ただし、自治体によっては予算の都合で制度自体を設けていないケースもあります。また、支給条件を満たしていなかったり、決まった手続きを踏めない場合も補助金は利用できません。
本記事では、空き家解体で補助金の利用を検討されている方に対して、補助金制度の概要や支給額の目安、手続き上の注意点について解説しています。
空き家解体の補助金は自治体から支給される
冒頭でも解説しましたが、空き家解体補助金は自治体から支給されます。
地域の安全維持が目的とされる
補助金制度の目的として、
- 倒壊の危険性が高い古家を除却し地域の安全を守る
- 放置された空き家を除却し地域の景観や治安を守る
があります。
空き家は放置し続けると、古くなることで倒壊したり、自然発火や放火などで火災の原因になったりと地域の安全が損われるリスクとなります。よって、解体費用を補助することで除却を促し、安全確保につなげているのです。
以下は空き家解体でよくある補助金制度の種類ですが、いずれも住環境を悪化させる空き家が対象とされています。
▼空き家解体でよくある補助金制度の種類
補助金制度の種類 | 概要 |
---|---|
老朽危険家屋解体撤去補助金 | 倒壊の危険性が高い家屋を除却するための補助金制度 |
都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金 | 都市の景観を損ねる空き家を除却するための補助金制度 |
空き家解体撤去助成金 | 空き家の解体費用を補助する制度 |
補助金の財源は国土交通省から支給
補助金の財源は、国である国土交通省から支給されています。
国土交通省は、2015年から開始した「空き家対策総合支援事業」の一環として、補助金を設ける自治体へ経済援助を行っています。国土交通省の後ろ盾もあって、補助金が利用できる自治体は昨今増えてきています。
自治体によっては制度自体がないケースも
補助金は自治体により支給されますが、自治体によっては制度自体を設けていないこともあります。
実際に補助金が使えるかどうかは、空き家を管轄する自治体の公式ホームページから概要を調べておきましょう。
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空き家解体の補助金の上限は100万円
空き家解体の補助金の上限は100万円が目安です。ただし、自治体によって大きく異なります。一般的に解体工事にかかった費用の何割か、または上限何万円と定められているので、お近くの自治体の制度を確認するのがおススメです。
自治体によって上限が異なる
以下は各自治体の空き家解体補助金の上限額の事例です。自治体に応じて上限にバラつきがあることがわかります。
自治体名 | 上限額 |
長野県長野市 | 100万円 |
福岡県芦屋町 | 100万円 |
熊本県天草市 | 50万円 |
福岡県飯塚市 | 50万円 |
東京都西東京市 | 30万円 |
空き家解体補助金は自治体ごとで設けられている制度なので、上限も自治体ごとで決められている点に注意してください。
必ずしも上限が支給されるわけではない
上述したとおり、必ずしも上限まで支給されるわけではなく、
- 解体工事にかかった費用の何割か
- 自治体が規定する坪単価に延べ床面積をかけた金額
- 上限額
のいずれかのうち、「最も安い金額」という条件で支給金額が設定されていることが一般的です。
例えば、名古屋市の空き家解体補助金の場合、
- 対象住宅を除却する費用の1/3
- 対象住宅の延床面積に1平方メートル当たり9,600円を乗じた額の1/3
- 上限額40万円
のうち最も低い金額が支給額として設定されています。
空き家解体補助金のよくある支給条件
制度の内容は自治体によって異なりますが、自治体間で共通するよくある支給条件には以下があります。
▼空き家解体補助金のよくある支給条件
- 条件①1年以上住んでいない空き家である
- 条件②現耐震基準を満たしていない
- 条件③倒壊の危険性が高いほど老朽化している
条件①1年以上住んでいない空き家である
空き家解体補助金の条件としてまず挙げられるのは、「空き家であること」です。
空き家の定義は空き家等対策特別措置法によって法的に定められており、該当する場合は正式に「空き家」とみなされます。
▼空き家の定義
- 1年以上住んでいない、使われていない家
- 人の出入りや電気・ガス・水道などが一斉使用されていない状況にある
また、空き家のなかでも、「特定空き家」と自治体から指定された空き家は確実に補助金の支給対象となります。
特定空き家とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態と自治体が判断した空き家のことです。特定空き家と自治体が指定された空き家は、地域の景観や安全を損なうとみなされるため、補助金の支給によってすみやかな除却対象とされます。
条件②現耐震基準を満たしていない
次に、「現耐震基準を満たしていない空き家」も補助金の支給条件のひとつです。
耐震基準は1981年(昭和56年)に改定されており、1981年(昭和56年)5月31日までに確認申請をうけた建物は「現耐震基準を満たさない」に該当します。自治体が補助金を支給する背景は「地域の景観や安全性を確保すること」にあります。よって、震災時に倒壊してしまうリスクが高い現耐震基準を満たさない家屋は、除却の対象になるのです。
条件③倒壊の危険性が高いほど老朽化している
空き家が倒壊の危険性が高いほど老朽化している場合も補助金の対象となります。
老朽化の判断は、国土交通省が公開しているガイドラインを基に各自治体が定めた「住宅の不良度判定」を基準に行われます。国土交通省の測定基準では、構造部分・防火性能・インフラ・衛生に関して問題があれば数値を加算し、合計評点が100以上となった場合は不良住宅と判定することとなっています。
実際の判定は補助金申請後に自治体の職員が現地調査することで実施されます。一般人が目視で確認できるものではなく、専門家による判定が必要な点に注意しましょう。
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空き家解体の補助金の事例
空き家解体の補助金の支給額と条件について解説しましたが、実際の制度はどのような内容になっているのでしょうか?
