アパート経営における利回りとは、アパートに投資した額に対しての利益・リターンの割合を数値にしたものです。これには表面利回りと実質利回りの2種類があり、表面利回りは年間の家賃収入をアパートの取得費で割り算するという単純なものです。
一方で実質利回りとは、年間の家賃収入から必要経費を差し引いた額を、アパートの取得費とその他諸々の費用の合計で割って計算します。つまり、表面利回りよりも実質利回りの方がより現実的な数値になるため、利回りを考える際は実質利回りで考える必要があります。
下記は新築アパートにおける、実質利回りの相場・理想の実質利回り・実質利回りの最低ラインです。
相場 | 3%~8% |
---|---|
理想 | 5%~8% |
最低ライン | 3% |
「新築アパートの利回りってどうやって計算するの?」、「新築アパートの利回りを確認するときはどんなことに注意すればいいの?」
アパートを新築しようとお考えの方にとって、このような悩みは多くあります。そこで本記事では、新築アパートの利回りの目安や計算方法や、利回りを確認するときのポイントなどを解説します。
- 新築アパートの利回りの特徴について知りたい人
- 持っている土地に新築アパートを建てる予定の人
- 新築アパートの利回りに潜むリスクを回避したい人
アパート経営の利回りについては以下の記事をご覧ください。
新築アパートの利回り目安
新築アパートの実質利回りの相場は3%~8%が目安であり、理想の利回りは5%~8%です。そして、利回りは3%未満であれば注意が必要で、最低でも3%~3.5%以上を確保しておくことをおすすめします。
また、中古を含めたアパート経営における実質利回りは平均して5%です。
利回りが最低でも3%以上必要な理由
利回りが3%以上必要なのは、それを下回ると経営が悪化するためです。2%~3%となると、経営が不安定になりやすく赤字となる可能性が非常に高くなります。そのため、3%が利回りの最低ラインだと言えるでしょう。
もし利回りが3%台であれば投資回収能力において不利なアパートといえます。そのため、新築のアパートを建てる方はまず収益見込みが3%を超えているのかを目安に投資回収能力を判断することをおすすめします。
また、利回りの相場は地域によって異なります。都市部であるほど賃料が高いため、利回りは大きくなる傾向があります。回収が見込めないようであれば、都市部の賃貸経営も視野にいれると良いでしょう。
新築アパート利回りの実情
新築アパートの利回りについて、実際に新築アパート経営を行なった人の収益・建築費・利回りを紹介します。
収益(月) | 建築費用 | 利回り | |
---|---|---|---|
東京都杉並区 | 20万円~30万円 | 3,001万~4,000万円 | 8% |
埼玉県蕨市 | 50万円 | 1億5,000万円 | 8% |
千葉県東金市 | 50万円~60万円 | 1億円~1億5,000万円未満 | 9% |
群馬県高崎市 | 30万円 | 3,000万円 | 7.57% |
静岡県浜松市 | 20万円~30万円 | 5,001万~6,000万円 | 12.50% |
兵庫県尼崎市 | 20万円~30万円 | 1,001万円~2,000万円 | 0.25% |
愛知県名古屋市 | 30万円~40万円 | 5,001万~6,000万円 | 10.50% |
新築アパート利回りはどうやって求める?
