賃貸部分と自宅部分の両方がある賃貸併用住宅を建築するなら、どれくらいの費用がかかるのかを知っておくことが大切です。費用の相場を把握しておくことで、建築から賃貸経営の開始までに、いくらくらいのコストがかかるのかも判断できます。
建築費用はケースによって異なり、工夫次第でコストを削減することも可能です。建築費用の相場や計算方法、コスト削減のポイントなどを知り、賃貸併用住宅の建築に役立てましょう。
賃貸併用住宅の建築費用の相場
賃貸併用住宅を建築するなら、建築にかかる費用の相場を知っておきましょう。また、相場がいくらなのかを知るだけではなく、建築費の計算方法も覚えておくことがおすすめです。計算方法を覚えておくことで、大まかな金額は自身で計算できるようになります。
建築費の計算方法
賃貸併用住宅の建築費は、次の式で計算します。
- 坪単価×延べ床面積=建築費
賃貸併用住宅は2階以上であることが基本のため、すべてのフロアの床面積を足して計算します。1階が70㎡、2階が65㎡なら、延べ床面積を135㎡として建築費を計算しましょう。
構造によって坪単価は異なる
建物の構造によって、坪単価は異なります。
基本的には坪単価が高いものほど、丈夫で長持ちする構造です。一般的に、木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造<鉄骨鉄筋コンクリート造の順に高くなっていきます。
坪単価は建築の依頼先や賃貸併用住宅を建てるエリアによっても変わります。
一般的な戸建て住宅と比べると高め
賃貸併用住宅は、一般的な戸建て住宅を建築する場合と比較すると、建築費はやや高めになります。賃貸併用住宅は自宅部分に加えて、賃貸部分まで建築するため、家の規模が大きくなり、その分が割高になると考えましょう。
アパートやマンションと比較すると、安価で賃貸物件を建築できるのは魅力ですが、戸建て住宅と比較すると高い費用がかかってしまいます。
\建築費は?初期費用は?/
賃貸併用住宅の初期費用の相場
賃貸併用住宅を建築するには、さまざまな初期費用がかかります。初期費用は建物本体の建築費だけではありません。初期費用としてどのような出費があるのか、費用の相場も含めて知っておきましょう。
建築費の5%が目安
賃貸併用住宅を建築する際には多数の初期費用が発生しますが、この合計額はおおよそ建築費の5%が目安です。建築費が5,000万円なら、250万円程度が初期費用としてかかると考えましょう。建築費以外にも費用の捻出が必要であるため、資金は十分に用意しておく必要があります。
初期費用としてかかる項目
賃貸併用住宅の初期費用としてかかる項目は、次の通りです。
- ボーリング調査費用
- 設計料
- 印紙代
- 水道分担金
- 火災保険料
- 登記関連費用
- 不動産取得税
- 入居者募集費用 など
ボーリング調査費用は建物構造によっては不要になる場合があり、必須の項目ではありません。また、設計料も依頼先によっては建築費に含まれており、別途計上されないこともあります。
初期費用以外の費用の相場
初期費用以外にかかる費用としては、次のものがあげられます。
- 管理委託手数料
- 固定資産税
- 修繕費
賃貸併用住宅の管理を業者に依頼する場合は、管理委託手数料がかかります。管理委託手数料は家賃収入の10~20%程度が相場であり、詳細な金額は管理会社によって異なります。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している人に課税される税金です。固定資産税は不動産を持ち続けている限り、毎年課税されます。税額は所有する不動産の評価額によって異なり、固定資産税評価額に、標準税率の1.4をかけて税額を計算します。
賃貸併用住宅に住み続け、賃貸経営を続けていると、建物は劣化するため必要に応じて修繕が必要です。修繕費は内容によって異なり、数万円程度で済むこともあれば、大規模な修繕で100万円単位の費用がかかることもあります。
賃貸併用住宅の建築費を抑えるには
一般的な戸建て住宅よりも建築費が高くなる賃貸併用住宅ですが、工夫次第でコストを抑えることができます。
- 建物の外観を正方形にする
- 間取りをできるだけシンプルにする
- できるだけ複数の見積もりを取る
建築費を抑えるポイントを知り、少しでもお得に賃貸併用住宅を建築しましょう。
建物の外観を正方形にする
建物の外観を正方形にすることで、建築費は安くなります。建築費は壁の長さによって変動し、長ければ長いほど建築費は高くなります。そのため、長方形よりも正方形の外観のほうが壁が短くなるため、建築費を安く抑えることが可能です。
間取りをできるだけシンプルにする
シンプルな間取りを選ぶことでも、建築費は抑えられます。部屋数が多かったり、ドアや壁が増えたりすると建築費は上がるため、必要最小限の間取りを選ぶとよいでしょう。
