アパート経営を始めるには、既存のアパートを購入する方法と土地にアパートを建築する方法の2通りの方法があります。
自分でアパートを建築する場合には、「土地代+アパートの建築費用+諸費用」が初期費用となります。
この記事ではアパート経営を検討している方向けに、土地を購入してアパートを建築するときの基礎知識や流れを解説します。
気になる費用や、節約のコツについても解説していますので、是非最後まで読んで、ご参考にしてください。
購入した土地にアパートを建築して経営する基礎知識
土地に自分でアパートを建てて経営を始める上で、特に重要な基礎知識は以下の4点です。
- アパートの建築に必要な土地の広さ
- アパートの建築にかかる費用
- アパート経営の利回りの相場
- アパートの建築期間の目安
これからアパート経営を始めたい方に向けて、それぞれ分かりやすく解説していきます。
アパートの建築に必要な土地の広さ
土地の敷地面積が30坪程度あれば、総戸数4戸の2階建てアパートを建築できます。
アパートの建築には、必ずしも広大な敷地が必要な訳ではありません。ただし、敷地に建てられる建物の大きさは、用途地域ごとに指定された建ぺい率・容積率によって制限されています。
「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。一方「容積率」とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積(総床面積)の割合のことです。
土地ごとに建てられるアパートの最大規模は異なるため、アパートの建築予定地を探す際には、地域の指定建ぺい率・容積率を確認しておきましょう。建ぺい率・容積率は都市計画図に掲載されていて、インターネットでも調べることができます。
アパートの建築にかかる費用
賃貸アパートを自分で新築するには、「土地の購入費用」「建築費用」「その他の諸費用」がかかります。
土地の購入費用は、地域の相場によって価格が大きく変動します。国土交通省の公開している「不動産情報ライブラリ」等で実勢価格(過去の売買取引価格)を調べることで、大まかな相場感を掴めるでしょう。
相続等で所有している土地にアパートを建てる場合には、土地代がかからないため、初期費用がその分安くなります。
アパートの建築費用と諸費用は、建てるアパートの構造や大きさ等によって金額が変動します。ここからは、建築費用と諸費用の相場について解説します。
建築費用の相場
アパートの建築費は、「建築費の坪単価×延べ床面積」で大まかな金額をシミュレーションすることができます。
建築費の坪単価は、建物の構造によって相場が異なります。建物の構造別の坪単価相場は以下の通りです。
構造 | 坪単価相場 |
---|---|
木造(W造) | 74万円~105万円/坪 |
軽量鉄骨造(S造) | 80万円~105万円/坪 |
重量鉄骨造(S造) | 90万円~120万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 95万円~125万円/坪 |
(※イエウール編集部調べ)
たとえば、建坪30坪の木造の2階建てアパートの建築費の相場は、4,440万~6,300万円です。
実際にはアパートを建てる地域によっても、細かく相場が異なります。また、アパートの建築費は近年高騰が続いているため、今後も相場が上昇していく可能性があります。
2・3階建てのアパートの建築には、価格のメリットから、木造または軽量鉄骨造が選ばれることが多いです。4階建てを超える建物の場合は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造が選択肢になってきます。
また、アパートの建築には、「坪単価×延べ床面積」で計算できる建築費費(本体工事費)以外にも、ライフラインの引き込み工事や外構工事、地盤改良工事等の費用(付帯工事費)が本体工事費の20%程度かかります。
アパートの建築費について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
諸費用の内訳と相場
アパート建築時には建築工事そのもの以外にも、様々な費用や税金がかかります。これらをまとめて「諸費用」といいます。
以下は、諸費用の項目と金額の目安を、支払いタイミング別にまとめた表です。
支払うタイミング | 費用の項目 | 費用の目安 |
---|---|---|
建築計画時 | 現況測量費 | 30万円程度 |
地盤調査費用 | 1ヶ所あたり50万円程度 | |
建物解体費 | 坪あたり4~8万円 | |
