国土交通省が実施した「令和3年度 住宅市場動向調査」によると、初めて住宅を購入した方(一次取得)の平均年齢は注文住宅で40.0歳となっている一方で、2回目以降の購入者(二次取得)の平均年齢は注文住宅で59.9歳とされています。
定年後の60代で「終の棲家」となるマイホームを購入する方も多く、相続税対策や資産形成を兼ねてマンションを買う方も少なくありません。
そこで本記事では、賃貸と比較して定年後に家を買うメリット・デメリットと、住宅ローンを組んで家を買う方法、そして戸建てとマンションの選び方などをご紹介します。
定年後に賃貸ではなく持ち家を買うメリット
賃貸物件に住み続ける場合と比較して、家を買うメリットとして挙げられるのは次の3つです。
- 相続税対策につながる
- 子どもに資産を残せる
- 長生きするほど得になる
それぞれのメリットの理由と背景を解説します。
相続税対策につながる
定年後に家を買うことで、相続財産の評価額を下げ、相続税を抑えられるメリットがあります。
不動産にかかる相続税は、時価の8割程度とされる「路線価」によって計算されるため、現金を持ち続ける場合よりも財産額が低く見積もられることから、相続税も下げられることが理由です。
また、住宅ローンを組んで家を買った場合には、相続時の借入金を相続財産から差し引けるメリットもあります。
そのためご自身の将来を見据え、残された配偶者や子どもの相続税負担を抑えたい場合にも、住宅購入は選択肢の一つとなるでしょう。
子どもに資産を残せる
購入した住宅は、子どもに資産として残せるのも魅力です。
特に都市圏のマンションは値崩れしにくい傾向にあり、資産価値の高い住まいを残せる可能性があります。
子どもの住まいとしても利用できるほか、ローンの完済後は賃貸に出して家賃収入を得る方法もあるため、子どもに喜ばれることも多いでしょう。
賃貸の場合は家賃を払い続けても資産にはならないため、老後や相続を見据えた資産形成を考えている方には住宅購入が適しているといえます。
長生きするほど得になる
住宅ローンを完済すれば持ち家の住居費は減少するため、同じ家賃を支払い続ける賃貸と比べると、長生きするほど持ち家の方が得になるメリットがあります。
住宅ローンの完済後も固定資産税や維持費・管理費、リフォーム費用などの負担はありますが、賃料を払い続けるよりはランニングコストが低くなることが多くなります。
定年後に賃貸ではなく持ち家を買うデメリット
定年後に持ち家を買うデメリットとしては、以下の3つが考えられます。
- 住宅ローンが組みにくい
- 固定資産税や維持費・管理費がかかる
- 老人ホームが終の棲家になる可能性もある
それぞれの注意点を踏まえ、賃貸との比較・検討を行っていきます。
住宅ローンが組みにくい
定年後に家を買う場合、年齢や健康状態が要因となって住宅ローンが組みにくくなる点がデメリットです。
主要銀行の住宅ローンでは、借入時年齢を70歳未満、完済時年齢を80歳未満としています。
そのため65歳で住宅ローンを組む場合、最大15年ローンで借り入れることになり、毎月の返済負担が大きくなって返済能力が不足すると判断されるケースがあります。
また、健康上の不安があると「団体信用生命保険(団信)」に加入ができず、住宅ローンに申し込めない可能性もあるため注意が必要です。
固定資産税や維持費・管理費がかかる
前述した通り、持ち家には住宅ローンの返済以外にも、固定資産税や維持費・管理費、リフォーム費用などが発生します。
初期費用として、頭金や手付金、ローン手数料などの諸費用がかかる点も賃貸とは異なります。
住宅ローン以外に必要になる初期費用があること、そしてローンを完済しても住居費は発生し続けることを押さえておきましょう。
老人ホームが終の棲家になる可能性もある
ご自身や配偶者に介護が必要となり、福祉施設への入居や子どもとの同居となった場合には、マイホームを持て余してしまう可能性もあります。
売却を希望しても買い手がつかないケースも多く、住宅ローンが残っていれば賃貸に出すことも難しくなります。
賃貸であれば部屋を引き払って住み替えることも可能ですが、持ち家の場合は簡単に手放したり住み替えたりするのが難しい点に注意が必要です。
定年後でも住宅ローンを組んで家を買える?
