妻側住戸とは、外廊下型など間取りが横に並んだマンションにおいて、両端に位置する住戸のことを指します。妻側住戸はそのほかの住戸と比べると人気が高く、入居や購入を希望する人が非常に多いという特徴を持っています。
それでは、妻側住戸はどうして多くのマンション購入者の心を掴んでいるのでしょうか。この記事では、妻側住戸の人気の理由について徹底解説します。メリットが豊富な住戸なので、これからマンションを購入しようと考えている人は、ぜひ妻側住戸を選択肢のひとつに入れてみてください。
妻側住戸とは
妻側住戸と聞いても、どのような物件のことかイメージできる人は少ないかもしれません。まずは、妻側住戸の基本知識を身につけておきましょう。妻側住戸は建物の端にする住戸のこと
妻側住戸とは、マンションなどの住棟の両端に位置している住戸のことを指します。「角住戸」と呼ぶこともあります。建物の端に位置しているため、2面もしくは3面に窓やベランダを作ることができ、通風や採光に優れている点が大きな特長です。わかりやすい言葉にすると、「角部屋」が妻側住戸に当てはまります。ただし妻側住戸は、タワーマンションやスター型などの特殊な形のマンションではなく、長方形の外廊下型マンションにおける角部屋のことを指すことが多い傾向にあります。
妻側住戸と呼ぶ理由
住棟の両端が「妻側住戸」と呼ばれている理由には、建物の構造が大きく関係しています。木造在来工法の住宅では、屋根のもっとも高い位置を「棟(むね)」と呼び、棟と並行な壁を「平側」、棟に対して直角な壁を「妻側」と読んでいました。これが由来して、マンションの両端に位置している住戸を妻側住戸と呼ぶようになったのです。ちなみに、棟は建物1つに対して1本しか存在していません。そのため、建物をカウントするときの単位が「棟(とう)」に設定されているのです。
妻側住戸が人気の理由
それでは、どうして妻側住戸は多くのマンション購入者に人気なのでしょうか。詳しくはメリットの部分で解説しますが、妻側住戸はそのほかの住戸と比べると、通風や最高に優れており、間取りも好条件のものが多い傾向にあります。また、プライバシーが保護されやすいため、ほかの住人の騒音や人の目が気になる人にも選ばれやすいという特徴を持っています。
これほど好条件であるにもかかわらず、妻側住戸は1つのフロアに2戸しか存在していません。この希少性も、妻側住戸の人気を押し上げているひとつの要因だといえるでしょう。
妻側住戸を選ぶメリット
この章では、妻側住戸を選ぶメリットについて具体的に見ていきましょう。妻側住戸には、5つのメリットがあります。通風・採光に優れていて開放感がある
妻側住戸における最大のメリットは、通風・採光に優れている点です。角部屋なので2面もしくは3面が外気に面しており、窓も多く設置されています。そのぶん通風性や採光性が高まり、一日を通して開放的で明るい部屋になっている点が特徴です。換気しやすいため、カビ防止にも効果的です。別方向に窓がついていれば、2つもしくは3つの景色が楽しめます。とくに高層階からの眺めは絶景で、自宅から気持ちのいい晴天や夜景などを楽しむことができます。
ベランダやバルコニーを広めに取れる
妻側住戸では、ベランダやバルコニーが広くなっていたり複数ついていたりすることが多いです。そのため、洗濯物を干すだけではなく家庭菜園を楽しんだり、椅子とテーブルを置いて家族の団らんスペースとして活用したりすることも可能なのです。ベランダやバルコニーを実用性重視の使い方だけではなく、趣味を楽しんだりリラックスしたりする場所として活用できるのも、妻側住戸の大きなメリットです。
部屋が広めの物件が多い
妻側住戸は、建物の端に位置する関係上、部屋が広かったり収納スペースが多かったりする特殊な間取りになっていることがあります。マンションによってはすべての部屋が同じ条件であるケースもありますが、部屋を選ぶときはぜひ妻側住戸とそのほかの住戸の間取りや広さについて比較してみることをおすすめします。プライバシーを守りやすい
