「土地の相続を放棄する」選択もできると知っていますか?
土地を相続することは、一見すると利益に見えますが、特に、負債を伴う土地の相続は、受け継ぐことで財務的な負担が増大する可能性があります。そのため、土地を相続せずに、「相続放棄」という方法を取る方もいらっしゃいます。
この記事では「そもそも相続放棄とは何か」などの相続に関する基礎知識から、「相続放棄をするときに注意するべきことは何か」など具体的に動き出す際のポイントを解説します。
「まずは土地売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
土地だけの相続放棄はできない
住んでいる場所が遠くて管理が難しいなどの理由がある人は、土地のみ相続放棄をして、他のプラスの財産は引き継ぎたいと考える人もいるかもしれませんが、土地のみを相続放棄することはできません。
なぜなら相続放棄を行うと、最初から相続人ではなかったとみなされるからです。そのため相続放棄をした場合、マイナスとなる財産を引き継がなくて済みますが、当然プラスとなる財産も引き継ぐことができません。自分の引き継ぎたい財産だけを引き継ぐということはできないのです。
相続放棄をすると固定資産税を払う必要がなくなったり、相続に一切関与したくない人は関わらなくて済んだりといったメリットがありますが、残したい財産を残せないというデメリットもあるため、相続放棄をするかどうかはよく考えなければなりません。
相続放棄は預貯金などプラスの財産よりも、借金や負債などマイナスの財産が多いときによく選択されます。なぜなら、マイナスの資産を相続することは、その借金を相続人が返済しなくてはならなくなるからです。そのため、基本的にはマイナスの財産が多い場合に相続放棄をする人が多いです。
相続の際に取れる選択肢がいくつかあるので紹介していきます。
相続の種類
相続が発生した際の相続の選択肢として、全ての財産を相続するか相続放棄するかだけではありません。ここでは、その相続の種類をご説明します。
単純承認
単純承認の相続は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する方法で、原則的な相続の方法です。相続が発生して、基本的に相続の手続きをした場合には、単純承認の相続となります。
限定承認
限定承認の相続は、プラスの財産と同額のマイナスの財産を相続する方法です。プラス財産の範囲内でマイナス財産を相続するため、財産総額は最悪でも±0となり相続税はかかりません。
限定承認をする場合、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、相続人の全員が揃って家庭裁判所での手続きが必要です。
必要な資産は贈与で受け取る方法もある
「土地だけを相続放棄したい」は実現できなくても、全部の資産を相続放棄する前に必要な財産だけを渡す方法もあります。
具体的な方法としては、110万円までの贈与であれば贈与税がかからない点を利用する方法です。1年に110万円は非課税で財産を贈与できるため、この制度を利用して財産を渡しておき、相続が発生したら相続放棄をします。
そうすることで、必要な財産だけ贈与で受け取り、不要な土地を含めた他の財産を相続放棄できるでしょう。
土地の相続放棄における注意点
土地の相続放棄をする人・した人は注意すべきことがいくつかあります。
放棄することを他の相続人にも伝える
相続放棄をするときは、必ずその旨を相続人全員に伝えるようにしましょう。
相続人となる人は、被相続人の親族です。具体的には、配偶者に子ども、両親、祖父母、孫、兄弟姉妹が考えられます。この相続人には、以下のような相続順位があり、相続順位の高い人から順番に相続が発生します。
- 第1順位:子ども
- 第2順位:両親
- 第3順位:兄弟姉妹
相続順位の高い人が相続放棄をすると次の順位の人に相続が発生します。しかし、放棄した人がそれを次の順位の人に伝えなければ、その人は知らぬ間に土地の相続権を引き継いでいることになります。家庭裁判所から次順位の人へお知らせが届くことはないので、放棄した場合は必ず伝えましょう。
誰かが相続、もしくは考えられる相続人の全員が相続放棄をすると相続は終わります。
放棄しても土地の管理義務は残る
相続放棄をすれば土地に課される毎年の固定資産税や土地の維持管理費などを払わなくて済むようになりますが、次に引き継ぐ人が見つかるまで土地管理義務責任は残ります。
相続人の全員が相続放棄した場合、土地などの財産は国庫に入り国の財産となります。
国の財産となっても管理義務は放棄できないため相続人の中から相続財産管理人を選任します。そして、選任された相続財産管理人は、国庫にある財産を管理します。
そのため全員が相続放棄をした場合には、土地を管理する相続財産管理人の選定が必要です。この相続財産管理人には管理義務があり、土地を相続放棄しても管理しなければなりません。
相続財産管理人には報酬が発生します。土地の処分が終わるまでその支払いは続くことになるため、金銭の負担をどうするかなどを話し合っておくべきでしょう。
放棄した土地を放置することによるリスク
この相続放棄した土地にある家が倒壊したり、放棄した土地の木が倒れて通行人に怪我を負わせたり、放置されたごみの悪臭で近隣から苦情をもらったりするかもしれません。
その場合相続財産管理人が管理責任を負います。管理人の財産ではない土地であっても管理義務がある点には注意しておきましょう。
空き家対策特別措置法
2015年に施行された空き家対策特別措置法により、倒壊の恐れや衛生上有害となりうる空き家などを市区町村が特定空き家として認定し、所有者には撤去や修繕の命令が下され、これに従わない場合は強制撤去や所有者への費用請求が可能となりました。
このことから、相続財産管理人は相続放棄した不動産をしっかりと管理する必要があるとわかると思います。
空き家を活用したいのであれば一度、施工会社などの土地活用のプロに相談することが大切です。土地活用のプロに相談することで、自分では考えられなかった活用方法を提案してもらえることもあります。
無料でプランを取り寄せられ、複数プランを比較することで、より良い土地活用プランを見つけられるでしょう。
また、家を高く貸すための不動産会社や管理会社を探す賃料査定サービスではありませんので、注意してください。
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土地を相続放棄する手続きと必要書類
土地の相続放棄はどのような手続きがあり、どのような書類が必要なのでしょうか。
土地を相続放棄する手続き
相続放棄をする場合には、土地だけでなく全ての財産を放棄することになると説明しました。まずは、相続放棄のタイミングに関して、相続の発生する順番を確認していきましょう。
相続放棄をする際には、相続が発生して3ヶ月以内に相続放棄の手続きをします。手続きとしては、相続放棄申述書を作成して家庭裁判所に提出します。
相続放棄の手続きをする前に、まずは相続財産として何がどのくらいあるか確認しておきましょう。確認した上で相続放棄を決めたら、具体的に以下のように手続きをします。
- 相続放棄の申述書を作成する
- 家庭裁判所に必要書類を提出する
- 家庭裁判所から受理通知書を受け取る
土地の相続放棄をする際には、土地がどこにあるか登記を取り寄せて確認することをおすすめします。
必要書類
土地だけでなく相続放棄する際には、以下の書類が必要です。
- 相続放棄の申述書
- 相続放棄する人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
必要な書類は不動産の種類や状況によって異なります。そこで、必要書類を簡単にチェックしましょう!
