実家を相続する場合、名義変更(相続登記)が必要となりますが、手続きには多くの書類や手順が必要で一苦労です。
しかし名義変更を放置してしまうと、国や自治体からペナルティを課される可能性があります。また、実家の活用方法にも制限が出てきてしまうでしょう。
本記事では、名義変更の具体的な手続きの方法をはじめ、相続税・登記費用、名義変更の注意点についても併せて解説します。
相続した実家の名義変更はなぜ必要?放置した場合のデメリット
令和6年(2024年)4月1日からは、民法等一部改正法により、不動産の名義変更(相続登記)が義務化されます。これまでは義務ではなかったため、親の名義のまま土地が放置されるケースが多くありました。
そのため所有者の死後、所有者不明となる土地が多く発生してしまい、国土交通省の平成29年の調査によれば、全国の22%の土地が所有者不明土地となっています。その広さは九州本島の大きさに匹敵するほどとなっています。
ここでは、今後の義務化と併せて、名義変更(相続登記)を放置した場合のデメリットをご紹介します。
不動産の名義変更は売却や賃貸で必須
実家の名義変更をせず、親の名義のままにしておくと、売却や賃貸に出すなどの活用ができません。
民法177条で、「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」、つまり、売却をはじめ不動産に関する権利を主張できるのは登記上の名義人に限られる、と定められているためです。
相続した実家を賃貸として貸し出す場合や、金融機関でローンを組むために実家の土地家屋を担保にする際にも、名義変更がされていなければなりません。
相続した実家に住む予定がない場合、売却や賃貸を検討することも少なくありませんが、そのためにも名義変更は必ず行いましょう。
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令和6年からは3年以内の登記が義務化
先述のように、不動産の名義変更(相続登記)には、従来は期限が定められておらず、罰則も規定されていませんでした。
しかし令和3年に相続登記を義務化する法案が可決され、令和6年4月から施行されます。
そのため施行後は、不動産を相続したことを知ってから3年以内に相続登記を行う必要があります。違反には10万円以下の過料が科される可能性があることにも注意しましょう。
相続した実家の名義変更に必要な手続き・書類一覧
実家の相続に伴う名義変更の手続きでは、複数の書類を用意する必要があるため、時間と労力がかかります。ここでは、具体的な手続きの流れと、必要書類の一覧を紹介します。
遺産分割協議または遺言書で相続人を決定する
名義変更を行うためには、実家の相続権を明確にする必要があります。親の遺産相続の場合、遺言書がある場合には、基本的には遺言書の通りに遺産を分割し、遺言書がない場合には相続人全員が参加する遺産分割協議によって相続分を決定します。
この遺産分割協議で作成する「遺産分割協議書」が、名義変更の際に必要な書類となる点に注意が必要です。話し合いがまとまらない場合、遺産分割協議書が作成できないため、名義変更手続きができません。
なお、法定相続人を明確にするために、亡くなった方(被相続人)の死亡時から出生時までの戸籍謄本を取り寄せる必要があります。この戸籍謄本は名義変更の手続きの際にも必要となるため、大切に保管しておきましょう。
名義変更に必要な書類の一覧
実家の相続人が確定したら、名義変更に必要な書類の用意を始めましょう。名義変更に必要な書類の一覧と、取得できる場所は以下の表の通りです。
書類名 | 取得できる場所 |
---|---|
登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局 |
相続登記申請書 | 法務局 |
被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの) | 市区町村の役所 |
被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本 | 市区町村の役所 |
相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村の役所 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村の役所 |
不動産を相続する相続人の住民票 | 市区町村の役所 |
不動産の固定資産評価証明書 | 市区町村の役所 |
遺産分割協議書 | 自身で用意 |
注意が必要なのは、戸籍謄本・印鑑証明書の2点で、相続人全員分を提出しなければなりません。
特に戸籍謄本は、本籍地がある住所の役所に申請をする必要があります。本籍地が遠方の場合には郵便で取り寄せることも可能ですが、郵送料と配送日数を要することに注意してください。
法務局で相続登記を行う
書類が全て揃ったら、名義変更である相続登記を行います。手続きを行う場所は、実家の住所を管轄する法務局です。
相続登記は郵送での手続きも可能ですが、不備があった場合には再度郵送する手間が発生します。そのため、もし可能であれば、直接法務局で手続きをすると安心です。
なお、相続登記の手続きは司法書士に依頼することも可能です。依頼料が必要となりますが、相続登記の手続きがスムーズに行えるため、相談するのも良いでしょう。
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相続した実家の名義変更で発生する相続税・諸費用とは?
