不動産の登記事項証明書は、不動産取引をしようとする時、評価証明書や地図などと一緒に真っ先に確認したい書類のひとつです。これから、登記事項証明書の申請の仕方や証明書の見方などを解説していきたいと思います。
不動産の登記事項証明書とは
登記事項証明書とは、昔で言う登記簿謄本のことです。
昔は、紙に書いてある登記簿を複写して、登記簿謄本を作っていたのですが、今は、登記の内容はコンピュータに保管されていて、直接見ることは出来ません。
そのため、欲しい不動産の登記の内容をプリントアウトして、登記官が証明したものが登記事項証明書です。これは、正式に証明されたものなので、昔で言う登記簿謄本と効力は同じです。欲しい人は、法務局で申請用紙に記入して申請するか、インターネットでオンライン申請して法務局に受け取りに行く方法と、出来上がった証明書を郵送してもらう方法があります。
料金は、直接法務局に行く方法では600円、オンライン申請で法務局へ取りに行く方法で480円、郵送してもらう方法で500円です。なお、1通50枚を超えると50枚ごとに100円プラスされます。オンラインで証明書を申請する場合は平日(のみ)の午前8時30分~午後9時までとなります。
参照:法務局
参照:法務省、登記事項証明書の様式
- 不動産の登記ができるのは法務局、地方法務局、支局、出張所
- これらは全国に約500ヶ所ある
不動産の登記事項証明書の種類
登記事項証明書にもいろいろな種類があります。全部ほしいという人やマンションなどで買いたい部屋だけ欲しいという場合にも対応できます。登記記録全部が記された全部事項証明書
通常、登記事項証明書といわれるのはこれです。コンピュータ化されてから、現在までの動きが全部記載されています。昔に比べると文字がきれいで格段に見やすくなりました。土地1筆、建物1個それぞれにつきひとつずつ作成されています。
ただし、マンションのような区分建物については、マンション一棟ごとに作成されているので部屋ごとに取得するのが普通です。敷地権付の場合は敷地権の目的たる土地の表示が専有部分の建物にも記載されています。
現に効力あるものが記された現在事項証明書
過去の、効力を失った所有権移転の履歴や、過去の担保権などの表記を省略し、現在有効な所有権や担保権、仮登記などのみが記載されているものです。証明書としての効力は、全部事項証明書と変わりませんが、通常は料金も変わりないこともあり、全部事項証明書を取得することが多いです。
請求された相当部を抜粋した一部事項証明書
共有者が多数に上る場合や、マンションなどの区分建物は、全部事項証明書を請求すると、ページ数が多くなりすぎたり、権利関係がかえって判りずらくなってしまいます。大規模なマンションなどでは全部事項証明書を取ると1棟丸ごとの証明書が出てきてしまい、区分建物(部屋)ごとの所有者や、抵当権などの担保権がとても見ずらくなるので、共有者ごと、区分建物ごとに一部事項証明書を取るのが普通です。
公開の対象から外された閉鎖事項
建物が取り壊されたりして、滅失登記が行われたとき、その建物の登記は抹消される訳ではありません。滅失登記として保存され、請求があれば閉鎖事項証明書として発行されます。
土地の合筆によって元の複数の土地が1筆にまとめられたとき、逆に分筆されて別々の土地になった場合、その元の土地登記簿は閉鎖され、保存されます。
コンピュータ化によって紙の登記簿が閉鎖された時の紙の登記簿は、閉鎖登記簿として保管されています。
証明書としては効力のない登記事項要約書
昔の紙の登記簿の時は、閲覧という制度があって、地番や家屋番号で請求すると、その物件の複写前の原本を閲覧して、現所有者の住所や名前、有効な担保権を特定することが出来ました。しかし、現在はコンピュータのデータという不可視化されたものになってしまったので、閲覧して所有者を探したり、有効な抵当権を探したりということが出来なくなりました。
その代わり、登記事項要約書という形で、閲覧の代わりに換えた訳です。閲覧の代わりですから、証明はする必要はなく、現在有効な事項が印刷された紙を渡されるだけです。
- 抵当権の登記の確認を
- 記載の所有者は本当か
- 共同担保目録で確認を
不動産の登記事項証明書の構成
登記事項証明書は、見方が分かれば大変便利です。最初のページの「表示の登記」と呼ばれる不動産の状況を表したものは登記が義務ですが、「権利部(甲区)、権利部(乙区)」の登記は一部を除いて登記は義務ではないので、権利部の登記は注意が必要です。表題部は土地と建物の2種に分かれる
「表題部(土地の表示)」の場合
表題部は一番最初のページで「表示の登記」と言われ、土地の所在、地番、地目(宅地、畑等土地使用の目的のこと)、地積(㎡で表される土地の面積)、登記の日付(合筆した日や、分筆した日、換地処分のあった日等)が記載されます。なお、土地の所在、地番は住所とは違いますので、判らないときは登記識別情報または権利証を見るか、法務局に問い合わせるなどして調べる必要があります。