必要項目を選択して「必要書類を見る」を押すと、ご自身の場合に必要な書類が一覧で表示されます。
タイミング | 重要度 | 書類 | 内容 | 取得方法 |
---|
費用
相続放棄する場合には、以下の費用がかかります。
- 収入印紙代
- 切手代(家庭裁判所からの通知用)
- 戸籍謄本など書類の取得費用
- 弁護士や司法書などの報酬
相続放棄の手続きは自分でもできますが、書類の準備などが面倒なため司法書士などに依頼すると確実でしょう。依頼する場合には、手続きを依頼した報酬も必要となるためご注意ください。
専門家に相続放棄の手続きを依頼しよう
相続放棄の手続きは決して簡単なことではないため、自身がない場合は専門家に依頼するのを勧めます。
相続手続きは相続があるとわかってから3ヶ月以内にしなければならず、自分で行い書類の不備や記入ミスが多発するとあっという間に期間が過ぎてしまいます。専門家に頼むと費用はかかりますが、裁判所での手続きを期限までの確実に終えたいなら依頼すると良いでしょう。
相続放棄の手続きに関して権限があるのは弁護士と司法書士で、弁護士に依頼するよりも司法書士に依頼する方が費用が安くなる傾向にあります。しかし、司法書士は弁護士のように相続放棄の申請の代理ができないことに注意が必要です。
司法書士に依頼する場合の費用
相続放棄の手続きを司法書士に依頼する場合、3~5万円が費用の相場です。これには戸籍謄本の取得費用などの別途費用は含まれていないため気を付けましょう。
司法書士に依頼する場合にかかる期間
相続人の数や本籍地の場所などにより要する時間が変わりますが、およそ1ヶ月は見ておいたほうが良いでしょう。
相続放棄以外で土地を手放す方法
相続放棄をしたいと考えても、もしかしたら他の財産を相続するために、土地を相続しなければいけない方もいらっしゃるかと思います。
その場合には、土地を相続した上で土地を手放す方法を考えてみましょう。ここでは、考えられる2つの方法をご紹介します。
売却する
まず土地を手放したいと考えたら、売却を考えることをおすすめします。
自分にとってはいらない土地であっても、他の人にとっては欲しい土地である可能性も考えられます。
例えば、土地の隣に住んでいる人や近くの企業です。土地の形が不整形地であれば、土地の価値を上げるために土地を広げたり、形を整えるために隣地を購入したりを考えるはずですし、近くの企業であれば企業拡大を考えているかもしれません。
そのような土地を欲している人を探して、売却を持ち掛けてみることをおすすめします。ですが、自分だけで土地の売却をするのは難しいものです。その際には、不動産会社に売却の仲介をお願いしてみましょう。
寄付する
土地の相続放棄をできなかった場合には、まずは土地の寄付が考えられます。土地の寄付先としては、以下の3つが考えられます。
- 市区町村など自治体
- 近くの企業
- 隣人
寄付を考えたら、まずは自治体に寄付について相談してみましょう。土地を寄付するならどのように進めていくべきかなど、教えてくれるはずです。
手放す前に土地活用も検討しよう
土地を手放す前に、一度検討してみたいのが土地活用です。
土地活用とは、更地の上に賃貸物件を建築して賃料収入を得たり、コインランドリーを建てて利用料金収入を得たりすることを指します。
土地活用は、立地さえよければ安定して収益を得ることができます。特に賃貸経営などの場合、数十年レベルで安定収入を得ることが可能です。そのため、一度あなたの土地を手放す前に、一度土地の立地調査をしてもらうことがおすすめです。
土地活用プラン請求サービスを利用すると、土地周辺の市場調査・立地調査から、土地活用をした場合の建築プラン・収益イメージまでを資料にまとめてくれます。土地を手放そうと考えている方は、土地活用プラン請求サービスで、土地活用プランを取り寄せてみてはいかがでしょうか。
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まとめ
土地の相続放棄を考えたら、管理義務が発生してでも相続放棄するか考えましょう。
ただ、相続財産の関係から相続放棄したくてもできずに相続したら、売却と寄付を考えてみるとよいでしょう。具体的な活用方法がないのに土地を持ち続けると、固定資産税がかかり不要な支出が重なることになります。
できるだけ早めに対応を検討し、売却する場合は一度不動産一括査定サービスを利用してみることをおすすめします。
記事のおさらい