使う予定のない自宅を賃貸に出すことで、住宅ローンを返済し収益を得たいと考えている方はいらっしゃるのではないでしょうか。
ただし、自宅賃貸にはメリットとデメリットがあるため、自宅を賃貸に貸し出す前には両方を知っておくことが大切です。
自宅を貸し出すためには、始めるまでの手順やポイントを知っておく必要があります。自宅賃貸ならではのポイントを把握して不動産活用の上手な方法を知っていきましょう。
自宅賃貸は住宅ローンが残っていても可能?
結論から言うと、自宅賃貸は住宅ローンが残っていても所有者の状況によっては可能です。
自宅賃貸とは、自宅を賃貸として第三者に貸し出す賃貸経営です。住宅ローンは居住を目的とした場合にのみ利用できるローンのため、自宅を賃貸する場合は、原則として事業用ローンを組む必要があります。
住宅ローンが残っていても自宅を賃貸できるケースというのは、例えば、急な転勤により自宅を空けることになった場合です。
転勤など、急な引っ越しは本人も予想だにしないことです。よって、住宅ローンを組む際に、後に自宅を賃貸目的で利用しようなどといった意思は感じられないため、住宅ローンの継続が認められやすいです。
だからといって、黙って自宅を賃貸すると契約違反になります。住宅ローンがある状態で自宅賃貸を考えている人は、必ず金融機関に相談をしましょう。
一度賃貸してもまた住むことができる!
また、一度自宅を賃貸しても、以前のようにその自宅に住むことができます。
一度賃貸に出した物件に、将来的に住むことを考えるなら、入居者と定期借家契約を結ぶとよいでしょう。
通常、賃貸契約は契約期間は定められているものの、入居者の申し出によって更新が可能で、貸主は原則更新を拒絶できません。
しかし、定期借家契約の場合は、最初に契約期間を自由に定められ、かつ更新なしで貸し出せます。不要な期間だけ賃貸物件として貸し、必要になったら居住用として使うことも可能であるため、自身のスケジュールに合わせて賃貸にする期間を決めておくとよいでしょう。
ただし、定期借家契約は住める期間が限定されることから入居者を制限しやすく、かつ家賃が安くないと入居者を確保できないこともあるため、この点には注意が必要です。
自宅賃貸のメリット6つ
自宅を賃貸に出すメリットとして、次の6つがあげられます。
家賃収入を得ることができる
- 費用を経費として計上できる
- 自宅の維持管理ができる
- 盗難などの犯罪防止
- 家具を処分する手間が省ける
家賃収入を得ることができる
自宅を賃貸物件として利用することで、賃料に応じた家賃収入が得られます。
別に本業がある場合は、不労所得が収入に追加されることになり、経済的なメリットは大きいでしょう。賃料次第では大きな収益にもなるため、豊かな生活を送りやすくなります。
費用を経費として計上できる
これまで自宅にかかっていた各種費用は、賃貸物件にすることで経費として計上できます。計上できる費用としては、次のものがあげられます。
- 物件の管理費
- 修繕積立金
- 固定資産税や都市計画税
- 住宅ローンの金利
これらを経費に計上することで税控除が受けられるため、税金の支払いを抑えられるでしょう。
また、賃貸管理のための出費も費用として計上でき、さまざまな費用を経費にできる点は自宅賃貸の大きなメリットです。
自宅の維持管理ができる
自宅は、長期間空き家のままにしておくと、物件や設備に傷みを与えることにつながります。
家は居住者によって、一定の頻度で設備が使用されることや、定期的に清掃が行われることにより、状態がある程度保たれます。
そのため、数年単位で家を空ける場合は自宅を賃貸することをおすすめします。
盗難などの犯罪被害の防止
近年では空き家を狙った、盗難、放火などの犯罪被害が増えています。長期に渡り、自宅を留守にするということは、それだけ犯罪のリスクを高めるということです。
自宅に誰かがいるだけで、こうした被害から大事な家を守ることができます。
家具を処分する手間が省ける
通常、引っ越しをする際は、自宅にある家具をすべて処分する必要があります。
ですが、自宅を賃貸する場合、数年後にまた自分がそこに住む場合は家具をそのまま置いておく事も可能です。
残された家具の所有権はすべて、貸主です。借主は自由に使用できますが、勝手に処分することはできません。
不動産という資産を手放さなくて済む
住んでいない物件を賃貸にすることで、資産を手放さずに済みます。また、誰かに住んでもらうことで家はメンテナンスをしやすくなり、入居者に物件の管理を任せられます。