「表題部(主である建物の表示)」の場合
建物の場合も表題部は最初のページです。建物の所在、家屋番号、種類(居宅、事務所、工場等)、構造(木造瓦葺1階建、鉄骨造3階建、鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階付4階建のように記載される)、床面積(㎡で表される。階ごとに表示、例えば地下1階 25.43㎡ 1階 45.89㎡ 2階 38.41㎡ という形で記載。床面積の表示は壁の内壁を基準とした内法で表される。)、登記の日付(平成年月日新築、のように記載)。
表題部所有者(所有権の登記ではないため、第三者に対抗できる登記ではないが、所有権保存の登記は表題部所有者がする場合は所有権の証明不要になります)。
「区分建物の場合の表題部(主たる建物の表示)と(専有部分の建物の表示)」の場合
区分建物の場合は、1棟の建物全体の表示がまず記載されます。表題部(主たる建物の表示)として、専有部分の家屋番号全部、所在、建物の名称(例えば、赤羽マンションのようなマンション名)、種類、構造、床面積、登記の日付が記載されます。
それと、部屋ごとに、表題部(専有部分の建物の表示)として、家屋番号、建物の名称(マンションでは部屋番号が記載されることが多い)、種類、構造、床面積、登記の日付、表題部所有者、が記載されます。
土地が敷地権として建物と一体化されている場合は(主たる建物の表示)に追加で表題部(敷地権の目的たる土地の表示)1.土地の符号(土地が複数の場合があるため)、2.所在及び地番、3.地目、4.地積が記載されます。2.3.4.は土地が複数の場合全ての土地について記載されます。
(専有部分の建物の表示)には、表題部(敷地権の表示)1.土地の符号(土地が複数の場合があるため)、2.敷地権の種類(所有権、地上権、賃借権のどれか)3.敷地権の割合(持分)が追加で記載されます。3.の敷地権の割合がたまに土地ごとに違う場合があります。
敷地権化されていないときは、当然ながら敷地権関係の表示はありません。
所有権がわかる「権利部(甲区)」
その土地または建物の所有者が記載されます。所有権が売買や相続などにより移転した時は所有権移転として、所有者の移転が記載されます。それが移転するたびに次々に項目を分けて記載されていきます。
記載事項は、順位番号、登記の目的(所有権保存や所有権移転等)、受付年月日と受付番号、原因(平成年月日売買等)、所有者(住所と氏名)です。
最後に記載されている人が現在の所有者です。
注意したいのが、途中で所有権移転仮登記や所有権移転請求権仮登記などの登記が入っていることがあります。
仮登記権利者が仮登記の本登記をした時は最後の所有者は所有権を失うことになり、登記官の職権で抹消されます(記載事項に下線が引かれます)。
仮登記が入っていることは登記事項証明書を見ればすぐわかるため、後で所有権を取得した人は先順位の仮登記には対抗できません。お金等を借りる時の担保のために時々使われます。所有権敷地権も土地の登記の甲区に記載されます。
なお、時々敷地権化されているマンションでも、一部の専有部分の建物は土地を敷地権化していない、というときがあり、その場合は専有部分の建物の所有者の住所氏名が共有者として土地の甲区に出てきますので、その持分を移転しないと、土地の移転登記を忘れた、という事になり問題が起こります。
所有権以外の権利がわかる「権利部(乙区)」
抵当権設定や賃借権設定、地上権設定やそれらの抹消登記が記載されるのが乙区(所有権以外の権利)です。記載事項は、順位番号、登記の目的、受付年月日と受付番号、原因(抵当権の場合、年月日保証委託契約の求償債権年月日設定、賃借権の場合、年月日設定、等)、抵当権の場合、債権額(金2,000万円)、利息(年2%)、損害金(年14%)、債務者(お金を借りた人の住所氏名)、抵当権者(抵当権を設定した人の住所氏名、金融機関の名称等)が記載されます。
登記される権利により、登記の権利の内容は変わります。(例えば根抵当権の場合は債権額ではなく極度額が登記されます)時々、問題になるのは、甲区の所有権移転登記と、乙区の抵当権設定登記のどちらが優先するか、という事があります。
その場合は、同じ日付でも、受付番号の早い方が優先されますので、所有権移転登記が平成27年8月3日受付第85264号で、抵当権設定が平成27年8月3日受付第85263号の場合、受付番号の早い抵当権が優先されますので、所有者は、抵当権付きの不動産を取得することになります。
乙区同士の優先順位は、単純に先順位に登記されている方になります。地上権敷地権や、賃借権敷地権も乙区に記載されます。
担保とされる不動産がわかる「共同担保目録」