定年後に家を買うにあたって、自分でも住宅ローンを借りられるのか疑問を抱いている方も多いでしょう。ここでは定年後に住宅ローンを組む場合の注意点について解説します。
70歳未満なら住宅ローンを組むことも可能
前述したように、主要銀行における住宅ローンの年齢制限は、借入時に70歳未満、完済時に80歳未満とされています。
そのため現在70歳未満の方であれば、住宅ローンを組める可能性が高まります。頭金を支払うことにより、住宅ローンの比率を抑えながら資産価値の高い物件を購入することも可能です。
ただし返済期間35年などの長期ローンを組むのは難しく、現在65歳であれば最長でも15年ローンとなることに注意が必要です。
退職金で家を買うのは要注意
定年後に家を買う資金として、退職金を充てる場合には慎重な判断が必要です。
退職金は一般的に老後資金のために使われることが多く、退職金以外に十分な老後資金がない場合には、家を買うよりも温存しておくことをおすすめします。
退職金を使い切ってマイホームを購入した結果、年金収入だけでは家計を維持できず、残債を抱えたまま家を売却するケースも少なくありません。
退職金を住居費に充てるかどうかは、他の金融資産も含めて検討しましょう。
定年後に買う家は戸建て・マンションのどちらを選ぶべき?
定年後に買う家を選ぶ際には、戸建て・マンションのそれぞれの特徴を踏まえて検討する必要があります。
それぞれのメリット・デメリットをまとめると、下記の通りです。
メリット | デメリット | |
戸建て |
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マンション |
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それぞれ解説します。
戸建てを買うメリット・デメリット
マンションと比較すると、戸建ての場合は増改築やリフォーム、建て替えなどの自由度が高く、ペットを飼う制限などもありません。
バリアフリーリフォームや二世帯住宅への建て替えにも対応しやすいほか、マンションのように隣接する部屋とのトラブルが起こりにくいメリットもあります。
一方で建物の維持・管理は自分で行う必要があり、10年〜15年ごとのリフォーム費用も全額自己負担となります。
セキュリティ面ではマンションに劣る点もデメリットです。
マンションを買うメリット・デメリット
戸建てと比較すると、マンションの場合は、室内の段差や階段が少なく、車いす対応のエレベーターを備えた物件であれば老後も暮らしやすいメリットがあります。
建物の管理は管理会社に一任できるほか、同じマンションの住人同士でコミュニティを形成しやすいメリットもあります。
一方で、毎月の維持費・管理費の負担がある点や、騒音トラブルが発生しやすい点がデメリットです。
定年後に買う家の選び方のポイント
定年後の住まいの選び方のポイントは、主に以下の3つです。
- 周辺環境を重視する
- バリアフリーの物件やリフォームを検討する
- 資産価値が落ちない物件を選ぶ
最後に、それぞれ紹介します。
周辺環境を重視する
定年後に家を買う場合は、病院やスーパー、ホームセンターなどが近くにあり、交通機関へのアクセスも良いなど、恵まれた立地条件の家を選ぶと良いでしょう。
現在車移動が中心の方も、将来、車の運転が難しくなる場合に備えて、公共交通機関の利用しやすさを重視することもおすすめです。
老後を考慮すると、子どもや親戚の住まいの近くで物件を探すこともおすすめします。
バリアフリーの物件やリフォームを検討する
階段の昇り降りが負担となっている場合には、物件選びの際に、段差のない平家の戸建てやマンションの中から住まいを選ぶと良いでしょう。
高齢者向けに設計された「シニア向け分譲マンション」を選ぶのも選択肢となります。
あるいは、老後に備えて将来的にバリアフリーリフォームを視野に入れた物件選びもおすすめです。その際には、リフォーム費用の確保が必要となります。
また、リフォームには補助金を受けられる場合もあるため、国や自治体のバリアフリーリフォームの補助金制度や優遇税制をチェックしたり、実績のある施工会社を探しておくのも良いでしょう。
一方、バリアフリーのリフォームを行うと、若い世代には合わないため売却がしづらくなるデメリットもあります。
ご自身が最終的に施設に入る可能性もあることから、シニア向けのバリアフリーマンションを選んだほうが、利便性が高まることもあります。
資産価値が落ちない物件を選ぶ
都心部の人気エリアに建つ物件や築浅の物件など、資産価値が落ちにくい物件を選ぶことで、売却時に有利になるでしょう。
担保価値の高い物件は、売却によって残債を精算しやすいため、住宅ローンの審査でも有利になります。
駅から近く利便性が高い物件は、老後の暮らしやすさにもつながるため、予算の範囲内で可能な限り資産価値の高い物件を選びましょう。
定年後に家を買う場合は賃貸の住まいとの検討を
定年後に家を買うことで、相続税対策につながるほか、子どもに資産を残せるメリットが得られます。
一方で住宅ローンが組みにくくなる点や、ローン返済以外の税金や維持費・管理費がかかる点がデメリットです。
老後の生活を重視した住まい探しでは、周辺環境やバリアフリーリフォーム、物件の資産価値なども考慮して、理想の家を選ぶと良いでしょう。
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