アパート経営は、長期的な不労所得や相続税対策など様々なメリットがありますが、同時に多くのリスクも存在します。
本記事ではリスクに加えてその対策も詳しく説明していきます。また、「アパート経営はやめたほうがよい」と言われる理由やサブリース契約の実態についても紹介します。
アパート経営の失敗談については以下の記事をご覧ください。一番のリスクはアパート経営を始めること
アパート経営には様々なリスクがあるため、始めるとなると十全な対策をしなければなりません。アパート経営を考える理由は、「相続税対策」や「将来年金だけじゃ足りなくなるリスクに備えたい」、「相続で引き継いだ土地を活用したい」など人によって異なると思います。
ただし、リスクを恐れて対策に苦労するのであれば、そもそもアパート経営を始めないことをおすすめします。アパート経営を始めることが一番のリスクであり、土地を所有しているなら売却して現金化し、自分の好きなことに使い切ってしまうのが一番の相続税対策となります。
将来お金が不足するリスクを懸念するなら、アパート経営をすることと比較してどちらのリスクが高いかをしっかり考えると良いでしょう。
徐々に赤字経営になっていく
アパート経営は10年・15年と年数が経つにつれて入居率と家賃がともに下がっていくため、赤字経営になる可能性が高くなっていきます。
アパート経営を始めた当時は人気の物件だったとしても、次々に新築でグレードが高く魅力的な物件が同程度の家賃で生まれます。一方で自分の物件は老朽化が進行していくだけなので人気は下がり、家賃を下げざるを得なくなります。
家賃はその時点での需要と供給で変動するものであり、最初の額でずっとやっていけるわけではありません。10年後は入居率と家賃が下がることで、家賃収入が当時の半分になる可能性もあります。それでも土地やアパートの所有による固定資産税は同じようにかかり、家賃収入が減った状態での税負担は重くのしかかることになります。
現金化が一番の相続税対策
「相続の際に多くの税金を取られる」「バブル崩壊前のように不動産地価が上昇し続ける時代がもう一度来るかもしれない」といった考えでアパート経営を考えたり、土地を手放せなかったりする人もいるでしょう。
しかし前述した通り、アパート経営をするリスクとしないリスクはどちらの方が高いのか、という話です。相続税のことを気にしてアパート経営を考えているのであれば、土地を売却して現金化し、その現金を寿命が来る前に使い切ってしまうことが一番の相続税対策と言えます。
相続税対策のために借金をつくって不確定な家賃収入に期待するか、素早く現金化しリスクをなくして遺産相続をしやすくするか、どちらが良いかを考えてみましょう。
都合のよすぎるシステムを疑う
空室が多く出てしまったり入居者に家賃滞納されてしまったりしたときでも、家賃の1割ほどの管理料を支払うことで一定の賃料を保証してくれる一括借り上げというシステムがあります。
一見オーナーにとって親切な仕組みで、大手企業ならではのサポートと思う人もいるかもしれません。しかし、あまりにもオーナーにとって都合の良い話であるため警戒する必要があります。賃貸経営会社も慈善事業でやっているわけではありませんから、リスクを肩代わりしてくれる代わりに別のところで利益を得ていると考えるべきです。
例えば建築費について、工務店に直接頼んだ場合と賃貸経営会社を挟んだ場合とで、1.5倍ほどの差が生まれることもあります。これは一括借り上げ契約のリスクヘッジをするためです。賃貸経営会社からすると、一般の戸建て住宅などと比べると言い値で工事を請け負うことができるため、賃貸住宅は「おいしい仕事」という認識なのです
セミナーには気をつける
セミナーでは通常、税理士や公認会計士などの専門家から、土地活用に必要な税務知識だったり不動産相続の基礎知識だったりをテーマとした公演が行われます。
しかし、その後クライアントによる個別相談会が始まります。それまでの話を聞いて賃貸経営を前向きに検討するつもりである参加者と、会場で待機していたハウスメーカーの営業が詳しい話をするという流れです。
そこでは一括借り上げや過去の成功例など、ポジティブなことしか話にあがりません。営業マンにとってセミナーは新規顧客開拓の場であるため、オーナーは気を引き締めておく必要があります。
無条件で儲かる事業などない
アパート経営について不動産業者の営業マンは「良い物件がある」「儲かる」といった話を持ち掛けてきますが、それならなぜ自分たちで始めないのでしょうか。無条件で儲かるようなビジネスがあるならやって損はないはずです。
