トランクルーム経営は土地などの空いたスペースにトランクルームを設置し、それを貸し出すことで賃料収入を得る事業です。
近年トランクルームの需要は増しており、自由に使えるスペースが少ない都心部でのニーズが高まっています。2018年には市場規模は600億円近くまで拡大しており、今後も成長が期待できる業界となっています。
アパート経営などと比べて初期投資の費用を抑えることができ、土地さえ所有していれば手軽に始めることができます。本記事では、トランクルームの開業においての注意点や必要な資金などについて解説しています。
- 「営業倉庫としてのトランクルーム」の場合は倉庫業許可が必要
- 「レンタル収納スペースとしてのトランクルーム」の場合は倉庫業許可は不必要
- トランクルームの設営方法には屋外型と屋内型の2種類がある
- 初期費用の目安は、屋内型が100万円~200万円程度、屋外型が200万円〜800万円程度
- 自営方式・管理委託方式・リースバック方式の3つの経営方式があり、手続きが異なる
- 必要な資格は特にない
トランクルーム開業のために必要な基礎知識
必要な基礎知識を身に着けておくことで、トランクルームを開業する際にスムーズにことが運ぶようになるでしょう。本章では開業のための基本について解説しています。
倉庫業許可は必要?
トランクルームの開業に倉庫業許可が必要かどうかというと、「営業倉庫としてのトランクルーム」の場合は必要であり、「レンタル収納スペースとしてのトランクルーム」の場合は必要ありません。
営業倉庫としてのトランクルーム
倉庫業とは他人の物品を金銭を受け取って保管する営業であり、倉庫業を行なう場合は国土交通大臣の行なう登録を受けなければなりません。
上記の用途で使用する営業倉庫としてのトランクルームは倉庫業に該当し、倉庫業許可が必要になるのです。
レンタル収納スペースとしてのトランクルーム
営業倉庫としてのトランクルームと違い収納スペースとしてのトランクルームは、収納スペースの貸し出しをして利用者が自由にものの出し入れを行なう、というシステムです。
これは寄託契約には該当せず賃貸借契約ということになります。つまり、レンタル収納スペースとしてのトランクルームには倉庫業許可が必要ありません。
屋内型と屋外型の2種類ある
トランクルームの設営方法には屋外型と屋内型の2種類があります。
屋外型トランクルームは屋外に設置される形式のトランクルームです。車を乗り入れて荷物の運搬ができたりスペースが広かったりといったメリットがある一方、外の天気の影響を受けたりセキュリティ面が万全でなかったりなど、保管する荷物に注意しなければならないっといったデメリットもあります。
屋内型トランクルームは屋内に設置されるトランクルームで、専用の倉庫や建物を借りて設置されることが多く、街角で見る機会なども増えています。荷物の保管やセキュリティ面が安全というメリットがある一方、費用が少し高めでスペースに限界があるといったデメリットが存在します。
運営方法によって手続きが異なる
トランクルームの開業は、集客の方法や管理の方法などの運営の仕方次第で収支が大きく変動する土地活用です。
トランクルーム経営には自営方式・管理委託方式・リースバック方式の3つの運営方法があります。それぞれ解説していきます。
自営方式
自営方式とは、所有している土地やスペースにトランクルームを設置し、集客や管理など、全ての業務を自らで行う方法です。
トランクルーム経営に関わる業務を全て行うため、管理委託に要する費用がかかりません。そのため、上手く行けば最も収益をあげることができる方法です。
ただし、会社が持つネームバリューがないため稼働率が悪くなり、思っていた収益を得ることができない可能性があります。また、契約に関する業務や貸し出した後のトラブル対応も自ら行う必要があります。
管理委託方式
管理委託方式とは、所有している土地にトランクルームを設置するまでを所有者が行い、その後の業務を運営業者に委託する方法です。
管理委託方式では、一定の金額や売上に応じた管理委託料を支払うことで、運営業者が集客から管理までを受託します。