ここでは、新築アパートの利回りを求める方法について詳しく解説します。
表面利回り
年間の賃料収入に対する投資額の割合を表面利回りと呼び、計算方法は次のとおりです。
表面利回りは、このように賃料収入と建築費のみで計算することができるためアパートの収益性を判断する際によく用いられます。
ただし、実際には建築費の他にも維持管理費がかかります。そのため、より現実に近い利回りは表面利回りではなく次にご紹介する実質利回りで判断する方が確実です。
・アパー/ト建築費:8,000万円
・年間賃料収入:1,000万円
・表面利回り:1,000万円÷8,000万円×100=12.5%
新築アパートの場合は建築費に加えて諸費用もあり、これは初年度の利回りに大きな影響があるため注意が必要です。
実質利回り
では経費などを計算に入れてより現実に近い利回りを計算する方法についてみていきましょう。
これを実質利回りと呼びます。実質利回りは投資費用に年間の家賃収入から諸経費を引いた金額の割合を指します。実質利回りの計算方法は次のとおりです。
実質利回りでは、このように1年あたりの諸経費を含んで計算するため、より現実的な利回りを確認できるというメリットがあります。
しかし、アパートを建てる前では、1年間にかかる経費を全て把握することは非常に困難です。したがって、新築アパートの実質利回りを建築前に確認するときは、予想される経費を大まかに求めて計算することになります。1年間の経費は、ハウスメーカーや不動産会社が相談すれば過去の事例などから経費の目安を教えてくれます。
新築アパートの場合、建築費の他に登記費用や印紙代、不動産取得税等の各種税金や水道分担金などの諸費用がかかるため、初年度の利回りは低くなる傾向にあることがポイントです。このような諸費用は建築費の10%ほどかかるため、表面利回りと比べ非常に大きな差が出ることもあります。
また、ランニングコストとしてかかる費用の目安は以下の通りです。
- 管理や清掃の委託費:家賃収入の5%
- 修繕費:家賃収入の7%
- 空室時の広告費:家賃収入の5%
ランニングコストは部分的に自分で対処すれば節約が可能なものではありますが、基本的に管理会社に任せるものであるため、利回りを計算する際は考慮するべきでしょう。
実質利回りシミュレーション
これまでの説明を基に、アパート経営に関する条件が以下の時の実質利回りについてシミュレーションします。
- アパート建築費:8,000万円
- 年間賃料収入:1,000万円
- 管理や清掃の委託費:50万円
- 修繕費:70万円
- 空室時の広告費:50万円
- 実質利回り:(1,000万円−50万円-70万円-50万円)÷8,000万円×100=10.375%
表面利回りと比べ2%ほどの差ではありますが、数千万円~数億円というお金が動くアパート経営ではわずかな差でもその収益性には大きな違いが出てきてしまうのです。
活用事例:近隣への大学の移転に着目。 学生専用賃貸住宅として 地域貢献を見据えた物件に。
エリア | 東京都 |
土地面積(㎡) | 517 |
延べ床面積(㎡) | 696 |
工法 | 木質パネル接着 |
駅から20分以上のため、周りの賃貸住宅には空室も目立つ立地。しかし市場調査を実施すると、近隣に大学キャンパスの移転がある反面、学生向けの賃貸物件不足が判明しました。
オーナー様の「地域貢献として、頑張る学生のための環境を整えたい」という思いのもと、「蔵」を始めとした収納力を重視した間取りや、タイル貼りの高級感ある外観、セキュリティにもこだわった学生専用賃貸住宅が完成しました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
新築アパートに投資するメリット
この章では新築アパートに投資するメリットをご紹介します。
入居者が募集しやすい
新築のアパートは賃貸としての需要が高いため、入居者を募集しやすいです。
なぜなら、賃貸物件を探す時選ぶ基準として、築年数を入れる方がほとんどだからです。その中でも、築数年以内という条件を入れてお探しの方もいらっしゃいます。
新築アパートは建物がきれいなだけでなく、建物の構造や設備も最新なので、安心して暮らすことができるからです。
入居者が募集しやすく、空室リスクが少ないのは新築アパートのメリットの1つです。
利回りがそのまま手に入る
新築アパートのメリットとして、利回りがそのまま手元に入ることがあげられます。
なぜなら、新築であれば修繕費がかからないからです。
中古アパートは利回りがおよそ%~%と比較的高いのが魅力ですが、建物や設備の状態によっては修繕費やメンテナンスが高くついてしまいます。
利回りは低いですが、安定して手元にお金が入ってくるのは、新築のメリットだといえます。
家賃を高く設定できる
新築の物件であれば、新築プレミアム価格で家賃を高く設定することができます。
多少金額が高くても、新築の物件に住みたい方はいるものです。それほど、新築の物件には需要があります。
ただし、新築プレミアム価格が続くのは最初の10年ほどで、いずれ家賃は下がってしまいます。それによって利回りも変化しますので、注意しておきましょう。
資産として売却しやすい
新築アパート特有のメリットとして、売却しやすいことがあげられます。
新築のアパートは建物本体だけでなく、建物の構造や設備も新しくなっています。
