アパート経営の法人化にはどんなメリットやデメリットがある?法人化の際のポイントについても解説

アパート経営の法人化にはどんなメリットやデメリットがある?法人化の際のポイントについても解説

アパート経営を行っている方のなかには、経営規模が大きくなってきたり、サラリーマンの方であれば給与所得との兼ね合いから「法人化させた方が節税になるのでは」と考えている方も多いかと思います。

法人化とは、事業を行っている人が株式会社(あるいは合同会社)を設立し、事業を続けていくことをいいます。新たに会社を設立し、法人名義でアパート経営を行うということです。

そこで本記事では、そもそも法人化とは何かといった基礎知識から法人化のタイミング、相続税対策としての法人化のポイント、法人化のメリット・デメリットなどについて詳しく解説しています。

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アパート経営については、以下の記事をご覧ください。

アパート経営の基礎を一から解説!初めての人もそうでない人も必見の情報をお届けします

アパート経営の法人化ってなに?

アパート経営を個人から法人に切り替えるケースが増えてきていますが、メリット・デメリットの両方が存在するため、法人化するタイミングの見極めが重要になります。

法人化するのはアパート経営による収益が増えてきたタイミングが好ましく、それなりの知識を身に着けておくことをおすすめします。

本章ではアパート経営の法人化について基礎的なことを解説しています。

アパート経営の法人化とは

アパート経営の法人化とは、事業を行っている人が会社を設立して事業を続けていくことで、会社名義で物件を所有・運営するため、入居者との契約も会社と結ぶことになります。

法人設立時に出資を行なうため出資者は株主です。そして、法人に相続は発生しませんが出資した際に生まれる株式が相続の対象となります。

また、法人化したアパート経営の収益は、会社からの給料として受け取ります。個人であれば家賃収入はアパートの所有者しか得ることが出来ませんが、法人で家族を役員としている場合は家族に収入を分配することができます。

法人化する所得の目安

アパート経営を法人化させた方が良い所得の目安は、個人の総所得金額が1,000万円を超える場合です。それは、個人より法人でアパート経営をする方が所得にかかる税率が低くなり、税負担を抑えることができるためです。

因みに、ここでいう「個人の総所得金額」とは「アパート経営の家賃収入の総額」という意味ではなく、給与所得などの不動産所得以外の所得もすべて含めた額のことで、それが1,000万円以上で法人化の目安ということになります。

詳しくは2章で解説しています。

法人化を相続税対策として行なう場合のポイント

アパート経営の法人化を相続税対策として行う場合、意識するべきポイントがいくつか存在します。それは以下の通りです。

  • 家賃収入の財産移転が最重要
  • 建物を法人所有にする
  • 相続人を株主とする
  • 相続人を役員にする
  • 土地の無償返還に関する届出をする

詳しくは3章で解説しています。

法人化のメリット

アパート経営を法人化することのメリットは、以下の7つが挙げられます。

  • 所得税を8%減らせる
  • 相続税対策になる
  • 役員報酬を経費にすることができる
  • 相続時に遺産分割しやすくなる
  • 家賃収入の分配に贈与税がかからない
  • 短期譲渡時の税負担を個人よりも減らせる
  • 赤字の繰越期間が個人よりも7年長い

詳しくは4章で解説しています。

法人化のデメリット

アパート経営を法人化するデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 法人化のための費用が必要
  • 途中から法人化する場合は新たに税金がかかる
  • 個人経営の場合よりも運営費用がかかる
  • 税務調査が入る確率が上がる

詳しくは5章で解説しています。

アパート経営を法人化させると何が変わる?

アパート経営において、個人事業主と法人化した株式会社との違いはアパートの所有者と家賃収入の受け取り方です。個人事業主としてアパート経営をおこなう場合は、家賃収入をはじめてとしたアパート経営での収入は全て個人の不動産所得です。

しかし法人名義にすることで、アパートの所有者は株式会社となります。オーナーは会社への出資者という立ち位置となり、オーナーや役員となっている家族には役員報酬として家賃収入の分配ができるようになります。

そのため、アパート経営で得た利益について贈与税をかけずに家族への支給することができます

活用事例:ペット愛好家の心をつかんだ賃貸住宅

エリア北海道
土地面積(㎡)332
延べ床面積(㎡)243
工法木質パネル接着
「周辺には多くの賃貸住宅がありますが、ペットを飼う方を積極的に募集し、しかも3LDKを中心にする間取りという発想は他にはなく、大きな可能性を感じました」とオーナー様。