結論から言うと、事業としてやるには手間がかかりリスクが大きいにもかかわらず、それに見合ったリターンを得られないからです。それより、アパート経営を勧めて仲介手数料で収益をあげることの方が儲かるのに確実な手段となるのです。
ただし、「不動産業者の社員は条件面で融資を受けることができない」「そもそも物件を変えるほどの年収を営業マンが得ていない」「顧客と同じニーズを持っているわけではない」といった理由も存在します。つまり、「儲からないから自分ではやらない」と「やりたいけど費用の面でできない」の二つのパターンがあるため、どちらのパターンなのかの見極めができないと損をすることになるでしょう。
アパート経営におけるリスクと対策
アパート経営のリスクについて代表的なものとして、以下の13個が挙げられます。
- 空室が埋まらないリスク
- 修繕費が高額になるリスク
- 修繕の回数が増えるリスク
- 入居者のマナーの悪さによるトラブルのリスク
- 管理会社の選択ミスに対するリスク
- 家賃低下のリスク
- 家賃滞納のリスク
- 災害のリスク
- 事業計画と実態が異なるリスク
- ローン返済が困難になるリスク
- ローン金利が上昇するリスク
- 節税目的で始めるリスク
- 立地環境の変化に対するリスク
- 売却できないリスク
アパート経営を計画する場合、そのリスクを考慮することが必要不可欠です。どのようなリスクがあるのかを頭に入れておきましょう。
また、リスクにおける対策についても紹介するため、併せて覚えることをおすすめします。
空室が埋まらないリスク
アパート経営において最大のリスクが空室になるリスクです。アパート経営では常に部屋が埋まっているとは限りません。
以下は、空室が発生した場合のシミュレーションです。経費は満室想定家賃の15%程度で計算しています。
借入額:4000万円(金利2%・返済期間20年)
部屋数:6戸
家賃:6万円
家賃収入(満室時):36万円/月
ローン返済額:20万円/月
家賃収入 | ローン返済 | 経費 | 手取り | |
満室 | 36万円 | 20万円 | 5.5万円 | 10.5万円 |
1戸空室 | 30万円 | 20万円 | 5.5万円 | 4.5万円 |
2戸空室 | 24万円 | 20万円 | 5.5万円 | -1.5万円 |
3戸空室 | 18万円 | 20万円 | 5.5万円 | -7.5万円 |
6戸空室 | 0円 | 20万円 | 5.5万円 | -25.5万円 |
空室数が多いと毎月の家賃収入が減ってしまいます。家賃収入は減ってもローンの返済や必要経費は出ていきます。
上のシミュレーションでは2戸空室になった時点で月の手取りが赤字になります。
対策:周辺の賃貸物件と差別化を計る
空室が発生する背景に、アパートの供給過剰があります。毎年、多くのアパートが建築されており、不動産市場は借り手市場と言われています。
よって、アパート経営の空室リスクを回避するには、たくさんあるアパートの中から選んでもらえるような物件づくりがポイントになります。
例えば「女性限定」「学生限定」「外国人限定」とターゲットを絞り込むことによって、他のアパートよりも目立った存在になります。
対策:質の高いハウスメーカーに依頼する
空室が発生してしまう要因のひとつに、建物の劣化があります。
築年数が経つにつれて建物が劣化するのは仕方ありませんが、高い入居率をキープするためには入居者に居心地の好い環境を提供することが大事になります。
よって、アパート経営を建築から考えているのであれば質の高いハウスメーカーに依頼し、立派なアパートを建ててもらう必要があります。
修繕費が高額になるリスク
アパート経営は長期的な事業になるため、建物の老朽化による修繕費増のリスクも抱えています。
老朽化した場合には、10年に一度を目安に大規模修繕を行う必要があります。大規模修繕では数百万円単位でコストがかかるため、経営への負担も決して少なくありません。
国土交通省の民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブックによると、1Kの賃貸住宅の場合、1戸あたり30年で174万円の修繕費用がかかるとされています。
対策:修繕費用の積み立てを行う
当然のことながら、修繕費用はオーナー負担です。大規模修繕が必要になった際にすぐにお金が用意できるように、新築当初から修繕費の積み立てをはじめておくことをおすすめします。
修繕費の積立金の目安は、築年数が古くなるほど多くなります。一般的に築年数と建築費に応じて想定します。以下が築年数における建築費用の目安です。
築年数 | 積立金の目安 |
1~10年目 | 建築費の0.3% |
