定期借地権とは、わかりやすく言うと期間を定めて土地を貸す際の権利のことです。
借地権は、建物を建てる目的で土地を貸し出すときに、契約に組み込まれる権利で普通借地権と定期借地権があります。
そして、定期借地権には契約期間や貸し方がそれぞれ異なる、4種類の定期借地権に区分されています。
定期借地権は、契約期間をすぎてもなかなか返してもらえないなどのトラブルを回避できる点で、貸主に有利な制度と言えるでしょう。
ここでは、定期借地権とは何かを踏まえて、土地に合った借地契約を結べるようにそれぞれメリットデメリットをご紹介します。
事業用定期借地については以下の記事をご覧ください。
定期借地権とは?
定期借地権とは、わかりやすく言うと期間を定めて土地を貸す際の権利のことです。
定期借地権は、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の3つと一時使用目的を足して4つに区分されます。
それぞれ契約の存続期間や契約終了時の土地の返還方法などが違うため、目的に合った借地権を選んで契約を結ぶと良いでしょう。
それぞれ定期借地権には、以下の違いがあります。
一般定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | 事業用定期借地権 | 一時使用目的 | |
---|---|---|---|---|
契約期間 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上50年未満 | 一時的に決められる |
契約の形式 | 公正証書 | 事実上の書面 | 公正証書 | 決められる |
利用目的 | 制限なし | 制限なし | 事業用 | 決められる |
借地契約の終了 | 契約期間の満了 | 30年経過時点で譲渡を特約 | 契約期間の満了 | 決められる |
借地契約終了時 | 更地で返還 | 地主が建物を買取 | 更地で返還 | 決められる |
借地権は、1992年に施行された新借地借家法で、普通借地権と定期借地権の2種類に分けられました。
借地借家法では「土地の賃借権等の存続期間やその効力」や「建物の賃貸借の契約の更新とその効力」などが定められています。
そもそも借地権とは、建物を建てる目的で土地を賃貸するときに使われる権利のことで、貸す側となる地主と借地人の両方の権利を保護する目的があります。
普通借地権は、契約期間が切れても借地人が望む限り借地契約が自動的に更新されることが原則の借地権です。
更新により建物を継続して利用できるなど借主にとって非常に有利なものの、貸主には契約解除できなくなるなど不利な面が多いものでした。
この難点を改善したのが定期借地権です。
契約期間を定めて土地を貸すことができ、更新する際も契約し直す必要があったり、建物の買い取り請求権なしで返還されたり、貸主の権利も保護されるようになりました。
一般定期借地権とは
一般定期借地権は、1992年(平成4年)8月1日に施行された借地借家法により創設された、3種類の定期借地権の中の1つです。50年以上もの長期間において、土地の使用ができる借地権で契約更新や期間延長されることがありません。
また、建物の買取請求権もなく、契約が終われば更地で戻ってくる点が貸主にとっては、土地トラブルもなく利点といえるでしょう。一般定期借地権では利用目的の制限がないため、事業用や居住用など建物の使用目的に左右されないのは借主にとってもメリットです。
50年以上という長期契約により、安定した地代収入と相続税の節税効果が望めます。借主が住居用の建物を建てた場合も、固定資産税が軽減される点も魅力的です。
事業用定期借地権とは
事業用定期借地権とは、事業用に建物を所有することを目的にする借地権です。
契約期間によって契約内容も異なり、契約更新と買取請求権が異なってきます。建物は住宅を除く事業用物件に限られますが、業態次第で住宅よりも高い地代が設定できるのも、事業用定期借地権の魅力といえます。
事業用の定期借地権のため、利用者も限定され将来そこに住みたいと居住地に考えている人にとっては不向きです。
建物譲渡特約付借地権とは
建物譲渡特約付借地権は契約期間が終了したときに、土地の借主が建てた建物を貸主に売却する特約がついた借地権です。返還してもらうには建物の買取が必要ですが、建物の再活用を考えていれば貸主にとってもメリットといえるでしょう。
売却をした時点で借主が所有していた建物は、貸主のものとなります。アパートやマンションの場合は、そのまま経営ができるメリットがあります。居住用など用途に制限はなく存続期間が30年以上と安定した収入を得られる点では、検討してもよい借地権です。
賃借者から請求があれば、建物について契約期間のない賃貸借契約が成立したものとみなされます。
一時使用目的とは
一時使用目的とは、10年未満でも契約が可能であり、場合によっては1年以内とたん期間を定められる契約です。
他の定期借地権が最低10年以上の契約となっているにも関わらず、この契約は1年未満でも契約を結べます。
そのため、土地を貸したいけれど長期間の定期借地権は困る場合には、この契約方法がおすすめです。
また、土地を貸すことについては以下の記事をご覧ください。
定期借地権の費用