名義変更手続きにおいては、法務局で納める「登録免許税」のほか、申請に必要な書類を揃える際に、市区町村の役所でそれぞれの取得費用を払う必要があります。
また、司法書士に依頼する場合には、報酬の支払いも発生します。もちろん、相続税が発生する場合には、相続税の支払いも必要です。これらの費用について、それぞれ詳しく解説します。
相続税
実家の相続で支払う相続税は、不動産を含め、現金・有価証券・著作権などの換金可能な全ての財産を足した合計から、借金・ローンなどの債務を差し引いた「正味の遺産額」をもとに計算します。
相続税の計算では、相続人の数に応じた基礎控除額が設けられており、「3,000万円 + (法定相続人の数 × 600万円)」の計算式で算出できます。
たとえば、相続人が1人の場合は3,600万円までの遺産が非課税、2人の場合は4,200万円までが非課税となります。正味の遺産額が基礎控除額を上回る場合には、相続人ごとに相続税を算出し、納税することとなります。
なお、相続税の支払いは原則として現金一括払いのため、相続財産が不動産のみの場合には、納税資金に注意が必要でしょう。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金です。法務局の窓口で申請する場合、収入印紙で納税します。
相続した不動産を登記する場合は、「固定資産税評価額×0.4%」が納税額となります。固定資産税評価額は、実家の土地部分は路線価方式によって計算し、建物部分は固定資産税の「納税通知書」「課税証明書」に記載されている金額をそのまま適用します。
土地部分と建物部分の評価額を合算した金額に、0.4%を掛けると登録免許税の金額となります。なお、土地部分の評価額の計算方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
必要書類の取得費用
実家の名義変更の際に提出する書類は、市区町村の役所で手数料を支払って取得する必要があります。それぞれの書類の取得費用は、以下の表の通りです。
書類名 | 取得費用 |
---|---|
登記事項証明書 | 600円(オンライン請求の場合480〜500円) |
固定資産税評価証明書 | 1通400円※ |
被相続人の戸籍謄本 | 1通750円※ |
相続人の印鑑証明書 | 1通300円※ |
相続人の戸籍謄本 | 1通450円※ |
相続人の住民票 | 1通300円※ |
※市区町村によって金額が異なります。
前述のように、相続人の戸籍謄本・印鑑証明書は全員分が必要になるほか、遠方の役所から取り寄せる場合には郵送料も発生します。本籍地や相続人の数によって金額は変わりますが、合計で数千円程度です。
司法書士への報酬
相続登記を司法書士に依頼する場合には、報酬の支払いも発生します。登記のみを依頼する場合は3〜7万円程度ですが、書類の作成・取得から依頼する場合には、7〜15万円程度の依頼料が必要となります。
司法書士報酬は法律で規定されているわけではないため、いくつかの司法書士事務所に相談して見積もりを用意してもらうと良いでしょう。
相続した実家の名義変更における注意点
実家の相続と名義変更に関する手続きは慎重に行い、後々のトラブルとならないようにしましょう。注意点
は、以下3点です。
- 誰の名義にするかを慎重に検討する
- トラブルの原因となりやすい共有名義は避ける
- 空き家のまま放置しない
それぞれ解説します。
誰の名義にするかを慎重に検討する
遺産分割協議の際には、誰が実家を相続し、誰の名義で登記するかを慎重に決める必要があります。
たとえば、あなたの父親が他界して配偶者である母親が実家を相続した場合、配偶者控除を利用できるため相続税は発生しないケースが大半です。しかしその後、母親が他界してあなたが実家を相続する場合には、二次相続として相続税負担が重くなる場合があります。
また、母親名義となった実家に、あなたも同居してリフォームをした場合、リフォーム費用が母親への贈与とみなされ、贈与税が課税される可能性がある点にも注意が必要です。また、リフォームによって所得税が減税となる「リフォーム減税」の措置も、ご自身が受けられなくなってしまいます。
トラブルの原因となりやすい共有名義は避ける
不動産の相続登記では、1人の相続人ではなく、複数の相続人での所有を登記する「共有名義」も可能です。
ただ、共有名義はトラブルの原因になりやすい点に注意が必要です。不動産の売却や賃貸、担保とする際には、共有名義人全員の同意が必要となります。また、名義人の1人が亡くなり、その配偶者や子どもが名義人に加わると、面識のない者同士が実家を共有する事態も考えられます。
遺産が実家しか残されていない場合には、他の相続人の相続分は、現金で代償する「代償分割」を検討するなど、できれば1人の名義人による相続登記が望ましいでしょう。
空き家のまま放置しない
相続した実家に住む予定がない場合、空き家のままにしておくこともあるでしょう。しかし2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、傷んだ空き家を放置すると、固定資産税の負担増や過料、解体費用の請求などのペナルティが自治体から課せられることもあります。
空き家にすると家が傷んで資産価値が下がるほか、毎年の固定資産税を払い続けなければならないデメリットもあります。住まない場合には、売却や賃貸に出すことも検討すると良いでしょう。
相続した実家やその土地で土地活用を検討している方は、イエウール土地活用で複数企業から土地活用プランを取り寄せ、比較することが可能です。
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名義変更した実家は土地活用もおすすめ!
相続して名義変更を済ませた実家は、自分の所有物となり、自由に売却・活用することが可能です。
ご自身でリフォームをして住んだり、賃貸物件として収益を得たり、更地にしてアパート・マンションを建てて経営したりするなどの方法も選択できます。
相続した実家の名義変更は費用・期限を確認して早めの手続きを
これまで解説したように、相続した実家の名義変更には、多くの書類を揃えて法務局で手続きを行う必要があります。
令和6年4月からは、3年以内の相続登記も義務となります。遺産分割協議がまとまらない可能性などがある場合には、可能な準備から早めに進めておくと良いでしょう。
記事のおさらい
土地活用方法を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また、お持ちの土地に合わせた活用方法を知りたい方は以下の記事も参考になります。
そして、土地活用のノウハウについては以下の記事をご確認ください。