請負契約時・着工時 | 印紙税 | 1万~10万円程度 |
水道分担金 | 100万~500万円程度 | |
工事期間中 | 追加工事 | 必要に応じて別途 |
竣工時 | 火災・地震保険料 | 保険会社・地域に準じる |
建物の登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% | |
抵当権設定登記費用 | 借入金額×0.4% | |
司法書士手数料 | 5万~10万円程度 | |
新築建物不動産取得税 | 固定資産税評価額×3% | |
入居者募集時 | 広告費(サブリース契約でない場合) | 最大で賃料の1ヶ月分程度 |
諸費用を合わせると、総工費の5~10%程度になります。
基本的に、アパートローンの融資が下りる前に支払わなければならないため、自己資金からまかなえるように計画的に準備しておきましょう。
アパート建築にかかる諸費用について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
アパートの建築費用に関して、以下の記事もご参考になります。
- 建築費2,000万円でのアパート建築
- 建築費3,000万円でのアパート建築
- 建築費4,000万円でのアパート建築
- 建築費5,000万円でのアパート建築
- 建築費8,000万円でのアパート建築
- 建築費1億円でのアパート建築
- 建築費1億5,000万円でのアパート建築
坪数別のアパート建築費の記事一覧
アパート経営の利回りの相場
アパート経営でどれくらいの利益が得られるかは、「利回り」という指標を用いて判断します。
利回りとは、投資した金額に対して、得られるリターンの割合を表すものです。アパートの収益性の指標には、年間利回りを用いるのが一般的です。利回りには経費を考慮しない表面利回りと、経費を含めて計算する実質利回りの2つがあります。表面利回りの計算方法は、次の通りです。
- {年間の家賃収入の総額÷(土地代+アパート建築費用)}×100
実質利回りは経費を考慮するため、表面利回りと計算式が異なります。
- {(年間の家賃収入の総額-年間の経費)÷(土地代+アパート建築費用+建築時の諸費用)}×100
アパート経営の利回りの相場は3~5%程度です。利回りはあくまで目安ですが、収益の指標として事前に確認しておきましょう。
より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
アパートの建築期間の目安
着工から竣工までのアパートの建築期間は、「建物の階数+1~2ヶ月」が大まかな目安です。
たとえば、2階建てのアパートであれば3~4ヶ月、3階建てのアパートであれば4~5ヶ月が建築期間の目安となります。
ただし、建築を依頼する時期によっては繁忙期で人手が足りなかったり、雨天による休工が多くなったりして、工期が長くなることがあります。
竣工時期を入居の繁忙期である3月中旬~下旬に合わせられると、満室状態でアパート経営を始めやすくなるため、着工のタイミングに融通を利かせられる方は意識してみましょう。
アパートの建築期間については、以下の記事でも詳しく解説しています。
土地活用としてアパート経営を始めたい方は、まずは建築会社に見積もりを問い合わせてみましょう。
複数企業の建築プランを比較することで、高収益のアパート経営を目指せます。
活用事例:木造重層アパート「グレイスペア」
土地の購入からアパート建築までの流れ
土地を購入してからアパートを建築するまでの流れは、次の通りです。
- 建てたいアパートの理想を明確にする
- アパート建築に充てられる予算の確認
- ターゲットに需要がある土地探し
- 購入した土地に合わせてアパートの建築プランを作成
- 契約した会社で工事を開始
- 管理体制や入居者の募集をして竣工を待つ
アパートを建てるには、建てる予定の土地の周辺調査や立地調査などをまず初めに行います。その後、その土地に合わせた建築プランが出来上がり、実際に建築へと進みます。
立地に合わせたアパートを建てることが最も大切です。理想のアパート像があっても、立地によっては必ずしもその通りにならないこともあることは認識しておきましょう。
建てたいアパートの理想を明確にする
土地を購入する前に、どのようなアパートを建築したいのか、理想を明確にしておくことが大切です。考えておきたい条件としては、次の通りです。
- いつまでにいくら家賃収入を得たいか
- ターゲットが単身者かファミリー層か
- どのエリアに建築するか
理想を明確にしておくことで、アパート建築の立地や建物の規模などを考えやすくなります。