定期借地権の地代は、固定資産税評価額の5~8%程度が目安です。
一般的に定期借地権の地代は、更地の土地価格をベースに定められます。
参考とする更地の価格は、固定資産税評価額か時価、路線価(時価の80%程度の価格)で計算され、不動産鑑定士による査定で最終的に決まります。
定期借地権の全国相場は、200平米で年間80万円程度です。
また、定期借地権の契約時には地代とは別に、土地価格の20%ほどの保証金を支払う必要もあります。ただし、契約満了時に問題がなければ全額戻ってくる場合が多いようです。
定期借地権の具体的な費用は、不動産会社にまず確認してみると良いでしょう。
借地料について詳しくは、以下の記事をご確認ください。
定期借地権の契約期間
定期借地権の契約期間は、契約方法によって異なってきます。
具体的に、定期借地権の契約期間をご説明します。
一般定期借地権の契約期間
一般定期借地権は、基本的に50年以上の契約となります。
事業用定期借地権の契約期間
定められる契約期間は、10年以上50年未満です。
10年以上30年未満の場合は、契約の更新や建物買取請求権がなく更地での返還となります。
30年以上50年未満の場合は、その逆で契約更新と買取請求権がある契約です。
建物譲渡特約付借地権の契約期間
契約期間は、30年以上であれば期間の制限はありません。
ただし、契約更新はできないため、建物の耐用年数も考慮しておく必要があるでしょう。
一時使用目的の契約期間
上記したように、契約期間に定めはありません。
そのため、契約する際に貸主と借主の間で自由に決められます。
定期借地権のメリット・デメリット
定期借地権には、長期契約によって安定した収入が見込める、契約が更新されることなく貸主に返還される(事業用定期借地権は一部異なる)などメリットがあります。
しかし、基本は途中解約ができず契約の途中で土地を返してもらえませんし、維持が難しくても売却もないデメリットもあります。短期・中期の土地活用には不向きな点も借主にはややデメリットなるでしょう。
所持している土地をどのように活用するのか、それぞれ3つの定期借地権の特徴やメリット・デメリットを参考に決めましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
一般定期借地権 | 契約更新・期間延長がなく更地で返ってくる | 短期・中期で土地活用には不向き |
事業用定期借地権 | 短期的な土地活用ができる | 事業所用として利用者が限定される |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上安定した収入がある | 建物を買い取らなければいけない |
一時使用目的 | 1年以内など短期間でも貸せる | 自由度が高く契約で決める必要がある |
他にもどんな特徴があり、メリットやデメリットがあるのか詳しくご説明します。
一般定期借地権のメリット
一般定期借地権のメリットは、利用者にとって利用目的の制限がないことが挙げられるでしょう。
借地人が建物を建てることもでき、それにより貸地人にとっても固定資産税の節税効果も期待できます。
また、建物買取請求権により契約終了時に建物を買い取る必要がなく、建物を解体する費用もかかりません。それに加えて、更地になって土地が返還されるため、次の借主をすぐに探せる点もメリットでしょう。
双方にとってメリットの多い借地権です。
- 建物買取請求権がない
- 利用目的の制限がない
- 節税効果も期待できる
一般定期借地権のデメリット
一般定期借地年のデメリットは、書面にとっての契約が必要で、契約の更新はできない点でしょう。契約更新をする際には、もう一度契約を結び直します。
一般定期借地権での契約は、書面での契約が必要です。契約する際には、利用目的の制限はなく50年の契約終了時は更地で返還、建物を建てる場合には建物買取請求権はないと記載して契約します。
また、50年以上の契約となるため、長期間土地を使用することができず、いずれ活用を考えている方にはおすすめできません。
- 書面によっての契約
- 長期間の契約で土地を使えなくなる
- 契約更新はできない
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権のメリットは、事業者にそのまま土地を貸すだけですので初期費用がかからず、また事業がなくならない限り事業者に借りてもらえるため安定した収入を得られるでしょう。
契約期間も調整がしやすく、長く貸す場合には更新もできる点がメリットです。
- 安定した収入を得られる
- 事業者にそのまま貸せる
- 契約期間を調整できる
事業用定期借地権のデメリット
一方デメリットは、事業用定期借地権だけは必ず公正証書での契約が必要です。目的が事業用に限定されるため、近くに事業会社がなければ借り手は見つかりにくいかもしれません。
また、短期間で貸す場合には契約更新ができないなど、契約更新も契約期間によって異なります。
- 公正証書での契約が必要
- 目的が事業用に限定される
- 契約更新は期間で変わる
建物譲渡特約付借地権のメリット
建物譲渡特約付き借地権は、建物を買い取る必要があり買い取った建物を再活用できます。土地を返還してもらったあとでもアパート経営やマンション経営により家賃収入が得られるため、引き続き安定した収入を得られるのは大きなメリットと言えるでしょう。
