老朽化したビルでは、耐震性などの安全性の問題からテナントが退去してしまい、十分に賃料収入を得られなくなるようなこともあります。
また、安全性の低いビルを子供に引き継がせるのはどうなのかと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に築30年以上のビルでは、段々と修繕の回数も増えていき、建て替えも視野に入れなければなりません。
ただ、建て替えを実施するとなると、莫大な費用がかかることから、そう簡単に実施に踏み切れない方も多いと思います。
そこでこの記事では、老朽化したビルの建て替えについて解説していきます。ビルの建て替えが必要な理由や立ち退きのコツ、建て替え期間・費用を解説していますので、ビルの建て替えにおける疑問を解消できたら幸いです。
その他、土地活用方法について詳しくは以下の記事もご覧ください。
老朽化したビルの建て替えが必要な理由
ここではビルの建て替えが必要な理由について解説していきます。
また、ビル経営については以下の記事をご覧ください。
安全性の問題
老朽化したビルは、建物自体の耐震性・耐久性が低下してしまっていることが多いです。
こういった耐震性や耐久性が低下しているビルでは、建物の安全性を疑問視した入居者が退去を検討しまうかもしれません。
不動産のオーナーとしては、耐震工事をしていれば安全性については問題ないと思うかもしれませんが、入居者にとって耐震工事だけでは不安が残る部分もあります。
耐震補強の第一の目的は、あくまで災害発生時の入居者の安全の確保です。そのため、ビルの老朽化で建物の安全性に不安があるのであれば、建て替えを検討することが必要でしょう。
旧耐震基準
建物の安全性について、旧耐震基準と新耐震基準という考え方があります。
旧耐震基準とは、建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準を指します。
旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されています。
また、この翌日以降に適用されている基準を新耐震基準といいます。新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されています。
最近では、旧耐震基準であるだけで入居を敬遠されることもあるため、旧耐震基準のビルを所有していのであれば、建て替えを検討することをおすすめします。
維持費が高額
ビルの経営を続けていくと、多額なリフォームの費用がかかったり、大規模修繕の費用が必要になります。
さらに、建物を修繕せずに放置し続けると、老朽化が進むスピードも速くなり、外壁が痛んだり、設備の故障の回数も増えます。
また、築30年を超えたくらいから大規模修繕も視野に入れなければなりません。小さな修繕やリフォームを継続的に行っていたとしても、いつかはカバーしきれなくなります。
こうなったときには、大規模修繕が必要になり、莫大な費用を支払うことになるでしょう。このように、莫大な費用がかかるのであれば、建て替えも1つの選択肢にいれて検討するべきです。
空室の発生
いくら老朽化したビルに細かな修繕を繰り返し、安全性を保とうとしても、旧耐震基準という事実だけで退去を決めてしまうテナントもいます。
このように、テナントが退去してしまうと、新しく入居者を集めることは難しくなります。そのため、空室が増加してきたら建て替えを検討してもよいでしょう。
賃料の減少
空室が発生すると、当然ですがその分の賃料収入を得られなくなります。
賃料収入が少なくなれば、修繕に充てる費用も捻出しづらくなり、結果的に老朽化を進めることになります。
こうなると、老朽化による空室発生→賃料収入の減少→老朽化が進行→老朽化による空室発生・・・というような負の連鎖に陥る可能性があるため、老朽化の対策は必要になります。
また、新しい入居者を集めるにしても、老朽化したビルでは新築のビルよりも競争力が劣ってしまうことから、賃料設定を下げることになります。
こうなっても、賃料収入が減ってしまうことになるため、建て替えを視野に入れてもよいでしょう。
相続で不利になる
もし、所有しているビルを子供たちに相続するときに、老朽化したビルでは相続税の負担が大きくなってしまいます。
相続税は、土地と建物の両方に課せられ、その土地や建物の相続税評価額をもとに算出されます。そのため、相続税評価額をどうにかして下げるかが節税のポイントになります。
この相続税評価額は、多くの床面積を貸していることで、大幅に評価額下げることが可能です。空室が発生すると、貸している床面積の割合が少なくなり、相続時に不利になってしまいます。
これらの理由を踏まえて、建て替えを検討したら日本最大級の比較サイトイエウール土地活用を利用して、施工会社に相談してみましょう。
