自宅兼賃貸住宅として使える賃貸併用住宅は、賃貸経営をしながら自身の住居も確保できます。賃貸併用住宅には家賃保証というサービスがあり、これを利用することでよりリスクを減らして賃貸経営ができます。
ただし、家賃保証にはメリットだけではなく、デメリットもあるため注意が必要です。家賃保証とはどのようなサービスなのかを知り、賃貸併用住宅の経営時に利用するかどうかを考えましょう。
まずは賃貸併用住宅を経営することがどのようなことなのか知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
賃貸併用住宅での家賃保証の仕組み
家賃保証のサービスについて理解を深めるには、どのような仕組みなのかを知っておく必要があります。また、仕組みだけではなく費用の相場やその他類似サービスとの違いも把握しておくと、より理解を深めやすくなります。賃貸併用住宅の家賃保証とはどのようなものなのか、基礎的な部分から知っていきましょう。
入居者の未払いを保証会社が肩代わり
家賃保証サービスとは、賃貸併用住宅に入居した人が費用の未払いを起こした際に、その分の支払いを保証会社が肩代わりしてオーナーに支払うというものです。
通常は入居者からオーナーに未払い分が支払われますが、家賃保証に加入していることで、オーナーは保証会社から滞納分の金銭を受け取ることができ、保証会社が金額分を滞納者に請求する仕組みになります。家賃保証の対象となるものは、次の通りです。
- 家賃や管理費、共益費や駐車場代などの毎月支払う費用の滞納
- 更新料や退去時の原状回復費用などで入居者が支払わなかったもの
- 違約金や損害金などで入居者が支払わなかったもの
- 入居者トラブルで裁判に発展した際の費用
加入する保証会社やプランによって詳細な内容は異なりますが、主に上記の内容で家賃保証は受けられます。
家賃保証にかかる費用の相場
家賃保証を利用するには、契約時に支払う契約料だけではなく、契約更新時の更新料もかかります。保証会社や加入するプランによっても異なりますが、契約料は2万~5万円程度、契約更新料は1万~4万円程度が多いです。
また、保証会社によっては、家賃の数十パーセントを契約料や更新料としていることもあります。家賃の高い賃貸併用住宅ほど、契約や更新にかかる費用も高くなりやすいと考えましょう。
家賃保証とサブリースの違い
賃貸経営で受けられる保証サービスには、家賃保証だけではなくサブリースというものがあります。家賃保証は入居者が未払いを起こした際に保証会社が対応してくれるものであり、基本的には対入居者への保証です。
対してサブリースは賃貸住宅を一括で借り上げ、空室がある場合でもオーナーに一定額の家賃を支払うという保証であり、対空室への保証であると考えましょう。
入居者が多い場合は未払いに備えて家賃保証が、入居者が少なく空室が多い場合は、空室リスクに備えるためにサブリース契約をすることがおすすめです。
賃貸併用住宅で家賃保証に加入するメリット
賃貸併用住宅を経営する際に、家賃保証に加入するメリットは次の2つがあげられます。
- 確実に家賃を回収できる
- 入居者が決まりやすくなる
どのようなメリットがあるのか詳細まで知り、家賃保証を利用する魅力を知っていきましょう。
確実に家賃を回収できる
家賃保証に加入していることで、未払いがあっても確実に家賃を回収できることは大きなメリットです。入居者が家賃を滞納した場合は、督促をして支払ってもらう必要があり、回収までに時間がかかります。
家賃保証に加入している場合は、未払いが発覚してすぐに保証会社から家賃を受け取れるため、早期に家賃の回収ができ、未払いの間も収入が減少するリスクがないことはメリットです。
入居者が決まりやすくなる
家賃保証に加入していると、連帯保証人なしでも安心して募集を出すことができ、入居のハードルが下がります。
人によっては連帯保証人を見つけることが難しく、入居を断念することもあります。連帯保証人なしで借りられる家は人を集めやすく、空室のリスクを減らしやすい点もメリットです。