運営業者が持つ独自のネットワークを駆使して集客を行うため、個人での運営より早期に満室にできる可能性があります。また、管理委託料を少しでも減らしたい場合は、管理業務は自らで行うなど、部分的な委託を行うことも可能です。自ら運営を行いたいが集客が不安、契約業務が手間という方向けの方式だと言えます。
リースバック方式
リースバック方式とは、運営業者が建てたトランクルームを土地オーナーが購入し、それをそのまま業者に貸し出して賃料を得る方法です。
所有者は契約に応じて、一定の賃料を運営業者より得ることができるため、トランクルームの稼働率に関わらず安定した収入を得ることができます。また、管理業務については運営業者が全て引き受けることになるので、手間を取られることもありません。
しかし、借り上げる際の賃料は一定になるため、稼働率が高くなった時に得られるはずだった賃料より低くなるという可能性があります。トランクルーム業を行いたいが、リスクは取りたくないという方におすすめです。
必要な資格は特にない
トランクルーム経営に必要な資格はありません。宅建業法では不動産取引を行う人は宅地建物取引士の免許を取得しなければならないとしていますが、自らの所有不動産を賃貸したり、賃貸契約を委託したりする場合に関しては、宅地建物取引士は不要です。
そのため、土地を所有し、予算さえ確保できれば誰でも手軽に始めることができます。
開業の流れ
トランクルームを開業する流れについては以下の通りです。
- ①業者に相談
- ②立地や市場の調査
- ③計画書の作成・事業者からプランの提案
- ④施工会社と契約を締結
- ⑤設計・施工
- ⑥竣工・開業
最初は複数の業者に相談することから始め、営業方式を決定しましょう。事業者による現地調査でプランが作成され、問題がなければ施工会社と契約を結ぶことになります。
工事に入る前に建築確認申請の手続きを行なう必要があり、これには2ヶ月ほどかかることがあるため、計画的に行動しましょう。
トランクルーム経営が失敗する原因
トランクルーム経営が失敗してしまう原因はいくつか存在します。それは以下の通りです。
- 地域のニーズの調査不足
- 税金を考慮していない
- 競合に利用者を取られる
- 盗難・災害などのトラブルにあう
- 設備が不十分
トランクルームの関して、細部まで考えた計画を立てなければどんな原因で失敗してしまうかも分かりません。失敗を回避するために、上記を意識して計画するようにしましょう。
\最適な土地活用プランって?/
トランクルームの開業にかかる費用
トランクルームのメリットの一つとして初期費用が抑えられるということがあります。それでは、実際にトランクルームの開業を行う際にはいくらかかるのでしょうか。
トランクルーム開業の際、初期費用については一般的な相場は200万円〜800万円程度と言われています。トランクルームの設置数によってはより高額になる可能性もありますが、アパート経営を行なうよりは費用を抑えることができます。
また、初期費用の大部分を閉めるトランクルームの設置費用は業者によっては大きく変わるため、トランクルーム開業を検討する際は一度見積もりをとり、相場感を掴んでおくのがおすすめです。
初期費用の内訳
初期費用の相場が200万円~800万円程度であることをお伝えしましたが、これは屋内型か屋外型かによっても変わります。
屋外型の内訳に関しては以下の通りです。
- トランクルーム本体にかかる費用:60万円ほど(約5条サイズのコンテナ1基)
- トランクルーム設置費用:約80万円~100万円
- インフラ工事費:30万円ほど(水道・電気の引き込みなど)
- 整地費用:1万円~1万4,000円ほど(1坪)
- 防犯カメラの設置費用:30万円ほど(録画機・モニター)
- 看板設置費:15万円ほど(自立型看板)
トランクルーム1基にかかる費用が60万円ほどで、設置にも少なくない費用がかかるため数次第で初期費用は大きく異なります。
一方で、屋内型の場合の初期費用は100万円~200万円程度です。これは、本体にかかる費用が屋内型と比べて安くなったり、整地費用がかからなかったりするためです。
トランクルーム経営は儲からない?
