不動産の購入に利用できるローンには複数の種類がありますが、目的によって利用できるローン商品は異なります。
住宅ローンは「自分の住宅」の購入のみに利用できる一方で、アパートローンは賃貸住宅全般の購入・建築に利用するものです。
これから賃貸経営を始めたい方は、アパートローンと住宅ローンの違いや併用・借り換えの可否について、よく理解をしておきましょう。
アパートローンとは
アパートローンとは、賃貸住宅の購入や建築・リフォームにかかる費用を融資するローン商品のことです。
賃貸アパートを建てたり、購入する場合には「アパートローン」を利用するのが一般的です。
アパートローンという名称ですが、アパート以外にも、1棟マンションや投資用ワンルーム、戸建賃貸、貸店舗、貸事務所など、収益不動産全般に利用できます。
都市銀行・地方銀行だけでなく、信託銀行、信用金庫、組合バンク、ノンバンクなど、多くの金融機関がアパートローンを取り扱っています。
融資の対象は満20歳以上の個人で、個人が資産管理目的で設立した法人を対象に融資を受けられるケースもあります。成人年齢の引き下げに伴って、満18歳以上に条件を引き下げている金融機関もあります。
融資の審査には、賃貸経営の事業計画(収益性)や不動産の資産評価が重視されます。これは、基本的に賃貸経営の賃料収入でローンの返済を行っていくためです。
賃貸アパートの建築費については、以下の記事をご参照ください。
ご自身の土地にアパートを建てて経営したい方は、是非とも複数の企業の建築費用の見積もりを比較しましょう。
アパートの建築費用は設計や工法によって大きく異なり、場合によっては収益が1,000万円以上変わることもあります。
見積もり依頼を通じて、建築費がいくらならアパート経営をうまく続けられるかなど、気になる疑問点を建築会社に相談してみましょう。
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住宅ローンとは
住宅ローンとは、自宅(マイホーム)の購入のための資金の借入に利用できるローン商品です。
契約者が居住するという条件を満たすのであれば、戸建てにも、マンションにも、戸建てを建築する予定の土地にも利用できます。また、新築・中古も問いません。
個人の収入から返済が行われるため、借入限度額は契約者の年収に依拠します。また融資の可否の審査も、勤務先など契約者個人の属性や信用情報が重視されます。
住宅ローンは、賃貸や投資目的の物件購入には一切利用できません。契約に違反した場合は残債の一括返済が求められたり、金利の引き上げが行われたりといったペナルティが課されるだけでなく、金融機関からの信用を失います。
ただし、自宅部分が50%を超える「賃貸併用住宅」の購入や建築であれば、住宅ローンの融資を受けられる可能性があります。
賃貸併用住宅について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
アパートローンと住宅ローンの金利の違い
アパートローンと住宅ローンでは、変動金利でも固定金利でも、住宅ローンの借入金利の方が低いのが一般的です。
ここでは、アパートローンと住宅ローンの金利のタイプや相場についてそれぞれ解説します。
アパートローンの金利
アパートローンの金利は一般的に、年1.5~5%程度が相場です。
金利のタイプは大まかに「変動金利型」と「固定金利型」に分かれ、さらに契約から数年間は金利が変動しない「当初固定金利型(固定金利選択型)」というタイプもあります。
固定金利は、返済期間中金利が上がる恐れがありませんが、変動金利よりも利率が高くなります。
金利の相場は、融資元の金融機関によって大まかに異なります。
金融機関の種類 | 金利の相場 |
---|---|
都市銀行(メガバンク) | 1.5%~2% |
地方銀行 | 1.5%~3% |
信用金庫・信用組合 | 2%程度 |
ノンバンク | 2.9%~4.5% |
日本政策金融公庫(※) | 1.2%~2% |
(※)日本政策金融公庫は、金利は低い一方で、返済期間が最長15年程度と短めです。
融資の際に実際に適用される金利は、審査を受けた上で決まります。低い金利で融資を出している金融機関ほど、年収や保有資産の審査が厳しい傾向です。また、必要な頭金(自己資金)の金額も高くなります。
なお、団信(団体信用生命保険)に加入すると、借入金利が上乗せされます。
金融機関のHP等で案内されている金利よりも、実際の適用金利は低いケースは多々あります。融資を検討している金融機関には、直接相談して金利を確認しましょう。
住宅ローンの金利
住宅ローンの金利にも、変動金利型、固定金利型、固定金利選択型のタイプがあります。
住宅ローン金利の相場は、変動金利で0.3~0.5%程度、固定金利でも1%後半台が目安です(2024年5月時点)
住宅ローン契約時に団信への加入が必須となっている金融機関が多いものの、特約なしの一般団信であれば、保険料の金利上乗せがないケースがほとんどです。
他のローン商品に比べて住宅ローンの金利が著しく低いのは、ローンの担保が「契約者の自宅」であることが関係しています。