賃貸併用住宅で家賃保証に加入するデメリット
家賃保証に加入することでさまざまなメリットが得られますが、同時にデメリットもある点には注意が必要です。
- 賃貸経営の経費が増えてしまう
- 入居者の質が低下する可能性がある
デメリットも正しく理解して、賃貸併用住宅の経営で家賃保証を利用すべきか考えましょう。
賃貸経営の経費が増えてしまう
家賃保証に加入することで、契約時や年ごとの更新などに費用がかかり、賃貸経営にかかる経費が増加します。賃貸併用住宅に限らず、賃貸経営をするにあたっては、家賃保証への加入に義務はありません。
家賃保証がなくても賃貸経営は可能であり、加入しないほうが経費は安く、利益も多く得やすいです。もちろん、家賃保証があることで入居者の未払いに素早く対応できるためメリットは大きいですが、利益を考えた場合には出費が増えてデメリットになることは覚えておきましょう。
入居者の質が低下する可能性がある
家賃保証をつけて連帯保証人を不要とすると、入居者の質が低下する可能性があります。入居時には保証会社からの審査がありますが、これに通ったからといって問題がないと言い切れるわけではないことは理解しておきましょう。
入居者の質が低下すると未払いが起きやすいだけではなく、入居者トラブルに発展するケースもあります。保証会社の審査だけに頼らず、自身でも面談をして、本当に信頼できるかどうかを入居前の審査で確かめておくことが大切です。
加入する家賃保証の厳選方法
家賃保証を利用するなら、加入する保証会社を厳選することが大切です。
- 保証してくれる範囲
- 1年あたりにかかる費用の安さ
- 家賃保証会社の倒産リスク
信頼できる保証会社を見つけるためにも、厳選するためのポイントを正しく理解しておきましょう。
保証してくれる範囲
保証会社や加入するプランによって、保証してくれる範囲は異なります。そのため、より充実した保証を受けるには、どのような内容まで保証してくれるのかを、必ず確認しておきましょう。
また、未払いがあった際の立て替えが何日まで可能なのか、立て替えの上限額がいくらかなどもチェックしておく必要があります。保証の内容が充実しているほど、安心して賃貸経営を行いやすくなります。
1年あたりにかかる費用の安さ
出費を抑えるには、複数の保証会社で比較検討して、どこが費用が安いかをチェックしておくことが大切です。このとき契約時の費用だけで考えずに、1年あたりにかかる費用がどれくらいなのかで判断しましょう。
保証会社によってはこまめに契約更新があり、その都度費用がかかる場合があります。一見費用が安い保証会社でも、更新頻度の高さによって1年のトータルの出費が多くなることもあるため、この点には注意が必要です。
複数の保証会社のプランを比較し、年間の費用がもっとも安く、かつ納得できる保証内容を提示するものを選ぶと失敗は少なくなります。
家賃保証会社の倒産リスク
賃貸経営は数年、数十年と続くものであるため、長期的な目線で考えることが大切です。そのため、保証会社も長期的な視野で検討することが重要であり、倒産するリスクがないかをチェックしておきましょう。
もし保証会社が倒産してしまうと、未払いなどがあった場合でも保証を受けることができず、オーナーに損失が発生します。倒産リスクが低い保証会社を選ぶことは重要であり、経営状況を確認して倒産の心配がない保証会社を選びましょう。
賃貸併用住宅で不動産所得を安定させるポイント
賃貸併用住宅の経営を成功させるには、いくつか覚えておきたいポイントがあります。
- 長期で需要がある立地に賃貸併用住宅を建てる
- 家賃は引き落としにしておく
- 質の高い管理会社と契約をする
- 定期借家契約で賃貸経営をする
- 賃貸併用住宅の出口戦略を決めておく
ポイントを把握して賃貸経営を行い、不動産所得を安定させましょう。
長期で需要がある立地に賃貸併用住宅を建てる