不動産は大きな資産である以上、手放すことがもったいなく感じられる場合に、自宅賃貸はおすすめの方法といえるでしょう。
入居者が出て行ったら、その後は自分で住むことも可能なので、不動産を手放さずに済むだけでなく、入居者の有無によっては将来的に住めることも、自宅賃貸のメリットです。
自宅賃貸のデメリット6つ
さまざまなメリットがある自宅賃貸ですが、デメリットもあるためこれも理解しておきましょう。自宅賃貸のデメリットとしては、次の6つがあげられます。
入居者がいないと収入がゼロになる
- 入居者トラブルのリスクがある
- 修繕費等の負担が増えるリスクがある
- 確定申告が必要になる
- 建物の扱いに制限がかかる
- 家具などの所有物が傷つけられる可能性がある
これら3つのデメリットも把握したうえで、不動産活用の方法として自宅賃貸が自分に合っているかを考えてみましょう。
入居者がいないと収入がゼロになる
賃貸経営は、入居者が支払う家賃が自身の収入となるため、入居者がいなければ当然収入もありません。
入居者を確保できるかどうかが賃貸経営を行ううえでは重要で、これが獲得できないと、出費ばかりがかさんで損をすることもあります。
また、賃貸物件にするなら自宅のメンテナンスが必要になり、この費用は貸主自身が捻出します。つまり、入居者がいつまでも現れなければ、空室期間中の部屋の管理の手間がかかったり、費用がかかったりして貸主の損失が大きいです。
入居者トラブルのリスクがある
入居者がトラブルを起こすこともあり、このリスクを負わなければならない点も自宅賃貸のデメリットです。
例えば、入居者が家賃の支払いを滞納する、近所とトラブルを起こすことなどが考えられ、その際には貸主が対応しなければならない場合もあります。
家賃支払いのように直接自分にかかわることだけでなく、周辺住民との関係性の構築も貸主の仕事であると考えましょう。トラブルのリスクを避けるためには入居者を慎重に選ぶ必要があり、これにも手間がかかりやすいです。
また、トラブルは退去時の原状回復費の支払いの際にも起こりやすく、賃貸は契約から退去まで、金銭トラブルが起きやすいことは理解しておく必要があります。
修繕費等の負担が増えるリスクがある
長く自宅賃貸をしていると、建物の劣化や設備の故障が起き、これらの修復が必要になります。個人の居住用としている場合は、自分が我慢できるなら劣化や故障などの対応をしなくても問題はありません。
しかし、入居者がいる場合は、快適な生活を提供するためにも修理や設備の取り換えが必要です。
物件の修繕費は貸主が負担することになり、賃貸に出している間も費用がかかることは理解しておきましょう。
家賃を含め、各種費用の請求が多すぎると入居者の獲得は難しくなり、金銭的なデメリットにもつながりやすいです。結果的に、設備の補修や修繕費は貸主が全額負担となることが多く、これが自宅賃貸ならではのデメリットといえるでしょう。
確定申告が必要になる
自宅を賃貸することで賃料を得ます。一定の所得がある場合には確定申告をし、所得税を納める必要があります。
給与所得がある場合は、給与所得と合算したうえで課税総所得を算出します。慣れない確定申告に手間がかかるかもしれませんが、自宅を賃貸する場合は、こういったお金回りの知識を身に着ける必要があります。
建物の扱いに制限がかかる
自分の所有する物件であれ、他人に貸し出すということは、建物の扱いに対して制限がかかります。
契約方法によっては「自分が住みたいときに住めない」「売りたくなっても売れない」といった不便が生じます。
そのため、自宅を期間限定で貸し出したい場合は、定期借家契約もしくは一時使用賃貸借契約がおすすめです。
将来、自宅をどうしたいか慎重に考えたうえで自宅を賃貸するようにしましょう。
家具などの所有物が傷つけられる可能性がある
自宅を賃貸する場合、自宅にある家具や家電を処分することなく貸し出す事が可能です。また、それらの所有物は借主が自由に使う事ができます。
そのため、大事な所有物を傷つけられる可能性があります。そういった場合に備えて、家財保険に加入しておくことができます。
ですが、壊れた家具に対してお金が補償されたとしても、唯一無二の思い出深い家具はもう戻ってくることはありません。この辺り、自宅を賃貸するならではのリスクとも言えます。
自宅賃貸を始める方法
実際に自宅を賃貸に出すべく賃貸物件とするには、どのような手続きが必要かを知っておきましょう。
自宅賃貸を開始するまでの流れは、次の通りです。
- 複数の不動産会社に見積もりを依頼する
