空き家を民泊にするビジネス! 今流行りの民泊に問題は?

空き家を民泊にするビジネス! 今流行りの民泊に問題は?

空き家の活用方法として、民泊施設として運営することが注目されています。
しかし、空き家を民泊として運営することはビジネスとして成り立つのでしょうか。
空き家が増加した背景や民泊の法律上の問題などを解説したうえで、売却という選択肢についても触れていきます。

先読み!この記事の結論
  • 民泊は個人の自宅などを利用して宿泊させる営業のこと
  • 民泊にはエリアによって向き不向きがあるので、売却してしまうのも一つの方法

空き家の活用について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。

空き家はどのように活用できる?事例や活用方法を紹介!

日本の空き家事情

空き家を民泊に

空き家の増加は、老朽化による倒壊をはじめ、放火や不法投棄、不審者が住み着くことによる治安の悪化などの温床となることから社会問題化しています。
空き家の現状をまとめたうえで、空き家対策特別措置法について解説していきます。

(1)空き家の現状

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、2013年の全国の空き家の数は820万戸です。
総住戸に占める割合を示す空き家率は、13.5%に及んでいます。
2008年の調査から、63万戸増加しました。
空き家の内訳を見ていくと、別荘などの「二次的住宅」は41万戸、「賃貸用又は売却用の住宅」は460万戸です。
これ以外に、取り壊し予定や長期の不在による「その他の空き家」が318万戸あり、2003年から1.5倍となっていることが問題視されています。

「住宅・土地統計調査」は5年ごとに調査が実施されています。
次回の2018年10月の調査結果が公表されるのは、2013年分の公表時期から鑑みて、2019年夏頃です。
2018年の空き家の数は、さらに増加していると見込まれています。

(2)なぜ空き家が増えているのか

空き家が増加した要因の一つは、戦後の日本の住宅政策によるものです。
政府は住宅金融公庫による低利子での融資や住宅ローン減税など、持ち家を推奨する施策をとっていました。
住宅を建てては取り壊していく、「スクラップアンドビルド」が前提で、住宅の質が重視されていませんでした。
新築信仰が生まれ、中古住宅の流通市場が成熟していなかったのです。

また、人口減少や都市部への人口集中、核家族化などによって、親の住まいを引き継いでも子世代が住まないことも空き家が増えた要因です。さらに、空き地よりも住宅が建っている土地の方が、固定資産税が6分の1に減額されることが、取り壊されずに空き家が残される要因となっていました。

空き家になった実家が増えたことによって、空き家活用促進のために様々な補助制度が用意されています。

(3)空き家対策特別措置法

管理されずに放置されている空き家に対する対策を講じるため、2015年に空き家対策特別措置法が施行されました。
市町村による空き家等対策計画の策定、空き家の所有者などの調査、データベースの整備などに関して規定されています。
また、調査に固定資産税情報の利用が認められるようになりました。

さらに、市区町村は、倒壊の恐れのある危険なケースや不衛生な状態になっているケースなど、周辺の環境を悪化させている空き家を「特定空き家」に認定することができます。
「特定空き家」に対して、取り壊しや修繕、立木の伐採などを行うように、助言や勧告、命令をしたり、強制執行を行ったりすることが可能となりました。
また、「特定空き家」に認定され、勧告以上の措置がとられた空き家は、固定資産税の減額が受けられなくなったのです。

≪まとめ≫
  • 2013年の全国に空き家は820万戸あり、取り壊し予定や長期の不在による「その他の空き家」は10年前の1.5倍になっている。
  • 住宅政策や新築信仰によって中古住宅の流通が盛んではなく、固定資産税が空き地の方が高いことなどが空き家増加の要因。
  • 空き家対策特別措置法によって、特定空き家の撤去などの強制執行が可能となった。