例えば1LDKと2LDKなら1LDKのほうが安く、1LDKと1DKなら1DKのほうが安くなります。賃貸需要を獲得するには一定のグレードは必要ですが、賃貸部分は必要以上に豪華にしすぎないことが、建築費削減には重要です。
できるだけ複数の見積もりを取る
建築費を安くするには、複数の建築会社から見積もりを取ることがおすすめです。同じ内容で賃貸併用住宅の建築を依頼しても、建築会社によって提供しているサービスやかかる費用が異なる場合があります。
複数社で比較すると、どの業者がもっともお得に建築してくれるかが判断しやすいです。比較する際は建築費の安さだけではなく、建築以外のサービス内容もチェックし、総合的に優れている業者を選びましょう。
\建築費は?初期費用は?/
賃貸併用住宅を建築するときのポイント
賃貸併用住宅を建築する際には、覚えておきたいポイントが多数あります。
- 自宅部分の面積を51%以上にする
- 設備のランクを落とす
- 税金が安くなる広さにする
ポイントを把握して、お得に賃貸併用住宅を建築しましょう。
自宅部分の面積を51%以上にする
住宅ローンを利用したいなら、自宅部分の床面積は全体の51%以上にする必要があります。賃貸部分のほうが多いと住宅ローンは利用できず、融資を受けるにはアパートローンを組むことになります。
アパートローンでも資金繰りはできるものの、住宅ローンよりも金利が高いです。よりお得に融資を受けたいなら、自宅部分の床面積を広げて、住宅ローンを利用するとよいでしょう。
設備のランクを落とす
費用を下げるには、設備のランクを落とすことがおすすめです。設備さえ導入されているなら、ランクを落としてもそれほど問題はありません。基本的な性能が備わっているなら、普段の生活には困らないため、入居者への影響もほとんどないでしょう。
設備のランクを落としてシンプルなものにすることで、設備投資にかける費用を削減できます。また、故障した際の修繕費も安く済むため、長期的に見てもコストを軽減できます。
税金が安くなる広さにする
不動産取得時にかかる不動産取得税は、住宅の規模によって税金が安くなります。賃貸部分の広さを1戸あたり40㎡以上、240㎡以下にすると、1,200万円の控除を受けられます。
控除を受けることで不動産取得税が安くなるだけではなく、場合によっては非課税となることもあるため、税金コストの削減が可能です。
賃貸併用住宅の建築に関する注意点
賃貸併用住宅を建築する際には、注意すべき点もいくつかあります。
- 引っ越すと契約違反になる場合もある
- 自分で管理をするのは難しい
- 売却が難しいことを把握しておく
賃貸併用住宅で失敗しないためにも、注意点は正しく理解しておきましょう。
賃貸併用住宅によくある失敗や後悔について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
引っ越すと契約違反になる場合もある
住宅ローンを組んで賃貸併用住宅を建築した場合は、ローン返済中に自身が引っ越すと、契約違反になる可能性があります。住宅ローンは契約者が住み続けることが条件となっており、賃貸物件ではなく、自宅に対して融資を受けています。
そのため、返済途中で引っ越すと契約違反になり、ペナルティとしてローン残債の一括返済を求められることもあるため、注意しなければなりません。
自分で管理をするのは難しい
賃貸部分や入居者の管理をオーナー自身が行うのは、非常に難しいです。入居者との距離が近いため、問題があっても素早く対応できますが、距離が近すぎるがゆえに起きてしまうトラブルも多数あります。
そのため、管理業務は管理会社に委託することがおすすめです。管理会社に業務を委託することで、万が一トラブルが起きても、業者がスムーズに対応してくれます。
売却が難しいことを把握しておく
賃貸併用住宅は売りに出しても、すぐに売却することは難しいです。賃貸部分と自宅の両方を兼ね備える賃貸併用住宅は需要が少なく、他の物件よりも買い手を見つけづらいです。
自宅を欲しい人には賃貸部分は不要であり、投資物件が欲しい人には自宅部分が不要となるため、ターゲットが限定的になると考えましょう。賃貸経営が上手くいかず、売却を出口戦略とする場合でも、すぐに売れるわけではないため、売却するなら早めから行動しておかなければなりません。
賃貸併用住宅の建築費の相場を把握しておこう
賃貸併用住宅を建てるなら、建築費がどれくらいになるのか、相場を把握しておくことが大切です。相場を頭に入れておくことで、建築会社から提示される見積もりが適正かどうか判断しやすくなります。
また、工夫次第では建築費やその他のコストは、削減することも可能です。少しでもお得に賃貸併用住宅を建築するためにも、削減できるコストはないかを確認し、納得できる内容で建築してもらいましょう。