- 入居者の募集を依頼する不動産会社を決める
- 貸出前の準備で条件を決める
- 入居者の募集を開始する
これら4つのステップを踏むことで、自宅を賃貸物件として利用できます。
複数の不動産会社に見積もりを依頼する
まずは、不動産会社に見積もりを出し、管理にかかる費用や賃料の相場を調べておきましょう。
仲介に強みのある不動産会社を利用することで、管理にかかる費用が抑えられたり、より適切な金額で家賃を設定できたりします。同じ物件でも、不動産会社によって提示する条件は異なるため、必ず複数社で比較してもっとも条件のよいものを選びましょう。
また、不動産会社の営業担当者との相性も重要であるため、実際に話してみて問題がないと感じるなら、その業者に依頼することがおすすめです。
もし相性が合わないと感じた場合は、担当替えを申し出るか、別の不動産会社の利用を検討してもよいでしょう。
入居者の募集を依頼する不動産会社を決める
見積もりの内容や営業担当者との相性を確認したら、どの不動産会社に入居者の募集を依頼するかを決めます。
入居者は個人的に募ることも可能ですが、不動産会社に仲介してもらったほうが、より多くの人に物件情報を公開できます。
スムーズに入居者を獲得するためには、不動産会社の広告宣伝力を活用したほうがよいため、仲介サービスを利用することがおすすめです。
なお、不動産会社によって宣伝や広告の内容が違ったり、得意とする地域が異なったりすることもあるため、自宅付近での賃貸顧客の獲得に強みのある不動産会社を選びましょう
。不動産会社の得意分野を見極めるには、ホームページなどから業者の営業実績を参考にすることがおすすめです。
貸出前の準備で条件を決める
利用する不動産会社が決まったら、貸出までの準備をしておきましょう。準備する内容としては、必要書類を用意することと、貸出の条件を決めることがあげられます。
自宅賃貸の際に必要な書類は、次の通りです。
- 間取図・パンフレット
- 建物登記簿謄本
- 土地登記簿謄本
- 本人確認書類
- 印鑑
- 自宅の鍵
詳細な必要書類については、利用する不動産会社と相談しておきましょう。登記簿謄本などは、管轄の法務局から取得できます。また、貸出の条件を決める際には、次の内容を考慮しておくようにしましょう。
- 家賃
- 管理費
- 更新料
- 敷金や礼金の有無
- 火災保険の加入について
家賃は収入を左右する重要な部分であるため、入居者を獲得しやすく、かつ自身にも利益のあるラインを考えておきましょう。管理費は物件を維持管理するための費用であり、ランニングコストを抑えるための重要な項目です。
しかし、家賃と管理費の合計額が高いと、入居希望者が現れにくくなるため、この点には注意しましょう。契約を更新する際には更新料がかかるため、これがいくらになるかも事前に決めておきます。
敷金や礼金は貸主が自由に設定でき、両方なしにすることも可能です。敷金や礼金がないと、入居時の初期費用が安くなるため、借主にとってはメリットが大きいです。
ただし敷金がないことで、「退去時の原状回復費用が高くなるのではないか」と心配されることもあるため、不動産会社と相談して決めるとよいでしょう。
賃貸経営するなら、リスクヘッジのために火災保険への加入は必須ですが、どの程度まで補償を求めるのかを決めておく必要があります。
火災保険にはさまざまな種類があり、必要最低限の補償をするものから、幅広い事態に対応しているものもあるため、コストも計算して自身に合ったものを選びましょう。
入居者の募集を開始する
貸出の準備が整ったところで、入居者の募集を開始します。不動産会社に仲介を依頼する場合は、不動産会社のサイトや広告チラシなどによって、物件情報が公開されます。
不動産会社に問い合わせがあった場合は、契約者に連絡がいくため、入居しても問題なさそうかどうかの審査を行いましょう。審査の結果によっては入居を拒否することも可能なので、トラブルを回避するためには、入居者は慎重に選ぶ必要があります。
審査を行って承諾となった場合は、不動産会社が入居手続きを行い、その後家賃の支払いがあるごとに自身にも収入が入ります。
自宅賃貸にかかる費用と税金
自宅を賃貸物件にすることで入居者の家賃から収入が得られますが、同時に出費もあります。自宅賃貸にかかる費用は、次の3つがあげられるでしょう。
- 家賃収入にかかる税金
- 不動産会社に支払う管理手数料
- 劣化した建物をリフォームする場合の費用
賃貸経営にかかるコストを把握し、自宅賃貸で実際にどれくらいの収益が出るのか、事前にシミュレーションをしておきましょう。