空き家で民泊を始める人が増えてきている


空き家の活用として、民泊を始める人が増えています。
民泊とは何か、民泊への活用が増えている要因についてみていきます。

古くなった空き家も貸すことができる!空き家を貸し出すことのメリットやデメリットなどを解説

(1)民泊とは

民泊とは、個人の自宅や投資用に所有するマンションの一室、別荘などを他人に有償で貸すものです。
インターネットで仲介サイトを利用して、貸し出しを行うのが中心となっています。
最近では、不動産会社などが民泊用の物件を運営するケースもあります。

(2)外国人観光客が増加している

民泊を行う施設が増加している背景にあるのは、訪日外国人観光客の増加と宿泊施設の不足、規制緩和などによるものです。
日本政府観光局(JINTO)の統計によると、2017年の訪日外国人観光客は、2,869万1000人で、前年よりも19.3%増加しています。
また、日本政府は、安倍首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。
その中で、訪日外国人観光客数の目標として、2020年に4,000万人、 2030年に6,000万人が掲げられています。
訪日外国人観光客は、今後も増加が見込まれています。
その一方で、急激な外国人観光客の増加により、宿泊施設の不足が顕在化したため、受け皿として民泊が注目されました。

また、従来は合法的に民泊を営むためには、旅館業法に即した設備等を備えて許可を得ることが必要でした。
規制緩和によって、国家戦略特区の一部では特区民泊が可能となり、住宅宿泊事業法も施行されたことで、合法的に民泊を営みやすい環境が整えられました。

≪まとめ≫
  • 民泊とは、個人の住宅や投資用物件、別荘などを宿泊施設として貸し出すこと
  • 訪日外国人観光客の増加による宿泊施設の不足に対する受け皿として、民泊が増加した

空き家ビジネスで資産を無駄にしない!10の活用事例を解説

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法律上の問題


違法なヤミ民泊が社会問題となりましたが、民泊を巡る法律上の問題について見ていきます。

(1)民泊と旅館業の違い

旅館業とは、宿泊料を徴収して、寝具を使用して宿泊させる営業です。
一方、民泊は個人の自宅などを利用して、宿泊サービスを提供するものになります。
宿泊料を徴収して民泊を営む場合には、旅館業法上の許可を取得するか、特区民泊の認定を取得するか、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業の届出を行う必要があります。

参照:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html

(2)旅館業法と特区民泊、住宅宿泊事業法

民泊を合法的に営む3つの方法について、具体的に見ていきます。
手続きの難易度は、営業許可が必要な旅館業法が最もハードル高く、認定が必要な特区民泊、申請を行う住宅宿泊事業法と続きます。
旅館業法(簡易宿泊所)特区民泊住宅宿泊事業法
手続き許可認定申請
年間営業日数制限なし制限なし年間180日以内
最低宿泊日数制限なし2泊3日以上で条例で規定制限なし
エリア全国東京都大田区・大阪市
八尾市
その他大阪府34市町村
北九州市・新潟市・千葉市
全国
住居専用地域での営業不可可(条例により制限を設けているケースあり)可(条例により制限を設けて
最低床面積33㎡以上(宿泊者が10人未満は、3.3㎡×宿泊者数以上)原則1居室25㎡以上
宿泊者名簿の作成・保存義務ありありあり
不在時の管理業者への委託義務規定なし規定なし規定あり

参照:
http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/index.html

旅館業法

旅館業には、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業という種別があります。
このうち民泊では、簡易宿所営業の適用を受けるケースが一般的です。
簡易宿所として民泊施設を運営するには、都道府県等の保健所に申請し、営業許可を得ることが必要になります。

簡易宿泊所は延べ床面積33㎡以上という規制がありました。
しかし、合法的な民泊の運営を促進するため、2016年4月からは宿泊者が10人未満の場合は、3.3㎡×宿泊者数以上に緩和されています。

旅館業法による簡易宿泊所は、年間営業日数や最低宿泊日数の制限はありません。
全国で運営が可能ですが、住居専用地域の営業は不可です。
事前相談から申請、検査などを経て、営業許可が下りるため、簡易宿泊所としての運営はハードルが高めとされています。

