住宅や土地などの固定資産を所有していると、毎年「固定資産税」が課されます。
これから家を購入したり、相続したりする予定の方にとっては、毎年どのくらいの税額を納めなければならないか気になるところでしょうか。
年間で支払う固定資産税額は、新築住宅の場合で10~20万円、新築マンションの場合10~30万円が目安です。しかし、土地部分と建物部分それぞれの評価額に基づいて計算しなければ、正確な税額はわかりません。
所有している資産の固定資産税がいくらになるのかイメージするのに、この記事のシミュレーションがお役に立てば幸いです。
不動産にかかる固定資産税について基礎的な知識を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
そもそも固定資産税とは
そもそも固定資産税とは、物件の購入価格から一概に計算できるものではありません。
この章では、そもそも固定資産税とはどんな税金なのか、どんなものにかかるのかということを解説します。
固定資産に対して毎年課される税金
固定資産税とは、固定資産に対して課される税金です。毎年1月1日時点の固定資産の所有者に納税義務があります。
税金の納付先は、固定資産が所在している市区町村(東京都23区は東京都)で、通常、年4回に分けて納めます。
市区町村ごとに時期は異なりますが、毎年4~6月頃に「固定資産税納税通知書」と「課税明細書」が届きます。書面には課税対象となる固定資産と固定資産税評価額、課税標準額および課税額が通知されています。
課税対象となる固定資産
固定資産税の課税対象となる固定資産は「不動産(土地と家屋)」と「償却資産」を指します。
家屋には、戸建てやアパート、マンションだけではなく、店舗や事務所などあらゆる建物が該当します。
償却資産は、土地・家屋以外の、減価償却の対象となる事業用資産です。事務所のパソコンやコピー機、工場の機械設備、飛行機、船舶、大型特殊自動車等が該当します。また、賃貸経営している住宅の外構(舗装された駐車場、駐輪場、庭、門、塀など)や電気設備、セキュリティー設備等も償却資産に該当します。償却資産は土地・家屋とは異なり、償却資産の内容を自治体に申告して固定資産税を納付する必要があります。(ただし、取得価額10万円未満の資産のうち一時に損金算入したもの、取得価額20万円の資産のうち3年間で一括償却したものは申告の対象となりません。)
- アパートや貸家の経営をしている場合は、家屋と構造上一体になっていない附帯設備は償却資産にあたることに気をつけましょう。
評価額の決まり方
固定資産税は、固定資産の評価額(課税標準額)に基づいて課税されます。
評価額はそれぞれ、以下の基準によって定められています。
土地の評価額
土地の固定資産税評価額は、時価の7割の水準になるように市区町村によって定められています。
3年に1度、評価額の見直し(評価替え)が行われています。
同じ自治体の管轄内で所有している土地の評価額が免税点未満(30万円未満)の場合は、土地の固定資産税は課税されません。
建物の評価額
建物は新築・増築時に、市区町村の調査員によって「家屋調査」が行われます。
家屋調査では使われている建物の構造や内装・外観に使われている資材や設備を確認し、「固定資産評価基準」に基づき、同じ建材で再び同じ建物を建築した場合にかかる費用(再建築費)を算出したものが評価額の基礎になります。
つまり建物の評価額は、建築や購入にかかった費用と乖離がある可能性が大いにあります。一般的には、実際の建築費用の5~6割となることが多いようです。
建物の評価額も土地同様に3年ごとに見直しが入ります。建物の場合は経年劣化が生じるため、評価時点での再建築費に、経過年数による補正率をかけ合わせて評価額が再設定されます。(ただし、補正率は20%が下限です。)
同じ自治体の管轄内で所有している家屋の評価額が免税点未満(20万円未満)の場合は、家屋の固定資産税は課税されません。
償却資産の評価額
償却資産の評価額は、償却資産の取得価額と耐用年数に基づく減価残存率によって算出します。
- 前年中に取得した資産の評価額
評価額=取得価額×減価残存率(前年中取得のもの) - 前年前に取得した資産の評価額
評価額=前年度評価額×減価残存率(前年前取得のもの)
申告する償却資産の評価額の合計額が免税点未満(150万円未満)である場合は、固定資産税が課税されません。ただし、自治体への申告は必要です。
詳しくは、各自治体のHPをご参照ください。
固定資産税の計算方法
固定資産税は、固定資産の評価額(課税標準額)に所定の税率(1.4%)をかけ合わせることで金額を求められます。
※固定資産税額は100円未満、課税標準額は1,000円未満切り捨て
住宅の場合は、土地と家屋でそれぞれ計算した後に足し合わせることで税金額を計算します。
また、都市計画法に基づく市街化区域内に所在する土地や家屋には、固定資産税とあわせて都市計画税も課税されます。都市計画税の税率は0.3%です。
※固定資産税額は100円未満、課税標準額は1,000円未満切り捨て
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固定資産税を減税できる特例・制度
固定資産税には、減税措置が受けられる様々な特例や制度が設けられています。
主なものには、住宅の建っている土地や、新築の戸建て・マンションに対する課税標準額の軽減措置があります。
固定資産税を見積もる際には、事前に適用できる減税措置があるかどうか確認しておきましょう。
住宅用地の特例