「騒音の問題や、糞などの苦情も無いようです。やはり入居者のみなさんが動物好きで、しかもマナーが良いお陰で、問題が起きないのでしょう」とオーナー様。設備が行き届き、管理も徹底している物件には、自ずとマナーの良い入居者が集まるという典型的な例といえるでしょう。

敷地内には犬を自由に遊ばせることができるドッグランを設置するなど、ペット好きの心を掴んだこの物件は、完成を待たずして入居者が決まりました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)

アパートを法人化する所得の目安

結論から言えば、個人の総所得金額が1,000万円を超える人はアパート経営を法人化させるべきとされます。その理由としては、個人でアパート経営をするより法人の方が所得にかかる税率が低くなり、税金の負担額を抑えることができるからです。

個人の所得税は、所得が多ければ税率が上がる累進課税制度を採用しています。個人にかかる所得税の税率は以下のようになっています。

課税される所得金額所得税率(個人)住民税率(個人)
195万円以下5%10%
195万円超330万円以下10%10%
330万円超695万円以下20%10%
695万円超900万円以下23%10%
900万円超1800万円以下33%10%
1800万円超4000万円以下40%10%
4000万円超45%10%

また、個人では、所得に対して課税される住民税も発生します。住民税は、所得応じて税率が変わることはなく、所得に対して一律10%の課税が行われます。

そのため、個人の総所得が「695万円超900万円以下」の場合、所得税と住民税を合わせて33%となります。この税率を参考に法人の場合の税率を見ていきましょう。以下の表は法人にかかる法人税の種類と税率になっています。

税金税率
法人税(年800万円相当額以下)15%
法人税(年800万円相当額超)23.3%
地方法人税4.4%
住民税(東京都内23区に事業所がある場合)16.3%
事業税3.78%

上の表の法人税の実質的な所得負担率を求める式に当てはめると、資本金1億円超えの法人の場合、大体31%くらいの法人税率になります。

上記の個人の所得が「695万円超900万円以下」の場合、法人化しても税率の差はほぼありません。しかし、個人の所得が「900万円超1800万円以下」になる場合、所得税と住民税の税率が43%になるため、個人の方が法人より10%ほど高くなってしまいます。

したがって、個人の総所得金額が900万円を超える場合はアパート経営を法人化させた方が良いということになります。その他法人の設立にかかるコストなども考慮し、法人化は個人の所得が1000万円を超えるかどうかを目安にしましょう。

ただし、目安の所得というのは「家賃収入が1000万円を超える場合」という意味ではありません。所得とは家賃収入から必要経費を差し引いて残った額のことです。必要経費には以下のようなものが該当します。

  • 税金
  • 減価償却費
  • 管理費(委託する場合)管理委託費用
  • 修繕費
  • 広告宣伝費
  • 損害保険料
  • 通信費
  • 借入金利息
  • 仲介手数料
  • 報酬
  • 立ち退き料
  • 給与
  • 新聞書籍代
  • 接待交際費
  • 事務用品費
  • 消耗品費
  • 交通費

しかし、所得税の計算の元となる課税標準は、給与所得や事業所得などを合算した総所得金額が対象になることに気を付けましょう。

つまり、不動産所得以外の所得がある場合、ほかの所得と合わせて1000万円以上となればアパートを法人化するべきと言えます。

相続税対策として法人化をする際のポイント

アパート経営の法人化を相続税対策という観点から検討している人もいると思います。

そういった人に向けて、本章では相続税対策として法人化をする際のポイントを解説します。以下がポイントです。

  • 家賃収入の財産移転が最重要
  • 建物を法人所有にする
  • 相続人を株主とする
  • 相続人を役員にする
  • 土地の無償返還に関する届出をする

それぞれ詳しく解説していきます。

家賃収入の財産移転が最重要

アパート経営の法人化での相続税対策は、家賃収入を次世代に財産移転するということが最重要ポイントです。

アパート経営をしている間は家賃収入が入りますが、これを生前に贈与(移転)し、本人の相続財産を減少させることによって、将来の相続税を減少させることができるのです。

相続人となる人物が出資して会社を設立し、アパートを会社所有にすることによって家賃収入は会社の収益となります。そして役員報酬として家賃収入を支払うことにより贈与税が課税されず、合法的に相続財産、相続税を減少させることができます。