参照:
http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law2.html
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/nisitama/soudan/ryokan.files/ryokan_tebiki_H30.pdf

特区民泊

特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づいて、旅館業法の適用の除外を受けられるものです。
国家戦略特区に指定されている自治体のうち、特区民泊の条例を定めた自治体では、都道府県知事(保健所)の認定によって、民泊施設を運営することができます。
特区民泊が行われているのは、東京都大田区、大阪府大阪市や八尾市、その他府内34市町村、北九州市、新潟市、千葉市です。

特区民泊は宿泊日数の制限が設けられていることが特徴です。
当初は、宿泊日数は6泊7日から9泊10日以内で自治体の条例で決める期間という制限がありました。
2016年10月31日から2泊3日以上からに緩和されています。
施設については、1居室25㎡以上などの要件が設けられています。
また、近隣住民とのトラブル防止のため、適切な説明を行い、苦情や問合せに適切に対応することが必要です。

参照:
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei04/03.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/shiryou_tocminpaku.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/sekourei_ryokan.pdf
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/27772/00000000/implementational%20area(H30.6.14).pdf

住宅宿泊事業法

住宅宿泊事業法は、合法的な民泊を推進するために取り決められた新しい法律です。
2018年6月に施行され、民泊新法とも呼ばれています。
住宅宿泊事業法は都道府県知事等への届出によって、民泊施設を運営することができます。

年間宿泊日数の上限は180日以内に制限され、さらに自治体の条例によって引き下げることができる点に注意が必要です。
一方で、最低宿泊日数の制限はありません。
住宅宿泊事業法による民泊施設では、標識の掲示や騒音防止のために宿泊者に説明を行うこと、近隣からの苦情に対応することなどが義務付けられています。
外国人観光客向けに外国語による施設案内や交通案内を行うことが求められていることも特徴です。

また、住宅の一部を貸す家主居住型と、家主不在型に分類され、家主不在型の場合は、住宅宿泊管理業者への管理の委託が義務付けられました。

参照:
http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
http://www.mlit.go.jp/common/001212371.pdf

≪まとめ≫
  • 民泊を合法的に行うには、旅館業法による簡易宿泊所と特区民泊、住宅宿泊事業法によるものの3つがある。
  • 住宅宿泊事業法による民泊は全国で運営可能であり、届出によるものなので、合法的に民泊を運営するハードルが下がった。

民泊に向いている物件とエリア


空き家を所有していても、民泊に向いている物件とは限りません。
民泊に向いている物件やエリアを解説したうえで、空き家を活用した事例を紹介します。

(1)民泊に向いている物件

法律や条例による制限のほか、マンションの場合は、管理規約で民泊を禁止している物件では、民泊施設を運営することができません。
また、民泊を行う施設は、旅館業法による簡易宿泊所も、特区民泊も、住宅宿泊事業法による場合も、広さに関する規定があります。
民泊を運営するには、こうした条件をクリアしている物件であることが必要です。

また、確認申請を必要とする増改築を行う場合や簡易宿泊所へ用途変更する場合などには、建築確認の検査済証がないと、手続きが進められないケースがあります。

(2)民泊に向いているエリア

民泊に向いているのは、観光地にアクセスしやすく、徒歩5~10分以内のエリアです。
ただし、有名観光地に近ければどこでもよいわけではなく、宿泊需要が高いエリアに限られます。
宿泊情報サイトをチェックして、1泊3,000円程度の宿泊施設が多い場合は、民泊の運営は難しいです。
一方、リーズナブルな宿泊施設がないエリアなら、民泊施設のニーズが見込めます。

(3)空き家で民泊を始めた事例

内閣府による特区民泊プロモーションビデオでは、民泊の事例が紹介されています。
「SJヴィラ蒲田A」は、築65年の戸建て住宅です。
個人のオーナーから、モデルルームとして改築された物件を事業者が貸借し、民泊施設として運用しているものです。
認定上の定員は6名ですが、定員は大人4名で、大人2名、子供4名でも宿泊することができます。
1泊の宿泊料金は2万円です。

