売買契約書の内容は?
売買契約について定めている民法では、「契約」について口頭による合意だけでも成立します。しかし、トラブルになった場合には「言った」「言わない」の争いになり、解決するのがとても困難です。特に不動産は高額なお金が動くため、後からもめごとにならないように、双方が合意した内容を売買契約書にまとめて契約を締結します。不動産売買契約書の書式は基本的に自由ですが、実際には標準的な書式が広く使われていて、次のような事項が記載されています。契約にあたって特に要望した事項があれば「特約について」の部分に記載してもらい、要望が明確に伝わるようにしてもらいましょう。
契約書に記載されている事項
- 売買物件の表示(土地の所在や面積など)
- 売買代金や手付金・保証金の額
- 売買物件の引き渡し条件
- 危険負担(地震や火災などで物件の引き渡しができない場合の定め)
- 瑕疵の修復(雨漏り、シロアリ被害などが生じた場合の定め)
- 費用の負担(契約書に貼付する印紙税などの負担について)
- 公租公課(税金)の精算基準(固定資産税などの負担に関する取り決め)
- 契約違反による解除
- 特約について
契約書の中でも特に重要なのは次の3つ

ポイント1 手付金について確認しよう
土地の売却など不動産の取引では、買主から売主に手付金が支払われるのが一般的で、手付金には次の3つの意味・目的があります。- 証約手付…契約の成立を証明する目的で授受される
- 解約手付…買主は手付金を放棄、売主は手付金の2倍の金額を買主に支払えば契約を解除できる
- 違約手付… どちらかに債務不履行があった場合、手付金が違約金として、損害賠償とは別に相手方に没収される
手付金の金額に特に定めはありませんが、売買代金の5%~20%くらいの範囲で決められています。金額が多ければ解約したときの負担が大きくなり、少なすぎると買主が安易に手付解除をする可能性があるため、手付金の金額設定には注意が必要です。
また、手付解除できるのは「相手が契約の履行に着手」するまでです。例えば、買主が残りの代金を支払ったときや、売主が契約条件にあった土地の整地を始めたときなど、売買契約を成立させるために相手が必要な行動を起こしたときが「契約の履行に着手」と判断されます。ただ、実際には「〇月〇日まで」など、当事者の合意によって手付解除ができる期限を決め、売買契約書に明記するのが一般的です。
なお、「契約を解除した場合には、相手方に対して売買代金の20%を違約金として支払う」など、手付金ではなく違約金を定めることもあります。
ポイント2 契約解除の内容を確認しよう
土地の売却では、手付解除以外にも契約解除に至るケースがあります。その内容と条件について、契約書で確認をしておきましょう。危険負担による解除
台風や洪水、地震等の自然災害などで、対象の土地が取引できなくなった場合の契約解除が「危険負担による解除」です。「引渡し前に発生した場合、買主は無条件で解除でき、手付金は全額返金する」など、具体的に記載されています。契約不適合責任による解除
対象の土地に「崩落の危険がある」など、重大な欠陥があるにも関わらず契約時に伝えていなかった場合の契約解除が「契約不適合責任による解除」です。もともとは瑕疵担保責任という名称でしたが、2020年4月の民法改正により契約不適合責任へと変更になりました。契約不適合責任に当てはまる場合、買主は契約の解除のほか、損害賠償や代金減額の請求ができます。
契約違反による解除
手付金の支払期限を過ぎても支払わないなど、相手方が契約を履行しない場合の契約解除が「契約違反による解除」です。「相手方に催告のうえ、本契約を解除できる」など、具体的な対応方法についても記載されています。特約による解除
買主がローンを受けられなかった場合に無条件で契約を解除できる「ローン特約」など、特約によって行う契約解除が「特約による解除」です。特約による解除の場合、手付金の返還についても具体的に記載されています。ポイント3 自分の要望だけでなく、相手の要望も確認しよう
契約にあたり「12月にまとまったお金が必要なので、代金の受け渡しを11月の中旬までに終わらせたい」など、売主にもさまざまな事情があります。こうした要望が契約書に反映されているのか、決済日や支払方法など、契約内容を細かくチェックしていきましょう。また、売買契約書には標準的な書式が広く使われていることが多く、文言は売主や買主に当り障りのない内容になっています。そのため、売主や買主から寄せられた要望は、「特約」や「その他」の欄に記載されています。契約書の内容を確認するときには「特約」の欄などを中心に、自分の要望が反映されているのか、また、相手方の要望がどのように記載されているのか、確認をしておきましょう。
確認するときのポイント
- 自分が希望する条件は記載されているか
- 相手方の要望に対応できるか
- 無理な条件、一方的に不利な条件が記載されていないか
