マンションやローンを借りる際、不動産会社に保証人について尋ねられた経験がある人は多いかもしれません。賃貸やローンではおなじみの保証人ですが、マンションを購入するときも保証人が必要なのでしょうか。
マンションは高額な買い物なので、知人や家族に保証人を依頼することに抵抗感を抱いてしまうものです。実はマンション購入で保証人が必要になるのは一部のケースのみです。
この記事では、マンション購入時の保証人の必要性や必要な場合の対応を解説します。万が一保証人を求められたときに備え、あらかじめ対処法を押さえておきましょう。
マンション購入時には基本的に保証人は不要
そもそも保証人とは、債務者がお金を支払わない際に、債務者に代わってお金の返済をすると約束した人のことです。保証人はお金の返済を拒否する権利がありますが、連帯保証人には注意しましょう。連帯保証人は、債務者とともに返済の責任を追う人のことを指し、保証人よりも責任が重く、いかなる理由があろうとも債権者からの請求を拒否することはできません。マンション購入で保証人が求められるときは、多くの場合連帯保証人のことを指すと考えておいてください。
保証人が負う責任をしっかりと踏まえたうえで、マンション購入時に保証人が必要になるかどうかについて見ていきましょう。
マンション購入に保証人は必須ではない
そもそも、マンションを購入するときに保証人を求められることはほぼありません。賃貸マンションの場合は、家賃を滞納したときに備えて保証人が必要となりますが、購入の場合はほとんどのケースで保証人は不要です。同様に、住宅ローンを組む際も保証人は原則不要です。ただし、債務者の返済能力や審査の結果によっては保証人が求められるケースもあるため、一概には言えません。
多くの場合で保証人は不要になりますが、場合によっては求められる可能性があること念頭に置いておきましょう。
マンション購入で保証人が不要な理由
マンションの購入では、数千万円という高額なお金のやり取りが行われます。賃貸などと比べて債権者のリスクは高くなりますが、どうして保証人が不要なのでしょうか。その理由は、マンション購入では債務者が取得した物件が担保となるためです。金融機関は物件を担保にすることで、返済が滞った場合に売却して住宅ローンの返済に充てられるため、お金を回収できないリスクが低いのです。
保証人の役割は、債務者からお金を回収できないときのための備えであるため、お金を回収する手段があるマンション購入では、保証人は不要ということになります。
住宅ローンの基本から知りたい!という方はこちらの記事をご覧ください。
住宅ローンの借り方や返し方の基本と押さえるべきポイント
マンション購入で保証人が必要な3つのケース
マンション購入では保証人が原則不要ですが、なかには保証人を求められるケースもあるため注意が必要です。保証人が必要になるのは以下の3つの場合です。- ペアローンや収入合算を希望するとき
- 共同名義にするとき
- 金融機関に条件として提示されたとき
それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
ペアローンや収入合算を希望するとき
ペアローンや収入合算を希望するときは、保証人が必要になります。ペアローンとは、親子や夫婦がそれぞれ住宅ローンを借り入れ、1件のマンションを購入することです。親と子、夫と妻が債権者として同じ金融機関で住宅ローンの契約をして、お互いに連帯保証人となって返済の義務を負います。
収入合算とは、借入可能額を増やすために親子や夫婦の収入を足し合わせて住宅ローンを組むことです。この場合、借り入れを申し込んだほうが主債務者となりますが、収入を合算したパートナーが連帯保証人もしくは連帯債務者となり、支払いが滞ったときは返済の義務を負います。
このように2人で力を合わせて住宅ローンを組もうとするときは、保証人の設定が求められます。
ちなみにペアローンは両者が住宅ローンを組むため、それぞれが住宅ローン控除を受けられます。収入合算の場合は、連帯債務者を選択することでそれぞれが住宅ローン控除を受けられるようになります。連帯保証人よりも連帯債務者のほうが、節税効果が高くなるのです。