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ビルの建て替えには立ち退きが必要
ビルの建て替えを検討したのであれば、立ち退きは無視できないことになります。
立ち退きが必要な理由
ビルの立ち退きには、入居者によほどの落ち度がない限り、オーナー都合の立ち退きの強制は認められません。
これは、借地借家法にオーナー(借家権設定者)と入居者(借地権者)の関係が明記されており、正当事由がない限り入居者には立ち退きの要求を断る権利があるとされています。
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
老朽化したビルの建て替えの場合、旧耐震基準のビルで、耐震性に大きな問題があると指摘された等の理由でない限り、単なる「建物の老朽化による強度不足」という理由だけで立ち退き料なしに立ち退きを要求することは難しいでしょう。
そこで、借地借家法にもあるように、立ち退き料を支払うことで、正当事由のひとつとなり、立ち退きを要求することができます。
立ち退き料
立ち退き料は法律で決められた金額はなく、基本的にはオーナーと入居者の話し合いで決まることが多いです。ビルにおける立ち退き料は、アパートやマンションの立ち退き料よりも高額になることが一般的となっています。
店舗の立ち退きの場合、新店舗への移転費用や移転に伴う減収についての営業補償が含まれているため、1,000万円を超えるようなことも多くあります。
ただ、これだけでは実際にかかる立ち退き料が想像しづらいため、立ち退きに関していくつかの判例を紹介します。
築年数:40年
築年数:50年
以上のように、立ち退き料はケースバイケースとしか言いようがないため、しっかりと弁護士などと相談して金額を決めていく必要があります。
立ち退きにかかる期間
ビルの立ち退きでは、立ち退き計画から完全撤退までに5~10年はかかると見積もっておいた方がよいでしょう。
まず、ビルの立ち退きは、契約期限のない普通借家契約から契約期間のある定期借家契約へ変更し、その契約が終わるまで待たなければなりません。
また、定期借家契約に変更できない場合は、テナントと話し合いを行い、最悪の場合、裁判まで発展することになります。
そのため、最低でも5年以上は工事に着工できないと見込んで建て替えの計画を建てていきましょう。
立ち退きのコツ
立ち退き交渉を始めるのであれば、仲介業者を利用することがおすすめです。
当事者同士で立ち退き交渉を行うとなると、お金に関しても話し合いであるため、どうしても熱くなってしまい話し合いにならないことも多いです。
そのため、当事者よりも一歩引いた立場にいる仲介業者の方が、すんなりと交渉に応じてもらえることも少なくありません。
また、定期借家契約に切り替えるのであれば、賃料を少し下げるなどして、テナントが受け入れやすくすることがよいでしょう。
ビルの建て替えにかかる期間
- 建て替えの計画
- 立ち退きの計画
- 立ち退きの実施
- 建設・解体の事業者の決定
- 解体の実施
- 入居者の募集
- 着工・竣工
ただ、立ち退きに関して、立ち退き交渉が難航し、裁判まで発展するのであればもっと日数を要することもあります。
また、建物の規模や周辺環境によっても建築期間も異なるため、しっかりと計画段階で竣工までどれくらいになるのか確認しておきましょう。
ビルの建て替えにかかる費用
ここでは、ビルの建て替えにかかる費用を解説します。
構造別の坪単価
ビルの構造別の全国平均の坪単価は次の通りです。
構造 | 坪単価平均金額 |
---|---|
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) | 132.1万円 |
RC造(鉄筋コンクリート造) | 119.4万円 |
S造(鉄骨造) | 88.7万円 |
参考:国土交通省
構造が堅牢になるほど坪単価平均金額は上がっていきます。特に階数が大きなビルにあたっては、SRC構造でないと支えられないなど建てるビルの設計によっても単価は変わってきます。
また、地域によっても坪単価はそれぞれ異なります。建て替えるビルがある地域の坪単価を調べてみることも大切です。
全国平均よりも安いからと思っても、実際に周辺相場と比べてみたらやや高いこともあります。国土交通省の建築着工統計調査からある程度地域の建築費が構造別に調べられるので利用してみるのもよいでしょう。
また、ビルは構造だけでなく用途によっても建築費が変わってきます。主な用途として次の3種類があります。
- 通常のオフィスビル
- テナント・雑居ビル
- 高層オフィスビル
