家族が集まる空間に暖炉があれば、暖かみのある癒しスポットとなります。とはいえ暖炉の設置にはさまざまな条件が必要となる上、管理も大変です。「いつか設置してみたい」と思ってはいるものの、マンションだからと諦めている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マンションでも気軽に設置できる暖炉の種類や知っておきたいメリット・デメリット、さらには費用目安や暖炉を導入するときのポイントなどを紹介します。
マンションでも設置できる暖炉を見つけて、理想の我が家を実現させましょう。
マンションに設置できる暖炉の種類
一般的な暖炉として認識される「薪式」は煙突が必要です。構造的にマンションでの設置は不可能なため、薪式以外の暖炉を探しましょう。マンションに設置できる暖炉の種類を4つ紹介します。
ガス式暖炉
ガスを燃料とした暖炉で、構造的にはガスファンヒーターと変わりません。ファンで空気を取り込み、燃焼させて室内に送り出します。近年は暖炉の形を模して作られているものが多く登場しており、マンションでも簡単に暖炉気分を味わえるのが魅力です。また、立ち消え安全装置、不完全燃焼防止装置、過熱防止装置、転倒時ガス遮断装置などの安全装置も充実しているため、子どもがいる家庭でも比較的使いやすいでしょう。
種類としては、主に次のようなものがあります。
● ビルトイン式:本物の暖炉のように壁面にマントルピースを取り付けるタイプ
● 床置き式:マントルピース不要でストーブのように床置きするタイプ
● 壁掛け式:壁面に引っ掛けるタイプ
● オブジェ風:デザイン性が高くインテリアとして楽しむタイプ
なお、ガス式暖炉は室内の空気を燃焼させているため、二酸化炭素が発生します。一定時間ごとに窓を開けたり換気扇を回したりすることが必要です。
電気式暖炉
LEDライトやハロゲンランプを使って擬似炎を演出する暖炉です。火災や一酸化炭素中毒などの危険がなく、安心して使えます。ただし暖房性能はほかのタイプの暖炉に比べるとやや劣る傾向があり、部屋全体用の暖房としては不向きです。ほかの暖房器具と併用するか、スポット的に使うとよいでしょう。
デザイン性は高く、マントルピースを模したおしゃれなデザインがたくさん見つかります。サイズも多種多様にそろっており、片手で楽に持ち上げられるタイプから30インチ以上の大型サイズまでさまざまです。
バイオエタノール暖炉
マンション用の暖炉として近年注目を集めているのが、バイオエタノールを燃料とするバイオエタノール暖炉です。
バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビから作られたエコなアルコール燃料で、燃焼させても一酸化炭素を出しません。適切に使用すれば火事などの危険が少なく、煙や煤(すす)を気にせずに使えます。安全性の高さから、近年はキャンプ時にテントの中で活用する人も増えているほどです。
暖房性能は薪式の暖炉にも劣らないと言われており、実用性も高いといえるでしょう。ただし、空気の燃焼によって二酸化炭素は発生します。使用中は、適宜換気が必要です。
また、デザインが豊富なのもバイオエタノール暖炉の魅力の一つ。好きなデザインに造作できるため、自宅にマッチした暖炉が欲しい方には、有力な選択肢の一つとなるでしょう。
ペレットストーブ
ペレットストーブとは、木質リサイクル燃料「ペレット」を使用する暖房器具です。送風機によって強制的に給排気を行う「FF燃焼方式」の暖房なので、稼働時には煙が出ます。薪式のように煙突を備える必要はありませんが、「排気筒」の設置は必要です。メリットとしては、点火が簡単な上、炎を利用できる点です。やかんや鍋の温めが可能なため、よりリアルな暖炉に近いといえるでしょう。
ただし、ペレットストーブは、専用のペレットがなくなると使えません。暖炉の設置スペースのほか、ペレットの保管場所も必要です。
また排気筒に汚れや煤が付着するため、年に1回はきちんと掃除・メンテナンスを行う必要があるでしょう。
マンションに暖炉を設置するメリット
自宅マンションに暖炉を設置しようかと迷っている方は、暖炉を設置するメリットを知ると判断しやすくなるかもしれません。マンションに暖炉を設置するメリットについて紹介します。
癒しの空間ができる