プライバシーを守りやすいのも、妻側住戸のメリットです。マンションの廊下は、住人はもちろんのこと、ポスティング業者や管理人、点検スタッフなど多くの人が往来します。人によっては、自宅の前を人が行き来することを嫌い、プライバシー保護の観点でストレスを感じることもあるかもしれません。妻側住戸であれば人が往来することはほとんどないため、プライバシーが侵害される恐れはありません。足音などのストレスも減り、静かに暮らせるようになります。
住人の生活音が気にならない
妻側住戸は1面しかほかの住戸に面していないため、生活音が気になりにくいというメリットがあります。単純に考えると、マンションの中側の住戸と比べると2分の1の生活音しか聞こえてきません。もちろん、上の階からの騒音は防げませんが、生活音がストレスになる人にとってはうれしい特徴を持つ住戸なのではないでしょうか。子どもが遊ぶ部屋を外側の部屋に設置するなど、間取りの使い方を工夫すれば、ご自身の家から出る生活音によるご近所トラブルを回避することも可能です。
妻側住戸を選ぶデメリット
ここまで妻側住戸のメリットを紹介しましたが、反対に気を付けておきたいデメリットもあるため注意が必要です。メリット・デメリットの双方を比較のうえ、ご自身やご家族に合った選択をすることが大切です。冷暖房が外部に逃げやすい
妻側住戸は外気に接する面積が大きいため、夏は暑く冬は寒くなりやすい傾向にある点に気を付けましょう。日当たりがいいとそれだけ冷房は効きにくくなりますし、暖房で温まった空気が外に逃げやすいという特長があります。もちろん、冷暖房を強くかければ過ごしやすい室内をキープできますが、電気代は高くなってしまいます。ランニングコストを押さえたい人は、妻側住戸を避けたほうがいいかもしれません。
ただし、新しい物件には断熱性が高いものも多いため「妻側住戸だから過ごしにくい」ということはありません。検討する際は、ぜひ断熱性について不動産会社に確認してみてください。
家賃や物件価格が高め
妻側住戸は、そのほかの住戸と比べると家賃や物件価格が高めに設定されていることが多いです。これには、妻側住戸の人気と希少価値が高いことが大きく関係しています。ほかの住戸と比べると、部屋が広かったりベランダが多かったりするといったメリットを持つ点も、価格が高くなる要因として挙げられます。高いお金を払ってまで妻側住戸に入居すべきなのか、よく検討して判断することが大切です。
家具の配置が難しい
妻側住戸は窓やベランダが多い傾向にありますし、壁のカーブや柱の突出、屋根の構造上天井が斜めになっていることがあります。そのため、家具を配置するときに工夫が必要になることがデメリットとして挙げられます。また、窓が多ければそれだけカーテンも必要になるでしょう。「今持っている家具が置けるのか」「カーテンはどれだけ買い足す必要があるのか」などについて入居前に確認しておかないと、引っ越してから使い勝手が悪くて後悔してしまう危険性があります。
外からの視線が気になることがある
妻側住戸には窓が多いため、低層階では外からの視線が気になる可能性があります。カーテンを閉めれば問題ありませんが、それでは妻側住戸のメリットが半減してしまうでしょう。そのため、レースカーテンや窓用の目隠しシールなどで、外からの視線をシャットアウトする工夫が必要になります。とくに女性の一人暮らしの場合、外から見られることで思わぬ犯罪に巻き込まれてしまう危険性もあります。十分に注意しましょう。
防犯対策が必要
前項の視線と関連することですが、妻側住戸は犯罪の標的にされることがあるため注意しましょう。廊下の奥にある妻側住戸は周囲の目に触れにくいため、空き巣の被害に遭ってしまう危険性があります。また低層階の妻側住戸は、逃走経路が確保しやすいという理由で狙われることもあります。妻側住戸を希望するときは、「植栽や隣の建物の影になって視界の悪い場所はないか」「マンションの防犯対策が厳重かどうか」などについてしっかりと確認しておきましょう。
建物外の騒音が気になる
妻側住戸ではほかの住人の生活音が気になりにくいと紹介しましたが、その一方で建物の外からの騒音が気になる物件も多い点に気をつける必要があります。外部と接する面が多いぶん、車の走行音や風の音などは聞こえやすくなってしまうことを理解しておきましょう。ただしマンションのなかには、防音対策のために二重サッシを採用しているところもあります。実際に内見してみて、どれほど外の音が聞こえるかについてチェックしておくことをおすすめします。