共同名義にするとき
夫婦や親子が共同名義でマンションを購入するときも、共有名義にする相手を連帯債務者や保証人にする必要があります。たとえば夫が1人の名義で住宅ローンを組んで物件代金を全額支払う場合、住宅の名義人は夫です。しかし、あらかじめ割合を決めて妻も自己資金からお金を出すときは、出資した割合に応じて持分が割り当てられ、物件は共同名義となります。
共同名義の際に保証人が必要になるのは、住宅ローンの担保提供者と連帯保証人がセットになっていることが多いためです。
担保提供者とは、金融機関が担保に設定する不動産を提供する人のことです。上記の例で共同名義のマンションを住宅ローンの担保にする場合、夫婦両方の持分のマンションが担保となります。したがって債務を負っていない妻も担保提供者とみなされ、連帯保証人になる必要があるのです。
共同名義のメリット・デメリットについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
マンション購入時に共有名義にするメリット・デメリットを解説
金融機関に条件として提示されたとき
また金融機関で審査が行われた結果、保証人の設定が求められるケースもあります。保証人が必要になる理由はさまざまですが、返済能力に不安があると判断されると、保証人が求められる傾向にあります。たとえば以下のような人は保証人が必要になることが多いです。
- 自営業の人
- 収入が安定していない人
- 収入に対して借入希望額が高い人
- 勤続年数が短い人
- そのほか審査上で不利な条件がある人
しっかりと定職についていて安定した収入がある場合、そこまで保証人について心配する必要はありません。しかし、自営業で収入が不安定な人や物件に見合った収入がない場合は注意が必要です。
住宅ローンの審査基準について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
住宅ローン審査基準に通らない理由は?基本的な流れから審査項目や必要書類を解説!
マンション購入時に保証人が必要なときの対応法
マンション購入で万が一保証人が必要だと言われたら、どのように対応すればいいのでしょうか。知人や親族に保証人を頼めればいいのですが、リスクが大きい保証人を頼むことが申し訳ないと考える人も多いですし、そもそも引き受けてくれる人が見つからない可能性もあります。この章では、保証人が必要になったときの対応法について解説します。ぜひ、この中から自分に合った対応法を探してみてください。
理由を聞いて改善する
保証人が必要になる理由はさまざまですが、その理由がわかれば保証人を不要にできるかもしれません。ペアローンや共同名義など、明らかに保証人が必要となるケースは理由が明白です。しかしそのほかの理由が考えられる場合は、不動産会社や審査を依頼した金融機関に直接質問してみましょう。借入希望額が高すぎる、勤続年数が短すぎるといった理由が明確になれば、「物件価格を下げる」「1年後に再度マンション購入を検討する」といった対策が取れます。「保証人が必要だからマンション購入は諦めよう」と考えるのではなく、どうすれば保証人が不要になるのかについて考えると、今後取るべき行動が見えてきます。
借り入れる金融機関を変える
金融機関によって住宅ローン審査の基準は異なるため、借り入れる金融機関を変えることも保証人対策には有効です。現在審査を受けている金融機関で保証人が必要だったとしても、ほかの金融機関では不要となる可能性があります。一般的に大手の金融機関と比べ、地方銀行やネット銀行は保証人を求められにくい傾向にあります。また、住宅金融支援機構の「フラット35」も保証人が必要ありません。
いくつか審査を受けてみて、保証人が不要な金融機関を探してみると良いでしょう。
保証会社を利用する
どうしても保証人が見つからない、保証人を不要にする方法がないという場合は、保証会社を利用することもひとつの選択肢です。保証会社とは、住宅ローンの返済や家賃の支払いが滞ったときに、債務者に代わって機関保証を負ってくれる会社のことです。保証には、知人や親族を連帯保証人にする「人的保証」とは別に、企業や団体に保証してもらう「機関保証」の2種類があります。