炎には人を癒し、リラックスさせる効果があるのだとか。暖炉を設置することで炎が常に身近にあれば、暖炉の周りが癒しの空間となるでしょう。
炎が癒しにつながるといわれるのは、「1/fゆらぎ」とよばれる独特のゆらぎ効果があるためです。これは波の音や木々の揺れる様子など、自然由来の音や動きが持つリズムを指します。
炎が不規則に揺れる樣をみているだけで心は落ち着き、自然の中にいるかのようなリラックスした気分になるのです。
部屋の見映えが上がる
暖炉があるだけで、部屋のスタイリッシュさは一気にアップします。重厚感のあるマントルピースを設置すればクラシカルで上質な雰囲気に、モダンなガラス張りの暖炉を置けば洗練されたスタイリッシュな雰囲気の部屋となるでしょう。
特に冬場は、暖炉があるだけで部屋の印象がより暖かくなるのが魅力です。クリスマスやお正月などのイベント時には、暖炉をメインにした飾り付けも楽しめるでしょう。
家族間のコミュニケーションが深まる
大阪ガスのエネルギー技術研究所が実施した実験によると、暖炉のある部屋で過ごす人同士は、よりコミュニケーションの密度が上がりやすいことが分かりました。
これは、暖炉の炎で心が落ち着くとともに、相手への親近感が増してコミュニケーションがとりやすくなるためだとか。家族が集まるリビングに暖炉を置けば、家族の絆がより一層深まることが期待できます。
そもそも、古来より焚火は、人々のコミュニケーションを促進する重要な手段と考えられてきました。暖炉を囲んで語らうことは特別なことではなく、ごく当たり前に行われてきた習わしなのです。
理想の空間を実現できる
マンションにも設置できるタイプの暖炉は、いずれも大掛かりな煙突工事などがいりません。ペレットストーブ以外は煙や臭いの心配が少ないため、マンションでも周囲に気兼ねなく設置できます。
マンションでも「暖炉のあるすてきな空間を実現したい」という理想を諦めずに済むのは大きなメリットといえるでしょう。
マンションに暖炉を設置するデメリット
マンションに暖炉を設置すると、「面倒だな」と感じたり、「イマイチしっくりこない」と感じたりする方もいるようです。
暖炉を設置するとどのような点がデメリットとなり得るのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
手間が「ゼロ」ではない
どのようなタイプの暖炉を設置するにせよ、お手入れしないとゴミやホコリがたまります。暖炉のデザインによってはメンテナンスや掃除に手間がかかってしまうことがあるでしょう。
例えば、マンションに設置可能な暖炉の中でも、ペレットストーブは木質燃料をつかっているため、灰がたまったり煤が付着したりします。暖炉を快適につかうには、毎日のお手入れが欠かせません。
またこのほかの暖炉についても、ガス暖炉ならフィルターのお手入れが必要となりますし、電気暖炉もゴミやホコリを取り除くことは必要です。
マンションに設置できるタイプは「簡単・手間なし」とはいえ、「全く何もしなくてよい」というわけではありません。
本物志向の人は物足りなさを感じるかも
「暖炉」と聞いて誰もがイメージするのは、やはり薪式の暖炉です。薪をくべてリアルな炎を楽しむことができ、独特な香りもあります。薪がパチパチと鳴らす音や本物の炎が揺れる様子を楽しめるのは薪式ならではで、ほかのタイプの暖炉では味わえません。
また、薪式の暖炉は暖房効果も高く、部屋中を遠赤外線の熱で温めます。寒い冬でも半袖で過ごせるほど快適で、消火した後もしばらく暖かさが消えません。薪がきちんと燃えさかるまでに時間が掛りますが、部屋をしっかり暖めたい方にはぴったりです。
一般に、マンションに設置できる簡易タイプの暖炉は、こうした薪式の暖炉のメリットが希薄です。
「欧米の映画に出てくるような本格的な暖炉がほしい」と考えている方は、煙突なし・薪不要の暖炉では物足りなく感じてしまうかもしれません。
マンションに暖炉を設置するのにかかる費用目安
マンションに暖炉を設置するコストは、暖炉のサイズやデザイン、仕様によって異なります。
暖炉を設置したいと考えている方は、「どのようなデザインがよいか」「暖房方式はどれがよいか」「設置条件をクリアしているか」等を考えましょう。その上で平均相場をチェックし、予算を立てていくのがおすすめです。マンションでの暖炉設置費用について、暖房方式ごとに紹介します。