返済を滞らせれば契約者は家を失い、生活に大きな影響を受けるため、最後まできちんと支払いをする契約者が多いです。また契約者が死亡してしまった場合でも、団信によって返済が保障されるので、金融機関は比較的低リスクで住宅ローンの融資を行えます。
このような特質性に加えて、ゼロ金利政策の実施以降、各金融機関が競って金利を引き下げていった結果、金利0%台で住宅ローンの融資を受けられる状況が出来上がっています。
以下の記事もご参考になります。
アパートローンと住宅ローンの返済期間の違い
住宅ローンの返済期間が契約者の年齢を元に決められるのに対して、アパートローンの返済期間は、担保となる不動産の法定耐用年数が主な基準となります。
アパートローンの返済期間
アパートローンの返済期間は、担保となる収益不動産の法定耐用年数(中古の場合は残存年数)を元に年数が決められます。
ただし、「最長30年間」と定めている金融機関も多いです。この場合、法定耐用年数が30年を超えるとき、返済期間は一律で30年間となります。
不動産の法定耐用年数は、建物の構造によって異なります。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造(W造) | 22年 |
木造モルタル造 | 20年 |
鋼材の厚みが3mm以下の鉄骨造(S造) | 19年 |
鋼材の厚みが3mm超~4㎜以下の鉄骨造(S造) | 27年 |
鋼材の厚みが4㎜超の鉄骨造(S造) | 34年 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 |
なお、団信なしでアパートローンを契約する場合は、契約者の年齢に上限が設けられていないことが多いです。これは、契約者の死亡後も、相続人が家賃収入によってアパートローンの返済を引き継げるためです。
団信付きのアパートローンの場合は、団信の申し込みに年齢上限の設定があるため、「完済時80歳まで」といった年齢の上限が設けられています。
住宅ローンの返済期間
住宅ローンの返済期間は、「最長で35年」に設定している金融機関が多いです。ただし、実際の返済計画は「80歳までに完済すること」を条件に決められます。
たとえば、住宅ローンを30歳で借り入れる人は、35年フルで返済期間を設定できますが、70歳で借り入れる人は、長くても10年以内に完済することを求められます。
つまり、35年フルでローンを組むためには、45歳が実質的な年齢上限となります。
以下の記事もご参考になります。
アパートローンと住宅ローンの審査基準の違い
住宅ローンは契約者の本業の収入から返済が行われるのに対して、アパートローンの場合は、基本的に賃貸物件の家賃収入で返済されます。
そのため、住宅ローンとアパートローンでは、金融機関が融資を行う上での審査基準がやや異なります。
アパートローンの審査基準
アパートローンは契約者本人の属性だけでなく、購入・建築予定の収益不動産の資産性や収益性まで審査の対象となります。
資産性は不動産の担保評価額、収益性は「事業計画書」などに基づいて判断されます。収益性によってローンの返済能力をチェックし、万が一債務不履行となった場合には不動産を売却して債権を回収するため、不動産の資産性も評価されるという訳です。
担保評価額は、土地・建物の積算評価に金融機関独自の掛目(60~70%程度)をかけ合わせて算出されるのが一般的です。
金融機関によって、「特にどの要素を重視するか」は異なるため、アパートローンを借り入れる際には情報収集を欠かさずに、複数の金融機関に融資相談をしましょう。
なお、アパートローンの融資においては、相続人を連帯保証人にすることが求められるケースが多いです。これは金融機関が、賃貸物件とローンの相続人が契約者の死亡後もきちんと返済を続けてくれる確約を得るためです。
契約者が団信に加入したり、契約者の自己資産が十分にある場合には、連帯保証人なしで契約できる場合もあります。
住宅ローンの審査基準
住宅ローンの融資審査では、主に個人の属性が審査基準となります。
特に、年収(自営業の方は所得)、勤務先や勤続年数、保有資産、その他のローンの利用歴などが見られます。
契約者は、給与や自営業の所得から、数十年間にわたって住宅ローンを返済し続けていきます。そのため、安定性の高い仕事に就いている人の方が審査において有利になります。
また、団信に合わせて加入するケースがほとんどであるため、契約者の健康状態も審査に加味されます。
なお、融資時に保証会社を通すケースが多いため、連帯保証人を立てずに借りられるという住宅ローンも増えていそう。
アパートを建てようか考えたとき、どのようにアパートを設計すればいいのか見当がつかないのではないでしょうか。
例えば2階建てにするか3階建てにするか、間取りの設計をどうするかについては土地の条件やアパート経営の目的によって変わります。
「イエウール土地活用」の一括見積なら、土地の所在地を簡単に入力するだけで複数の大手ハウスメーカーから提案を受けられます。アパートローンの借入額を抑えられるように、建築費の見積もりを比較して、適正価格で工事してくれる企業を見つけましょう。