アパート建築に充てられる予算の確認
アパート建築にどれくらいの資金を使えるか、予算を確認しておくことも大切です。ローンが通るならフルローンでも建築はできますが、頭金なしだと借り入れ後の返済が苦しくなりやすいです。
また、審査の基準も厳しくなるため、頭金は多めに用意しておくとリスクヘッジにつながるでしょう。自己資金は多いほどリスクを回避できますが、頭金を含めて全体の1~3割の予算を用意しておくことがおすすめです。
アパートローンについては以下の記事にて詳しく解説しています。
ターゲットに需要がある土地探し
単身者かファミリー層かターゲットを決めたなら、需要がある土地を探します。土地を探す際には、不動産会社に依頼するか、土地探しから建築までをサポートしてくれる、土地活用の専門業者に相談しましょう。
単身者をターゲットにするなら、通勤や通学に便利な駅から近く、アクセスのよい立地がおすすめです。ファミリー層がターゲットなら、スーパーや病院、学校などの生活施設が豊富な立地が好まれます。
土地を探す際には、事前に相場を把握しておくことが大切です。相場を事前に把握しておくことで、割高な土地の購入を避けることができ、費用を節約できます。
購入した土地に合わせてアパートの建築プランを作成
土地を購入したなら、その土地に合ったアパートの建築プランを作成します。建築プランの作成は、ハウスメーカーや工務店に依頼しましょう。依頼する業者を探す際には、アパート建築の実績があるかを確認しておくことが大切です。
実績のない業者だと、ノウハウが蓄積されていないために、理想とするアパートを建築してもらえない場合があります。また、建築プランの作成は複数社に依頼し、それぞれの内容を比較検討しましょう。
同じ要望を出しても、業者によって提示するプランやかかる費用は異なります。それぞれの違いを確認し、もっとも自分の理想に近いプランを選ぶことが大切です。
契約した会社で工事を開始
建築プランを決めたなら、契約した会社で工事を開始してもらいます。工事を開始する前には、設計を細かく確認し、疑問点や不満な部分がないかを確認しておきましょう。建築を開始すると、プランは簡単には変更できないため、建築開始前に詳細までチェックしておくことが大切です。
設計の細部を詰めたなら、役所に建築確認申請を出してもらい、許可が下りたなら工事開始となります。建築するアパートによっては、地盤の工事からスタートとなり、この場合は期間が長くなります。
管理体制や入居者の募集をして竣工を待つ
工事が始まったなら、その間に管理会社と契約して管理会社を整えておきましょう。事前に体制を整えておくことで、スムーズに賃貸経営を始めやすくなります。また、竣工までに入居者の募集を開始し、完成前に入居者を確保しておくことも大切です。
完成してから入居者を募集すると、家賃収入を得るまでに時間がかかります。収入が得られない期間もローンの支払いはあるため、返済の負担を減らすには素早く家賃収入を得る必要があります。
入居者の募集から決定までには時間がかかるため、資金繰りで失敗しないためにも、早めに準備を始めておきましょう。
アパート経営のパートナー企業を探すなら「イエウール土地活用」の一括見積を利用するのが便利でおすすめです。
管理方法まで含めたアパート経営プランを、複数の企業に相談して比較して決めましょう。
\建築費は?初期費用は?/
以下の記事もご参考になります。
アパートの建築費や土地の購入費を節約するコツ
アパートを建てるには、数千万~数億円のアパート建築費がかかります。アパートの建築費や土地の購入費を節約するには、覚えておきたいコツがあります。
- 土地は相場を根拠に値引き交渉
- 設計と施工を一緒に行える会社へ依頼
- 間取りや設備はこだわりすぎない
コツを正しく理解して、少しでも費用を抑えてアパートの建築や土地の購入を行いましょう。
土地は相場を根拠に値引き交渉
土地を購入する際には、相場価格を根拠に値引きの交渉を行いましょう。購入することを前提に交渉することで、売主も値引きに応じやすくなります。
ただし、根拠なく値引きを求めても、応じてもらえない可能性が高いため注意が必要です。極端な値引きを求めると印象が悪くなり、売ってくれないリスクが高まります。
そのため、相場価格を参考にし、相場よりも高い場合はそれを理由に値引きを求めましょう。また、値引き交渉は自身で行うだけではなく、不動産会社の担当者に一任しても構いません。
設計と施工を一緒に行える会社へ依頼