また、更地で返還されると固定資産が6倍になりますが、建物が建っていることで継続して節税できます。
- 建物の再活用ができる
- 固定資産税が節税できる
- 安定した収入を得られる
建物譲渡特約付借地権のデメリット
ですが、建物の経年劣化などで価値のない建物だった場合、買い取っても価値がなく収入がなかったり解体する必要があったり、マイナスにしかならないデメリットもあります。
また、契約の更新はできないため、希望通りに貸して収入を得られない可能性も考えられるでしょう。
- 建物買取請求権がある
- 契約の更新はない
- 価値のない建物の買取や解体が必要
一時使用目的のメリット
一時使用目的のメリットは、何と言っても貸し方に自由度が高く、契約の形式や利用目的などが幅をもって決められる点です。
以下のメリットが具体的に挙げられるでしょう。
- かなり短期間でも貸せる
- 契約内容を自由に決められる
- 知用目的に制限がない
他の定期借地権と比較してかなり短い期間で貸すことができ、ケースによっては1年以内の指定もできます。
そのため、契約期間の自由度が高い点でかなりのメリットがあるでしょう。
一時使用目的のデメリット
デメリットとしては、自由度が高すぎる点です。
かなりの幅をもって貸せますので、契約期間や利用目的、契約の終了時点にどうするかなどをあらかじめ決めておくことが必要になります。
そうしなければ、固定資産税分くらいの安定した収益を得ようとしたのに、場合によっては土地を取られてしまうなど最悪なケースも考えられます。
あらかじめリスクを想定してしっかりと契約内容に盛り込んでおくことで、収益を得られる契約となるでしょう。
定期借地権付きのマンション
定期借地権付きマンションとは、定期借地権により期限を定めて借りた土地に建設されたマンションのことです。
通常のマンションを購入する場合は、建物であるマンションとマンションの建つ土地のどちらにも所有権があり、どちらもの所有権を購入する形になります。
ですが、定期借地権付きマンションを購入する場合には、建物であるマンションには所有権があるものの、土地は借りているため借地料(地代)を支払う必要があります。メリットとしては、土地を購入せずに借りることになるため、費用は少し抑えることが可能です。
定期借地権付きマンションのデメリットとして、定期借地権の契約終了時には更地での返還となるため、建物を取り壊士が発生します。また、借地権の契約期間にもよりますが、再契約して建物の買取請求権は適用できません。
定期借地権付きマンションと一般マンションの比較
定期借地権付きマンションと一般マンションを比較すると以下のようになります。
マンションの種類 | 定期借地権付きマンション | 一般のマンション |
---|---|---|
購入価格 | 70~80% | 100% |
税金 | 建物に固定資産税 | 土地・建物に固定資産税 |
地代 | 土地の固定資産税ほど | かからない |
管理費 | かかる | かかる |
解体・修繕積立金 | かかる | かかる |
権利金 | かかる | かからない |
定期借地権は一般のマンションと異なり、購入費用が安く抑えられる代わりに、毎月の地代を支払う必要があります。ただし、一般のマンションと同じく住宅ローンや住宅ローン控除は適用が可能です。
また、借地権の契約期間が満了するタイミングで解体して更地の返還となりますので、資産価値はそこまで維持できません。また、相続も借地権の契約期間内でしか所有権の相続は難しいものです。
解体費用や修繕費用なども積み立てや追加で必要となる点には注意しておきましょう。
ただし、解体費用や修繕費用などは経費として計上できますので、所得税の節税ではメリットがあります。
定期借地権付きマンションの売却はできる?
定期借地権付きマンションは、地主の承諾を得られれば売却することは可能です。
定期借地権付きマンションを売却する場合には、借地契約における借主の権利も売却・譲渡する形になります。
地主の承諾を得た後に、名義の書き換えが必要となり名義書換料の支払いも必要となる点には注意が必要です。
このように、定期借地権付きマンションは売却できますが、様々な手続きが必要となります。そのため、不動産会社に手続きについて確認するとスムーズに進むでしょう。
定期借地権で土地を貸す際は契約方法を考える
今回は、定期借地権の特徴とメリットやデメリットについて紹介しました。
定期借地権の契約更新されない点は貸主にはメリットであり、手間と費用をかけずに土地を有効活用したい人にはおすすめの活用方法です。
定期借地権で土地を貸す際、地代の相場は慣れていないと判断が難しいため、専門家に依頼するのが基本です。不動産会社といってもさまざまであり、不動産鑑定士によっても査定額が異なることから、複数社に査定を依頼して結果を比較した方が最新の地代がわかるでしょう。
おすすめな方法としては、企業に活用すると収益はいくらになるのか試算してもらう方法です。土地活用の比較サイトで活用プランを複数の会社から無料で取り寄せて、活用した際の収益と売却の金額を比較して、所有している土地をどうすると1番収益を得られるの考えてみましょう。