民泊の仲介サイトでは、外国人向けの物件が中心で、古民家が人気を集めています。
空き家を活用した事例では、かつて親子3代で暮らしていた築70年の古民家に、8台のベッドを入れて、9,000円弱で貸し出している大阪市の物件のケースなどがあります。

参照:
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tocminpaku.html
https://www.airbnb.jp/rooms/8360647

不動産を売却するのも一つの手段


空き家の活用方法の一つとして民泊が挙げられますが、どの物件も民泊に向いているとは限りません。
空き家の処分に困ったら、売却も手段の一つです。
不動産売却と民泊のそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。

(1)不動産売却のメリット・デメリット

不動産売却のメリット不動産売却のデメリット
  • 資産を現金化できる。
  • 固定資産税などの維持費が不要になる。
  • 建物の維持や管理の手間がかからなくなる。
  • 物件やエリアによっては、売却が難しい
  • 住宅ローン等の残債があるケースは、残債と同額以上
    で売れない場合、差額を工面する必要がある

空き家を売却すると、資産として現金化できることがメリットです。
また、固定資産税の支払いや、建物の管理や維持にかかる負担もなくなります。
一方で、現行の建築基準法では建て替えができない物件や、交通の便が悪いなど需要の低いエリアの場合、売却をすることが難しく、時間を要することがデメリットです。
あるいは、住宅ローンの残債がある場合も、残債と同額以上で売れない場合は、差額を工面する必要があるため、売却のハードルが上がってしまいます。

「今持っている不動産を現金化したい」という方は、売却という形で手放すという選択肢もあります。一括査定サイト「イエウール」を使えば、無料で最大6社から査定を受けられるので高く売ってくれそうな会社が分かります。

(2)民泊のメリット・デメリット

民泊のメリット民泊のデメリット
  • 宿泊料金が収入になる。
  • リフォームの必要なケースが多く初期投資費用がかかる
  • 住宅宿泊事業法による民泊では営業日数の制限があり、採算が合わない可能性
  • 近隣からクレームが来る可能性

空き家で民泊を始めると、宿泊料金が収入として入ることがメリットです。
しかし、実際に民泊施設として運営を始めるためには、リフォームが必要なケースが多く、家具や設備などの購入するため、初期投資費用がかかることがデメリットです。
また、住宅宿泊事業法による民泊では、営業日数が180日以下に制限されているため、特に家主不在型では、住宅宿泊管理業者への管理の委託費用が発生することから、採算がとれない可能性があります。
また、宿泊者に騒音やゴミの出し方などを巡って、近隣とトラブルになることもあります。

まとめ

民泊は住宅宿泊事業法の施行によって、合法的に運営しやすい環境が整えられました。
しかし、営業日数180日という制限があることや、民泊に向いたエリアは限られていることから、採算が合わない可能性が懸念されます。
空き家は民泊施設として活用することだけではなく、売却して現金化することも視野に入れて、今後の対応を検討していきましょう。
初心者でもわかる!
記事のおさらい
民泊に向いている空き家とは?
駅から近く、付近に宿泊施設がいくつか存在している場合には、民泊を検討しても良いでしょう。より詳しい条件については、こちらをご覧下さい。
民泊と旅館業の違いはなにか?
民泊は営業日数が年間180日までに規制されていますが、旅館業ではその規制がありません。詳しい違いについては、こちらをご覧下さい。
空き家で民泊を始めるデメリットはあるの?
近隣からクレームが来る場合や、リフォームに初期費用が必要な点などがあげられます。詳しくはこちらの記事を参考にして下さい。

空き家を貸したい場合、以下の記事が参考になります。

古くなった空き家も貸すことができる!空き家を貸し出すことのメリットやデメリットなどを解説