- あいまいな条件で記載されていないか
売主には契約不適合責任という大きなリスクがある
対象の土地に重大な欠陥があると契約解除の要件になるだけでなく、引き渡しが終わってから欠陥が発覚すると、買主から契約不適合責任といって損害賠償を請求されてしまう可能性があります。例えば、「かつてその土地で陥没があり、現在は埋め戻してある」などのケースでは、「購入した土地の上に住宅を建てようとしたら、とても家を建てられる状況ではなかった」となる可能性があります。そうすると、買主は土地を購入した「目的=家を建てる」を達成できないため、売主に代金の返還と損害賠償を求めてくる可能性があります。そのため、対象の土地に結果がある場合には契約前にその事実を伝え、承知のうえで購入したことがわかるように、売買契約書に記載してもらうことが大切です。
契約不適合責任の保証期間は不動産会社次第
契約不適合責任の保証期間は個人間の売買の場合、短縮が可能です。不動産会社を仲介にした場合でも、中古物件の売買は買主と売主の個人間のもの。その場合、契約と異なる内容を知ってから1年と定められている期間も双方の了承を得られれば、期間を短く設定したり契約不適合責任をそもそも免除することも可能です。
期間をどれくらい短くするのか、その分値引きをするのかなどは不動産会社の交渉次第。不動産会社(担当者)が優秀であることが求められます。優秀な不動産会社を選べるかどうかは査定のやり方にかかっています。
優秀な不動産会社を選ぶには複数社の査定を比較するのが1番です。1社を見て優秀かどうか判断するには不動産会社と数多く付き合ってきた経験が必要ですが、複数社を並べて比較するのであればより良い会社を選ぶだけなので、初心者の方でも見極めやすいです。
査定を依頼したら、対応の速さや質問に対しての回答が分かりやすいかなどを比べてより良い不動産会社を選びましょう。複数の不動産会社に査定依頼をする際は一括査定サービスのイエウールを利用するのが賢明です。イエウールなら一度の申し込みで複数社に依頼を出すことができますし、24時間依頼を受け付けているので貴重な休日の日に不動産会社をハシゴするといったこともする必要がありません。
買主との交渉を有利に進められるように、不動産会社選びは慎重に行いましょう。
あなたの不動産、
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契約書と領収書に課税される印紙税について

契約時に準備するもの
土地の売買契約は、売主と買主、仲介した不動産業者が揃い、契約内容を読み合せたうえで締結します。契約の締結時に準備するものは、仲介する不動産業者によって多少の違いがありますが、売主側が用意するものは、本人を確認する書類や実印、契約書に貼付する印紙代、物件の所有者であることを証明するために提示する登記済権利証・登記識別情報などです。売買契約で売主が用意するもの
- 運転免許証などの本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
- 印紙代
- 登記済権利証または登記識別情報
- 固定資産税納付書
- 仲介手数料の半金
契約書に課税される印紙税
土地の売買契約書には印紙税が課税され、売買契約書に印紙を貼り付けて消印をすることで納税します。課税の対象になるのは、記載金額が10万円を超える契約書で、平成32年3月31日までの間に作成されるものについては、税額が200円(契約金額10万円超~50万円以下)から48万円(契約金額50億円超)に軽減されています。また、同じ契約書を複数作成するときは、1通ごとに印紙を貼らなければなりません。契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(平成32年3月31日まで) |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
出典:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm
土地の手付金・売却代金の領収書に課税される印紙税
領収書には、記載された金額に応じて印紙税が課税されます。しかし、個人の方が土地を売却する行為は営業行為に該当しないため、売却代金や手付金を受け取ったときに発行する領収書に印紙税は課税されません。ただし、個人の方でも営業目的で繰り返し土地を売却しているケースや、不動産賃貸業を営む個人が事業用に所有していた土地を売却した場合には、売却代金や手付金を受け取った時に発行する領収書に印紙税が課税される可能性があります。
No.7125 営業に関しない受取書
(https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/7125.htm)
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