ガス式暖炉
暖炉本体の価格に加え、設置のためのコストが必要です。本体価格はサイズやデザインによって異なりますが、30~100万円程度と考えればよいでしょう。また、設置費用はマンションの仕様や設置場所によって異なります。たいていの場合、20万円以上かかることが多いようです。
電気式暖炉
基本的に本体価格のみで、設置費は不要です。コンパクトな置き型タイプなら1万円台から見つかりますが、マントルピース型の本格的なものは50万円以上するものも珍しくありません。
ただし、電気式暖炉につかわれている擬似炎の寿命はせいぜい3年です。電球が切れてしまった場合は、都度新しいものに交換する必要があります。
バイオエタノール暖炉
置き型でコンパクトなものなら、設置費用は不要です。一方、マントルピース型や壁に埋め込むタイプを選択する場合は、本体価格に加え設置費用が必要となります。
コストはサイズ・デザインによって差がありますが、手軽なものなら20万円程度で設置可能。一方、工事が必要なものは20~200万円程度掛るでしょう。
ペレットストーブ
本体価格のみなら20~50万円程度が一般的です。ただし、おしゃれな海外製の中には100万円を超えるものも珍しくありません。
また、ペレットストーブは別途排気筒の工事が必要です。こちらはケース・バイ・ケースですが、10~30万円程度と見ておくとよいでしょう。
マンションに暖炉を設置する際のポイント
マンションに暖炉を設置するときは、設置場所に問題はないかきちんと確認が必要です。
また、暖炉の中には近隣住民への配慮が必要となるものもあるので、「設置可能か」についてよく検討しなければなりません。マンションに暖炉を設置する際、気を付けたいポイントを紹介します。
マンションの仕様を確認する
当然ですが、オール電化のマンションにガス暖炉は設置できません。
また、オール電化ではなくても、「FE燃焼式」とよばれるタイプのガス暖炉を設置する場合は、暖炉の熱を排気口で外に排出しなければなりません。設置の際はマンションの排気口がどこにあるかを確認しましょう。
このほかペレットストーブも、「FF燃焼方式」のため排気筒の設置が必須です。マンションにFF燃焼方式用の排気口があるかを調べる必要があります。
許可や相談が必要になるケースもある
このたび紹介したマンションに設置可能な暖炉のうち、設置までの手間が多いのがペレットストーブです。
マンションにFF燃焼方式用の排気口がない場合、暖炉の設置のためには壁に穴を開ける必要があります。これは一存では行えないため、管理会社や組合に許可を得る必要があるでしょう。
また、設置後はペレットが燃える臭いや煙が発生します。両隣や上下の部屋から苦情が来るおそれがあるため、設置前に管理組合や近隣住民に相談しなければなりません。
ペレットストーブを設置する際は集合住宅での設置経験がある業者を選び、適切なサポートを受けるのがベストです。
ランニングコストもきちんと試算する
暖炉の種類によって、ランニングコストは大きく異なります。マンションに暖炉を設置するときは、本体価格のみではなくどのくらいのランニングコストが必要かもきちんと試算しておきましょう。
各暖炉のおおよそのランニングコストは、次の通りです。ただしいずれも機種や設置環境に影響されるため、あくまでも目安として考えてください。
● ガス式暖炉: 65~70円/時間
● 電気式暖炉:25~30円/時間(1000Wタイプ)、35~40円/時間(1500Wタイプ)
● バイオエタノール暖炉:110~200円/時間(バイオエタノール10lあたり4,400円で換算)
● ペレットストーブ:60円/時間(10kg600円の木質ペレット燃料を使用した場合)
マンションに暖炉を設置して家族でくつろぎの空間を作ろう
マンションに設置できる暖炉は「ガス式」「電気式」「バイオエタノール式」「ペレットストーブ」などがあります。ただしペレットストーブについては許可や相談が必要なため、設置までに手間や時間が掛かるかもしれません。
また、設置の際は本体価格・設置費用などを併せて考えるのはもちろん、ランニングコストについても試算しておくのがおすすめです。
暖炉の炎を眺めていると、心が落ち着いて穏やかな気分になります。家族団らん場所に暖炉を設置して、家族でゆっくりと寛いでみてはいかがでしょうか。