建物を法人所有にする

アパート経営の法人化で相続税対策をすると言えど、親の代からあるような土地を売却して法人に移す場合、所得税の譲渡所得が高額になってしまう可能性があります

アパート経営で家賃収入を得ているのは建物部分であるため、土地そのものではなく物件の方を売却して法人化しましょう。法人に売却する際は法人から個人へ譲渡代金を支払う必要がありますが、基本的にその価額は帳簿上の未償却残高を使用します。

建物部分のみを未償却残高で譲渡することで、譲渡益の発生による所得税の負担を回避することができます。

相続人を株主とする

相続対策としてアパート経営の法人化をしても、財産を所有する本人が出資して株主になってしまうと保有する株式が相続財産となってしまいます

法人化の効果として期待するのは財産の分散による相続税対策であるため、法人化の際は出資を推定相続人となる人物に任せて株式を保有してもらいましょう

相続人を役員にする

推定相続人を役員にすることで、労働時間の拘束なく家賃収入を役員報酬として移転することができます。平等に財産移転をするためには推定相続人全員を役員にします。

しかし、未成年者や学生などは実際に仕事をしているかどうかの判断が難しいため、役員にすると認められない可能性があります。因みに、推定相続人を社員とする場合には勤務実態が必要です。

土地の無償返還に関する届出をする

建物のみを法人に売却する場合、土地は個人のものであるため借地権が発生します。借地を借りる際に権利金を支払っていない場合、借地権が贈与されたものとして認定課税という税金が課税されます。

土地の無償返還に関する届け出とは、法人や個人が借地権の設定などにより土地を他人に使用させたとき、借地権の契約書で将来借地人側が土地の返還を無償で行なうことを定めていた場合に届け出るものです。

この届け出を税務署に行なっている場合は権利金の認定課税は発生しません。無償返還に関する届け出を行なっていて、かつ個人が法人から適正な地代を貰っている場合、その土地の評価額は宅地の評価として自用地評価から20%の控除が可能です。

アパート経営を法人化するメリット

アパート経営を法人化するメリット

アパート経営を法人化すると、所得税や相続税の節税になるなど7つのメリットがあります。

それぞれ詳しくご紹介していきます。

所得税を8%減らせる

アパート経営を法人化すると、所得税をこれまでよりも8%ほど節税させることも可能となります。法人化すると法人用の税率が適用となり、個人の場合と比べて税率が低くなる場合があるからです。資本金1億円以下の法人における税率は35%程で、これはアパート経営を法人化させた場合でも同じです。

例えば、アパート経営や給与などを含めた所得金額が1,200万円であるとします。基礎控除(48万円)を適用すると、1,152万円に税率がかけられます。所得が1,200万円の場合、所得税率と住民税率を合わせると所得に対して43%の税金がかかり、支払う税金は495万3,600円です。同じ条件のとき、アパート経営を法人化し35%の税率となれば、支払う税金は403万2,000円です。

つまりこの例の場合、アパート経営を法人化するのとしないのとでは年間で約90万円の差が生まれてしまいます。法人化によって90万円を捻出できれば、アパート経営の収益性を大きく向上させることができるでしょう。

所得税の税率

個人の所得税は、所得が多ければ税率が上がる累進課税制度を採用しています。
個人にかかる所得税の税率は以下のようになっています。

課税される所得金額所得税率(個人)住民税率(個人)
195万円以下5%10%
195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1800万円以下33%
1800万円超4000万円以下40%
4000万円超45%

個人では、所得に対して課税される住民税も発生します。住民税は、所得に対して一律10%の課税です。

法人税は、住民税(法人住民税)を含め35%程ですので、個人の所得が「695万円超900万円以下」の場合、法人化して節税効果はほぼ無いといえます。むしろ、設立コストや税率によって負担が増してしまう可能性があるので注意が必要です。

相続税対策になる

アパートは会社名義にしてから3年間は時価(取得額)により評価することになりますが、3年経過した後には、資産の評価額を小さくすることができ相続対象となる株価を下げることができます

個人では、路線価は地価公示価格の8割程度、固定資産税評価額は7割程度となっていることから、これらと時価との差額について財産の価額を圧縮することができます。法人化では、株式を相続することになるため株価が下がれば、場合によっては贈与税の非課税枠での生前贈与も行うことができます

