火災保険というと「万が一の火災発生時に燃えてしまった家財を補償してくれる保険」という、ぼんやりとしたイメージをお持ちではないでしょうか。
実は、マンションの火災保険は火災による家財の補償だけでなく、近隣住民や建物への補償も行ってくれるものもあります。本記事では、特にマンションの火災保険について、保険料がいくらくらいなのか、また具体的な補償内容について解説していきます。
また、そもそもマンションに火災保険は必要なの?という疑問をお持ちの方はこちらの記事も参考にしてください。
マンション火災保険は必要?加入率や補償内容の選び方も解説!
マンションの火災保険とは?
火災保険とは損害保険の1つで、主に火災の被害を受けたときに損害を補償してくれる保険です。保険料は純保険料と付加保険料に分けられています。
純保険料は保険金の支払いに、付加保険料は保険会社の運営に使われます。以下で、火災保険の概要を解説します。
火災発生時に、自身の家財や近隣住民へ補償を行える
火災保険は火災発生時に、自身の家財だけでなく、近隣住民の方を含めて家財の補償をする保険です。火災保険の仕組みを説明するにあたって、まずはマンション「専有部分」と「共用部分」について解説します。
専有部分 | 自分の住居の壁、天井、床 |
共用部分 | 玄関ホールや廊下、柱など |
「共用部分」は管理費を原資として、管理組合が火災保険に加入します。そのため、もしも共用部分が火災で損傷した場合は、この管理組合が加入した火災保険により近隣住民のための補償が行われます。
一方、専有部分に関しては、個人で火災保険に入る必要があります。この時重要なのが、専有部分に関しては「貰い火」つまり「他人の失火による延焼」で被害が発生した場合にも、基本的には自分で対処しなければいけないことです。
すなわち、貰い火で被害が発生した場合であっても、火元に損害賠償請求ができないため(相手に著しい過失がない限り)、自分の保険(家財保険)で補う必要があります。
自身の自宅から発生した火災で近隣の方に迷惑をかけてしまった際に、自分の保険で相手に弁済をしたいという場合には個人賠償責任保険に加入しておく必要があります。自分の過失で失火した場合は、大家さんに対しての賠償責任があります。
この賠償責任を補償する火災保険が、借家人賠償責任保険です。つまり、一般的に火災保険は以下の3つの補償内容で構成されています。
- 家財保険
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
マンションの専有部分と共用部分の違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
マンション共用部分と専有部分とは?違いを知って快適な生活を手に入れよう!
火災保険の加入は義務ではない
火災保険は法律上義務付けられていないため、マンション購入時に火災保険に加入する義務はありません。
しかし、ローンを組む際、火災保険がついていないと融資が受けられない場合が多いので、マンションを購入する方のほとんどが加入をしているということになります。
また、賃貸の場合も火災保険への加入は義務ではありません。しかし実際には、火災保険に加入していることを証明しないと部屋を借りられない場合が多く、火災保険への加入は実質的に必須となっています。火災が起きた場合、「弁償ができない」では大家さんが大きな損害を被ってしまうからです。
先ほども言及しましたが、貰い火で家財が燃えた場合は火元に損害賠償請求することはできないため、自身の保険で対応する必要があります。
自分に過失がなくとも損害が発生するリスクを考えると、少なくとも自宅の家財を補償する火災保険への加入は必要と言えます。
マンションの火災保険で補償可能な内容とは?
