土地活用で賃貸経営を始めようとしているなら、賃貸需要について理解を深めておくことが大切です。賃貸需要を正しく理解しておくことで、スムーズに家賃収入を得られます。
賃貸需要とは、賃貸物件のニーズを指す言葉です。賃貸需要が高いということは、それだけ入居を考えている人が多いと判断できるため、入居者を獲得しやすいです。
賃貸経営は入居者を確保できないと家賃収入が得られないため、いかに素早く入居してもらうかが重要です。本記事により、賃貸需要の高い物件の特徴や賃貸需要をどう調べたらよいのかを学びましょう。
アパート経営が儲からないと言われる理由や対策を知りたい方は、こちらをご覧ください。
賃貸経営の種類ごとの賃貸需要
賃貸経営の種類によって賃貸需要の高い物件の特徴は変わります。
アパート経営
駅から近く、交通アクセスのよいアパートは、賃貸需要が高いです。入居希望者は利便性の高さを重視する人が多いため、駅近の物件だと賃貸需要は高まりやすいでしょう。利便性の高さを考えるなら、徒歩10分以内が目安となります。駅から徒歩10分以上離れた立地だと、利便性以外の魅力がないと賃貸需要は下がりやすいです。
加えて、築年数の古いアパートよりも、築浅で比較的新しいアパートのほうが賃貸需要は高くなります。新しいアパートだと外観がきれいで、耐震性も優れています。単に新しいだけではなく、最新の設備が導入されていて、快適に暮らせる環境なら、より賃貸需要は高まるでしょう。
また、アパートの周辺に生活利便施設が充実していると、賃貸需要は高まりやすいです。生活利便施設とは、次のものを指します。
- スーパー
- コンビニ
- 病院
- 銀行
単身者とファミリー層で求められる施設は異なります。単身者だとスーパーやコンビニ、飲食店などが充実していると、需要は高まりやすいです。ファミリー層の場合は上記の施設に加えて、学校が近いと需要を獲得しやすいでしょう。
ターゲット層のニーズに合った間取りであることも、賃貸需要に関係します。面積は60坪程度が人気であり、単身者なら1ルームや1LDKなどのコンパクトな間取りが、ファミリー層なら2LDK以上の間取りが人気です。世帯人数によって求められる間取りは異なり、ターゲット層に応じて設定する間取りは変更する必要があります。マンション経営
賃貸需要の高いマンションの特徴は以下の通りです。
- 交通の利便性が高い
- 生活関連施設が充実している
- 周辺住環境が良い
- 競合マンションの入居率が高い
- 人口が徐々に増えているエリアである
賃貸需要の高いマンションの特徴として、エリア・環境的にはアパートと大体同じ条件ですが、入居者層が異なる可能性があります。
マンションはアパートと比べて家賃相場が高く、比較的経済的に余裕のある人が住む傾向にあります。そのため、周辺環境や土地柄次第でアパートかマンションどちらの需要が高いのかが異なるケースがあります。
戸建て賃貸経営
賃貸需要の高い戸建て賃貸の特徴は以下の通りです。
- シンプルな間取り
- アパートの供給が過剰なエリアにある
戸建て賃貸の場合、間取りの広さや隣人トラブルの少なさという観点でアパート・マンションとは差別化できているため、シンプルな間取りで良いでしょう。逆に複雑な間取りをしていると、入居者の早期退去に繋がってしまいます。
また、周囲にアパートやマンションの供給が多いエリアの場合、戸建て賃貸の需要が高くなります。戸建て賃貸を探している人はある程度こだわりのある人で、広範囲で物件を探しているため、将来にわたって安定して経営を続けることができるでしょう。
賃貸併用住宅
需要の高い賃貸併用住宅の特徴は以下の通りです。
- 住宅街にある
- 交通の便が良い
- 生活利便施設が近い
- 充分な駐車スペースが確保できる
賃貸併用住宅に関しても、立地のような条件に関してはアパートやマンションと似たものとなっています。ただ、賃貸併用住宅の場合は自分の分と入居者の分で、充分な駐車スペースを確保できるような場所が良いでしょう。
入居者のターゲットとしては、マンションタイプ希望者ではなく、戸建てタイプに住みたい人が多いでしょう。
賃貸経営はひとつの事業であり、安定経営を持続させるのは簡単なことではありません。賃貸経営を成功させるためには想定利回りや実質利回りをしっかりシミュレーションする必要があります。