住宅ローンを借りるときは、通常、土地と建物の両方に同じ抵当権を設定します。その時に、二つとも同じ抵当権を設定しています、という事を公示するため、共同担保目録を付けます。乙区の抵当権の登記の内容に、共同担保目録(へ)第4974号などと記載されているのがそうです。登記事項証明書を請求するときに、共同担保目録付きで請求すると、目録がついてきます。
そこには番号、担保の目的である権利の表示(何市何町何番の土地、何市何町何番地 家屋番号何番何の建物)、順位番号、予備、が記載されています。
- 表題部は土地、建物の物理的な状態を表す
- 権利部(甲区)は所有者の登記が分かる
- 権利部(乙区)は所有権以外の権利の登記
不動産の登記事項証明書を見るときにチェックすること
「抵当権」は融資を受ける際の重要事項
権利部(乙区)を見てください。そこに抵当権設定の記載があって全てに下線が引かれていないという事は、まだ、その抵当権は生きていて、返済が滞ったら強制執行可能という事です。
そのような不動産を購入しても住宅ローンを融資してくれる金融機関はありませんから、登記事項証明書を手にいれたら、乙区の登記をよく確認してください。
ちなみに抵当権が付いたままでも、不動産の売買自体には制限は付きません。ただし、債務の不履行があった場合、自分の買った不動産が強制競売にかけられてしまうため、現実にはそのような不動産は売れないでしょう。
抵当権の全文に下線が引かれている
例えば1番抵当権の全文に下線が引かれていて、別の項目に1番抵当権抹消という登記があれば、その抵当権は抹消登記が済んで、効力を失っていますから、安心してください。すでにローンの返済が終わって、担保を取る必要が無くなったという事です。金融機関によっては、ローンが完済されても、抵当権抹消の手続きは所有者に任せ、抹消登記手続きに必要な書類を送って終わり、というところもありますので、その場合は所有者自らが抵当権抹消登記手続きをするか、司法書士に依頼するか選ぶ必要があります。
「権利部」を確認し所有者を確定する
権利部(甲区)の所有者の記載が真の所有者とは限りません。
表題部の表示登記と違って、権利の登記は義務ではないので、時折登記事項証明書の記載の所有者と真の所有者が違うときがあります。
売買があって所有権移転登記をしていないというのは非常にまれでしょうが、相続や贈与の時は所有権移転登記をしていないケースが割と多くあります。
その時は登記簿上の所有者は亡くなっているか、すでに物件の贈与の引渡しをして贈与した人は住んでいないという事があるので、その物件を買う前に、真実の所有者と登記簿上の所有者を合致させてもらわないと所有権移転登記が出来ません。
また、登記簿上の所有者は、法務局は住所と氏名だけで同一人物かどうか判断するので、住所か氏名が違うと登記申請は却下されます。住所が登記簿上の住所と変わっている時は住所移転の登記、結婚などで氏名が変更されている時は氏名変更登記が必要です。
「権利部(甲区)」の「差押登記」の記載があった場合
不動産に強制執行がされ、競売または公売の手続きが開始されたときに裁判所から差押の登記が入ります。
このままこの物件を手に入れても、裁判所の入札手続きが行われて別の人が落札した時は、所有権はその人に移ってしまうので、差押債権者または申立人に、差押の取り下げと登記の抹消をお願いする必要があります。
別登記の建物がある場合は「共同担保目録」を確認
マンションでは、土地と専有部分の建物以外に、管理人室や集会所など別に登記されている部屋や建物を共有で持っている時があります。規約共用部分と呼ばれるもので、それらも同時に売買の目的物となりますから、見落とさないように、以前の抵当権の共同担保目録や固定資産税納付書を使って表示登記や持分を特定しておくことが大事です(抹消された抵当権の共同担保目録も請求すれば取ってくれます)。
- 登記事項証明書は登記簿謄本と同じ
- マンションは一部事項証明書を取る
- 登記簿閲覧の代わりが登記事項要約書
不動産を購入するときは登記事項証明書を確認しよう
欲しい物件が有ったらまず法務局で登記事項証明書を取ると、担保や共有物件が発見できたりして危険や見落としを未然に防ぐことが出来ます。
今はオンライン化されているので、九州から北海道の登記事項証明書が取れますので便利です。まずは登記事項証明書を確認してから、取引に入るくらいの慎重さは持っていて良いと思います。また、契約の際は信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
不動産会社を選ぶ時は質問に対して真摯に対応できるかどうかだけではなく、これまでの仲介実績を比較して選ぶこともポイント。
というのも、仲介実績が多く経験豊富な不動産会社だからこそ、場合によっては中古マンションの値引き交渉なども積極的に行っているケースが多く、選んだ不動産会社によっていくらで購入するかどうか変わる可能性もあるからです。
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