土地の上に建物があり、建物が住居として使用されている場合には住宅用地の特例を土地の評価額に適用して、固定資産税と都市計画税を減額できます。
特例の適用による評価額の軽減率は以下の通りです。
土地の広さ | 固定資産税評価額の軽減率 | 都市計画税評価額の軽減率 |
---|---|---|
200㎡以下の部分 | 6分の1 | 3分の1 |
200㎡超の部分 | 3分の1 | 3分の2 |
1戸に対して、200㎡以下の部分には、小規模住宅用地の特例が適用され、固定資産税は6分の1に、都市計画税は3分の1になります。
200㎡までの部分は固定資産税を6分の1として計算しますが、それを超過する土地がある場合には、残りの面積も3分の1まで減税できます。
新築住宅に対する減税措置
2022年3月31日までに新築した住宅(建物)の部分においては、新築後一定期間、固定資産税の税額が減額されます。住宅用地の特例と異なり、都市計画税の減額はありません。
戸建て | 3年にわたり2分の1に減額 |
マンション | 5年にわたり2分の1の減額 |
戸建てとマンションで減額期間は異なりますが、どちらも税額は2分の1になるため、大幅な減税が可能です。
また、居住部分の床面積が50㎡以上、280㎡以下であることも条件に含まれます。
その他の制度
商業地等や農地の固定資産税の課税には、負担調整措置が講じられています。
またその他にも、災害などの事由によって納税に困難が生じていると判断されるケースに減免制度が設けられていたり、自治体ごとに特別な減税制度が設けられていることがあるため、各自治体のHPなどで確認してみましょう。
固定資産税の計算シミュレーション例
ここからは、具体例を交えながら、固定資産税の計算シミュレーションをしていきましょう!
新築戸建て住宅の場合
以下の条件の新築戸建て住宅を建築した場合に、翌年に課税される固定資産税額をシミュレーションしていきます。
- 土地の固定資産税評価額:3,000万円
家屋の固定資産税評価額:1,500万円
土地の広さ:120㎡
2023年3月に新築
自治体独自の減免制度等は考慮しない
まずは、土地と家屋の固定資産税額をそれぞれ計算していきます。
今回のケースでは、土地の評価額には小規模住宅用地の特例が、家屋の評価額には新築戸建てに対する減税措置が適用可能です。
=課税標準額×1.4%
=固定資産税評価額×1/6×1.4%
=3,000万円×1/6×1.4%
=7万円
=課税標準額×1.4%
=固定資産税評価額×1/2×1.4%
=1,500万円×1/2×1.4%
=10万5,000円
土地と家屋の固定資産税額を足し合わせると、今回のケースの固定資産税額は17万5,000円であることがわかります。
中古戸建て住宅の場合
築年数の経過している住宅の場合は、建物部分の価値が経年で減価していることを考慮して、「現在、同じ建物を新築した時にかかる建築費用」に「経年減点補正率」をかけ合わせて補正した評価額を用いて固定資産税額を計算します。
経年減点補正率は、建物の構造や用途ごとに、法務局によって定められています。
以下のケースで、2024年度の固定資産税額をシミュレーションしてみましょう。
- 土地の固定資産税評価額:3,000万円
家屋の再建築費:1,500万円
土地の広さ:120㎡
2015年1月に建築された木造戸建て
自治体独自の減免制度等は考慮しない
築年数の経過によって、新築戸建ての減税措置は適用できなくなっていますが、住宅用地の特例は変わらず適用可能です。
=課税標準額×1.4%
=固定資産税評価額×1/6×1.4%
=3,000万円×1/6×1.4%
=7万円
=課税標準額×1.4%
=再建築費×0.53(※)×1.4%
=1,500万円×0.53×1.4%
=11万1,300円
(※)法務局「経年減価補正率表」を参照
以上より、今回のケースの固定資産税額は18万1,300円であることがわかりました。
なお、経年減点補正率による減価は「2割」が下限として設定されています。つまり、どんなに築年数が経過したとしても、再建築費の2割相当の評価額に基づいて家屋の固定資産税は課税され続けます。
更地の場合
毎年1月1日時点で住宅等の建っていない土地は、住宅用地の特例の適用を受けられません。
以下のケースで、固定資産税の計算シミュレーションをしてみましょう。
- 土地の固定資産税評価額:3,000万円
土地の広さ:120㎡
負担調整措置の対象ではない土地
自治体独自の減免制度等は考慮しない
固定資産税の減税措置を受けられないため、固定資産税評価額にそのまま税率をかけ合わせて税額を計算します。
土地の固定資産税
=土地の固定資産税評価額×1.4%
=3,000万円×1.4%
=42万円
固定資産税評価額3,000万円の更地の固定資産税は、42万円であるとわかりました。
- 住宅用地の特例の減税効果の大きさがわかります。
固定資産税を抑える方法
固定資産税は、土地などの固定資産を所有していると毎年必ず発生する固定支出になります。
4章のシミュレーションを見ても分かるように、土地単体では固定資産税における減税措置が適用されないため、土地の上に建物を建てている場合と比べて固定資産税が高い傾向にあります。
そのため、土地を更地にしておくのは一番もったいないです。土地の上にアパートやマンション、戸建て賃貸住宅を建てることで固定資産税の減税措置が受けられるだけでなく、家賃収入を得ることもできます。
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