夢のマイホームを購入するときに組む住宅ローン。ローンという言葉ではあまり実感がわかないかもしれませんが、言い換えれば「多額の借金を抱える」ことになります。最長35年間で完済を目指していく住宅ローンでは、借入時の安易な判断やその後のライフステージの変化によって返済が難しくなってしまい、「失敗した」と後悔する人は少なくはありません。
今回は、住宅ローンでよくある失敗とその対策法について解説します。住宅ローンの知識を身につけて、計画的に返済していきましょう。
住宅ローンのよくある失敗例
アルヒ株式会社が運営する「ARUHIマガジン」によれば、住宅購入時に住宅資金やお金の面で失敗した経験がある人は68%にものぼることがわかっています。[注1]とくに、住宅ローンに関する失敗が多く、後悔している人が多いことがわかりました。
住宅ローンのよくある失敗例には、多くのケースが存在しています。まずは、誰にでも起こり得る失敗例を具体的に見ていきましょう。
[注1]アルヒ株式会社:ARUHIマガジン 住宅購入者の約7割が“失敗した経験あり”! お金面でどんなことに悩んだ?
https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-3294/
額面の年収でシミュレーションしてしまう
住宅ローンを組むときは、まず毎月の返済額を計算するシミュレーションを行います。住宅展示場や不動産会社を訪れるときは、必ずと言っていいほど住宅ローンシミュレーターが用意されています。また、近年はインターネット上で簡単に返済計画をシミュレーションできるサイトも増えてきており、手軽に月々の返済額を調べられるようになりました。返済額のシミュレーションをすることは非常に重要ですが、このときに「額面年収」で計算してしまう失敗が多いため注意しましょう。額面年収は、給与や賞与、交通費や手当などをすべて合算した収入のことを指しますが、実際に受け取れる「手取り年収」は額面年収から税金や年金保険料、健康保険料を差し引いた額になります。つまり、額面年収で計算してしまうと、実際の手取り年収よりも多い年収でシミュレーションしてしまうことになるのです。
たとえば額面年収500万円の場合、手取り年収は400万円前後になります。手取り月収は33万円程度になりますが、仮に500万円でシミュレーションしてしまった場合、月収が41万円ということになってしまい、金額に大きな差が生まれてしまうでしょう。
「はじめに額面年収でシミュレーションしてしまい、実際に返済計画を立てるときに思ったより返済に充てられるお金が少なかった」という失敗は、実は少なくはありません。住宅ローンのシミュレーションをするときは、必ず手取り年収で計算するようにしましょう。
諸費用を準備していない
諸費用とは、住宅を購入するときに必要となる登記にかかる費用や手数料などをまとめた物の名称です。諸費用は物件代金にプラスしてかかる費用で、中古物件で物件購入費の6~10%、新築物件で3~7%程度が相場となります。家づくりや物件選びに夢中になっていると、諸費用のことを忘れてしまいがちです。しかし、5,000万円の新築物件を購入する場合、最大で350万円程度という多額の諸費用がかかってしまいます。想像以上に大きな金額になってしまい、自己資金ではまかないきれずに諸費用を住宅ローンに組み込む人もいるでしょう。
諸費用を準備できずに住宅ローンに組み込んだとき、そのぶん毎月の返済負担は大きくなります。物件代金だけを見て返済金額をシミュレーションした場合、諸費用が上乗せされてしまい、毎月カツカツの返済になってしまうケースは珍しくありません。
住宅ローンを組むときは、「諸費用を自己資金でまかなえるのか」「まかえない場合はローンの返済が苦しくならないか」をしっかりと検討する必要があります。
頭金が少なすぎる
頭金は、住宅ローンを組むときに自己資金から出すお金のことを指します。物件を購入するときは頭金を諸費用や物件代金の一部に充て、その残りの代金を住宅ローンでまかなうことが一般的です。頭金を多く払えば、当然毎月の返済額が減って返済負担を減らせます。しかし、近年は低金利が続いているということもあり、頭金を払わずに住宅ローンだけで物件を購入する人も増えてきました。
もちろんそれもひとつの手ですが、万が一家庭の事情などで住宅を手放すことになった場合、頭金を払っていないと困った状況になります。頭金が少ないと、住宅を売却したときの代金でローンを返しきれない恐れがあるためです。
また、住宅の評価額がローン残高よりも低い「担保割れ」が起きやすくなるというデメリットがあります。たとえば、住宅ローンの借入金が5,000万円で住宅の評価額が4,500万円の場合、500万円の差額が「担保割れ」となるのです。
つまり、頭金が少ないとたとえ住宅を売却しても借金を抱えることになってしまうリスクがあります。こいった状態になることを防ぐためにも、頭金である程度住宅ローンの借入額を減らしておくと安心なのです。
