類・費用や注意点などを紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

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不動産の相続について基礎的な知識を知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

不動産相続の手続きと流れ!相続登記の義務化についても解説します

不動産の相続放棄手続きの流れ


相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。もし期限を過ぎてしまうと放棄することができなくなってしまうため、予めどのような手続きがあるかを把握しておきましょう。

因みに、財産調査の遅れなどの事情によって3ヶ月以内の申し立てが難しい場合は、家庭裁判所に相続放棄のための熟慮期間伸長の申請をすることができます。この申請も自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にする必要があります。必要な書類は裁判所のホームページにて確認することができます。

不動産の相続放棄をする際の手続きの流れは以下のようになっています。

STEP
  • 法定相続人の確認
  • 必要な書類・費用の準備
  • 財産調査
  • 家庭裁判所に相続放棄の申し立て
  • 照会書の返送
  • 相続放棄申述受理通知書の確認

step①法定相続人の確認

民法で定められた相続人のことを法定相続人と呼び、遺言書がない場合は法定相続人が遺産を引き継ぐことになります。

相続が発生すると、法定相続人に相続権が生まれます。この相続権を有する人は、被相続人との関係によって順番が決まっていて、その順番で相続権が移ります。配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

配偶者

配偶者とは被相続人と婚姻関係にあるもので、常に相続人となります。

第一順位

第一順位の相続人とは被相続人の子が該当します。配偶者と一緒に相続人になります。

第二順位

第二順位の相続人とは被相続人の直系尊属で、つまり父母や祖父母が該当します。第1順位の人がいないとき相続人になります。

第三順位

第二順位の相続人とは被相続人の兄弟や姉妹が該当します。第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

参照:No.4132 相続人の範囲と法定相続分

相続権が移るということは、借金があった場合それも移るということになります。そのため相続放棄の際、債務が多い旨を次の相続人に伝えておかないと後々トラブルになりかねないため気を付けましょう。

step②必要な書類・費用の準備

相続放棄をすることが決まった場合、手続きは家庭裁判所で行わなければならず、その際必要な書類や費用があります。提出しなければならない書類は決められていて、主にそれは以下の通りです。

  • 被相続人の住民票
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 相続放棄をする人の戸籍謄本
  • 相続放棄申述書

一般的に戸籍謄本は本籍地の役所窓口で取得しますが、郵送で取り寄せることも可能です。しかし、郵送で取り寄せるのは書類の申請が必要で、申請から受け取りまでに7日〜10日程か、それ以上にかかることもあります。

費用に関しては、手続きを自分で行うのか専門家に依頼するのかでも変わります。自分で書類を集めるのに抵抗がある人や不安がある人は、専門家に依頼することをおすすめします。相続放棄申述書の記入方法や費用に関しては次の章で詳しく解説しています。

step③財産調査

相続放棄するかどうかを決めるには、相続財産の調査が必要です。相続財産には預貯金や不動産などのプラスの財産と、借金関係などのマイナスの財産が存在します。

相続放棄をするかどうかはプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのかで判断します。意思決定の前に、被相続人が利用していた金融機関や所有している不動産などの調査を入念にすることが重要です。故人の通帳を記帳すると、株の家賃収入や配当金、借金返済の記録などのお金の動きが分かる場合があります。

因みに、相続財産の一部を消費・売却したり、被相続人の残した借金を返済した場合、相続放棄をすることができなくなります。そのため、相続放棄をするかどうかを判断するまでは相続財産には手を付けないようにしましょう。

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step④家庭裁判所に相続放棄の申し立て

調査の結果、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが上回っていた場合、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをします。誤った書類の書き方をすると受理されないことがあるため、期間に余裕をもって裁判所に確認してもらうか、弁護士や司法書士などに相談すると良いでしょう。

提出に関しては、家庭裁判所に直接持参するか郵送するかの二つの方法があります。郵送の際は、郵送事故などによって期間内に相続放棄ができなかっとしても、裁判所は事情を考慮してくれないため、到着確認ができるレターパックなどの封筒を用いることをおすすめします。

step⑤照会書の返送

家庭裁判所に相続放棄の申し立てをした後、一定期間をおいて裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されます。これは裁判所からの質問であり、回答の内容次第では相続放棄が却下されてしまいます。

家庭裁判所はこの照会書によって、「相続放棄の申述を相続人が自分の意思で行ったか」を確認します。また、相続放棄の申述の理由や、3ヶ月の申述期限に遅れた場合にはその理由なども吟味します。

裁判所は照会書に複数の照会事項を作り、申述者に回答させることで相続放棄を認めるか否かの判断をするため、書類の記入は不備なく行う必要があります。そのため、この場合も司法書士や弁護士などに依頼するのが確実です。

step⑥相続放棄申述受理通知書の確認

相続放棄が受理された場合は、約10日後に相続放棄申述受理通知書が届きます。これにより正式に相続放棄が認められたことになり、被相続人の遺産に関する一切の権利を失くしたことになります。

似たような書類に、相続放棄申述受理証明書というものがあります。これは裁判所に交付申請をすることによって発行される書類であり、以下のような場合に必要になる場合があります。

  • 被相続人が滞納していた税金の納税通知が届いた場合
  • 相続放棄後に被相続人の債権者から債務返済を求められた場合

被相続人が滞納していた税金の納税義務承継通知書が届いた場合

被相続人が税金を滞納していた場合、法定相続人に納税義務承継通知書が届くことがあります。また、被相続人が不動産を所有していた場合は、固定資産税や都市計画税の納税通知書が法定相続人に届きます。