比較的コストが抑えられるのはテナント・雑居ビルです。2階から5階建て程度でさまざまな業種のテナントが利用できる小・中規模のビルはスケルトンで貸すこともあるため、工事費も安く抑えることができます。坪単価でみると高層ビルも通常のオフィスビルもさほど大きく差が出るものではありません。
ただし、高層ビルとなると数十階建てで大規模な工事になるので、動く金額は大きく変わります。取り扱うのも大手ゼネコンやデベロッパーが主体になります。
建築費以外の費用
ビルの建て替えに伴って建築費以外にもさまざまな費用がかかります。
- 保証金の返還
- 取り壊し費用
- 建て替えまでの生活費
ただし、建て替えとなると次に入るテナントは無いので、一旦はまとまった資金を用意しなければなりません。建て替えを終えて、事業が再開すれば再び保証金は戻ってきますが、数千万円単位になることもある保証金が出ていくのは資金繰りの中でも大変な作業です。
預かっていたものを返すだけとはいえ、事前にしっかり準備をしておきましょう。取り壊し費用については依頼する業者によってバラつきの出る項目になります。建築を依頼している業者が安いというわけでもありません。解体費用は別に複数社に見積もりを取ってみて、作業内容と金額で検討をすることがおすすめです。
都心の繁華街などでは相場より高額になることもあるので、早めに見積もりを依頼して検討をしておいた方がよいでしょう。
また、建て替え中の生活費についてはオーナーの1年程度の生活に必要な分の蓄えがあれば大丈夫でしょう。1棟のビルだけの不動産経営によって生計を立てている場合には、収入が一時的に無くなるので備えが必要です。
ビルの建て替えを検討し始めた段階で施工会社から新しいビルの建築費用の見積もりをもらう必要があるでしょう。建築費用の見積もりをもらうときは複数の施工会社に問い合わせて建築プランを比較するのがポイントです。
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老朽化したビルの建て替え以外の選択肢
老朽化してきたビルに対して、さまざまな理由で建て替えられない場合の選択肢として、売却、等価交換、リノベーションなどの選択肢があります。建て替えが難しい場合にはこれらの方法で資産活用をはかってみるのも得策です。それぞれの特徴についてみていきましょう。
売却
所有しているビルを建て直すには自己資金やローンなどで金銭的負担が大きくなります。一方でさらに資産価値を高めたいと思った場合には、別のビルを購入して資産価値を高めることも選択肢の一つです。所有しているビルを売却すれば、まとまった資金を得ることができます。
売却することでビル管理に関わる税金や管理の負担から解放もされるので新しい事業を始めることも可能です。売却資金を元手に自己資金を加えてさらに価値の高いビルを購入して資産を増やすことも可能です。まず建て替えありきではなく、さまざまな可能性を踏まえた上で、最善の選択をするのが大切です。
等価交換
ビルを所有している場合、ビルそのものだけでなく、土地も所有していることが多いです。自身でビルを建て替えるのが難しければ、デベロッパーに土地を譲渡して開発をしてもらうことも可能です。建築したビルは出資割合に応じて取得できるので、所有権の範囲で運用して利益を得られます。
ビルの建築費用についてはデベロッパーが負担するので、土地の所有者は自己資金を用意する必要がありません。デベロッパーが開発してくれる土地はメリットの高い土地になるので、所有するビルが対象になるかは相談してみないとわかりません。
同じような年に建てられて老朽化しているビルが隣接している場合には、周囲の土地を合わせて開発ができる可能性もあるので、等価交換が可能かどうかも業者に聞いてみると良いでしょう。
リノベーション
テナントがなかなか埋まらなくなって困ってしまっている場合には、リノベーションをしてみるのも即効性が期待できます。内装はもちろんのこと、配管やセキュリティなど最新の設備を導入することで、比較的短期間で効果を実感できるでしょう。
建て替えに比べれば低コストに抑えられますが、ある程度まとまった資金が必要になるので資金計画をしっかり立てて取り組みましょう。ビルの構造によっては配管の取り換えや設備の導入などができない場合もあるので、どのようなリノベーションが、どのくらいのコストでできるのかよく相談したうえで実施をしましょう。
ビルの建て替えは業者と相談して始めよう
ビルの建て替えには、立ち退きや新しいビルの建築会社選びなど、すべてをひとりで行うことは難しいでしょう。
そのため、建て替えを考えたら、施工会社に立ち退きの進め方や建て替え計画などを相談してみましょう。
いずれにしても、建て替えを検討し始めた段階で施工会社から新しいビルの建築費用の見積もりをもらう必要があるでしょう。
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