返済期間が長すぎる
返済期間が長すぎるという失敗も、実はよくある問題です。返済期間が長くなれば月々の返済額は減りますが、ライフステージの変化によって収支のバランスが変化することを考慮に入れておかないと、返済が苦しくなってしまう可能性が高いです。今は夫婦共働きでも、子どもができたときにどちらかが仕事を辞めることになるかもしれません。また、子どもが成長して学校に入ったとき、今までよりも支出は多くなるでしょう。そうなったときでも無理なく返済できる借入額でないと、長期間住宅ローンを返済し続けることは難しいのです。
また、ローンを組む年齢によっては、定年退職後も返済が続くこともあります。何も考えずに「今が楽だから」と返済期間を長く設定してしまうと、将来的に返済できなくなってしまう恐れがあるため要注意です。
金利をしっかりと選ばない
近年は超低金利時代と言われるほど金利が低いため、あまり金利のことを考えずに住宅ローンを組んでしまう人もいるかもしれません。しかし、金利をしっかりと選ばないで住宅ローンに失敗してしまうのはよくあるケースなので、注意が必要です。住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利があります。それぞれのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
あ | メリット | デメリット |
---|---|---|
変動金利 | ・比較的低金利 ・低金利の恩恵を得られやすい | ・金利の上昇リスクがある ・返済計画を立てにくい |
固定金利 | ・返済計画を立てやすい ・金利の上昇リスクがない | ・低金利の恩恵は受けられない ・比較的高金利 |
ほかにも、3年間・5年間・10年間など一定期間は金利が固定され、その後あらためて金利タイプを選ぶ「固定期間選択型」を採用している商品もあります。
どの金利がいいとは一概にはいえませんが、変動金利の場合、急な金上昇で思わぬ負担増加のリスクが考えられます。キャッシュフローを安定させたいのであれば、固定金利を選んでおいたほうが無難でしょう。
繰り上げ返済しすぎてしまう
毎月の返済額にくわえ、まとまった金額を一括で返済する「繰り上げ返済」は、総返済額を減らしたり返済期間を短くしたりするときに有効な手段です。メリットが多い繰り上げ返済ですが、実は繰り上げ返済しすぎてしまうと逆に損することもあるため注意しましょう。なぜなら、住宅ローン控除があるためです。住宅ローン控除は、「毎年末のローン残高」または「住宅の取得対価」のうち、いずれか少ない方の金額の1%を10年にわたって所得税から控除する制度のことです。利息よりも住宅ローン控除の金額のほうが多いケースがあるため、繰り上げ返済をしてローン残高を減らしてしまうと、損する可能性があります。
また繰り上げ返済を優先しすぎてしまうと、家族との娯楽費や万が一に備える資金がなくなってしまいます。家族と旅行することを我慢したり病気になったときの治療費がなくなったりしてしまえば、生活の質自体が大幅に下がってしまうでしょう。
せっかくマイホームを手にしたのに、返済のために我慢ばかりの生活になってしまえば本末転倒です。繰り上げ返済はあくまで余裕があるときに行うようにして、家族との思い出作りや有事に備える資金をしっかりと確保しておくことをおすすめします。
ボーナス時返済に頼ってしまう
ボーナス返済は住宅ローンの残高を減らせるというメリットがありますが、ボーナス返済に頼り切ってしまうと失敗しやすいため注意しましょう。なぜならボーナスは会社の業績に左右されやすく、業績不振によって支給されないケースもあるためです。また、転職などによりボーナスが支給されない会社に入った場合、返済のメドが立たなくなってしまうという危険性もあるでしょう。
このようにボーナス返済はリスクが多いため、頼りすぎてしまうことはおすすめしません。毎月の返済だけで完済できる金額の住宅ローンを組むことをおすすめします。
団信に入らない
団信(団体信用生命保険)とは、債務者が死亡したり高度障害状態になったりしたとき、保険料で住宅ローンが完済できる保険商品のことを指します。一般的に金利に上乗せされる保険料を支払うことで加入できますが、加入するためには一定の健康条件を満たす必要があります。民間の住宅ローンは基本的に団信への加入が必須条件として設定されていますが、フラット35は加入しなくても借り入れが可能です。団信に加入しない場合は保険料のぶん返済総額が安くなりますが、万が一のことがあったときも住宅ローンを返済し続けなくてはいけないというリスクがあります。
たとえば、ローンの債務者であり一家の大黒柱である父親が死亡してしまったとき、団信に加入していれば、家族はローンの返済をせずとも家に住み続けることができます。しかし、団信に加入していない場合は、その妻や子どもがローンの返済を引き継がなくてはいけないのです。