10年~20年目 | 建築費の0.5% |
21年目以降 | 建築費の1.0% |
対策:定額制の修繕サービスを利用する
定額制の修繕サービス「メンパク」を利用することで大規模修繕への備えができます。
メンパクとは毎月定額料金を支払うことで、外壁補修や塗装、防水等の修繕工事などの大規模修繕やその後のメンテナンスを15年間継続して行うことができます。メンパクなら大規模修繕などの大きな出費に関しても定額の金額で工事が行えます。
大規模修繕は災害などで突如生じる修繕とは違い、15年に一度のサイクルでやってきます。費用は高額ではありますが、来るべき大規模修繕に対してしっかりと備えることで費用面での不安を解消できます。
修繕の回数が増えるリスク
アパートの老朽化に応じて、修繕費が増えるだけでなく修繕工事の回数も増えます。
大規模修繕などは数十年に1回程度ですが、その他小さな工事が増えるため、オーナーはその都度労力を使うことになります。
また、頻繁に修繕工事が入ると、騒音の問題や見知らぬ人の出入りが増えるため、入居者にとって良い環境とは言いにくいでしょう。
対策:アパートの構造選びを慎重に考える
アパートの築年数が古くなるにつれて修繕の回数が増えるのは仕方がありませんが、アパートの構造によって修繕の回数は異なります。
アパートの構造には木造・鉄骨造・鉄筋コンクリートがあります。アパートを建築から考えている人は、長い目で見てどの構造が良いか慎重に考える必要があります。
比較的建築費が抑えられるのは木造ですが、木造は他の構造よりも劣化スピードが速いため、修繕工事の回数が増える傾向にあります。また、木造の場合、シロアリなどの虫対策をする必要があるため別途工事が必要になります。
対策:修繕のコストカットはなるべく行わない
修繕回数が増えるリスクの対策として、質の良い素材の使用、腕の良い職人を雇うことが有効です。
アパートの老朽化に応じ、修繕回数が増えることは避けられません。ですが、修繕の質を見直すことで本来より建物を長期間綺麗な状態で保つことが可能になります。
逆に、修繕費のコストカットを行った場合、思っていた以上に修繕スパンが短く、その都度費用や労力を費やすことになり、余計に費用や回数が増えてしまう恐れがあります。
入居者のマナーの悪さによるトラブルのリスク
アパート経営では、入居者のマナーの悪さによるトラブルも多く報告されています。よくある入居者トラブルの例として、騒音トラブルが挙げられます。
入居者間や近隣とのトラブルは、当事者だけではなく他の入居者の退去につながることがあります。
対策:対応が早く手厚い管理会社を選ぶ
入居者同士のトラブルについては管理会社に任せる場合が多いです。管理会社が何らかの対応を取ることで事が収まることがほとんどです。
ですが、管理会社の対応がお粗末だと入居者の不満や怒りを煽ることになります。よって、対応の早く手厚い管理会社を選ぶことがこのリスクを回避する方法と言えます。
対策:入居審査を厳しくする
トラブルが起きた時にどう対応するかも需要ですが、そもそもマナーの悪い入居者を住まわせないことが最大の回避策になります。そのため、入居審査を厳しくし、入居人を見極める必要があります。
ほとんどの場合、入居審査ではその人に家賃の支払い能力があるかどうかといったところに着目しますが、入居申込者の身なりや態度、常識の有無などは、不動産会社で物件探しをしている段階からチェックしておくべきです。不動産会社に仲介を頼む場合はそういった意向を伝えておきましょう。
管理会社の選択ミスに対するリスク
アパート経営でリスクを回避し、成功するには、信頼できるパートナー会社を見つける必要があります。
入居者を確保できるかどうか、投資や経営について適切なアドバイスやサポートが受けられるかどうかは、パートナー次第と言えます。
対策:複数の管理会社を検討
最初から、管理会社を一社に絞るのはリスクが高いです。管理会社によって強みもあれば弱みもあります。
よって、管理会社選びは慎重に。複数の管理会社に話を聞くようにしましょう。また、今の時代、ネットで口コミを簡単に調べることができるので、パートナー企業選びの参考にしてみてください。
家賃低下のリスク
アパート経営をするうえで、長期的な経営状況に影響するのが家賃収入低下のリスクです。
家賃が低下する原因は物件の老朽化によるものです。新築と比べると、やはり築年数が古いアパートは家賃が安くなります。
対策:立地が良い土地を選ぶ
家賃低下リスクの対策として、立地が良い土地でのアパート経営を検討しましょう。
繁華街の近くや駅近など、立地の良い場所であれば、築年数が経過しても、ある程度高い家賃設定でアパート経営をおこなえます。