つまり、これからも長く住むことができる家、長期的に需要がある家だといえます。
そのため、新築アパートは資産としての価値が高く、売却がしやすいのです。
市場に合わせて新しく建てられる
今の地域市場に合わせて新しく建てることができるのも、新築アパートのメリットです。
このメリットは、すでにある新築アパートに投資するのではなく、新しくアパートを建設しようとお考えの方にあてはまります。
アパート経営をするうえで地域市場を把握することは非常に大切です。
例えば、高齢化が続く地域では、子育てを引退したご夫婦が2人で暮らせる1DK~2LDKの部屋があるアパートを建設する、などが市場に合わせたアパート経営です。
市場を把握しなければ、入居者が集まらずに赤字になってしまうこともあります。
新築アパートを建設する際は、市場に合わせてつくることで安定した家賃収入を得られるようにしましょう。
また、アパートの建築費をできるだけ抑えるためには、ハウスメーカーに建築費の見積もりを出してもらう際に、複数の見積もりを比較することが大切です。
イエウール土地活用ならアパート建築プランを複数比較することができます。
\建築費は?初期費用は?/
新築アパートの利回りを確認するときのポイント
ここでは、アパートの利回りを確認するときのポイントをご紹介します。
表面利回りはあくまでも参考とする
アパートを建てる際に相談することになるハウスメーカーや土地活用会社では、アパートの収益性の参考として表面利回りが示されます。
しかし、これまでご説明した通り表面利回りは実際の利回りよりも高くなります。そのため、アパートの建築・経営プランにある利回りを鵜呑みにしないことが大切です。
業者によっては、あたかも表面利回りがそのアパートの収益であるかのような書き方を行っているケースもあります。
利回りの変動は数%でも、アパート経営であれば大きなお金が動くことになるので利回りについては慎重に判断することを念頭に置いておきましょう。
業者によって計算方法が異なる可能性がある
業者によって、利回りに含める金額が異なることもあります。
例えば、表面利回りの場合は建築費の総額(付帯工事費や諸費用込み)の金額で計算することもあれば、本体工事費(整地費用や諸費用は除く)のみで金額を計算するなど様々です。
付帯工事費や諸費用を含めるか否かは、数百万円を計算に入れるか入れないかということになります。そのため、本体工事費のみで計算したときには実際の表面利回りと大きな違いが生まれてしまいます。
利回りの確認する際は、どのような金額が計算に含まれているのかを担当者などに確認しておくと良いでしょう。
利回りは3%を超えているか
最初に紹介したように、利回りは最低でも3%~3.5%以上は確保しておきましょう。
3%以下の場合、経営が不安定になり赤字となる可能性があります。利回りの最低ラインである3%を超えているかを確認することが大切です。
アパートを建設する際は、収益見込み3%以上を基準として投資判断をすることをおすすめします。
新築アパートの利回りに関するリスクと対策
ここでは、新築アパートの利回りについてのリスクと対策について詳しく解説します。
金利変動リスク
アパートを新築される方は、アパートローンを組む方も多いかと思います。
アパートローンには、固定金利性と変動金利性がありますが、変動金利によってローンを組む場合には金利変動リスクがある点に注意が必要です。
アパート経営であれば、20年以上借り入れる可能性があることから、その危険性が大きいことが分かるかと思います。
金利は社会状況によって変動するため、時期によっては返済額が急に多くなることも考えられます。新築アパートでは数千万円の借入をすることも多く、金利上昇によって収支が圧迫され危険ですので、金利が多少高くとも固定金利を組まれる方が安心です。
また、初期費用の3割以上を自己資金にするなど、借入比率をなるべく抑えることが有効な対策となります。
アパート経営で失敗してしまう要因として、このような金利変動による返済額の増加や借入額の多さなども多くみられます。どのような失敗があるのかを知り、安定経営を目指すようにしましょう。
賃料下落リスク
通常、アパートの賃料は築年数や周囲の環境の変化などの要因によって下がり続けます。
新築アパートであれば、築後数年は賃料が下がる心配はあまりありませんが、長期戦のアパート経営では賃料の下落を見越した収益性も考えておくことが重要です。
賃料単価も利回りに影響するため、ある期間から収益性が減るということは把握しておくと良いです。
賃料の下落は、立地や社会状況など対応できない外的要因の影響が強く、その下落をとめることは非常に難しいですがある程度なら対応できます。
賃料下落は「空室を埋めたい」ということに起因することもあり、部屋のリフォームや外壁塗装などによって入居率が改善し結果として賃料を維持できることもできるでしょう。
アパート経営の疑問や不安を解消させるためには、実際にアパート経営のプロに相談してみることもおすすめです。
新築アパートの利回り相場を把握しておこう
新築アパートの利回りは、新築ゆえに賃料や入居率がよくアパート経営における利回りとしては平均以上になる傾向にあります
しかし、アパートを建てて終わりではありません。数十年という長期的な視点を忘れずに、短期的な利回りだけでなく中長期的な利回りも考えていく必要があるでしょう。
記事のおさらい