相続人が相続放棄をした場合は納税の義務はありませんが、役所に対してそのことを証明しなければならず、その際に相続放棄申述受理証明書が必要になります。

相続放棄後に被相続人の債権者から債務返済を求められた場合

被相続人に債務があり、債権者が相続人に対して債務の返済を求めたとしても、相続人が相続放棄をしていたのであれば返済の義務はありません。

この場合も、債権者に対して相続放棄申述受理証明書を提示することで返済を拒否できます。証明書は裁判所で交付申請をすれば何度でも発行されるため、債権者が複数いる場合に利用しましょう。

不動産の相続放棄に必要な書類と費用

不動産の相続放棄に必要な書類に関しては、相続人のケースによって必要な書類が変わります。以下はケースごとに必要になる書類や必要な費用であり、これは裁判所のホームページで確認することができます。

相続放棄申述書の記入方法

相続放棄申述書は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。また、以下のような記入例もあるため参考にしましょう。

1ページ目は相続放棄をする人の本籍や住所などの基本情報や、被相続人の情報を記入します。2ページ目は相続放棄の申述の趣旨を記入します。相続の開始を知った日、相続放棄の理由、相続財産の概略などが主な理由です。相続放棄申述書を記入する際は、上記の記入例に従って書けば問題ないでしょう。

必要な費用

相続放棄には収入印紙代の800円と、郵便切手代の400円程度がかかります。郵便切手代に関しては、裁判所によって金額が異なります。そして、戸籍謄本の取得費用に1通当たり450円かかります。

こう考えると相続放棄にはそれほど高額な費用がかかるわけではないことがわかりますが、戸籍謄本を取得するために遠方まで行く場合には交通費がかさむことがあります。

また、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、司法書士なら3万円~5万円程度、弁護士であれば5万円~10万円程度が依頼料の相場です。もし専門家に依頼する際に不安がある場合は、複数の専門家に見積もりを出してもらうことをおすすめします。

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不動産の相続放棄における注意点


相続放棄には注意点がいくつか存在するため、しっかり把握しておきましょう。

財産の一部のみを放棄することはできない

取得したくない不動産があり相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったという扱いになるため、引き継ぎたくない財産だけではなく、その他のプラスの財産についても相続することはできません。

一方で、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことを前提とする、限定承認という方法があります。マイナスの財産が多い場合に超過分を支払わなくて済むため、負債額が不明のときに有効となります。この限定承認は相続人全員が合意して共同で行う必要があります。

相続人全員が相続放棄をした場合

もし、前述した法定相続人全員が相続放棄した場合で財産を管理したくない場合には、、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる必要ああります。

相続財産管理人が決定するまでは、相続放棄をする前の法定相続人がその財産の管理を行う義務があることに注意が必要です。例えば、放棄した土地や家屋によって近隣の人に何かしらの迷惑をかけた際は、その法定相続人が損害賠償請求を受けることもあります。つまり、相続放棄をしたからと言ってすぐに不動産の管理義務が消えるわけではないのです。

相続財産管理人とは
  • 相続財産管理人は、被相続人の債権者などに対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、残った資産を最終的に国庫に帰属させる職務を行います。
  • 相続財産管理人の報酬は相続財産から支払われますが、相続財産が少なく報酬が支払えないと見込まれる場合、申立人から家庭裁判所に予納金を納め、それが財産管理人の報酬となることがあります。

相続放棄が認められないこともある

相続放棄の申述期間である3ヶ月の間に単純承認をすると相続放棄ができなくなります。単純承認とは、相続をするという意思表示をすることです。

以下のような場合に単純承認があったとみなされるため注意しましょう。

  • 遺産分割協議を行った場合
  • 相続財産の一部、または全部を処分した場合
  • 相続財産の一部、または全部を隠匿した場合
  • 相続財産の名義変更をした場合

なお、被相続人の税金の滞納分や葬儀費用を被相続人の財産から支払ったり、形見分けを受けたりなどは必ずしも単純承認とみなされるわけではありません。

保険金・遺族年金は相続財産に含まれない

生命保険金や死亡退職金は受取人固有の財産であるため、相続財産には含まれません。また、遺族年金も相続財産ではありません。つまり、相続放棄をしたとしてもこれらを受け取ることができます。

しかし、生命保険の受取人が被相続人になっている場合は相続財産扱いになるため、相続放棄をすることにより受け取れなくなります。

相続放棄するかどうかはしっかり判断してから

もし借金と不動産がどちらも相続財産であった場合、不動産の価値がわからない限りは相続放棄をしたほうが良いのかどうかはわかりません。

その判断をするために、相続放棄の期限を考えて早いうちに不動産の査定を専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄で後悔しないようにしよう

相続に関して、引き継ぎたいもののみを引き継ぐということができません。相続放棄をするとなったら全ての財産を手放すことになるため、後悔のないようにしましょう。

相続放棄をするかどうかは財産調査によって決まり、この作業に時間がかかりますが、相続放棄の申し立てには期限があるため注意が必要です。相続放棄に不安があるなら、専門家に相談・依頼することをおすすめします。

初心者でもわかる!
記事のおさらい

不動産の相続放棄はどうやって進めたらよいの?
まずは法定相続人の確認からします。詳しくは、不動産の相続放棄手続きの流れをご覧ください。

不動産を相続放棄するときに気を付けることって?
一部のみの放棄はできない・管理義務は残る、などがあります。詳しくは、不動産の相続放棄における注意点をご覧ください。
保坂 真世
監修者:保坂 真世(ほさか まよ)
中央大学法学部卒業。横浜市内の司法書士事務所勤務を経て、2014年に横浜で独立開業。2018年に法人化し平塚支店を設置。
個人向けに終活サポート・相続手続・障がい者の法的支援、法人向けに企業の法務手続等幅広く取り扱っております。特に相続案件は年間100件以上受任する実績がある。
監修日:2023年1月24日

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