そういった土地は、地代や物件の取得費用が高い傾向にありますが、リスク回避を考えるうえでは多少目をつぶることも大事です。
対策:中古物件の購入を視野に入れる
新築物件に比べて中古物件の方が家賃は下落しにくいと言われています。
中古物件は新築に比べて購入価格も安いため、家賃が多少下がってもキャッシュフローに大きな影響はありません。
家賃滞納のリスク
また、入居者による家賃の未払い、家賃を滞納するリスクも考えられます。
入居者が3ヶ月以上など長期間の家賃滞納が続いた場合でないと「正当事由」として賃貸借契約の解除をすることができません。つまりオーナーは3ヶ月未満の滞納では、借主を退去させることができません。
家賃滞納が続いてしまうと、アパートローンの返済に悪影響を与えるだけではなく、新規の入居者を募集できず、機会損失の状態になってしまいます。
対策:家賃保証会社との契約を義務付ける
家賃保証会社とは、入居者が家賃を滞納した際、家賃を立て替えて払ってくれる会社のことです。
家賃保証会社は借主との間で契約をします。入居条件として家賃保証会社との契約を義務付けることで家賃を滞納されるリスクをなくすことができます。滞納保証に手厚い管理会社を選択することも大切です。滞納保証とは入居者が決められた期日までに入金を行わなかった場合、管理会社が入居者に代わって立て替え、家主に滞納分の家賃を支払うシステムが滞納保証です。管理会社といっても、契約内容は異なるので滞納保証をしてくれる会社やプランを選択するといいでしょう。
災害のリスク
アパート経営は、20年から30年のスパンで行われる事業です。そのため、地震や火事、大雨などの予期せぬ災害が起こる可能性は小さくありません。
特に、日本の住宅街は住宅が密集しており、木造構造が多いため延焼などの被害を受けることは少なくありません。
対策:災害に強い物件造りを意識する
アパートの構造は主に木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート構造の3つです。建築費は高くなりますが、3つの構造のうち鉄筋コンクリート造は耐久性、耐震性、耐火性に優れています。
よって、鉄筋コンクリート造でアパートを建築することは災害に対するリスクを回避する方法の1つになります。
災害のリスクに備えて、「地震保険」の加入を検討しましょう。地震保険は地震や津波などで破損したアパートの修繕費等を補償します。一方で火災保険だけでは地震や津波による被害を補うことができません。
事業計画と実態が異なるリスク
アパート経営を始める前に、年間の収益や支出を見込んだ事業計画を立てます。あくまでも計画なので実際は計画通りにいかないことがほとんどです。
当初予定していた計画通りに進まない場合、アパート経営に行き詰る事になります。そうなると安定したアパート経営を運営することが難しくなります。
対策:複数の事業計画パターンを作成する
安定したアパート経営を実現していくためにも、事業計画書は複数作成しておくことをおすすめします。
事業計画を立てる際は、建築会社や管理会社、不動産のプロに相談すると、より現実的なプランを提案してくれます。
対策:ファイナンシャルプランナーに相談
アパート経営初心者が事業計画を立てるのは、そう簡単ではありません。複数計画書を作成しても、実際の支出とは大きく異なることがほとんどです。
そのため、アパート経営の事業計画は、収支をはじめとした資金計画のプロであるファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。
ローン返済が困難になるリスク
アパート経営をおこなう上で、家賃収入が少ないとローンの返済が困難になるリスクが伴います。
ローンの返済は家賃収入から賄われますが、収入が少ない場合には自腹でローンの返済をしなければなりません。
アパート経営以外に収入があり、貯蓄に余裕がある場合はローンを支払うことができますが、余裕がなく、ローンの返済が難しい場合はアパートを手放さなければなりません。
対策:入念な返済計画を立てる
無理なくローンの返済が行えるよう金融機関と相談し、自分のライフプランにあった無理のない返済計画を立てるようにしましょう。
ローンを組む際に、融資額だけでなく金利タイプや融資期間を選択できます。
アパート経営の支出の大部分がローンの返済になります。よって、十分な家賃収入が得られない場合には自分の貯金からローンを返済していくことになります。そうなったときのために多少貯金は残しつつ、資金に余裕を持って始めるようにしましょう。
