実家を相続したものの、住む予定がなく空き家としてしまう方も少なくないでしょう。
総務省統計局が5年ごとに実施している調査「平成30年住宅・土地統計調査」によると、日本国内の空き家の数は848万9,000戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.6%と、過去最高を記録しました。
増加し続ける空き家対策のため2015年に施行された「空き家特別措置法」により、空き家の所有者は、固定資産税が増加するなどのペナルティを受ける可能性もあります。そこで検討したいのが、相続した実家を空き家とせず、人が住みやすいようにリフォームする選択肢です。
本記事では、相続した実家のリフォームを行うメリット・デメリット、リフォームにかかる費用相場と注意点を解説します。
相続した実家をリフォームする前に考えたいこと
相続した実家のリフォームを行う際には、事前に検討しておきたいポイントがあります。リフォームには高額な費用や手間がかかるため、後悔を防ぐためにも以下の点を確認しておきましょう。
人に貸す・売却する選択肢もある
相続した実家に住む予定がない場合、リフォームをせずに売却することも選択肢となります。
立地条件が優れている場合を除き、実家の資産価値は下落することが多く、また不動産は所有しているだけでも固定資産税や都市計画税の納税義務が発生します。
所有し続けると出費が膨らむ可能性が高いため、相続した時点で、そのまま売却、もしくは解体して更地にしてから売却することも検討すると良いでしょう。
実家が駅近などの良い立地条件の場合には、戸建ての賃貸物件として貸し出し、収益化を図ることも可能です。人が住むことで建物の劣化を抑えられるほか、家賃収入も得られます。
ご自身で住む予定のない好立地の実家を相続した際には、賃貸の借り手がつくかどうか、不動産会社に相談すると良いでしょう。
実家の土地や空き家の活用を少しでも検討しているのであれば、以下の記事が参考になります。
「特定空家等」に指定されると税負担が重くなるリスクも
空き家の増加を受けて施行された「空き家対策特別措置法」では、倒壊の危険性や衛生面・景観面の懸念がある空き家を「特定空家等」と定めています。特定空家等に認定された場合、行政からの助言・指導を経て、勧告、命令、代執行が行われる可能性があります。
「勧告」が行われると、固定資産税の住宅用地特例から除外され、固定資産税が従来の3倍もしくは6倍に増加します。「命令」に従わない場合には50万円以下の過料が科される上、「代執行」により建物が解体された場合には解体費用の負担が求められます。
こうしたリスクを回避するためにも、実家を空き家のまま放置しないことが大切です。
相続した実家をリフォームするメリット
築年数が古い実家を相続すると、そのままでは住みにくいこともあります。実家のリフォームを行うことは、生活上の不便が解消できるほか、以下のようなメリットがあります。
- 売却の際に買い手が見つかりやすい
- 戸建て賃貸物件として収益化が図れる
- 建て替えに比べ費用・工期が抑えられる
- 倒壊リスクを軽減できる
それぞれのメリットについて解説します。
売却の際に買い手が見つかりやすい
実家の売却を検討する場合、リフォームによって見た目の印象を良くすることで、買い手が見つかりやすくなるメリットがあります。
中古の戸建てを購入したい買主にとっても、購入後のリフォーム工事が不要で、すぐに住めることは検討の際に好印象となるでしょう。
戸建て賃貸物件として収益化が図れる
実家の設備や内装をリフォームすることによって、資産価値や賃貸物件としての価値が上がり、収益化を見込めるようになるでしょう。
特に、衛生面が重視される台所・浴室・トイレなどの水回りなどをリフォームすれば、賃貸の借り手もつきやすくなります。また、断熱リフォームを施して光熱費を抑えられる住宅にすることなども、借り手にとって好印象となります。
もし可能であれば、耐震性やデザイン性を重視した内装のリフォームなども行うことによって、より物件価値が高まり、収益化につながるでしょう。
建て替えに比べ費用・工期が抑えられる
建て替えと比べた場合、リフォームのメリットは費用や工期を抑えられる点です。相続した実家が、耐久性・耐震性のある住宅であれば、リフォームが経済的でしょう。
一方、実家の建て替えは、土地の取得費用をかけずに新築住宅を建てられるというメリットもあります。
新築により最新の設備を導入した居住性の高い住まいを手に入れられる一方、解体費用を含めた高額な工事費用と、長期の工事期間を要する点に注意が必要です。
倒壊リスクを軽減できる
新耐震基準が施行された1981年以前に建てられた実家の場合、基礎や接合部の強度が不十分な可能性があるため、耐震性が低く倒壊リスクが高い傾向にあります。
そのため、耐震リフォームを施せば、住宅の耐震性を高めることができ、大きな地震が発生した際にも被害の軽減につながるメリットがあるでしょう。
相続した実家や土地をリフォームなどをして整えることで収益を生み出すことができるなど有効活用させることができます。活用方法には様々あるので、立地や資金などから最適な活用方法を選ぶことが大切です。
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相続した実家をリフォームするデメリット
相続した実家をリフォームするデメリットとして挙げられるのは、以下の2つです。
- 自由な間取り変更は難しい
- 賃貸・売却ではリフォームが逆効果になる場合も
これらのデメリットも踏まえ、リフォームを検討しましょう。
自由な間取り変更は難しい
リフォームによって、間取りの変更を検討する方も多くいますが、建物の構造によっては仕切り壁や柱を撤去できないケースもあります。
また、増築によって実家を広く使いたいと考えた場合にも、建ぺい率や容積率の制限により許可が下りないことも考えられます。
間取り変更を含めた大規模なリフォームを検討している場合には、リフォーム会社と相談しながらプランを検討しましょう。
賃貸・売却ではリフォームが逆効果になる場合も
賃貸・売却のために実家をリフォームする場合、せっかくのリフォームも逆効果となってしまう場合があります。
中古の戸建てのリフォームでは、資産価値を高めるよりも、維持修繕の側面が強いため、リフォーム費用を上乗せすると借り手・買い手がつきにくくなる可能性があります。
また、実施したリフォームが、借り手・買い手の好みや条件に合わなかった場合、検討対象から外れてしまいます。賃貸・売却を考える際には、最低限の修繕が良いでしょう。
相続した実家のリフォームにかかる費用相場は?