とはいえ、賃貸経営を初めてという人が利回りの計算を完ぺきにおこなうことは難しいでしょう。そんなときは賃貸経営のプロである大手ハウスメーカーの営業担当に相談してみることも一つの手です。
建築費用は施工会社によって数百万~数千万円の差が出ることもあり、ハウスメーカーによって提示する利回りは異なります。より客観的に利回りの算出をするためには複数のハウスメーカーから提案をもらいましょう。イエウール土地活用なら一度の情報入力で複数の施工会社に問い合わせることができます。
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活用事例:プリエシェノン
(川木建設株式会社の土地活用事例)
入居者層ごとの賃貸需要
一口に入居者と言っても、単身者かファミリーかによって賃貸需要は変わりますし、単身者の中でも学生か社会人か、ファミリーの中でも新婚か子育て世帯かによっても異なります。
そのため、それぞれにどのような賃貸需要があるのかを知っておくことが重要になります。
単身者(学生)
学生の単身者の場合、賃貸住宅を探す際は特に家賃が大きなポイントになります。全国大学生協協同組合連合会が行なった「第58回学生生活実態調査の概要報告」によると、2022年の大学生一人暮らしの家賃平均は1ヶ月あたり5万3,020円となっています。
この家賃相場の入居者ターゲットとして当てはまるのは、学生の他には社会人なりたての20代前半の単身者などでしょう。この家賃相場の物件は、市場全体からすると競争が激しく差を生み出すことが難しくなっています。
ただし、学生と言っても医大生や女子大生の場合は家賃相場が変わるケースがあります。例えば女子大生の場合、家賃よりもセキュリティ面を重視した物件のニーズが高くなります。
単身者(社会人)
社会人でも20代・30代・40代と年齢によって賃貸需要が異なります。年代の違いは経済力の違いにもつながるため、許容できる家賃の上限や設備などが変わります。
20代前半はまだそこまで経済的な余裕がないため、家賃相場は学生よりやや高くなる程度でしょう。注目すべきは30代以上で、国立社会保障・人口問題研究所によると単身世帯は2030年まで増加するとされていて、特に30代はその割合が上昇していくでしょう。
30代になると経済的にもやや余裕が出てくるのため多様なニーズがあります。オートロックやTVモニター付インターフォン、浴室乾燥機や宅配ボックスなど、分譲マンションのような設備が好まれることもあります。そして、経済力のある30代の女性であれば、よりセキュリティ面を強化した設備へのニーズが高まります。
ファミリー層(新婚)
今日多くの場所で供給が不足していると言われるのが、ファミリー層の中でも新婚層をターゲットとした広めの1LDKです。
40㎡以上で、ウォークインクローゼットなどの収納が豊富なタイプが人気となっています。間取りは広いほうが需要があるため、築年数の古い2DKを1LDKにリフォームするケースも見られます。
また、同じ1LDKでも30㎡後半の部屋は30代の社会人に人気があるものの、一部のエリアではすでに30㎡後半の1LDKタイプは供給過剰という状況も見られるようです。そのため、エリアの供給状況を考慮して物件を選ぶことも重要です。
ファミリー層(子育て世帯)
ファミリー層でもう一つ注目すべきは子育て世帯です。最近では乳幼児のいる子育て世帯で、住まい新しいニーズが生まれています。
人間関係が希薄になりがちな、都心部での子育ての不安や悩みを解消するために、入居者や地域を巻き込んだコミュニティが求められているようです。そのためには間取りや設備などに工夫を施す必要があります。
母親同士が気兼ねなくコミュニケーションが取れるように、中庭に面してリビングや玄関が配置されていたり、交流を深めるイベントを企画したり、気軽に集まれるスペースを設けたりなど 、子育て世帯に配慮した賃貸住宅が人気を集めています。
賃貸需要の調べ方
賃貸需要の調べ方は次の通りです。
- 不動産会社に問い合わせる
- 空室率を調べる
- 人口の推移を調べる
いずれかの方法で賃貸需要を調べておくと、賃貸経営に役立てられます。
不動産会社に問い合わせる