建築費を節約するには、設計と施工を一緒に行える会社に依頼することがおすすめです。自社で設計から施工まで一括で行う業者なら、設計料や施工費が割安になる場合があります。設計と施工が同一の会社だと、他社へのマージンが発生しないため、割安で請け負ってくれると考えましょう。
設計施工一括方式は、大手のハウスメーカーが採用していることが多いです。そのため、費用を安くしたいなら、大手の業者を中心に探すとよいでしょう。
間取りや設備はこだわりすぎない
建築費を安くするには、間取りや設備にはこだわりすぎず、ある程度妥協することも考えましょう。できるだけシンプルな間取りにし、設備のグレードも下げたほうが、建築費は安くなります。
内装から外装を細部までこだわってしまうと、その分費用は高くなります。依頼した業者が建売りのモデルを用意しているなら、それを選んだほうが安価で建築してもらいやすいです。
アパートの土地購入や建築で気になる疑問
アパート用の土地の購入や建築をするなら、少しでも疑問を解消しておくことが大切です。
- アパートは中古の購入と新築のどちらがよいか
- アパートの建築で住宅ローンは使えないか
- アパート建築で使える補助金はあるか
健全にアパート経営をするためにも、細かな疑問も解決してから土地の購入や建築に臨みましょう。
アパートは中古の購入と新築のどちらがよいか
アパートは中古と新築のどちらで購入しても構いません。それぞれメリットとデメリットがあるため、両方を確認しておきましょう。
建物の種類 | メリット | デメリット |
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中古アパート |
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新築アパート |
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中古アパートは安価で購入でき、かつ現在ある賃貸需要を確認できます。そのため、費用を安く抑えたい人や、賃貸需要の調査を念入りにしてから購入したい人におすすめです。
新築アパートは資産価値が高いため融資を受けやすく、家賃も高く設定できます。また、設備や外観が優れているため、入居者も獲得しやすい点がメリットです。
融資を受けてアパートを購入したい人や、入居者を素早く獲得したい人、長く賃貸経営をしたい人に新築アパートは向いています。経営するアパートを購入したい方は、以下の記事がご参考になります。
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アパートの建築で住宅ローンは使えないか
住宅ローンは自身の居住用住居の購入を前提としているため、原則アパートの購入や建築には利用できません。そのため、アパートローンや不動産投資ローンを利用して、融資を受けることになります。
ただし、自宅兼賃貸住宅の賃貸併用住宅を建てる場合は、自宅部分の割合が全体の2分の1以上に設定するなら住宅ローンの利用が可能です。
アパートローンや不動産投資ローンは、住宅ローンよりも金利が高いため、利用する場合は念入りに資金計画を立てて、返済に無理がないかシミュレーションしておくことが大切です。
アパート建築で使える補助金はあるか
一定の条件を満たして建築したアパートで、長期優良住宅と認定される場合は、補助金を受けられます。長期優良住宅と認定されるには、さまざまな基準を満たさなければなりません。
- 劣化対策
- 耐震性
- メンテナンス・リフォームのしやすさ
- バリアフリー対策
- 省エネ対策
- 維持保全計画
- 住戸面積
- 居住環境
各基準の要件を満たすことで、最大110万~140万円の補助金を受けられます。ただし、要件を満たすには高い工費がかかることもあるため、補助金を申請するなら費用対効果を考えることが大切です。
建築費用が高額になりすぎると、補助金を受けてもマイナスが出てしまうこともあるため、費用がかかりすぎないかを確認して申請するようにしましょう。
自分でアパートを建築するなら土地の購入費用もかかる
自分で土地にアパートを新築してアパート経営を始めるなら、土地の購入や建築、その他諸費用がいくらかかるのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。費用を把握し予算を決めておくことで、資金計画を立てやすくなります。
土地の購入から始める場合、初期費用の負担が大きい一方で、立地条件にこだわってアパート経営を始められるというメリットがあります。アパート経営に最適な土地を見つけ、理想とするプランで建築を開始し、アパート経営を成功させましょう。