ここまで、火災保険の概要についてご説明しました。次に、火災保険の具体的な補償内容を解説します。火災保険の持つ、火災以外の補償についても以下で解説します。
①近隣住民への補償
基本的に延焼に関しては火元に著しい過失がない限り、近隣住民への損害賠償の必要はありません。
また、マンションの場合、共有部分は基本的にマンションの管理組合の火災保険で補償するため、共有部分について個人が保険に加入する必要はありません。
②大家さんへの補償
借家人賠償責任保険に入っている場合には、大家さんに対する補償が支払われます。
本来であれば、自分の過失によって家を燃やしてしまった場合、大家さんへ賠償する責任がありますが、借家人賠償責任保険に加入していれば保険使用によって支払うことが可能です。
③家財への補償
家財への補償は、家財保険によって支払われます。補償の対象となるものは主に以下の生活用品です。
- 電化製品
- 家具
- 衣類
- 食器
また1個の価格が30万円を超える宝石なども補償の対象になります。しかし、以下のようなものは対象になりませんので注意が必要です。
- 建物の付属品
- 自動車
- 植物・動物
- 小切手や有価証券、現金
- パソコンなどのデータ
家財保険に加入する前に、どこまでが補償されているのか約款で確認することをおすすめします。
④火災以外の事象への補償
火災保険によって、火災以外の事象についても補償をするケースがあります。たとえば落雷や破裂、爆発、雪災などによる損害です。
他にも、漏水や盗難、破損・汚損による損害は、火災保険の中の家財保険で補償してくれます。例えば、「物をうっかりぶつけて電子機器を壊してしまった」といったような損害も対象の1つです。
また、他人のものを損害してしまったときは、火災保険の中の1つ、個人賠償責任保険によって補償されます。例えば、不注意で水を出しっぱなしにしてしまい、下の階を浸水させてしまったとき、その被害分を個人賠償責任保険を使用して補償できます。
ここで注意する必要があるのが、「免責金額」の存在です。免責金額とは、損害が発生した時に自身が負担する金額を指します。免責金額を0円で火災保険を契約した場合、一般的に面積金額の設定がある保険よりも保険料が高くなります。
しかし、保険料を安くしようと免責金額を高く設定した場合、実際に損害が発生した場合にもらえる補償が減るため、結果損害発生時に支払う金額が大きくなる恐れがあります。
下記の記事ではマンションの地震保険について解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
マンションの地震保険は不要?加入率や補償内容を解説!
火災保険の相場は存在しない?
火災保険について、具体的にどのような補償があるかについてご説明しました。
さまざまな補償がある火災保険ですが、実際に補償を受けるためにはどれくらいの保険料を支払うのか、火災保険の相場はどれくらいか気になりますよね。
結論を言うと、火災保険は大体の金額は算出できますが、「相場」という言い方でのご紹介は難しいです。以下ではその理由と、価格を決める要因、また実際のシミュレーションを利用し、補償対象・内容と火災保険料の相関関係について解説します。
火災保険の価格を決める要因はさまざま
火災保険の価格を決める要因はさまざまですが、火災や損害のリスクが高い建物や損害額が大きくなりやすい条件ほど高くなる傾向にあります。火災保険の価格を決める主な要因は、以下の通りです。
- 補償対象
- 補償内容
- 建物の構造
- 築年数
- 戸建て or マンション
- 所在地
- 専有面積
- 特約の有無
- 保険期間
補償対象や補償内容については、契約時に選択することが可能です。たとえば、「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」という選択肢があります。
「建物のみ」で契約すると「建物+家財」より保険料は安くなりますが、火災で家財に損害があった場合に補償を受けることはできません。すなわち、補償を厚くすればするほど、必然的に保険料が高くなります。
また、火災保険料は建物の構造によっても異なります。一般的に建物は「コンクリート造」「鉄骨造」「木造」といった構造があります。
コンクリート造よりも木造のほうがより火災の被害を受けやすい構造なので、同じ補償内容であったとしても火災保険料は高めに設定される傾向にあります。
築年数に関しても同じく、古い建物の方が火災の被害を受けやすいと判断され、保険料が高めに設定される傾向にあります。戸建てとマンションの場合は、一般的に戸建ての方が高くなる傾向にあります。
このように、建物の構造や内容によって火災保険料は大きく変わります。そのため、具体的な保険料を知りたい場合には、自宅と補償の条件に合わせて見積もりを取ることが必要です。
保険会社によっては保険料のシミュレーションができるサイトを運営しています。シミュレーションサイトに建物の情報や希望する補償内容などを入力し、保険料のおおよそを把握することも可能です。
補償内容と保険料の相関関係
たとえば、「分譲マンション」「東京」「コンクリート造」「築15年」「保険金額1,000万円」に設定しシミュレートすると、10年間の保険料はおよそ5.2万円〜7万円です。
この「保険金額」を「2,000万円」に再設定すると、金額はおよそ10万円〜14万円となり、大きく保険料が変わることがわかります。
また、マンション管理組合の保険金に関しては、築20年で300万円〜500万円ほどと、かなり高い金額です。
マンション経営を考えている方は、火災保険について十分な検討が必要です。補償内容により保険料に大きく差が出ますので、不明点や気になる点は保険会社や不動産会社に相談し、しっかりと吟味をしましょう。
下記の記事では、マンション購入時にかかる諸費用にちて解説しています。こちらもぜひご活用ください。
マンション購入にかかる諸費用はいくら?目安まで徹底解説!