役員報酬を経費にすることができる

アパート経営を法人化すると、家族を役員として役員報酬を支払うことができます。役員報酬は経費扱いとなりますので、所得を減らし節税を行うこともできるのです。

つまり、アパート経営で得た利益を全て役員報酬として自分や家族に分配すれば、法人所得はゼロになり法人税を支払う必要なくなります。また、給与所得には給与所得控除があります。アパート経営の利益1,000万円を給与所得として自分に支払えば、195万円の控除が適用され所得を805万円に抑えることができます。

ただし、役員報酬を経費とするためには、次に解説する基準を満たす必要があります。

役員報酬を経費として計上するための基準

役員報酬は基本的に自由に決められるものですが、以下の3点をもとに決めることになります。

  • 客観的に適切な額であること
  • 支払い方法を決められた手続きを経て行っていること
  • 支払い金額の決定と変更を決められた手続きを経て行っていること

役員報酬の支払いについては、これら規定のもとで行うことになります。

むやみに役員報酬を高くすると所得税や住民税まで高くなってしまったり、税務署から怪しまれ確定申告が通らない可能性もあるので注意が必要です。

相続時に遺産分割しやすくなる

アパートなどの不動産は相続しようと思っても、現金や有価証券に比べて分割しにくいという特徴があります。共有名義での分割相続という方法もありますが、相続後の経営方針や家賃の分配などでトラブルを起こしやすいというデメリットがあります。

しかし、アパート経営を法人化しておけば、相続するのは株式となり不動産に比べて分割しやすいです。また、法人化しておけば法人名義や口座となるため、相続の際に賃貸契約の更新や家賃振込などをスムーズに引き継げるというメリットもあります。

このように、アパート経営を法人化しておくことは、相続発生後の煩雑な手続きを省くことにもつながります。

家賃収入の分配に贈与税がかからない

個人事業主のアパート経営をしており家賃収入を相続人に渡したいと考えている場合、贈与税がかからないようにするには年間110万円までに限られます。

生前贈与として、建物を贈与し相続人が家賃収入を得るという方法もありますが、相続税よりも税率が高い贈与税が課税される点やローンも含めて贈与することになる点など、生前贈与もメリットばかりではありません。

しかし、アパート経営を法人化し、家賃収入を役員報酬として相続人にわたす場合には、贈与税が課税されずに家賃収入を分配することができます。家賃収入の分配を考えている場合には、法人化することで贈与税の節税を試してみましょう。

短期譲渡時の税負担を個人よりも減らせる

不動産は売却などの譲渡を行う際に、譲渡額に応じて譲渡税が課税されます。譲渡税率は不動産の所有年数によって異なります。所有年数が5年以下の場合には短期譲渡、5年以上の場合には長期譲渡となります。譲渡税率は主に以下のように定められています。

法人の譲渡税率個人の短期譲渡税率個人の長期譲渡税率
23%40%20%

短期譲渡を考えている場合には、個人と法人では17%近く異なります。相続後にすぐに売却したい場合などには、会社を設立したほうが譲渡税を抑えることができます。

赤字の繰越期間が個人よりも7年長い

個人の場合赤字は3年繰り越すことができますが、法人の場合10年間繰り越すことができます。特にアパート経営では、初年度の減価償却による会計上の赤字が発生します。利益が多く出た年度に赤字をぶつけて相殺することで、納税額を減らすこともできるため、法人のほうが柔軟な会計戦略を描くことができます

アパートの経営で赤字が出た場合を考えます。法人でも個人事業主でも、赤字になった年の翌年が黒字になった場合、赤字だった年のマイナス分を翌年以降に繰り越すことが可能です。

例えば、ある年の収支がマイナス500万円、次の年のプラスが200万円だったような場合で、次の年の200万円の黒字分にかかる税金をなしにすることができ、さらに残った300万円を翌年以降に繰り越すことができるのです。


アパート経営を法人化すると、このように様々なメリットがあります。

しかし、本当に法人化した方がよいのか、法人化した後の確定申告などについて不安に思われている方も多いでしょう。

そこで、アパート経営を法人化して始めるかどうか悩んでいる方であれば、プロに相談しておくと安心です。

日本最大級の土地活用プラン比較サイトイエウール土地活用なら、土地所在地の入力だけで複数の大手建築会社からアパート経営のプランを取り寄せることができます。

アパート経営にかかる費用の見積もりや予想収支はもちろん、法人化して始めるかどうかについても相談することができます。

\建築費は?初期費用は?/

大手10社の収益プランを比較する
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都道府県
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市区町村
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アパート経営を法人化させるデメリット