トランクルーム経営は副業として注目が集まってきていますが、「儲からない」という噂を聞いたことがあるかもしれません。
本章では、まず儲からないと言われている理由から解説し、利回りや市場規模を考慮して儲かるか儲からないかを考えていきます。
儲からないと言われる理由
トランクルーム経営が儲からないと言われる理由としては、以下のものが挙げられます。
- 他の土地活用と比較すると収入が少ない
- 集客が難しい
- 競合他社が多い
- 節税が困難
上記の中でもトランクルームが儲からないと言われる最大の理由は、月々の収入が他の土地活用と比較して少ないことにあります。アパートやマンション経営の場合、1部屋で数万円~十数万円の回収が可能であるところが、トランクルームでは大体5,000円~1万5,000円前後となります。
また、集客が難しく立地選びに失敗すると長期間売り上げが出ないというリスクもあります。加えて、トランクルームの経営には特別な資格は不要であるため、競合他社が多いところも売り上げが出にくい要因の一つでしょう。
トランクルームは住宅用地ではないため、アパートやマンション経営では適用される特例が適用されず、固定資産税や都市計画税を節約できません。初期費用が200万円~800万円かかることを考えると、売り上げが低迷したら初期費用さえ回収できない可能性があるのです。
トランクルーム経営の利回り
先述の通り、トランクルーム経営では毎月の収入が比較的少ないことが特徴で、規模によって変わりますが1部屋当たりで得られる売り上げは大体5,000円~1万5,000円程度です。大きな収入は期待できないことがわかると思います。
ただし、一般的にトランクルーム経営の利回りは15%~25%ほどと言われており、7%~10%ほどが相場であるアパート経営などと比べると高い利回りであることがわかると思います。
そのため、初期費用をなるべく抑え、適切な管理を行なうことができれば儲けることもできる土地活用となっています。トランクルーム経営が初めての場合、設置工事から運営管理まで行ってくれる、ノウハウを持ったプロに業務委託をするのが良いでしょう。
市場規模は拡大傾向にある
近年は在宅ワークの増加などで家にいる時間が長い人が多くなったことで、自宅に置けなくなった荷物などの一時保管場所としてトランクルームの需要が高まっています。
トランクルームの物件数や売り上げは年々増えていて、それは今後も増加していき、2030年には2022年の1.5倍となる見込みです。そのため、長い目で見たら儲からないとは言い切れません。
業界トップクラスの事業者が中心となって出店に意欲的であることや、トランクルームへの知名度がさらに上がることが要因となって市場規模の拡大が期待されているようです。
トランクルーム開業で失敗しないための注意点
トランクルームの開業をする際に、失敗しないための注意点について解説します。
信頼できる業社を選択する
トランクルームを開業する際、信頼できる業者を選ぶことがとても大切になります。
業者によって特徴は異なりますが、「オーナー・利用者の利用しやすい仕組みになっているか」「サポート体制が整っているか」「オーナーが見込める収入はどれくらいか」といった点は共通して注意しておくべき点です。
業者の候補が出来たら実際に店舗へ行っていち客として利用し、電話などで相談をしてみると良いでしょう。
市場・現地調査を必ず行なう
トランクルームの利用者は個人のみでなく法人が利用することも多くありますし、個人としての利用でも単身者だけではなく家族層が利用することもあります。
そのため、トランクルームに対する需要やその土地の環境などを事前に調査しておくことが重要です。具体的には、近辺の競合となるトランクルームの価格設定はどれくらいか、どういった設備かといったことを調べておくことでイメージがしやすくなります。
また、利用者が利用しやすい環境にするために、その土地の形や配置などの特徴をしっかり把握しておくことも大切になります。
収支計画を綿密に立てる
トランクルーム経営はアパート経営などと比べて収益性が低く節税効果も低いため、できるだけ初期費用を抑えて高い利回りを狙うことが重要です。それには収支計画を綿密に立てることが必要不可欠です。
初期費用の回収はいつになるのか、ランニングコストはどれくらいかかるか、実質利回りはどれくらいになるかなど、事前の調査に基づき細かく想定してきましょう。
また、立地によっては長期的な経営が向いていないこともあるため、予め出口戦略を考えておくこともおすすめします。
セキュリティ対策などを怠らない
トランクルーム経営は利用者から荷物を預かることになるので、セキュリティ対策や災害対策を徹底的に行なうことが求められます。
経営者は利用者の所有物を保管する責任があり、セキュリティ対策や定期的な清掃・メンテナンスなどを行ない、所有物の安全を確保しなければなりません。
セキュリティ面が杜撰である場合、利用者からの評判が落ち敬遠されるようになり、収入を得られなくなってしまいます。
トランクルーム開業は専門家への相談がおすすめ
トランクルームの開業は初期費用を抑えて行うことができる土地活用です。また、日当たりが良くない、土地が狭くて駐車場経営ができないなど条件の悪い土地でも行うことができます。
一方で、アパートやマンション経営に比べて収益を期待できないことや税制優遇の措置がないことなど、莫大な利益を生みたい人には向いていない土地活用の方法であるとも言えます。
トランクルームの開業をはじめ、土地の活用を検討している人は、さまざま様々な有益アドバイスがみつかる「イエウール土地活用」がおすすめです。専門家である不動産業者やトランクルーム運営業者に、直接相談することができます。土地活用にお悩みの方は是非使ってください。