火災保険を安く抑えるには?
長く支払いが発生するものだからこそ、できるだけ保険料は安く抑えたいですよね。
このセクションでは、火災保険の補償を維持しつつ、火災保険料を安く抑えるために必要な検討方法について解説します。
保険会社を比較して検討する
火災保険を安く抑えるのに一番効果的なのが、保険会社を比較検討することです。
前の項でご紹介したようなシミュレーターを使ったり、不動産の専門家に相談をすることで、各種保険会社の火災保険を比較・検討できます。
保険会社の商品によって、それぞれ家財保険金額や補償内容、付帯されているサービスが異なります。
そのため、自分の地域や利用時のリスクを考え、比較・検討し、最適な保険商品を利用することで、補償を維持しつつ保険料を最低限の金額に抑えることが可能です。
必要性の低い補償を除外する
必要性の低い補償や特約を外すことで、火災保険の費用を抑えられる場合があります。
たとえば、家の近くに川や海などがなく、浸水の危険性が低いにも関わらず水災補償が含まれている場合、水災補償分の保険料が無駄になってしまいます。
こういった場合には、補償を除外し、保険料の見直しを検討ください。自分で補償内容を選択せずに、火災保険にすでに入ってしまった場合には、一度補償内容の詳細を確認することをおすすめします。
ただし、「たぶん要らないだろう」「必要ないかも」といった曖昧な理由で補償を外すのはおすすめしません。そもそも保険は「もしも」の時の制度であり、曖昧な理由で補償を外すと、いざというとき後悔してしまう可能性があるからです。
保険会社をはじめ専門家の意見も聞いたうえで十分に検討し、あくまで不必要なものに絞り除外しましょう。
家財に対する保険金額を最適化する
家財に対して保険金額を最適化させることも、保険料を抑えるための1つの手段です。もともと、家の中に服や家具をあまり置かなかったり、安い家具を利用して引っ越しの際に買い替えるつもりの場合には、家財保険の必要性は薄いでしょう。
また、家財保険の免責金額を高めに設定しておくことで、自分の持ってる家財に対応して保険金額を最適化することも可能です。
保険期間を長期に設定&割引制度を併用する
火災保険は一般的に、保険期間を長期に設定すればするほど、1年あたりの保険料が安くなる傾向にあります。長く住み続ける予定であれば、長期に設定して保険料を払うのがおすすめです。
また、保険会社によっては割引制度をもうけている場合があります。オール電化割引、ノンスモーカー割引などさまざまな割引制度がありますので、積極的に利用しましょう。
保険の重複に気つける
個人賠償責任保険などは、クレジットカードを購入の際に契約していたり、自動車保険についている場合もあります。このような状態を、補償の重複といいます。
一概には言えませんが、補償が重複している場合、補償に一切繋がらない保険料が発生してしまっている恐れがあります。
保険内容が重複していても、保険会社は入っている保険を全て把握している訳ではありません。そのため、保険が重複していないかは自分自身で確認する必要があります。
下記の記事では、マンション購入後にかかる維持費について解説しています。こちらもぜひお役立てください。
マンション購入でかかる維持費の内訳や抑えるポイントを解説
マンションの火災保険の相場は条件や補償内容で金額が変わる!
火災保険は火災で物を失ったときだけでなく、水漏れや台風の損害も補償してくれる損害保険です。金額は条件や補償内容により大きく異なるため、明確な「相場」は存在しません。
まずは自宅の条件と補償内容から、シミュレーションや相見積もりを取り、おおよその保険料金を把握することをおすすめします。
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