アパート経営で会社を設立すると多くのメリットがあります。ただし、法人化をすることにはデメリットもある点はきちんと把握しておく必要があります。

メリットばかりに目がいってデメリットを把握せずに簡単に法人化してしまうとあとで困ったことになる可能性もあります。ここでは、4つのデメリットについて解説します。

法人化のための費用が必要

アパート経営を法人化する際には、いくらかの費用が必要になります。具体的には、登録免許税や定款作成時の手数料などです。

電子定款を作成する場合や株式会社にするか合同会社にするかで設立費用は変わりますが、合同会社の方が大きく設立費用は安いです

また、法人化は自分で行うこともできますが、手続きが複雑な部分もあるため司法書士に任せると安心です。司法書士報酬は資本金によって変わりますが、相場は6万円~10万円となります。

株式会社を設立する費用

アパート経営を株式会社で法人化する場合、以下の費用がかかります。

登録免許税15万円または資本金×0.7%
定款用収入印紙代4万円(電子定款では不要)
定款の認証手数料5万円(資本金300万円以上)
定款の謄本手数料250円/ページ

アパート経営を法人化する費用のなかで最も高いものは登録免許税です。定められた2つの金額及び計算式から、高い方の金額を支払います

また、株式会社にする場合の「定款」は、公証人役場で公証人に認証が必要になり、手数料がかかります。謄本作成にも手数料は必要ですが、多くの場合は2,000円程度となるようです。

これらの設立費用を合計すると、20万円以上かかることになります。司法書士に手続きを依頼する場合は、加えて6万円以上かかることに注意が必要です。

合同会社を設立する費用

アパート経営を合同会社で法人化する場合、以下の費用がかかります。

登録免許税6万円または資本金×0.7%
定款用収入印紙代4万円(電子定款では不要)
定款の認証手数料0円
定款の謄本手数料0円

アパート経営を合同会社で法人化させる場合、株式会社に比べて費用を大きく抑えることができます。収入印紙代も電子定款にすれば、登録免許税や司法書士報酬のみで法人化することが可能です。そのため、設立費用を10万円以下に抑えることもできます。

また、株式会社と合同会社で受けられる法人化のメリットは変わりません。そのため、特別な理由がない限りは設立費用の安い合同会社で法人化をすることが勧められます。

ただし、合同会社では出資比率が決まっていないことから、複数の出資者がいる場合はトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。

途中から法人化する場合は新たに税金がかかる

途中でアパートを法人化する場合、不動産取得税と登録免許税が発生してしまいます。特に不動産取得税は、固定資産税評価額の4%が課税されるため、決して小さい額ではありません。

例えば、固定資産税評価額が3000万円のアパートの場合、不動産取得税として120万円の支払いが必要になります。

また、個人が法人にアパートを贈与すると時価で売却したものとされるのでみなし課税として譲渡所得が発生することがあります(参考:所得税法第59条)。アパートの法人化においては会社贈与、現物出資、売買のどの方式を選ぶかによってかかる税金は変わってきますので、税理士にご相談ください。

個人経営の場合よりも運営費用がかかる

アパート経営を行うにあたり、ほとんどの場合は帳簿の記載が義務付けられていますが、個人と法人では帳簿を作成する難易度が大きく異なります。

法人経営の場合は、法人税のための計算や専門的な知識が必要です。このように、一人で法人の確定申告を行うことは難しい場合は、税理士に依頼することになります。

法人の確定申告を税理士に依頼するときの相場は、10万円~30万円です。また、法人化にあたり税理士と顧問契約を締結することになるケースもあります。税理士との顧問契約料の相場は、月額3万円ほどです

税務調査が入る確率が上がる

会社経営の場合、所得税や法人税を申告するとその内容について税務調査が入る可能性が高い点は把握しておく必要があります。黒字であるほど調査が入る可能性は高くなります。具体的には35年に1回程度の割合で調査が入ると考えておいたほうがよいです。

個人の場合は、10年に1回程度で税務調査が入る割合にすると0.3%なのに対して、法人は3.3%と高い割合となっています。

アパート経営で法人化すべきかを考える際には、メリット・デメリットを比較した上で選択することが重要です。なんとなくで決定してしまうと、「管理費用が増えただけ」「法人化の手間がかかっただけ」となる場合があります。可能であれば、法人化するかどうかも含めて事業計画を考えておくことが必要となります。