妻側住戸の間取りを見るときのポイント
最後に、実際に妻側住戸の購入を検討している人が間取りを見るときに押さえておきたいポイントについて解説します。より快適な住宅を選ぶためにも、これから紹介するポイントは押さえておきましょう。高層階と低層階の特徴を比較する
一口に妻側住戸といっても、実は高層階と低層階では特徴がまったく異なります。高層階と低層階の特長をしっかりと比較し、自分に合ったほうを選ぶことが物件選びを成功させるコツです。ここでは、それぞれの特徴を表にまとめておきました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
高層階の妻側住戸 | ・外部の音が聞こえにくく、日当たりや風通しが抜群 | ・日光を遮るものがなくて夏は暑くなりやすい ・価格が高い |
低層階の妻側住戸 | ・価格が安い | ・日当たりや風通しが悪いこともある ・防犯面に不安が残ることがある |
よりご自身やご家族に合った物件を選ぶためにも、部屋の位置だけではなく階数にもこだわってみてください。
家具の配置をシミュレーションしておく
妻側住戸は希少性が高いため、気に入った物件を見つけるとついつい飛びついてしまいたくなりますが、一度落ち着いて間取りや部屋の構造をじっくりと確認しておきましょう。デメリットでも紹介しましたが、妻側住戸のなかには壁のカーブや柱の突出、屋根の構造上天井が斜めになっている物件があります。また窓が多いため、背の高い家具が置ける場所は限られてしまいます。そのため実際に家具を搬入してみたとき、希望する位置に希望する家具を置けないというトラブルが意外に多いのです。
内覧のときはボンヤリと間取りを確認するだけではなく、家具を置くときのことをシミュレーションしながら「使い勝手が悪くないかどうか」を確認することをおすすめします。
方角に注意する
妻側住戸を購入したいと考えている人の多くが、日当たりを重視しているのではないでしょうか。日当たりのいい妻側住戸には、「洗濯物が干しやすい」「結露やカビを防げる」「開放的で明るい室内になる」などといった多くのメリットが存在しています。妻側住戸というと「どのような方角でも日当たりがいい」と勘違いされやすいですが、実はベランダやメインで過ごす部屋によって最適な日当たりや方角は大きく変わってきます。物件を探すときは、方角を意識するとより快適に過ごせる部屋を選べるようになります。
もっとも日当たりがいいのは、南向きの部屋です。一日中日光が差し込み、洗濯物も乾きやすいというメリットがあります。ただし、日当たりがいいことで部屋が暖まりやすいため、夏は暑くなりやすいところに注意が必要です。
次に日当たりがいいのは、東向きの部屋です。朝日が差し込む午前中や日中の早い時間は、しっかりと採光することが可能です。ただし、夕方以降は暗くなるため冷えやすくなります。同じく西向きの部屋も日当たりがよく、東向きとは反対に日中過ぎから夕方にかけて日差しが差し込みます。
北向きの部屋はもっとも日当たりが悪く、洗濯物が乾きにくく結露や湿気も気になりやすいです。ただし、涼しく過ごせるので暖かい地域にはおすすめの間取りです。
どの時間帯の日当たりを重視するのかによっても、最適な間取りや方角は異なります。「妻側住戸だからどの間取りでも日当たりは大丈夫」と思わず、ライフスタイルに合わせて方角と物件を選んでみてください。
妻側住戸のメリット・デメリットを知って自分に合った物件選びを
妻側住戸とは、マンションの両端に位置する住戸のことを指します。妻側住戸は通気・採光のよさや開放感、生活音が聞こえにくいなど多くのメリットがある物件なので、マンションを購入するときは選択肢に入れてみてもいいでしょう。ただし、室内の温度が外に逃げやすかったり価格が高かったりと、デメリットも存在することを忘れてはいけません。メリットとデメリットをよく比較し、ご自身やご家族にとって最適な物件を選ぶことが大切です。