保証会社は債務者から一定の保証料を受け取り、万が一支払いが滞ったときは立て替え返済をしてくれます。自分で連帯保証人を見つけられない場合は、保証会社を利用することで住宅ローンを契約できるようになるのです。
保証会社の利用は決して珍しいことではなく、住宅ローンを組む際や賃貸契約を結ぶ際の一般的な選択肢として知られています。
マンション購入時に保証会社を利用する場合の注意点
自分でできる対応策を試しても保証人の問題が解決しない場合は、多くの人が保証会社の利用を検討するでしょう。保証会社は便利に利用できる機関保証ですが、利用する際はいくつかの注意点を押さえておかなければいけません。最後に、マンション購入で保証会社を利用するときに気をつけたいポイントを3つ紹介します。
過去の信用情報や収入が審査される
債務者が滞納した住宅ローンを立て替える義務がある保証会社は、リスクを負うことになります。そのためどのような人の保証でも引き受けてしまうと、保証会社にとって大きな損害となってしまうのです。損害を防ぐために、保証会社では利用者の審査をしています。つまり、住宅ローンと同様に一定の条件をクリアしていないと、保証会社と契約ができません。
保証会社によって審査基準は異なりますが、以下のようなポイントを重点的に審査されます。
- 収入が安定しているかどうか
- 他社からの借り入れが多くないか
- 過去にお金のトラブルを起こして信用情報に傷がついていないか
場合によっては保証会社の審査に通らないケースもあります。保証会社は、頼めば必ず保証を引き受けてくれるわけではないことを理解しておきましょう。
保証料が高額になる
保証会社を利用するときは、保証料という費用を支払わなければいけません。保証料は審査の結果によって大きく変動しますが、返済期間35年の住宅ローンの場合、借入額の2~3%程度が相場になると考えておきましょう。たとえば4,000万円の借り入れをした場合、80~120万円の保証料が必要になるというわけです。
この保証料は一括で支払うことも可能ですし、毎月の住宅ローン返済に上乗せして支払うこともできます。借入額によっては大きな負担になるため、保証料の支払いに納得がいかない場合は、フラット35などの保証が不要な住宅ローンを利用しましょう。
債務が帳消しになるわけではない
もっとも気をつけなければいけないのが、保証会社はあくまで返済を立て替えてくれる「代位弁済」をするだけで、債務者の返済義務がなくなるわけではない点です。万が一代位弁済が実行されてしまうと、債務者は保証会社から一括返済を要求されてしまいます。この一括返済の要求を無視していると、保証会社は裁判を起こし、最終手段として給与差し押さえなどの強制執行を行うことになります。場合によっては、借金の取り立てを専門に行う債権回収会社に債権が移ってしまうこともあるでしょう。
なお代位弁済が行われたということは、すでに何度も返済を滞納しているということになります。そのため代位弁済が行われたという通知が来るときは、すでに遅延が理由となって信用情報に事故の記録が登録されている可能性が高いのです。
そうなってしまうと、数年間は住宅ローンやクレジットカードなどの審査には通らなくなります。「保証会社が立て替えてくれるから大丈夫」と楽観視せず、代位弁済されることにならないよう、しっかりと住宅ローンを返済し続けることが大切です。
マンション購入時は保証人が必要なケースに注意
物件を担保に債権を回収できるマンション購入では、基本的に保証人は不要です。ただし、ペアローンや収入合算を希望する際、共同名義にする際、そのほか住宅ローンを借り入れる金融機関から条件として提示された際は、保証人を設定する必要があります。心当たりがある人は、あらかじめ保証人を誰に依頼するか目星をつけておくとスムーズでしょう。
自分で保証人を探すことができない場合は、保証会社を利用して対応することもできますが、保証会社の利用時には注意点があることを忘れてはいけません。保証会社は決して住宅ローンを肩代わりしてくれる会社ではないため、滞納時のリスクをしっかりと理解したうえで活用していきましょう。