アパート経営を法人化して始める手順

本章では、アパート経営をはじめると同時に法人化する手順について解説します。

アパートの建築と法人の設立は同時に進めていくため、しっかりと準備をしておく必要があります。

STEP
  • 会社の基本事項を決める
  • 印鑑を作成する
  • 定款の作成・公証人による定款認証をする
  • 必要書類を作成する
  • 法務局で登記申請を行う
  • 各種書類を提出する(ここで法人の設立は完了します)
  • 法人として資金調達を行う
  • 法人でアパートを建築する
  • 役員報酬を決める
それでは順番に確認していきましょう。

会社の基本事項を決める

アパート経営を法人化して始めるのであれば、まず、これから設立する会社の基本情報を決めていきます。

具体的には、「所有方式を決める」「法人の種類を決める」の2点を決めましょう。

所有方式を決める

所有方式には「建物のみ所有方式」「土地建物所有方式」の2種類があり、この2つの違いは、土地を個人が所有するのか、法人が所有するのかの違いがあります。

土地を個人が所有する建物のみ所有方式では、建物のみに投資することになり、初期費用を抑えられる反面、建物の建っている土地が借地となるため、地代が発生し、収益性が悪くなります。

反対に、法人が土地と建物の両方を所有する土地建物所有方式では、建物のみ所有方式より収益性が良くなる反面、土地を購入するため、初期費用が高くなります。どちらの方法にも、メリットとデメリットがあるため、しっかりと検討して自分に適した方式を選びましょう。

法人の種類を決める

アパート経営を法人化する場合、法人の種類を決める必要があり、多くの場合は「株式会社」「合同会社」を選択します。

株式会社では、会社設立のための費用が25万円程度かかりますが、金融機関から信用得られやすいため、融資を受けるときに有利になります。一方で、合同会社は初期費用11万円で会社を設立できる反面、金融機関から低い評価を受けることもあります。

しかし、合同会社から株式会社へ変更することも可能であるため、まずは合同会社から始めてみるといったことも検討してみてもよいでしょう。

定款を作成する

法人の種類を決定したら「定款」を作成します。定款とは会社のルールブックのことです。会社を設立する場合には、必ず作成しなくてはいけない書類です。

法律の範囲内であれば自由に内容を決めることはできますが、会社法をしっかりと理解した上での作成が重要です。

個人での作成が難しい場合は、公証役場にフォーマットがありますので確認してみるのもひとつの方法です。また、司法書士に依頼すれば、必要な情報のヒヤリングを行い、定款の作成まで行ってくれます。

必要書類の提出

会社の設立を決めたら、税務署や市町村役場、都道府県税事務所に対して届け出を行う必要があります。ここでは、税務署に届け出をする場合に必要な書類を紹介します。

  • 法人設立届出書
  • 給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書(従業員に給与を支払う人))
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(源泉所得税の納期の特例を受ける人)
  • 青色申告の承認申請書(青色申告する場合)
  • 消費税の新設法人に該当する旨の届出書(資本金や出資金が1,000万円以上の場合)

それぞれ、税務署や法務局などと相談しながら提出の準備を進めていくとよいでしょう。自分でやるのが難しい場合は、税理士や司法書士に依頼して代行してもらうことが可能となっています。

法人として資金調達を行う

上記の手順で法人の設立が終了したら、アパートを建築するための資金を調達します。具体的には、融資をしてくれる金融機関を探します。ここで大切なポイントが、設立した法人がアパート経営以外の事業を一切行っていないことです。

設立した法人が、アパート経営以外の事業を行っていると、建築するアパートが設備投資として扱われてしまうため、融資期間が最長で20年となってしまいます。一方で、アパート経営のみを目的としている法人であれば、個人とほぼ同じとみなしてもらい、融資を受けることができます。個人とほぼ同じとみなしてもらうことで、耐用年数に応じた期間の融資を受けることができるため、融資期間を長くすることができます。

アパート経営では、個人や法人に関係なく、長期間・低金利のローンを組むことが大切であるため、設立する法人は「アパート経営が目的である」ということを忘れないようにしましょう。

