固定資産税という言葉は聞いたことがあっても、具体的な算出方法やおおよその金額についてよくわからない方も多いのではないでしょうか。
とくに一戸建ての固定資産税は、維持費の中でも大部分を占めます。今回は、これからマンション購入を検討している方や、マンション購入後に固定資産税の支払いが発生する方にむけて、「一戸建ての固定資産税はいくらかかるのか」を分かりやすく解説していきます。
平均相場や具体的な計算手順も交えてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
一戸建てで支払う固定資産税の年間平均相場は10~15万円
一戸建てにかかる年間の固定資産税は平均して10~15万円(特例適用前)が相場です。ただ、様々な要素が絡み合って固定資産税額は決まるので、この固定資産税額はあくまでも一戸建ての目安額と考えましょう。
つまり、一戸建てに住んでいるとだいたい毎月1万円強のお金が固定資産税としてかかるということになります。
たとえば、一戸建てがある地域・築年数の経過度合い・使われている建築素材・周辺地域の地価、などが変わると、固定資産税額も変わってきます。
後ほど詳しく解説しますが、物件の資産価値によっても固定資産税額は大きく変わり、ここでいう相場は一般的な2000万円~4000万円程度の一戸建てを購入した場合を想定しています。
固定資産税とは
そもそも固定資産税とはどのような税金なのでしょうか。
土地や建物を所有している場合に、必ず発生するのが固定資産税です。これは市町村へ納税するもので、土地と建物それぞれに対して課されます。
土地と建物それぞれに対して課される税金
固定資産税の税額は、土地と建物それぞれに対して課され、土地と建物それぞれに定められている「固定資産税評価額」をもとに税額が算定されます。1月1日時点でマイホームを所有している場合は毎年納税通知書が届くので、納付書に記載されている納期限までに指示に従って税金を納めます。
経年によって固定資産税は減額していく
固定資産税は毎年支払う必要がありますが、建物自体の購入金額ではなく「固定資産税評価額」によって算出されるため、年数が経つと基本的には減額していきます。これは経年劣化などにより、建物の資産価値としての評価額が下がるためです。
ただし、特例措置の条件に当てはまる場合など、購入後の一定期間中には減税措置を受けられる場合もあります。
一戸建てで支払う固定資産税がいくらか計算する手順
一戸建てで支払う固定資産税がいくらかを具体的に把握するには、自分で計算するのが一番速く正確です。
固定資産税の計算は以下の式を使って行います。
計算式をもとに、4ステップの計算手順を確認していきましょう。
- 一戸建ての固定資産税評価額を調べる
- 税率を固定資産税評価額に掛け合わせる
- 建物部分の評価額に経年減点補正率を掛ける
- 条件次第で軽減措置を適用させる
用語や方法を解説しながら、具体的に以下のような条件の一戸建てを例に計算手順を解説していきます。
- 取引価格:計3,000万円(土地部分の価格2,200万円/建物部分の価格800万円)
- 床面積:100㎡
- 築年数:10年
- 地域:東京都
- 建築構造:木造
STEP1:一戸建ての固定資産税評価額を調べる
まずは、「固定資産税評価額」を調べます。
- 土地や建物の固定資産税を算出するための基準となる価格のこと。土地/建物部分と分けて出されること・3年に1度「評価替え」によって額が変わることが主な特徴。
固定資産税評価額の調べ方は、以下のようにパターンごとに少し異なります。
- 中古を購入予定→不動産会社経由で問い合わせ
- 新築を購入予定→建設完了後の家屋調査を待たなければならない
- 現状保有している→①納税通知書を確認 or 固定資産税評価証明書の発行
納税通知書は毎年4月頃に保有者に対して送付される通知のことで、「課税明細書(参考例)」という紙の「固定資産税(前年度/今年度)課税標準額」という欄を見ると評価額が分かります。
納税通知書を紛失してしまった場合等は、市区町村役場で固定資産税評価証明書を発行してもらいましょう。
固定資産税評価額を調べるのが面倒くさい・うまく調べられなかったという方は、少し計算の精度が落ちますが取引価格を基に以下のように概算することも出来ます。
- 土地の固定資産税評価額:土地部分の公示価格の約70%
- 建物の固定資産税評価額:建物部分の再建築価格(再度その建物を建てた時にどれくらいの費用がかかるかの算出価格)の約60%
例に上げた条件の一戸建ての土地・建物それぞれの固定資産税評価額を概算で算出すると、以下のようになります。
土地の固定資産税評価額=2,200(万円) ×0.7= 1,540(万円)