ローン金利が上昇するリスク
また、ローン金利が上昇するリスクもあります。アパートローンの金利には「変動金利」と「固定金利」の2つがあります。
変動金利の場合、金利を固定する固定金利と比較して、低金利で借りられるメリットはありますが、将来、金利が上がると返済額が大きくなります。
対策:金利上昇に備えたシミュレーションを行う
ローン金利上昇の対策として、将来の金利上昇に備えてシミュレーションおよび金利上昇時の行動を決めておくことをおすすめします。
例えば、金融機関が公開している住宅ローンシミュレーションを活用し、金利が上昇した場合、毎月の返済額と総返済額がいくらになるのか一覧にしてみるとよいでしょう。
金利が上昇してしまった場合には、繰り上げ返済が有効です。金利上昇局面であっても、繰り上げ返済をすれば残債が減り、支払い利息を減らすことができます。
節税目的で始めるリスク
アパート経営は節税効果が高いと言われています。確かに節税効果はありますが、節税目的のために安易にアパート経営を始めるのはお勧めしません。
アパート経営において節税効果が得られるのは年収1000万円以上の給与所得がある人と言われています。
アパート経営では節税分以上に、物件の建築費などの費用がかかるため、結果的に出ていくお金のほうが多いです。
対策:要経費について理解する
アパート経営で節税効果を得たいのであれば、必要経費について理解しておく必要があります。そもそも、アパート経営で節税効果を得られるのは、給与所得などの黒字所得と帳簿上、不動産所得で発生した赤字所得を損益通算し課税所得が減った時です。
帳簿上、不動産所得で赤字を出すには収益から経費を差し引く必要があります。必要経費が多ければ、その分不動産所得を減らす事ができます。
アパート経営ではどこからどこまでが経費になるのか、また減価償却や繰り越しに関しても理解しておく必要があります。
対策:開業届を出す
アパート経営などの不動産所得がある場合は自身で確定申告をする必要があります。確定申告には白色申告と青色申告の2種類あります。
節税目的としてアパート経営を始めるのであれば控除の範囲が広い青色申告を提出する必要があります。
青色申告で確定申告を行う場合は事前に開業届を出さなければなりません。
立地環境の変化に対するリスク
アパートを建てるうえで大事なのが立地です。
周辺に会社や大学がある場合、単身世帯の賃貸需要が高いです。ですが、会社や大学が移転してしまう可能性も考えられます。
対策:入念に地域ニーズの下調べをする
対策として、会社や大学が移転することはそう頻繁にあることではないですが、アパートを建てる際、立地を考えるのであれば、周辺施設が移転する可能性はないか調べておく必要があります。
アパート経営を立地に頼っていては立地の環境変化に対応できません。よって、立地以外にアパートの強味を作ることが回避策の1つです。
例えば、Wi-Fiや宅配ボックスなど設備を充実させる、立地環境が変化してでも住みたいと思うようなデザイナーズのアパートを建てるといった方法があります。
売却できないリスク
アパートの売却は簡単ではありません。アパートの耐用年数は木造なら22年、軽量鉄骨造は19年~34年と短く、劣化が早いのが特徴です。
そのため、売却を考える頃には劣化が進み、値段どころか買い手がつかない場合が多いです。
対策:早めの売却を検討する
売却を考えるのであれば早い段階で検討することをおすすめします。
また、金利が安い時期のほうがローンを組みやすいためアパート需要が増えます。そういった時期を狙うのもアパートが売却できないリスクを回避するコツです。
\建築費は?初期費用は?/
活用事例:ペット愛好家の心をつかんだ賃貸住宅
エリア | 北海道 |
土地面積(㎡) | 332 |
延べ床面積(㎡) | 243 |
工法 | 木質パネル接着 |
「騒音の問題や、糞などの苦情も無いようです。やはり入居者のみなさんが動物好きで、しかもマナーが良いお陰で、問題が起きないのでしょう」とオーナー様。設備が行き届き、管理も徹底している物件には、自ずとマナーの良い入居者が集まるという典型的な例といえるでしょう。
敷地内には犬を自由に遊ばせることができるドッグランを設置するなど、ペット好きの心を掴んだこの物件は、完成を待たずして入居者が決まりました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
「サブリース契約で空室リスク回避」は間違い
サブリース契約について深く知らない人の中には、「この契約によって空室リスクを回避することができる」と勘違いをしている人もいると思います。