法人でアパートを建築する

法人として資金調達が完了したら、法人の名義でアパートを建築しましょう。

このタイミングで、個人名義でアパートを建築してしまうと、個人と法人でアパートの売買の必要になります。

売買が発生すると、不動産取得税や登記のための登録免許税などが個人と法人の両方に発生してしまうため、負担する金額が2倍になります。余計な費用を発生させないためにも、法人の名義でアパートを建築しましょう。

役員報酬を決める

アパート経営を法人化するには、その法人の役員報酬を決めることが必要になります。アパート経営を法人化すると、親族が役員となり、役員報酬として収益を配分することが一般的となっています。

そして役員報酬は、1年に1回だけ金額を決めることができますが、一度、金額を決めてしまうとその役員報酬を増やすことはできません

そのため、1年間の収益を想定して、しっかりと節税できる金額を役員報酬として振り分けましょう。

アパート経営における法人化以外の節税方法

アパート経営における法人化以外の節税方法

アパート経営において所得税を減らす方法は、法人化以外にも存在します。ここでは、課税所得を減らす上で大切な経費を増やすポイントを解説していきます。

管理会社を設立する

これまでアパートのような不動産を法人に所有させる「不動産所有会社」について解説してきました。

アパート経営では、この「不動産所有会社」として法人化するという方法以外に、管理会社として法人化することも所得税対策になります。管理会社を設立すると、その管理会社にアパートの管理業務を委託することができ、その管理会社に支払った管理手数料を経費として計上することができます。

しかし、管理会社も不動産所有会社と同様に、税務調査が入りやすいため、常識外れの金額を管理手数料として支払っていると法律に触れてしまう可能性があるため、相場である家賃の5%前後に納めておくことが大切になります。また、管理会社の役員に支払った報酬も経費として計上することができるため、課税所得を減らすことが可能になります。

小規模企業共済に加入する

アパート経営を法人化したのであれば、小規模企業共済に加入することをおすすめします。

この小規模企業共済は、従業員数が20名以下または5名以下の会社などの経営者・役員や個人事業主が加入できる共済制度で、掛け金をすべて経費として計上することができます。

また、掛け金は5,000円から7万円まで、500円単位で選ぶことができるため、自由な掛け金設定が可能となっています。そのため、自分の所得と相談して、自分に合った金額を掛け金として設定しましょう。そして、積み立てた共済金はアパート経営の廃業もしくは退職時に受け取ることができます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する

アパート経営の法人化を検討されている方には、アパート経営のみで生計を立てている専業大家の方もいらっしゃるかと思います。専業大家の方におすすめな節税方法が、iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入です。iDeCoは、毎月積立てた資金をもとに運用し、60歳以降で年金や一時金として受け取ることができる制度です。

また、毎月の積立額や運用益、受け取り時の金額は全額が所得控除の対象となります<。そのため厚生年金がない専業大家にとって、将来の備えだけでなく節税としてもメリットがあるものとなります。

ただし、iDeCoに加入すると原則60歳まで現金を引き出すことはできません。停止や積立金の減額はできますが、途中解約の条件はかなり厳しいものとなるので注意してください。

修繕にかかる費用も経費計上する

アパート経営を続けていると、数年に一度、必ず修繕が必要になります。この修繕にかかった費用も経費として計上することが可能です。

ここで注意しなければならないことが、修繕にかかった費用は、その年に経費として計上する「修繕費」と減価償却を行い、耐用年数で分割して計上する「資本的支出」に分けられることです。

修繕を行った年に経費として計上する修繕費は、アパートを通常の状態に維持・管理するため、あるいは破損した部分を原状回復をするために使った費用を指します。具体的に修繕費には以下のような費用が含まれています。

  • 退去による壁紙の張替え
  • 壊れたキッチンの修理
  • 割れたガラスの張替え
  • 定期的な外壁の塗装

また、減価償却を行い、耐用年数で分割して計上する資本的支出は、アパートの修理や改良のうち、アパートの価値が増加したり、耐久性が増加したりする修繕を行ったときの費用のことを指します。具体的に資本的支出には以下のような費用が含まれています。

  • 今より上質な材料を用いた外壁塗装
  • ブロックキッチンをシステムキッチンに入れ替える

これらの費用は、支出額が20万円未満であり、その支出の周期が3年以内であれば「修繕費」、それ以外の支出を「資本的支出」と見分けることができます。

どちらにせよ、修繕にかかった費用は高額になることが多いため、領収書などをしっかりと保管し、経費として計上しましょう。


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