株式会社リクルート住まいカンパニーが実施した「2017年 大型リフォーム実施者調査」によれば、戸建てのリフォーム費用の平均は621.9万円となっています。
また、譲り受けた住まいのリフォーム費用は、平均で1,384.6万円(参考値)です。
築年数別に見ると、10年未満で平均429.2万円、40年以上で平均934.1万円となっているため、古い住宅になるほどリフォーム費用が増加する傾向にあります。
なお、こちらの調査は自分が住む住居のリフォーム費用のため、賃貸・売却を前提とした、最低限の維持修繕リフォームであれば、もっと費用を抑えられるでしょう。
リフォームの内容ごとの費用相場
国土交通省が工務店やリフォーム会社などの約40社に対してヒアリング調査をした資料によると、リフォームの工事内容ごとの費用相場は下記の通りです。
リフォーム内容 | 価格 |
---|---|
タンクレストイレへの交換 | 30万円~50万円 |
システムキッチンへの交換 | 40万円~80万円 |
システムバス交換 | 60万円~150万円 |
ストレート屋根の塗り替え | 20万円〜80万円 |
耐震補強 | 100万円~200万円 |
畳からフローリングへ張り替え | 15万円〜60万円 |
上記の金額は目安であり、実際の工事内容や、使用する資材・設備、施工する業者によっても金額は上下します。そのため正確な金額を見積もる際には、一度リフォーム会社に相談してみることをおすすめします。
リフォーム費用以外に発生する料金
リフォーム費用には工事費だけではなく、設計費や建築確認申請の手数料などが発生します。また、荷物を保管するためのトランクルーム代、必要に応じて工事期間中は仮住まいをするための費用も発生します。
増築リフォームの結果、床面積が増えた場合には不動産取得税、リフォーム費用を譲り受けた場合には贈与税、不動産を担保にリフォーム費用の融資を受ける場合には登録免許税と、各種税金の支払いも必要になるケースがあるため、工事開始前に確認ましょう。
「今持っている不動産を現金化したい」という方は、売却という形で手放すという選択肢もあります。一括査定サイト「イエウール」を使えば、無料で最大6社から査定を受けられるので高く売ってくれそうな会社が分かります。
相続した実家をリフォームする際の注意点
最後に、相続した実家をリフォームする際の注意点について、費用と名義の点から解説します。
リフォームで利用できる減税制度と補助金を確認する
リフォームを行う際には、利用できる減税制度や補助金を確認しておくことで、費用を最小限に抑えることができます。
実施するリフォームによっては、「住宅ローン減税」、「ローン型減税」によって所得税の軽減措置を受けられます。減税の対象となるリフォームは、主に以下の通りです。
- 耐震リフォーム
- バリアフリーリフォーム
- 省エネリフォーム
- 長期優良住宅化リフォーム
これらのリフォームを行う場合は、国や自治体からの補助金を受けられる可能性もあります。
どの補助金の対象になるかは、リフォーム業者にアドバイスをしてもらえることがあるため、見積もりの際に確認すると良いでしょう。
親の名義や共有名義はトラブルの原因に
相続した実家は、早めに名義変更を済ませておくことが大切です。存命の親の名義のまま、子どもが実家をリフォームした場合、リフォーム費用が親への贈与とみなされ、親に贈与税が課される可能性もあります。
また、住宅ローン減税も、自身が居住している住宅が対象のため、親の名義のままだと適用を受けられない点に注意が必要です。
なお、名義変更をする際には、家族や兄弟で「共有名義」にすることは避けた方が良いでしょう。共有名義にすると、売却の際に名義人全員の同意が必要になるほか、名義人が亡くなった後の相続時にトラブルが発生しやすくなります。
相続した実家のリフォームは注意点を踏まえて慎重に
これまで解説した通り、相続した実家のリフォームには、ご自身の住まいをリフォームする場合に比べて、注意点が多く存在します。
今回ご紹介したメリット・デメリットを踏まえ、実家にそのまま住むか、賃貸に出すか、あるいは売却するかなど、各選択肢を検討しながらリフォームを計画しましょう。
記事のおさらい