本章ではサブリースの仕組みや実態、落とし穴について順を追って説明するため、アパート経営のリスクについて考えている人はぜひ参考にしてください。
サブリース契約の仕組み
サブリース契約は、サブリース業者が不動産オーナーの物件を一括借り上げして入居者に貸すという仕組みです。つまり、オーナーの代わりに入居者との契約や物件の管理などの経営を行なってもらうものです。
サブリース契約では、サブリース業者と不動産オーナー、そしてサブリース業者と入居者が賃貸借契約を交わします。オーナーからすると、入居希望者と交わす賃貸借契約に介入せずに済むことはメリットとなります。
サブリースの種類
サブリース契約には「実績賃料連動型(パススルー型)」と「賃料固定型(家賃保証型)」の2種類があります。
パススルー型は業者による家賃保証がないサブリースのことで、入居者が支払う家賃がそのままオーナーの収入になります。これは入居率が高まるほど収入の増加が期待できる一方、家賃保証がないため入居率が低ければオーナーの収益が低くなるデメリットがあります。
家賃保証型は一般的にサブリース契約と言われるものであり、空室があっても業者によって一定の賃料が約束された契約のことです。入居率に関係なく安定収入が期待できることから、空室リスクを回避できると思われがちですが、これには落とし穴があります。
サブリースの落とし穴
一見オーナーにとって都合の良いサブリース契約ですが、見過ごすことのできない落とし穴が存在します。サブリースの落とし穴とは以下の通りです。
- 敷金などは基本的にサブリース会社の取り分
- 修繕費はオーナー負担
- 会社の変更はできない
敷金などは基本的にサブリース会社の取り分
家賃収入以外のに収入源となる敷金・礼金・更新料ですが、これらは基本的にサブリース会社の取り分になります。オーナーの中にはこれらを家賃収入として得られると思い込んでいたせいで、トラブルへと発展したケースもあります。
そのため、契約する前に敷金・礼金・更新料などがどちらの取り分でどれくらいの金額で設定されているのかを確認する必要があります。
修繕費はオーナー負担
アパートは大体10年~15年に一度は大規模修繕が必要になり、それには数百万円~数千万円の費用がかかります。そして、この費用は契約によってオーナーが負担することになります。
加えて、サブリース会社の言う通りに修繕しなければ契約を更新してもらえなかったり、相場より高い業者に依頼され不当な工事費を要求されたりする危険性もあります。
会社の変更はできない
契約後に様々な問題やトラブルに見舞われたら会社の変更を考えると思いますが、サブリース契約では基本的に管理会社の変更ができません。
契約していたサブリース会社がさらに別のサブリース会社に又貸していて、売却が複雑になるというケースもあります。
サブリース契約の期間
サブリース契約に関して、契約期間を最高30年や35年といった長期保証を謳っているのを見かけることがあると思いますが、実際には2年~5年で契約内容が更新されて賃料が下げられます。
「長期間家賃を保証します」「アパートを建てるだけで儲かります」といった営業でサブリース契約を勧められますが、実際にはそれは成り立ちません。
サブリース契約をすると家賃の10%~20%を保証料として支払うことになるため、オーナーが実際に得られる収益は家賃相場の80%~90%となります。
契約する前に確認すべきポイント
サブリース契約に関するトラブルを未然に防ぐために、消費者庁は注意喚起を行なっています。それについて、契約する前に確認すべきポイントを紹介します。
- 契約期間中・契約更新の際に賃料が減額される可能性があることを知っている?
- 契約期間中でも契約が解除される可能性があることを知っている?
- 原状回復費・大規模修繕費が原則オーナー負担であることを知っている?
- 契約締結前に重要事項の説明、契約締結時に書面の交付があることを知っている?
参考:消費者庁『賃貸住宅経営(サブリース方式)の契約を検討する方へ』
上記のことは契約前に確認しておく必要があります。サブリース業者からの不当な勧誘や誇大広告には気を付けましょう。
消費者庁では賃貸に関するトラブルや、法的トラブルに関する相談窓口も紹介されているため、気になることがある人は相談してみると良いでしょう。
アパート経営はリスクを考慮して始めよう
アパート経営はリスクを十分に理解し、その対策も怠らなければ成功することが可能です。
しかし、ろくに準備もせずに軽い気持ちで始めると痛い目を見ることになるため、「楽に不労所得を得たい」などの考えがある人はやめておいたほうが良いでしょう。