建物の固定資産税評価額= 800(万円) × 0.6 = 480(万円)
STEP2:税率を固定資産税評価額に掛け合わせる
続いて、固定資産税評価額に税率を掛け合わせます。
一般的な税率として、標準税率「1.4%」が定められています。
固定資産税の税率は市区町村単位の自治体が個別に定めているため、税率が異なる場合もあるので出来るだけ正確に知りたい方は、自治体のホームページなどを参考に税率を調べましょう。
STEP1で算出された例の土地・建物それぞれの固定資産税評価額に、税率をかけ合わせると以下のように1年あたりの固定資産税額が算出されます。東京都の税率は、標準税率と同じ1.4%です。
土地の固定資産税評価額 × (標準)税率=1,540 × 1.4(%) = 21.56(万円)
建物の固定資産税評価額 × (標準)税率=480 × 1.4(%) = 6.72(万円)
STEP3:建物部分の評価額に経年減点補正率を掛ける
更に、新築ではない場合に限り、建物部分の評価額に「経年減点補正率」を掛け合わせます。土地の評価額は築年数経過の影響を受けません。
- 築年数によって建物の価格が減額するよう設定された補正値のこと。法務局が公開している。地域や年度によって若干の差がある。
例であげた一戸建ては築10年の木造住宅であるため、再建築価格に経年減点補正率を掛けます。建物部分の評価額に掛け合わせると以下のようになります。
建物部分の固定資産税額 = 6.72(万円) × 0.50 = 3.36(万円)
STEP4:条件次第で軽減措置を適用させる
STEP2,3の算出結果を見て、「あれ、思っていたよりも高いな…」と感じても不思議ではありません。固定資産税はここから大きく納税額を抑えることが出来る特例措置(控除)が存在するからです。
土地・建物それぞれに対して、異なる特例措置が存在します。それぞれの特例措置の適用条件や軽減率を把握しましょう。
人が住むために使われている土地(住宅用地)なら使える控除。200㎡までの土地は評価額が1/6となり、200㎡を引いた残りの土地は1/3として計算されます。
購入した家が新築だった場合に適用される軽減措置。新築されてから3年間、家屋の税額が1/2になります。耐火・準耐火建築のマンションなどなら、2年追加となる5年間減税を受けることができます。
適用条件は居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下。店舗併用住宅は居住部分が1/2以上である必要があります。
※参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋について)」
今回例に用いた一戸建ては、建物への特例措置は築年数の観点から条件に当てはまらないため、土地の特例措置のみ適用されます。すると、以下のように固定資産税額がいくらか算出することが出来ます。
一戸建てにかかる固定資産税額=土地部分の固定資産税額 + 建物部分の固定資産税額 = 3.59 + 3.36 =6.95 (万円)
(特例を適用した)土地部分の固定資産税額 =21.56 ×1/6 ≒ 3.59
建物部分の固定資産税額 = 3.36
ご覧のように、1章で解説した相場の範囲内に収まりました。ご自分の一戸建てがいくら固定資産税がかかるのか計算して見ましょう。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
持ち家を賃貸に出したら税金はいくら?その種類や税率を解説
より詳しく知りたい方は、戸建てとマンションの維持費の記事もご覧ください。
一戸建ての固定資産税を軽減する方法
ここでは、戸建ての固定資産税を軽減する方法をご紹介します。
- 土地に対する軽減措置がある
- 新築の住宅に対する軽減措置は2024年まで延長に
- いずれも軽減措置を受けるには申請が必要
それぞれ見ていきましょう。
土地に対する軽減措置がある
土地の固定資産税は更地のままで所有すると高くなりやすいですが、一戸建てなど建物の建築がされている場合は「住宅用地の軽減措置特例」の対象となり、軽減措置の適用が可能です。税額は最大で6分の1までと大幅に軽減されるので、該当する場合は必ず利用しましょう。
新築の住宅に対する軽減措置は2024年まで延長に
新築住宅を建築する場合は、建物についての固定資産税が減税されます。一戸建ての場合は新築から3年にわたって、固定資産税が2分の1となります。
ただし、新築住宅の減税措置は、2024年3月31日までに新築した物件に限られるため、注意が必要です。その後の制度継続については未定であるため、適用するには期限内に新築住宅を建築する必要があります。
いずれも軽減措置を受けるには申請が必要