不動産会社は賃貸需要に詳しいため、問い合わせて確認してみるとよいでしょう。特に地域に密着している中小企業だと、特定地域の情勢に精通しているため、より正確な賃貸需要を教えてもらえます。
不動産会社によって持っている情報は異なるため、より精度を高めるためには複数の不動産会社に問い合わせることがおすすめです。
近隣の空室率を調べる
不動産ポータルサイトを利用することで、空室率が調べられます。空室率から賃貸需要はある程度把握でき、空室率が高い地域は賃貸需要が低く、空室率が低く、満室状態が続いているエリアは賃貸需要が高いといえるでしょう。
ただし、空室率は物件の魅力や周辺の生活利便施設の有無によって左右されます。そのため、パーセンテージだけで判断せず、物件の詳細や周辺マップを確認して、賃貸需要を確認しておきましょう。
人口の推移を調べる
エリアごとの人口推移を調べることでも、賃貸需要は把握できます。賃貸需要は人口に大きく影響を受け、人口が増えているエリアだと賃貸需要は高くなります。
人口推移は総務省のサイトから検索できるため、現在の人口数だけではなく、過去数年分のデータも見て、人口がどのように変動しているかを確認しておきましょう。
参考:総務省統計局
住みたい街ランキングから見る賃貸需要
賃貸経営を検討している人にとって、「住みたい街ランキング」は気になるランキングでしょう。このランキングの上位にランクインしている地域は、人気が高いエリアということになります。
必ずしもランキング外の地域の需要が全くなく、賃貸経営に向いていないということにはなりません。しかし、需要と供給のバランスが重要である賃貸経営において、住みたい街としての人気がない地域は、賃貸需要の低さと空室リスクの高さに悩まされる可能性があります。
本章では、首都圏・関西圏の二つのエリアで、「住みたい街(駅)」と「住みたい自治体」という観点でランキングを紹介しています。これから賃貸経営を始めようと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
首都圏:住みたい街(駅)ランキング
首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住する20歳~49歳の1万人を対象にした、SUUMOの「住みたい街ランキング2023 首都圏版」によると、住みたい街(駅)ランキングは以下の通りです。
- 1位:横浜
- 2位:吉祥寺
- 3位:大宮
- 4位:恵比寿
- 5位:新宿
首都圏版2023年の住みたい街(駅)ランキングのTOPは横浜で、6年連続1位です。続く吉祥寺・大宮は前年に引き続き2位・3位となっています。
つまり、首都圏の街(駅)では横浜・吉祥寺・大宮の3駅の賃貸需要が多いことが分かります。
首都圏:住みたい自治体ランキング
首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住する20歳~49歳の1万人を対象にした、SUUMOの「住みたい街ランキング2023 首都圏版」によると、住みたい自治体ランキングは以下の通りです。
- 1位:東京都港区
- 2位:世田谷区
- 3位:渋谷区
- 4位:目黒区
- 5位:新宿区
首都圏版2023年の住みたい自治体ランキングの1位は東京都港区で、2018年から6年連続TOPとなっています。2位~4位の順位も変わらず、前年6位の新宿区が5位に浮上しています。
上位のランキングから、首都圏の中でも特に人口の多い東京都23区の賃貸需要が多いことが分かります。
関西版:住みたい街(駅)ランキング
関西(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)に居住する20歳~49歳の4,600人を対象にした、SUUMOの「住みたい街ランキング2023 関西版」によると、住みたい街(駅)ランキングは以下の通りです。
- 1位:梅田
- 2位:西宮北口
- 3位:神戸三宮
- 4位:なんば
- 5位:天王寺
ランキングは上記の通りですが、1位~5位の順位に前年から変動はないようで、賃貸需要のある街が安定していることがわかります。
関西版:住みたい自治体ランキング