団信に加入しないことで返済額が安くなるのはお得に感じるかもしれませんが、リスクに備えたいのであれば加入しておいたほうが安心です。事情があって加入できない場合は、生命保険などで備えておくようにしましょう。
住宅ローンで失敗する人の共通点
住宅ローンで失敗する人の共通点は、「営業マンに任せてしまう性格」であることです。住宅ローンには多くの商品がラインアップされており、それぞれに金利タイプや返済方法などの複雑な違いがあります。一般の人がそれを理解するのは大変だからと、営業マンに言われるがまま住宅ローンを契約してしまう人も多いでしょう。
しかし、不動産会社の営業マンは物件のプロであっても、お金のプロではありません。自社の利益を最大化するために、限度額ギリギリで条件が不利な住宅ローンを組ませようとする営業マンがいることも事実です。
住宅ローンで失敗する人の多くは、「せっかくマイホームを買うんだから、多少高くても希望通りの家がほしい」「営業マンが言う通りボーナス返済すればいいか」と、冷静な判断ができないまま契約してしまう傾向にあります。のちのち返済に苦しむことになってしまい、最悪の場合マイホームを手放すことになるケースも多いのです。
住宅ローンで失敗したくないのであれば、営業マン主導の契約は絶対に避けましょう。購入者自身が住宅ローンについての正しい知識を身につけ、冷静に返済計画を立てることが大切です。
住宅ローンの失敗を防ぐ対策法
最後に、住宅ローンの失敗を防ぐ対策法を3つ紹介します。事前にチェックして、計画的に住宅ローンを組んでいきましょう。住宅ローンの知識を身につける
何よりも大切なのは、住宅ローンの知識を身につけることです。先述したように、住宅ローンで失敗してしまう人の多くは、営業マンの言うとおりにローンを組んでしまっています。営業マンはお金のプロでないうえに、自社にとって利益の大きい提案をしてくることも多いため、多少無理な返済計画や債務者にとって不利になる住宅ローンについても勧めてくることがあるのです。
住宅ローンの失敗を防ぐためには、自分で住宅ローンの知識を身につけ、こういった不利な提案を断れるように準備しておく必要があります。
どこの金融機関の金利が低いのか
金利タイプごとの違いは何なのか
返済方法はどのタイプがいいのか
上記のような住宅ローンの基本的な知識をもっていると、より好条件で納得のいく住宅ローンを契約できます。申し込む住宅ローンを選ぶ権利は、購入者にあります。業者の言いなりになる必要はないので、しっかりと自分の判断で契約先を選べるように知識を深めましょう。
借りる金額を見極める
借りる金額をしっかりと見極めることも大切です。一般的に、借入限度額は「年収の5倍」、もしくは「元利返済額が年収の25%まで」に収めるべきだと言われています。しかし、これはすべての人に当てはまる条件ではないことに注意しましょう。借りる金額を見極めるためには、毎年の収入から生活費や教育費、老後の生活資金を差し引いた金額を算出する必要があります。実際に収支表を作成して残った金額が、住宅ローンの返済に充てられる金額です。さらに、住宅を購入するときは固定資産税や修繕費もかかってきます。
年収だけで借りられる金額を算出してしまうと、大きな失敗につながります。しっかりと収支をシミュレーションしたうえで、現実的に返済できる金額から借入額を算出しましょう。
可能であれば頭金は多めに払っておく
新築物件は購入してから十数年で価値が半分以下に下がり、その後はほとんど資産価値の変動はないと言われています。このとき、住まいの価値が下がるスピードのほうが残債が減っていくスピードよりも早いことで起きてしまうのが、「オーバーローン」です。毎月の返済負担を減らして「オーバーローン」を防ぐためにも、可能であれば頭金は多めに払っておくことをおすすめします。具体的な数字を見てみると、自己資金は「諸経費+2割」であればオーバーローンの期間を最小限に抑えることが可能です。
無理に頭金を出して生活が苦しくなってしまえば本末転倒ですが、余裕がある場合は頭金を多めに払っておくと安心でしょう。
住宅ローンの失敗例から成功の秘訣を学ぼう
住宅ローンに失敗してしまう人は、実はたくさんいます。失敗を過度に恐れる必要はありませんが、いわば「多額の借金をする」住宅ローンで失敗してしまえば、人生に大きな影響を与えてしまうでしょう。そのため、あらかじめ失敗例を知っておき、そこから成功の秘訣を学んで計画的に住宅ローンを組むことが非常に大切です。また、住宅ローンを組む際は住宅購入のプロに相談しながら資金計画を立てることが必要不可欠です。住宅ローン控除やすまい給付金など、知らなきゃ損をする控除制度についての情報収集としても使えるでしょう。
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