賃貸併用住宅をどこに建てるかは重要であり、不動産所得の安定を目指すなら長期で需要がある立地を選びましょう。家賃保証に加入することで入居者の未払いには対応できますが、そもそも入居者が獲得できないと保証を受けられないどころか、収入すら得られません。
賃貸経営を安定させるには入居者の獲得がマストであるため、需要が高く人が入りやすい場所に建築することが大切です。エリアを決める際には賃貸需要があるかだけではなく、単身者とファミリー層のどちらが多いかも調査しておくと、家の間取りや導入する設備なども決めやすくなります。
家賃は引き落としにしておく
家賃の支払い方法は手渡しではなく、引き落としにしておくことがおすすめです。手渡しだと手元に現金がなくて支払えない、あるいは支払い期日を忘れて滞納するなどのトラブルが起きやすいです。
引き落としの場合は自動で入金されるため、オーナーは回収の手間がなく、入居者は支払い忘れる心配がありません。また、カード払いを可能にしておくと、口座残高に不足があってもひと月分は家賃の回収が可能です。
質の高い管理会社と契約をする
物件管理の手間を省くには、質の高い管理会社と契約することがおすすめです。賃貸併用住宅だと、入居者との距離が近い分管理もしやすいですが、手間がかかることは事実です。
また、オーナーだけでは対応できない問題が発生することもあるため、管理のプロに任せるほうが手間が省けるだけではなく、問題が起きてもスムーズに解消しやすいでしょう。管理会社を選ぶ際には、次のポイントを意識することがおすすめです。
- 賃貸併用住宅から30分以内の場所に事務所がある
- 賃借人専用のコールセンターがある
- 365日対応している
近隣に事務所があったり、専用のコールセンターがあったりすると、問題があっても素早く対応してもらいやすいです。また、365日対応だといつでも相談ができるため、緊急でトラブルが起きた場合でもスムーズに処理してもらえます。
定期借家契約で賃貸経営をする
貸し出す期間を限定したいなら、普通借家契約ではなく、定期借家契約で賃貸経営をすることもおすすめです。定期借家契約は契約期間をオーナーが自由に決めることができ、更新なしで契約が可能です。
例えば期間を10年に設定したなら、10年の契約満了のタイミングで入居者に退去を求めることができ、その後はオーナーが自由に賃貸併用住宅を利用できます。
普通借家契約の場合は契約期間が1年以上で、入居者の希望次第で更新し、住み続けることが可能です。定期借家契約は退去期間を定められるため便利ですが、入居者にとっては制約が多いです。そのため、普通借家契約よりも家賃を安くしないと入居者を募集しづらいデメリットがあることは覚えておきましょう。
賃貸併用住宅の出口戦略を決めておく
建物は経年劣化して資産価値が減少するため、築年数が経過するほど建物としての価値は低くなり、入居者も決まりづらくなります。そのため、無理に賃貸経営を続けるだけではなく、資産価値が減少して入居者がいなくなった場合にいかにして活用するのか、出口戦略も決めておきましょう。
建物が劣化した場合の出口戦略としては、売却がおすすめです。売却することで不動産を現金化でき、そこで得たお金を使って別の不動産投資を始めることも可能です。
入居者が決まりづらくなった場合に備えて出口戦略は早めに検討しておき、損失が出ないうちに売却したり、別の活用方法に転用したりすることを考えておきましょう。
賃貸併用住宅で滞納の不安があるなら家賃保証
賃貸併用住宅の経営で安定した収入を得るには、入居者が確実に家賃を支払ってくれるかは大きなポイントとなります。家賃滞納などの不安がある場合は、家賃保証に加入しておくことで、問題は解決できます。
ただし、家賃保証に加入するには費用がかかるため、コストをかけすぎないためにも加入する保証会社は厳選することが大切です。不安なく賃貸経営をするためにも家賃保証を上手に活用し、賃貸併用住宅で安定した不動産所得を得ましょう。