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アパートローンと住宅ローンは併用できる
アパートローンと住宅ローンの併用は可能です。住宅ローンを借り入れている状態でアパートローンを申し込むことも、アパートローンを借り入れている状態で住宅ローンを申し込むこともできます。
ただし、既に住宅ローンを借り入れている場合は、契約者に債務がある状態であるため、融資額の上限に影響を及ぼします。
特に一から賃貸経営を始める場合は、事業資産がない状態であるため、もしもの時の返済を預貯金や本業の収入に頼ることになります。住宅ローンと返済資金が被ってしまうので、融資可能な上限額から住宅ローンの借入を差し引いた金額が、アパートローンで借入可能な金額になるのです。
反対に、後から住宅ローンを借り入れるケースでは、アパートローンという債務はあるものの、ローンで購入・建築した賃貸物件を「収益性のある自己資産」と見なしてもらうことができます。住宅ローンの審査はアパートローンに比べて下りやすいこともあり、融資への影響は軽微であるといえます。
- 賃貸経営事業が安定していれば、住宅ローンの返済能力を審査する上で、むしろプラスの要素として判断されます。
アパートローンと住宅ローンの借入に関する注意点
この章では、アパートローンや住宅ローンを利用する時に注意したいポイントについて、解説します。
住宅ローンの残高がある家を無断で賃貸してはならない
住宅ローンの残っている家やマンションを他人に賃貸したい場合は、事前に金融機関に可否を相談しましょう。
残債のある家の賃貸利用は、基本的に住宅ローンの契約違反に該当します。
しかしながら、転勤となったり、親の介護のために実家に居住する必要が出たりなどの理由で、住宅ローンで購入した自宅が空き家状態になってしまう方もいらっしゃるでしょう。ローンの返済負担を減らすため、不在の間に家を賃貸して、家賃収入を得たいと考える方も多いと思います。
金融機関は、借主にやむを得ない特別な事情がある場合には、返済金利を据え置いたまま、住宅の賃貸利用を許可してくれることがあります。
- ただし、賃貸中は住宅ローンの控除は適用できない点には注意しましょう。
無断で賃貸してしまうと、金融機関側も意図的な不正かどうかを判別できないため、ペナルティを受ける可能性が高まります。まずは金融機関に相談して事情を説明して、是非の判断を仰ぎましょう。
アパートローンに借り換えると控除を受けられなくなる
マイホームとして購入した住居を賃貸目的で利用したい場合、住宅ローンをアパートローンに借り換えるという方法もあります。特に、今後自宅に戻る予定がないものの、運用しながら資産として保有し続けたい方には有力な選択肢となります。
アパートローンに借り換えると手数料などの費用がかかるだけでなく、以降「住宅ローン控除」の適用を受けられなくなるため、ローンの返済金利の上昇以外にも、費用負担の発生があることに注意が必要です。
国民の生活に欠かせない「居住用財産(マイホーム)」の購入に関しては、税制上さまざまな負担の軽減措置が設けられています。
「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」もその1つで、年末時点の住宅ローン残高に応じた金額が所得税から控除(還付)されます(参考:国税庁)
特に所得税の支払いが多い方は控除による恩恵も大きいため、賃貸住宅に切り替えることによる出費や負担の増加分と、得られるようになる賃貸収入を天秤にかける必要があります。
なお、アパートローンから住宅ローンに借り換えることはできません。熟考の上、借り換えするかどうかを判断しましょう。
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活用事例:コンサルティング事例③
エリア | 東京都 |
土地面積(㎡) | 359 |
延べ床面積(㎡) | 445.69 |
工法 | 鉄骨造 |
(株式会社セレ コーポレーションの土地活用事例)
アパートローンと住宅ローンの違いを理解しておこう
アパートローンと住宅ローンは、どちらも不動産購入費用や建築費用について融資を受けられる金融商品です。
ただし、住宅ローンはマイホームにしか利用できません。賃貸目的で住宅を購入・建築する場合はアパートローンを利用しましょう。
アパートローンは、土地や中古アパートマンションの購入から新築物件の建築、リフォーム、ローンの借り換えなど多くの目的に使用できます。金利はアパートローンの方が高いものの、条件によっては年収の10~20倍もの融資を受けられます。
なお、不動産の賃貸経営とマイホーム購入のどちらも予定している方は、まずはアパートローンで賃貸経営を始めてから、住宅ローンの融資を受けて自宅を購入する方が、審査面で有利になりやすいです。
契約内容やライフプラン、賃貸経営の方法などは、専門家によく相談して事前の準備をしっかりしてから臨みましょう。