本章では、空き家解体の補助金の支給額と条件をわかりやすく解説しています。
▼空き家解体の補助金の事例
- 宮城県栗原市の「危険空家等解体助成事業」
- 東京都杉並区の「老朽危険空家除却費用の助成制度」
- 静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」
- 大阪府大阪市の「空き家の解体やリフォームに使える補助制度」
- 広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」
宮城県栗原市の「危険空家等解体助成事業」
宮城県栗原市の「危険空家等解体助成事業」は、放置することにより周囲に影響を及ぼす恐れのある危険な空家などの解体費用の一部を予算の範囲内で助成しています。
制度名 | 危険空家等解体助成事業 |
支給金額 | 解体費用の1/2かつ上限50万円(1,000円未満端数切捨て) |
支給条件(一部) |
|
東京都杉並区の「老朽危険空家除却費用の助成制度」
東京都杉並区の「老朽危険空家除却費用の助成制度」は、老朽化が著しく、倒壊の危険性の高い空家を除却・解体する場合、対象となる工事費用の一部を区で補助しています。
制度名 | 老朽危険空家除却費用の助成制度 |
支給金額 | 解体費用の80%かつ上限150万円 |
支給条件(一部) |
|
静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」
静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」では、老朽化した危険な空き家の増加を抑制するため、除却費用の一部を補助しています。
制度名 | 浜松市空き家等除却促進事業費補助金 |
支給金額 | 解体費用の80%かつ上限150万円 |
支給条件(一部) |
|
参考:静岡県浜松市公式_浜松市空き家等除却促進事業費補助金について
大阪府大阪市の「密集住宅市街地のための補助制度」
大阪府大阪市の「密集住宅市街地のための補助制度」では、幅員4m未満の狭い道路に面する昭和25年以前に建てられた木造住宅を解体する場合、解体費用の一部を補助します。
火災で燃え広がる危険性が高い密集市街地の防災性の向上を図るため、「対策地区」と「重点対策地区」を設定し、各種補助制度を実施しています。
制度名 | 密集住宅市街地のための補助制度 |
支給金額 |
|
支給条件(一部) |
|
参考:大阪府大阪市公式_密集住宅市街地のための補助制度について
広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」
広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」では、老朽化した不良な空き家を解体する費用の一部を補助しています。
制度名 | 空き家解体事業補助金 |
支給金額 |
|
支給条件(一部) |
|
参考:広島県あきたか市公式_空き家解体事業補助金制度について
空き家解体で補助金を利用するための手続き上の注意点
空き家解体の補助金制度について解説してきましたが、利用する際に注意したい手続き上の注意点がいくつかあります。
把握していないと補助金自体が利用できなくなってしまうリスクもあるので、しっかりと確認しておきましょう。
受け取れるのは工事終了後
補助金を利用する際に最も注意しなければならないのは、補助金や助成金を実際に受け取れるのは工事完了後であり、解体費用は一旦全額自己負担する必要があるという点です。補助金や助成金は、解体工事が終わって、解体証明書や費用領収書を行政が確認できて初めて給付されます。
そのため、最終的には補助金や助成金で解体費用の一部を賄うことができますが、最初は全額自分で支払う必要があることを念頭に置いて資金繰りを行うことが重要です。
申請は工事前の必ず行う
空き家解体補助金の申請は解体工事前に必ず行いましょう。これは、まず行政の職員に空き家の状態をチェックしてもらい、老朽化のため倒壊の恐れありとの判断を得てからでないと、行政内での給付手続きに入れないからです。
この順序を間違えて申請前に着工してしまうと、建物の状態が把握できないまま解体されることになってしまい、行政による建物状態確認ができず自動的に補助金給付対象からは除外されます。
予算に上限がある
空き家解体補助金には予算が設定されており、予算内に収まれば支給対象となるが、予算を超えてしまった場合は支給されないことがあるため注意しましょう。
また、予算に収まるかどうかは先着順によって決まります。
補助金制度の予算は4月の年度始めに新しくなるため、解体工事を年度始めに計画する等して、予算枠がある時期に補助金の申請を行うようにしましょう。
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