いずれの場合も、固定資産税の減税措置を適用するには申請が必要となります。
大まかな流れは以下の通りです。
- 住宅用地等申告書の作成
- 住宅用地に転用した翌年の1月31日までに申告
期限を過ぎると軽減措置が適用されず、固定資産税の減税ができないため、注意が必要です。固定資産税の減税を確実に行うためにも、申請手続きの方法を知っておきましょう。
詳しくは、固定資産税の減税に関する記事をご覧ください。
固定資産税の納税方法
固定資産税は1月1日時点の物件所有者に課税されますが、支払いが発生するのは4~6月頃です。税額が決定すると納税通知書が送付され、その内容に従って納付します。固定資産税は一括と分割の2つの方法で納税でき、分割の場合は年4回にわけて支払います。
固定資産税には納付期限があり、これを超えてしまうと分割払いは選択できないため注意が必要です。期限を超えての納付は、すべて一括での支払いとなります。
【コラム】住み替えを検討する際にやりたいこと
住み替えを検討する際、新居探しと一緒に行いたいのが不動産の査定です。今住んでいる家の査定を先に行うことで家の価格が分かり、住宅ローンの残債は完済できそうか、新居の頭金はいくら出せそうかなど資金計画を立てやすくなります。
家を売却する際の作業は後回しにしまいがちですが、住み替え後のローン返済を無理のないようにするためにも、査定だけは検討段階の時点で行うのが賢明でしょう。
売却相場に最も近い価格が分かるのは不動産会社の査定ですが、ここで注意したいのが査定は1社で済ませないこと。
実は不動産会社の査定に明確なルールは無く、不動産会社によって査定結果は異なります。つまり、1社の査定結果を見ただけでは査定額が高いのか安いのかももちろん、売却相場も分からないということ。査定を行う際は3社以上に査定依頼を出すと良いでしょう。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
戸建てとマンションの固定資産税の違いを分かりやすく解説
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
戸建てとマンションの維持費をシミュレーションから徹底比較!
【比較】固定資産税がいくらかかるかシミュレーションしよう
一戸建ての購入を検討している方や住み替えを検討している方にとっては、年間の固定資産税額が少し変わるだけでその後何十年の負担の重さは大きく変わりますよね。「築何年くらいの一戸建てを買おうか」「やっぱりマンションにしなくていいのか」このような迷いをなくすためにも、事前に比較しておくことは大切です。以下に固定資産税がいくらかかるかシミュレーションを算出したので、参考にしてみてください。
今回は、以下のような条件で算出しました。
- 取引価格
- 一戸建て:計3,000万円(土地部分の価格2,200万円/建物部分の価格800万円)
- マンション:計3,000万円(土地部分の価格800万円/建物部分の価格2,200万円)
- 床面積:100㎡
- 購入時の状態:新築
- 税率:1.4%(標準税率)
- 地域:東京都
- 建築構造
- 一戸建て:木造
- マンション:鉄筋鉄骨造
- 建物部分の評価額は、築年数経過に応じて経年減点補正率を掛けて計算(参考)
先程ご紹介した計算手順を基に、「築年数」と「物件種」の軸で算出した1年あたりの固定資産税の目安は以下の表を見ると一目で分かります。
築年数\物件種 | 一戸建て | マンション |
---|---|---|
新築 | 6.28 万円 | 10.16 万円 |
3年目 | 5.94 万円 | 9.66 万円 |
5年目 | 7.89 万円 | 9.23 万円 |
10年目 | 6.95 万円 | 14.98 万円 |
15年目 | 6.07 万円 | 12.81 万円 |
30年目 | 4.94 万円 | 6.96 万円 |
表を見ると、どの築年数においてもマンションの方が固定資産税が高いことが分かります。
わかりやすい傾向として、築5年時点が最も固定資産税の差が小さいですが、これは新築住宅の特例措置の適用期間が、一戸建ては3年・マンションは5年であるためです。
また、築年数が経過するにつれて固定資産税の差が開いていくことが分かりますが、これは土地部分の評価が占める割合が一戸建ての方が大きいことや建築構造の違いにより築年数経過に伴う評価額への影響がマンションの方が小さいことが関係しています。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
マンション購入でかかる維持費の内訳や抑えるポイントを解説
築30年の中古マンションはあと何年住める?メリットから選び方のポイントまで解説
記事のおさらい