劣化した建物をリフォームする場合の費用
建物が劣化してきた場合は、リフォームが必要です。リフォームをせずに劣化したままにしていると、入居者が確保できなかったり、現在いる入居者を逃してしまったりします。
リフォームにかかる費用は実施する内容によって異なりますが、住宅設備の入れ替えが必要な場合は、大体50万円以上の費用がかかると考えましょう。さらに大がかりなリフォームの場合は、100万円以上かかることも少なくありません。
不動産会社に支払う管理手数料
賃貸物件の管理を不動産会社に依頼する場合は、管理手数料がかかります。管理手数料は不動産会社によって異なりますが、賃料の5~10%程度であることが多いでしょう。
自身で管理することで管理手数料は抑えられますが、物件の管理維持には手間がかかることも少なくありません。特に本業がある場合は、時間を作って物件管理をすることは難しいため、副業で自宅賃貸を行うなら、不動産会社に管理を委託したほうがよいでしょう。
家賃収入による税金は不動産所得として確定申告
自宅賃貸によって得た収入には税金がかかり、1年を通して得た家賃収入から、必要経費を差し引いた額がプラスになる場合は税金がかかります。不動産所得として計上される項目は、次の通りです。
- 家賃
- 礼金
- 更新料
- 管理費
- 駐車場代
- 携帯電話などのアンテナ基地設置料金
- 自動販売機の設置による収入
家賃だけでなく、その他さまざまなものも含めて不動産所得になるため、この点には注意しましょう。それぞれの収入を合計し、必要経費を差し引いた額に所得税と住民税が課税されます。所得税は累進課税であり、所得金額に応じて税率は変動します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 9.75万円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 42.75万円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 63.6万円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 153.6万円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 279.6万円 |
4,000万円超 | 45% | 479.6万円 |
また、住民税は所得金額の10%で、収入が多いほど税負担も多くなると考えましょう。
自宅賃貸する場合の注意点
所有している自宅を賃貸に出して有効に活用したいなら、次の2つのポイントを押さえておきましょう。
- 定期借家契約を結ぶ
- 一戸建てを貸す相場を見極める
これらの点を把握しておくことで、賃貸利用に限らず、自分に合った方法で自宅を活用しやすくなります。
定期借家契約を結ぶ
一度賃貸に出した物件に、将来的に住むことを考えるなら、入居者と定期借家契約を結ぶとよいでしょう。
通常、賃貸契約は契約期間は定められているものの、入居者の申し出によって更新が可能で、貸主は原則更新を拒絶できません。
しかし、定期借家契約の場合は、最初に契約期間を自由に定められ、かつ更新なしで貸し出せます。不要な期間だけ賃貸物件として貸し、必要になったら居住用として使うことも可能であるため、自身のスケジュールに合わせて賃貸にする期間を決めておくとよいでしょう。
ただし、定期借家契約は住める期間が限定されることから入居者を制限しやすく、かつ家賃が安くないと入居者を確保できないこともあるため、この点には注意が必要です。
一戸建てを貸す相場を見極める
一戸建ての自宅を貸し出す際には、必ず相場を見極めましょう。
住宅ローンの返済を最優先して、相場よりも高く設定してしまえば借り手がつかず空室になるリスクがあります。
かと言って、相場から住宅ローンの返済ができなくなるほど安い賃料で貸し出す必要はありません。
空室リスクとローンの返済額とのバランスを取り、相場からいくらで貸すと収益を得られるか計算してみることをおすすめします。
自宅賃貸する場合の相談先
自宅を賃貸しようと考えてはいるけれど、どこに相談したらいいか悩んでいるに人も多いのではないでしょうか。
そういった場合は、自宅賃貸などの土地活用に関する知識を豊富に持ったイエウール土地活用に相談することをお勧めします。自宅賃貸をすることが決まれば、最後まであなたをサポートしてくれるでしょう。