関西(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)に居住する20歳~49歳の4,600人を対象にした、SUUMOの「住みたい街ランキング2023 関西版」によると、住みたい自治体ランキングは以下の通りです。
- 1位:兵庫県西宮市
- 2位:大阪府大阪市北区
- 3位:兵庫県明石市
- 4位:大阪府大阪市天王寺区
- 5位:兵庫県神戸市中央区
関西版2023年住みたい自治体ランキングの1位は、2018年から6年連続の兵庫県西宮市です。賃貸需要の多い場所は大きく変わらないことが分かります。
空き家率からみる賃貸需要ランキング
以下は全国の総住戸数に対する居住世帯のない住宅数、つまり空き家率を低い順にランキング化したものです。対象は賃貸住宅のみではないため、正確には賃貸経営の空室率というわけではありませんが、それでも一つの指標になると思います。
全国の空き家率を参考に、賃貸需要のランキングを見ていきましょう。
都道府県 | 空き家率 |
---|---|
①埼玉県 | 10.2% |
②沖縄県 | 10.4% |
③東京都 | 10.6% |
④神奈川県 | 10.8% |
⑤愛知県 | 11.3% |
⑥宮城県 | 12.0% |
⑦山形県 | 12.1% |
⑧千葉県 | 12.6% |
⑨福岡県 | 12.7% |
⑩京都府 | 12.8% |
⑪滋賀県 | 13.0% |
⑫富山県 | 13.3% |
⑬兵庫県 | 13.4% |
⑭北海道 | 13.5% |
⑮秋田県 | 13.6% |
⑯福井県 | 13.8% |
⑰熊本県 | 13.8% |
⑱奈良県 | 14.1% |
⑲福島県 | 14.3% |
⑳佐賀県 | 14.3% |
㉑石川県 | 14.5% |
㉒新潟県 | 14.7% |
㉓茨城県 | 14.8% |
㉔青森県 | 15.0% |
㉕広島県 | 15.1% |
㉖三重県 | 15.2% |
㉗大阪府 | 15.2% |
㉘島根県 | 15.4% |
㉙長崎県 | 15.4% |
㉚宮崎県 | 15.4% |
㉛鳥取県 | 15.5% |
㉜岐阜県 | 15.6% |
㉝岡山県 | 15.6% |
㉞岩手県 | 16.10% |
㉟静岡県 | 16.4% |
㊱群馬県 | 16.7% |
㊲大分県 | 16.8% |
㊳栃木県 | 17.3% |
㊴山口県 | 17.6% |
㊵香川県 | 18.1% |
㊶愛媛県 | 18.2% |
㊷鹿児島県 | 19.0% |
㊸高知県 | 19.1% |
㊹徳島県 | 19.5% |
㊺長野県 | 19.6% |
㊻和歌山県 | 20.3% |
㊼山梨県 | 21.3% |
参考:平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要
このランキングで上位であるため絶対に賃貸需要がある、このランキングで下位であるため絶対に賃貸需要がない、という話ではないことに気を付けましょう。ただし、ランキングの通り空室率が低いということはそれだけ賃貸需要がある可能性が高いことも事実です。
賃貸経営は様々な要因で成功か否かが別れるため、包括的に考えるようにしましょう。
賃貸経営を始める可能性が出てきたら、早い段階で施工会社から建築プランと建築費用の見積もりを取得しましょう。
施工会社に提案される建築プランには建築費用の見積もりだけでなく設計図面や収支計画が含まれています。複数の施工会社の建築プランを比較することで、客観的に利回りを算出することもできますし、自分の土地でどのような賃貸物件を建てられるかイメージが湧くようになります。
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賃貸経営では賃貸需要がとても重要
賃貸経営をするなら、賃貸需要を把握しておくことが重要です。賃貸需要を理解していないと、入居者を確保できずに、空室が増えて収入が得られません。
賃貸需要を正しく把握していると、スムーズに入居者を獲得できるため、家賃収入を増やしやすいです。物件の状態やエリアによって賃貸需要は異なります。土地活用で賃貸経営をするなら、事前に賃貸需要を確認して、対象となる土地が賃貸経営に適しているかをチェックしておきましょう。